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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1248589
審判番号 不服2009-19071  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-07 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 特願2003-196076「情報処理プログラム及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月 3日出願公開、特開2005- 31979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年7月11日の出願であって、平成20年6月12日付けで拒絶理由通知がなされ、同年8月22日付けで手続補正がなされたが、平成21年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成21年10月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年10月7日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「文書の論理的な構造を記述すると共に、指定されたタグによって、他の文書へのリンクを表す言語によって記述されたコピー元情報をコピーして、前記言語によって記述されたペースト先情報の中のペースト先へペーストする情報処理プログラムにおいて、
指定されたコピー元情報中のコピーすべき複数のオブジェクトをコピーするコピー手段と、
オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、前記コピー元情報の複数のオブジェクト及び該オブジェクトがそれぞれペーストされるペースト先情報のそれぞれのペースト対象オブジェクトの意味構造を解析する意味解析手段と、
前記コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に基づいて、前記複数のオブジェクトをそれぞれペーストするペースト先の前記ペースト対象オブジェクトを選択するペースト先選択手段と、
前記複数のオブジェクトをそれぞれ前記ペースト先へペーストするペースト手段として、
コンピュータを機能させるための情報処理プログラム。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1における「前記コピー元情報及びペースト先情報のそれぞれの意味を解析する意味解析手段」を「オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、前記コピー元情報の複数のオブジェクト及び該オブジェクトがそれぞれペーストされるペースト先情報のそれぞれのペースト対象オブジェクトの意味構造を解析する意味解析手段」に限定するとともに、補正前の請求項1における「前記コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に合致するペースト先を選択するペースト先選択手段」を「前記コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に基づいて、前記複数のオブジェクトをそれぞれペーストするペースト先の前記ペースト対象オブジェクトを選択するペースト先選択手段」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-306177号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平5-20274号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「【0042】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態の文字列記憶呼出装置(情報処理装置)について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態の情報処理装置を示すブロック図である。
【0043】101はCPU(Central Processing Unit)であり、RAM(Random Access Memory)102またはROM(Read Only Memory)103に記憶されたプログラムおよびデータに従って本発明の各手段を実現する。
【0044】RAM102は図2(1)に示すように、OS(Operating System)や各種プログラムを記憶するプログラム記憶領域102-1、文書データを記憶する文書データ記憶領域102-2、クリップボードデータを記憶するクリップボードデータ記憶領域102-3、文字列の種類を判別するための情報を記憶する文字列種類判別辞書領域102-4、かなを漢字に変換するための情報を記憶する仮名漢字変換辞書領域102-5、文字列や図形等オブジェクトデータの指定されている範囲を記憶する指定範囲記憶領域102-6、各種変数データを記憶する変数データ記憶領域102-7、その他のデータを記憶するその他データ記憶領域102-8に分割されている。」

B.「【0072】・・・(中略)・・・ S207では、コピーまたはカットの指示がなされたか判断し、指示されたと判断した場合、S208へ移行する。コピーの指示はキーボード105に備えられたコピーキーを押すことにより、カットの指示はキーボード105に備えられたカットキーを押すことなどにより行われる。
【0073】S208では、指定された範囲の文字列の種類を判別し、クリップボードデータ記憶領域102-3に該文字列を前記判別された種類と対応付けて記憶する処理を行い、またS207でカットが指示された場合は、指定された範囲の文字列を削除する処理を行なう。本処理は、CPU101が文書データコピー/カットプログラムを実行することによって実現される。・・・(中略)・・・ なお、本処理の詳細なフローチャートは図7に示し、説明は後述する。
【0074】S209では、ペースト指示がなされたか判断し、指示されたと判断した場合、S210へ移行する。ペーストの指示はユーザーがキーボード105に備えられたペーストキーを押すことなどにより行われる。S210では、現在のカーソル位置に、クリップボードデータ記憶領域102-3に記憶されている複数の文字列の中から所望の文字列を選択して呼び出し、カーソル位置に貼り付ける(ペースト)処理を行う。・・・(後略)・・・
【0075】本処理は、CPU101が文書データペーストプログラムを実行することによって実現される。・・・(中略)・・・ なお、本処理の詳細なフローチャートは図13に示し、説明は後述する。」

C.「【0088】図7はコピー/カット処理(図5のS208および図6のS313)の詳細を示したフローチャートである。本フローチャートはCPU101が、プログラム記憶領域102-1に記憶されているコピー/カットプログラムを実行することによって実現される。
・・・(中略)・・・
【0093】一方S405では、複数の文字列範囲が指定されているか、あるいは指定されている範囲の文字列が分割可能であるかを判断し、そうであればS406へ、そうでなければS408へ移行する。なお分割可能な文字列とは、例えば文字列の中に改行コード・タブコード・句読点・カンマ・括弧・クォーテーションなどが挿入されている文字列である。例えば、「シャープ株式会社、大阪」という文字列が範囲指定されていた場合、この文字列は句点の位置で前後に分割可能である。
【0094】S406では、指定されている範囲の(複数または分割可能な)文字列を一まとまりとして文字列記憶領域102-3-1に記憶させる処理を行なう。例えば「シャープ株式会社、大阪」という文字列が範囲指定されていた場合、この文字列「シャープ株式会社、大阪」全体を文字列記憶領域102-3-1に記憶させる。この処理の詳細は図12にて後述する。
【0095】S407では、変数nに範囲指定されていた数、あるいは文字列の分割可能な数を代入し、S409へ移行する。例えば「シャープ株式会社、大阪」という文字列が範囲指定されていた場合、この文字列は句点位置で2つに分割できるため、変数nには2を代入する。なお、変数の値は変数データ記憶領域102-7に記憶される。
【0096】一方S408では変数nに1を代入し、S409へ移行する。S409では、複数の範囲が指定されていた場合はn番目の指定範囲の文字列、あるいは分割可能な文字列が指定されていた場合はn番目の分割文字列をキーとして文字列種類判別辞書領域102-4または/および仮名漢字変換辞書領域102-5を照会して、前記文字列の種類を判別する。
【0097】例えば、範囲指定されていた文字列が「シャープ株式会社、大阪」の場合、1番目の分割文字列は「シャープ株式会社」、2番目の分割文字列は「大阪」となり(この場合、句点は削除している。)、nが1であった場合、文字列「シャープ株式会社」の種類を判別する。この処理(S409)の詳細なフローチャートを図9に示し、説明は後述する。」

D.「【0107】図9は種類判別処理(図7のS409)の詳細を示したフローチャートである。本フローチャートはCPU101が、プログラム記憶領域102-1に記憶されている種類判別プログラムを実行することによって実現される。」

E.「【0119】図13はペースト処理(図5のS210および図6のS315)の詳細を示したフローチャートである。本フローチャートは、CPU101が、プログラム記憶領域102-1に記憶されているペースト処理プログラムを実行することによって実現される。
・・・(中略)・・・
【0122】S703では、ペーストすべき文字列の種類を判別する処理を行なう。本処理は、CPU101がペースト文字列種類判別プログラムを実行することによって実現される。この際、前記現在の入力状況が文字列種類判別プログラムに対して通知される。本処理の詳細なフローチャートは図14に示し、説明は後述する。なお、ペーストすべき文字列の種類の判別は、上記方法以外にユーザーがキーボード105などを操作することによって指定する方法でもよい。この場合、例えば入力されたキーに応じて種類を判別する。
【0123】S704では、S703において種類を判別できたか否かを判断し、判別できた場合S705へ、判別できなかった場合S711へ移行する。S705では、文字列記憶領域102-3-1に記憶されている複数の文字列の内、前記判別された種類に対応付けられて記憶されている文字列の数を、変数Cに代入する。例えば文字列記憶領域102-3-1に図8(1)のように記憶されている場合で、前記判別された種類が「地名」であった場合、変数Cには4が代入される。S706では、変数Cの値が0であるか否かを判断し、0であればS711へ、0でなければS707へ移行する。
【0124】S707では、文字列記憶領域102-3-1内の、前記種類別の記憶順序がC番目の文字列を呼び出して出力する。例えば前記の例(C=4)の場合、文字列「奈良」を表示装置104に表示する。この際、標準の表示形式とは異なる表示形式(表示色を変えるなど)で出力したり、あるいはその文字列の種類を示す文字列を該文字列に付加して出力すると良い。例えば、文字列「奈良」は「奈良<地名>」として出力する。S708では、キーボード105などから次候補表示の指示がなされたか否かを判断し、指示された場合S709へ、そうでない場合S710へ移行する。S709では、変数Cの値を1だけ減じ、S706へ戻る。」

F.「【0132】図14はペースト文字列種類判別処理(図13のS703)の詳細を示したフローチャートである。本フローチャートは、CPU101が、プログラム記憶領域102-1に記憶されているペースト文字列種類判別プログラムを実行することによって実現される。
・・・(中略)・・・
【0137】・・・(中略)・・・S811では、前記通知された入力状況(メール本文入力、文書データ(文字)入力など)だけでは、ペーストすべき文字列の種類は判別できないため、現在のカーソル位置の近辺、あるいは関係する位置に存在する文字列(上下左右数文字の範囲内に表示されている文字列、リンクされている文字列、ラベル名、表計算シートの先頭行など)から、種類を判別する。例えば、カーソル位置の前方に「URL」という文字列が存在していれば、ペーストする種類は「URL」と決定する。上記の処理により、ペーストすべき文字列の種類を判別できる。」

上記Cには、コピー/カット処理として、複数の文字列に分割可能な範囲が指定された場合に、上記複数の文字列をコピーすることが示されており、この範囲を指定するというのは、コピー元情報の中から複数のコピーすべき文字列を含む範囲を指定することを意味するものであるので、上記Cには、コピー/カット処理として、「指定されたコピー元情報中のコピーすべき複数の文字列をコピーする」ことが示されているといえる。
また、上記Bの「カーソル位置に貼り付ける(ペースト)処理を行う」というのは、ペースト先の情報内のカーソルが位置する箇所へペーストを行うことを意味するものであるから、「ペースト先情報の中のペースト先へペーストする」ものであるといえる。

上記Cには、CPUがコピー/カットプログラムを実行することによりコピー/カット処理を実現することが示されていることから、この「コピー/カットプログラム」は、上記CPUを備える情報処理装置を「コピー/カット処理手段」として機能させるためのプログラムであるといえる。
同様に、上記Dの「種類判別プログラム」、上記Eの「ペースト処理プログラム」、上記Fの「ペースト文字列種類判別プログラム」は、それぞれ、情報処理装置を「種類判別処理手段」、「ペースト処理手段」、「ペースト文字列種類判別処理手段」として機能させるためのプログラムであるといえる。

よって、上記A?Fの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「コピー元情報をコピーして、ペースト先情報の中のペースト先へペーストするプログラムにおいて、
指定されたコピー元情報中のコピーすべき複数の文字列をコピーするコピー/カット処理手段と、
文字列に関する規則を格納した文字列種類判別辞書領域を照会して、前記コピー元情報の複数の文字列の種類を判別する種類判別処理手段と、
ペーストすべき文字列の種類を判別するペースト文字列種類判別処理手段と、
前記ペースト文字列種類判別処理手段により判別された種類に対応付けられている前記文字列をペースト先へペーストするペースト処理手段として、
情報処理装置を機能させるためのプログラム。」

(引用例2)
G.「【0017】図3は、メモ帳モードの入力例を示す図である。図において、19は本実施例における電子情報機器の表示画面、20は外装部分に設けられたメニューボタン、21は現在のモードを示すモードバー、22はアドレス帳フォーマットの名前項目を示す予約語「NA」、23は同様にアドレス帳フォーマットの電話番号項目を示す予約語「TEL」、24は予約語「NA」22に前置されたデータ部分、25は予約語「TEL」23に前置されたデータ部分、そして、26は予約語「NA」22に対応するデータの区切りを示す予約語「氏」である。
【0018】図4は、上述した自動項目入力ルーチンのステップS8において、データ確認を行う画面であり、図において、31はメッセージを表示するメッセージバー、32は操作者の意思を入力する為のアイコンスイッチボタン、33はアドレス帳フォーマット画面の名前項目の表示位置、そして、34は同様に電話番号項目の表示位置を表す。
【0019】ここで、図2における入出力画面に、図3に示すメモ帳画面の入力が行われたとする。同画面では、打ち合せ等の結果まとめられた日付データ,時間データ,名前データ,電話番号データ,用件データ等が自由な位置にあたかも紙にメモを取るが如く並んでいる。また、名前データ24の前には、予約語「NA」22が前置されている。そして、名前データ24の終りには、名前データの終りを示す予約語「氏」26が後置されている。また同様に電話番号データ25の前には、電話番号データの前置を示す予約語「TEL」23が前置されている。
【0020】図3の画面において、入力操作が終了し、メニューボタン20が押圧されると、メニューを表示し、メモ画面の終了が選択された場合、上述した自動項目入力ルーチンが起動される。まず、ステップS1において、図3の画面に表示されている文字データが一本のストリームデータとして読み込まれ、次のステップS2では、ストリームデータの先頭、つまり図3の表示画面の左上から右に向かって順次スキャンが行われる。そして、第1行目のスキャンが終了すると、第2行目のスキャンが始まり、同様に第3行目のスキャンに入ると、まず予約語「NA」22が検出され、ステップS3に分岐する。ステップS3では、予約語「NA」22がアドレス帳フォーマットの名前項目のデータを前置する予約語である事を識別する。ステップS4では、ステップS3で判定した適正フォーマットであるアドレス帳フォーマットの画面フォーマットをバッファとして用意する。
【0021】次に、ステップS5において、予約語「NA」22に続くデータ部分をサーチし、名前項目データ24の終了を示す区切り点を検出する。この場合、名前項目データの終了を意味する予約語「氏」26を検出すると、それ以前のデータ部を名前項目データとする。ステップS6では、ステップS5で得た名前項目データ24をステップS4で用意したアドレス帳フォーマットのバッファ上の名前項目格納位置34にコピーする。そして、図3のストリームデータの続きをスキャンする為に再度ステップS2へ戻り、図3に示す画面の第4行目から、アドレス帳画面の電話番号項目のデータを示す予約語「TEL」23を検出し、また同様にステップS3?S6の処理を行う。尚、ステップS5において、識別するデータの区切りは、電話番号データ25の終了を示す空白文字あるいは改行コード文字である。
【0022】一方、ステップS2において、スキャンを行うストリームデータ列が終了した場合には、ステップS7へ処理を進め、ステップS4でバッファが用意されたか否かを判定する。その結果、作成されなかった場合には自動項目入力ルーチンを終了するが、作成された場合にはステップS8へ処理を進め、適正フォーマットの一時バッファに自動コピーされたアドレス帳フォーマット画面を図4に示す様に表示し、登録をするかどうかの確認を行う。登録を行う場合には、ステップS9へ処理を進め、アドレス帳フォーマットの適正項目に対応したデータとして、バッファのアドレス帳フォーマットのデータとしてコピーする。また、ステップS8において、登録を行わないと指示された場合には、バッファのコピーを行わずに終了する。」

上記Gの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の技術」という。)
「メモ帳モードで入力された文字データの中から、予約語の検出に基づいて、名前項目データと電話番号データとを抽出し、アドレス帳フォーマットの対応する項目の位置にそれぞれコピーすること。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例1記載の発明における「プログラム」は、情報処理装置で実行されるプログラムであるから、「情報処理プログラム」と呼び得るものである。
そうすると、引用例1記載の発明における「コピー元情報をコピーして、ペースト先情報の中のペースト先へペーストするプログラム」と、本願補正発明における「文書の論理的な構造を記述すると共に、指定されたタグによって、他の文書へのリンクを表す言語によって記述されたコピー元情報をコピーして、前記言語によって記述されたペースト先情報の中のペースト先へペーストする情報処理プログラム」とは、ともに、「コピー元情報をコピーして、ペースト先情報の中のペースト先へペーストする情報処理プログラム」である点で共通するものである。

(い)本願明細書には、「画面上の特定の文字列(オブジェクト)」(段落【0002】)や、「コピー対象のオブジェクト(文字列等)」(段落【0067】)と記載されていることから、引用例1記載の発明における「文字列」は、本願補正発明における「オブジェクト」に相当するものである。
そうすると、引用例1記載の発明における「指定されたコピー元情報中のコピーすべき複数の文字列をコピーするコピー/カット処理手段」は、本願補正発明における「指定されたコピー元情報中のコピーすべき複数のオブジェクトをコピーするコピー手段」に相当するものである。

(う)引用例1記載の発明において「文字列種類判別辞書領域を照会」することは、本願補正発明における「辞書データベースを参照」することに相当する。また、引用例1記載の発明において「文字列の種類を判別する」というのは、文字列がどのような意味構造を有しているかの解析を行うことにより、どのような種類に該当するのかを判別するものであるから、引用例1記載の発明において「文字列の種類を判別する」ことは、本願補正発明において「オブジェクトの意味構造を解析する」ことに相当する。
ここで、本願補正発明における「意味解析手段」は、「オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、コピー元情報の複数のオブジェクトの意味構造を解析する」機能と「オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、オブジェクトがそれぞれペーストされるペースト先情報のそれぞれのペースト対象オブジェクトの意味構造を解析する」機能とを有するものであるといえる。
してみると、引用例1記載の発明において「文字列に関する規則を格納した文字列種類判別辞書領域を照会して、前記コピー元情報の複数の文字列の種類を判別する種類判別処理手段」は、本願補正発明における「意味解析手段」のうちの「オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、コピー元情報の複数のオブジェクトの意味構造を解析する」機能を有する部分に相当する。

(え)引用例1記載の発明における「ペーストすべき文字列の種類を判別するペースト文字列種類判別処理手段」と、本願補正発明における「意味解析手段」のうちの「オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、オブジェクトがそれぞれペーストされるペースト先情報のそれぞれのペースト対象オブジェクトの意味構造を解析する」機能を有する部分とは、ともに、「オブジェクトがペーストされるペースト先情報のペースト対象オブジェクトの意味構造を解析する意味解析手段」である点で共通するものである。

(お)引用例1記載の発明における「ペースト文字列種類判別処理手段により判別された種類に対応付けられている文字列をペースト先へペーストするペースト処理手段」と、本願補正発明における「複数のオブジェクトをそれぞれペースト先へペーストするペースト手段」とは、ともに、「オブジェクトをペースト先へペーストするペースト手段」である点で共通するものである。

上記(あ)?(お)の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「コピー元情報をコピーして、ペースト先情報の中のペースト先へペーストする情報処理プログラムにおいて、
指定されたコピー元情報中のコピーすべき複数のオブジェクトをコピーするコピー手段と、
オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、前記コピー元情報の複数のオブジェクトの意味構造を解析するとともに、該オブジェクトがペーストされるペースト先情報のペースト対象オブジェクトの意味構造を解析する意味解析手段と、
前記オブジェクトを前記ペースト先へペーストするペースト手段として、
コンピュータを機能させるための情報処理プログラム。」
である点。

(相違点)
相違点1:「コピー元情報」及び「ペースト先情報」が、本願補正発明においては、「文書の論理的な構造を記述すると共に、指定されたタグによって、他の文書へのリンクを表す言語によって記述された」情報であるのに対し、引用例1記載の発明においては、その点についての言及はされていない点。

相違点2:「オブジェクトがペーストされるペースト先情報のペースト対象オブジェクトの意味構造」の解析を、本願補正発明は、オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照することにより行っているのに対し、引用例1記載の発明は、辞書データベースを参照して解析するとはされていない点。

相違点3:本願補正発明は、「コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に基づいて、複数のオブジェクトをそれぞれペーストするペースト先の前記ペースト対象オブジェクトを選択するペースト先選択手段」としてもコンピュータを機能させるものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。

相違点4:本願補正発明は、コピー元情報の複数のオブジェクトを複数のペースト先へそれぞれペーストするために、「意味解析手段」において複数のペースト先の意味構造を解析し、「ペースト手段」において、前記複数のオブジェクトを複数のペースト先へそれぞれペーストするように、コンピュータを機能させるものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。

(4)判断
そこで、上記相違点1?4について検討する。

(相違点1について)
引用例1記載の発明は、上記(2)B.に、「文書データコピー/カットプログラムを実行することによって実現される」及び「文書データペーストプログラムを実行することによって実現される」と記載されているように、文書を処理の対象とするものであるから、引用例1記載の発明における「コピー元情報」及び「ペースト先情報」は文書であるといえる。
一般に、文書を記述する言語として、ハイパーテキストなどにみられるような、「文書の論理的な構造を記述すると共に、指定されたタグによって、他の文書へのリンクを表す言語」を用いることは、ごく普通に行われていることである。
してみると、文書である引用例1記載の発明においても、「コピー元情報」及び「ペースト先情報」を、ハイパーテキストなどにみられるような、「文書の論理的な構造を記述すると共に、指定されたタグによって、他の文書へのリンクを表す言語」によって記述するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
引用例1の上記(2)F.に示されているように、引用例1記載の発明における「ペースト文字列種類判別処理手段」は、ペースト先近辺に存在する文字列から、ペースト先の種類を判別している。このような判別を行うためには、予め種別を判別するための規則を備えておく必要があることは明らかであるから、引用例1記載の発明において、このような規則をも文字列種類判別辞書領域に格納し、ペースト対象オブジェクトの意味構造の解析においても参照するようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点3,4について)
引用例2には、上記(2)に摘示したように、文字データの中から、名前項目データと電話番号データという複数のデータを抽出し、この複数のデータを対応する項目の位置にそれぞれコピーする技術が記載されている。この技術において「抽出」するというのは、引用例1記載の発明において「コピーする」ことに対応し、この技術において「コピーする」というのは、引用例1記載の発明において「ペーストする」ことに対応するものである。また、この引用例2記載の技術において、抽出された複数のデータとコピー先の項目の位置とを対応付けるということは、抽出された各データについて、コピーする項目の位置をそれぞれ選択することを意味するものである。
そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の技術は、いずれも、コピー元の複数の文字列の種類と、ペースト先の種類とを判別し、ペースト先の種類に基づいてコピー元の文字列をペースト先へペーストするものであり、引用例1記載の発明においても、複数のペースト先へペーストすることが有用な場合があることは当業者に自明であるから、引用例1記載の発明に引用例2記載の技術を適用することにより、本願補正発明のように、「コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に基づいて、複数のオブジェクトをそれぞれペーストするペースト先の前記ペースト対象オブジェクトを選択するペースト先選択手段」としてもコンピュータを機能させるとともに、「意味解析手段」において複数のペースト先の意味構造を解析し、「ペースト手段」において、前記複数のオブジェクトを複数のペースト先へそれぞれペーストするように、コンピュータを機能させるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願補正発明の作用効果について)
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明及び上記引用例2記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び上記引用例2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成21年10月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年8月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「文書の論理的な構造を記述すると共に、指定されたタグによって、他の文書へのリンクを表す言語によって記述されたコピー元情報をコピーして、前記言語によって記述されたペースト先情報の中のペースト先へペーストする情報処理プログラムにおいて、
指定されたコピー元情報中のコピーすべき複数のオブジェクトをコピーするコピー手段と、
前記コピー元情報及びペースト先情報のそれぞれの意味を解析する意味解析手段と、
前記コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に合致するペースト先を選択するペースト先選択手段と、
前記複数のオブジェクトをそれぞれ前記ペースト先へペーストするペースト手段として、
コンピュータを機能させるための情報処理プログラム。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「オブジェクトに関する規則を格納した辞書データベースを参照して、前記コピー元情報の複数のオブジェクト及び該オブジェクトがそれぞれペーストされるペースト先情報のそれぞれのペースト対象オブジェクトの意味構造を解析する意味解析手段」の限定を省いて「前記コピー元情報及びペースト先情報のそれぞれの意味を解析する意味解析手段」とするとともに、「前記コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に基づいて、前記複数のオブジェクトをそれぞれペーストするペースト先の前記ペースト対象オブジェクトを選択するペースト先選択手段」の限定を省いて「前記コピー元情報意味解析結果とペースト先情報意味解析結果とを照合した解析結果に合致するペースト先を選択するペースト先選択手段」としたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1記載の発明及び上記引用例2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明は、上記特定の限定について参照した上記引用例2記載の技術を参酌するまでもなく、引用例1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-29 
結審通知日 2011-10-04 
審決日 2011-10-24 
出願番号 特願2003-196076(P2003-196076)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
久保 正典
発明の名称 情報処理プログラム及び情報処理装置  

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