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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1248361
審判番号 不服2010-8107  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-16 
確定日 2011-08-26 
事件の表示 特願2005-504200「マスクブランクスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月14日国際公開、WO2004/088418〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成16年3月26日(優先権主張 平成15年3月28日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成21年7月2日付けで拒絶理由が通知され、平成22年1月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、前置報告書の内容について、審判請求人に意見を求めるために平成23年2月21日付けで審尋がなされ、同年4月18日付けで当該審尋に対する回答書が提出された。



2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1乃至12に係る発明は、平成22年4月16日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「 薄膜付き基板に滴下されたレジスト液を回転塗布により成膜し、該成膜されたレジスト液の膜を回転乾燥処理により乾燥させてレジスト膜を形成し、該レジスト膜を減圧乾燥処理により乾燥させ、レジスト膜が形成されたマスクブランクスの周縁部に、レジスト膜を溶解させる溶媒を供給し、マスクブランクスを回転させることにより、前記周縁部のレジスト膜を除去することを特徴とするマスクブランクスの製造方法。」



3.引用発明

3-1.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-259502号公報(以下「引用例」という)には、以下の技術事項が記載されている(後述の「3-2.引用発明の認定」において引用した記載に下線を付した)。

記載事項a.請求項11
「【請求項11】 透光性基板に遮光膜等の膜を形成する膜形成工程を有するフォトマスクブランク製造方法において、
前記膜形成工程において不要な部分に形成された不要膜を請求項1ないし7のいずれかに記載の方法で除去する不要膜除去工程を有することを特徴とするフォトマスクブランク製造方法。」

記載事項b.【0011】乃至【0013】
「【0011】図1ないし図5において、基板10は、合成石英ガラスからなる透明基板(6インチ×6インチ×0.25インチ)11の表面にクロムからなる遮光膜12が形成され、さらに、この遮光膜12の上に厚さ4000オングストロームの未ベークの状態のレジスト膜(チッソ株式会社製PBSC)13がスピンコート法等で形成された(図3,図4参照)フォトマスクブランクである。
【0012】ここで、このレジスト膜13は、本来、基板11の表面の主要部にのみ形成されていればよい。しかしながら、レジスト膜13の形成の際に、本来形成する必要のない基板11の表面の周縁部、基板側面部及び場合によっては基板裏面部にまで形成されてしまう。この実施例にかかる不要膜除去方法及びその装置は、これらの不要膜を除去する方法及び装置である。
【0013】この実施例の不要膜除去装置は、図1に示されるように、回転台20に載置保持された基板10の上面側をカバー部材30によって覆い、このカバー部材30の上方からノズル40よりMCA(メチルセロソルブアセテート)等の溶媒50を噴出させてカバー部材30の溶媒供給孔31を通じて不要膜部分13a(図5参照)に供給してこれを溶解除去するものである。」

記載事項c.【0023】乃至【0024】
「【0023】カバー部材30を被された基板10は、回転台20に保持されて回転されながら処理される。回転台20は回転軸21に取り付けられた4本の水平方向に放射状に延びた支持腕22と、それぞれの支持腕22の先端部に設けられた一対の保持台座23とを有する。保持台座23上に、基板10の4角を配置して保持するものである。回転軸21は、図示しない回転駆動装置に結合され、所望の回転数で回転されるようになっている。なお、基板10の下方にも、溶媒供給用のノズル40aが設けられており、該ノズル40aから溶媒40aを供給して、不要膜除去を確実にすることができるようになっている。
【0024】上述の装置によって、以下のようにして不要膜を除去する。まず、基板10を回転台20にセットしてカバー部材30を被せたら、ノズル40から供給量を調節しながら溶媒50を供給する。同時に、回転台20を回転数100?1000rpmで1?60秒間回転させる。これにより、溶媒50を溶媒供給孔31を通じて不要膜部分13aに浸透させて溶解除去する。さらに、上記処理が終盤に近くなった時点で、ノズル40aから溶媒50aを噴出させて溶解除去をより確実なものにする。これにより、不要膜部分13aが除去される。これにベーク処理等を施してレジスト膜13が基板の中央部に略正方形状に形成されたレジスト膜付きフォトマスクブランクを得る。」

記載事項d.図1





3-2.引用発明の認定

記載事項b(【0011】乃至【0012】)及び記載事項d(図1)の記載内容から、引用例における「不要膜部分13a」とは、「フォトマスクブランク」の周縁部の「レジスト膜」であること、及び、「溶媒」が供給される部位が「フォトマスクブランク」の周縁部であることが分かる。

上記事項及び記載事項a乃至記載事項dの記載内容から、引用例には、

「 フォトマスクブランク製造方法であって、
基板10は、透明基板11の表面にクロムからなる遮光膜12が形成され、さらに、この遮光膜12の上に厚さ400オングストロームの未ベークの状態のレジスト膜13がスピンコート法等で形成されたフォトマスクブランクであり、
基板10を回転台20にセットしてカバー部材30を被せたら、ノズル40から供給量を調節しながら溶媒50を供給し、同時に、回転台20を回転数100?1000rpmで1?60秒間回転させてフォトマスクブランクの周縁部に溶媒を供給し、これにより、溶媒50をフォトマスクブランクの周縁部のレジスト膜に浸透させて溶解除去する、
フォトマスクブランクの製造方法。」

(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。



4.対比

本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「フォトマスクブランク」は、本願発明の「マスクブランクス」に相当する。
引用発明の「表面にクロム等からなる遮光膜12が形成され」た「透明基板」は、本願発明の「薄膜付き基板」に相当する。
引用発明の「レジスト膜」が「スピンコート法」で「形成され」ることは、本願発明の「滴下されたレジスト液を回転塗布により成膜し」ていることに相当する。
引用発明の「溶媒」は「レジスト膜」を「溶解除去する」ものであるから、引用発明の「溶媒」は、本願発明の「レジスト膜を溶解させる溶媒」に相当する。
引用発明の「フォトマスクブランク」であるところの「基板10」を「回転台20にセットして」、「回転台20を回転数100?1000rpmで1?60秒回転させ」ることは、本願発明の「マスクブランクスを回転させる」ことに相当する。
引用発明の「フォトマスクブランクの周縁部のレジスト膜に浸透させて溶解除去する」ことは、本願発明の「前記周縁部のレジスト膜を除去する」ことに相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「 薄膜付き基板に滴下されたレジスト液を回転塗布により成膜し、
レジスト膜が形成されたマスクブランクスの周縁部に、レジスト膜を溶解させる溶媒を供給し、マスクブランクスを回転させることにより、前記周縁部のレジスト膜を除去する、
マスクブランクスの製造方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、「成膜されたレジスト液の膜を回転乾燥処理により乾燥させてレジスト膜を形成し」ているのに対し、引用発明ではそのような特定事項を有していない点。

(相違点2)
本願発明では、「レジスト膜を減圧乾燥処理により乾燥させ」ているのに対し、引用発明ではそのような特定事項を有していない点。



5.判断

5-1.相違点1についての判断

一般に、基板の表面に薄膜を形成するために、薄膜の原料となる塗布液を基板に滴下した状態で基板を回転させて薄膜の形成を行う、所謂スピンコート法による成膜では、薄膜を形成した後、基板を回転させて薄膜を乾燥させる処理が行われるものと認められる(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-156273号公報の【0023】乃至【0028】参照)。よって、引用発明の「レジスト膜13がスピンコート法」「で形成され」ていることは、上記のような基板を回転させて薄膜を乾燥させる処理を含んでいると解されるので、相違点1に係る構成は、引用発明に記載されているに等しい。
仮に、引用発明では上記構成(回転乾燥処理)を行わないものであったとしても、上記のように、スピンコート法による成膜において、薄膜を形成した後、基板を回転させて薄膜を乾燥させる処理を行うことは周知であるから、当該構成を採用することにより、相違点1に係る構成を得ることは、当業者であれば容易に想到できたものである。


5-2.相違点2についての判断

引用発明において、スピンコート法により形成されたレジスト膜を所定の程度まで乾燥させる必要があることは自明なことであり、乾燥を速めたり、所望の乾燥度を得るなどのために、レジスト膜等の薄膜の乾燥処理としてよく知られた減圧乾燥処理(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-101866号公報の第1頁左下欄第14行乃至第2頁左上欄第4行、第2頁右下欄第7行乃至第18行、特開平06-99124号公報の【0001】、【0002】、【0010】乃至【0013】、特開2002-346458号公報の【0038】乃至【0040】参照)を追加的に行うことは、当業者であれば容易に想到し得ることであるから、引用発明において、相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものである。



6.効果について

本願発明による効果は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別なものとはいえない。



7.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-23 
結審通知日 2011-06-29 
審決日 2011-07-12 
出願番号 特願2005-504200(P2005-504200)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 創秋田 将行  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 樋口 信宏
吉川 陽吾
発明の名称 マスクブランクスの製造方法  
代理人 池田 憲保  
代理人 福田 修一  

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