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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1248906
審判番号 不服2010-3155  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-15 
確定日 2011-12-13 
事件の表示 特願2006-507170「弁作動部の位置を判断するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月30日国際公開、WO2004/083692、平成18年 9月14日国内公表、特表2006-520872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月17日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年2月9日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成21年8月17日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
内燃機関の排気ガス再循環弁のベース位置を求め、
前記内燃機関の現在の過渡速度状態及び現在の過渡負荷状態の少なくとも1つに基づいて前記ベース位置を調節して、弁作動部位置信号を生成し、
前記内燃機関の吸気部の圧力のために前記弁作動部位置信号を調節し、
前記弁作動部位置信号を前記排気ガス再循環弁に送る、
ステップを含む方法。」

3.引用刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開2000-161109号公報(以下、「刊行物」という。)には、例えば、下記の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【0040】(実施形態1)
(全体構成)図1は本発明の実施形態1に係るディーゼルエンジンの制御装置Aの全体構成を示し、1は例えばマニュアルトランスミッションを装備する車両に搭載された4気筒ディーゼルエンジンである。・・・
・・・(中略)・・・
【0044】また、図1において20は各気筒2の燃焼室4から燃焼ガスを排出する排気通路で、この排気通路20の上流端部は分岐してそれぞれ図示しない排気ポートにより各気筒2の燃焼室4に接続されている。・・・
・・・(中略)・・・
【0046】前記排気通路20は、タービン21よりも上流側の部位で、排気の一部を吸気側に還流させる排気還流通路(以下EGR通路という)23の上流端に分岐接続されている。このEGR通路23の下流端は吸気絞り弁14よりも吸気下流側の吸気通路10に接続されており、そのEGR通路23の途中の下流端寄りには、開度調節可能な負圧作動式の排気還流量調節弁(以下EGR弁という)24が配置されていて、排気通路20の排気の一部をEGR弁24により流量調節しながら吸気通路10に還流させるようになっている。
【0047】前記EGR弁24は、図3に示すように、弁箱を仕切るダイヤフラム24aに弁棒24bが固定され、この弁棒24bの両端にEGR通路23の開度をリニアに調節する弁本体24cとリフトセンサ26とが設けられたものである。前記弁本体24cはスプリング24dによって閉方向(図の下方)に付勢されている一方、弁箱の負圧室(ダイヤフラム24aよりも上側の室)には負圧通路27が接続されている。この負圧通路27は、負圧制御用の電磁弁28を介してバキュームポンプ(負圧源)29に接続されており、電磁弁28が後述のECU35からの制御信号によって負圧通路27を連通・遮断することによって、負圧室のEGR弁駆動負圧が調節され、そのことによって、弁本体24cによりEGR通路23の開度がリニアに調節されるようになっている。
【0048】つまり、図4(a)に示すように、電流が大きくなるに従ってEGR弁駆動負圧が大きく(圧力が低く)なり、そのEGR弁駆動負圧に比例して、同図(b)に示すようにEGR弁本体24cのリフト量が変化する。但し、EGR弁本体24cのリフト量の変化にはヒステリシスが見られる。
・・・(中略)・・・
【0050】前記各インジェクタ5、高圧供給ポンプ8、吸気絞り弁14、EGR弁24、ターボ過給機25のフラップ21b,21b,…等はコントロールユニット(Electronic Contorol Unit:以下ECUという)35からの制御信号によって作動するように構成されている。一方、このECU35には、前記圧力センサ6aからの出力信号と、クランク角センサ9からの出力信号と、エアフローセンサ11からの出力信号と、EGR弁24のリフトセンサ26からの出力信号と、車両の運転者による図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ32からの出力信号と、図示しないが、エンジン1の冷却水温を検出する水温センサからの出力信号とが少なくとも入力されている。」(段落【0040】ないし【0050】)

(イ)「【0051】(制御システムの全体構成)前記ECU35におけるエンジン制御の基本的な処理の概要は図5のブロック図に示されており、基本的にアクセル開度に基づいて基本となる燃料噴射量を決定するとともに、EGR弁24の作動によりEGR率を調節して、各気筒の空燃比(還流状態量)を均一かつ高精度に制御するようにしている。また、高圧供給ポンプ8の作動によるコモンレール圧力の制御と、吸気絞り弁14の作動制御と、ターボ過給機25のフラップ21b,21b,…の作動制御(VGT制御)とが行われている。
【0052】前記EGR率は全排気量中の還流される排気量(EGR量)の割合をいう。すなわち、 EGR率=EGR量/全排気量ここで、EGR通路23から吸気通路10に還流される排気の各気筒2への分配性はそれぞれ異なり、加えて各気筒毎の空気吸入特性自体にもばらつきがあるので、EGR通路23におけるEGR弁24の開度を同じにしても、各気筒2におけるEGR率及び吸入空気量偏差にはばらつきを生じ、EGR率の高い気筒ではその吸入空気量が少なく、EGR率の低い気筒ではその吸入空気量が多くなる。そこで、基本的には全気筒2に共通の目標空燃比を定め、各気筒毎に吸入空気量を検出して、この吸入空気量に応じて前記目標空燃比となるように気筒毎に排気還流量を制御するようにしている。つまり、各気筒2の吸入空気量に対するEGR量の割合の均一化を図るのではなく、所定の空燃比を目標として気筒毎に排気還流量を制御しており、このことで、各気筒2の空燃比を均一かつ高精度に制御することができる。
【0053】具体的に、前記ECU35には、アクセル開度Acc及びエンジン回転数Neの変化に対して、目標トルクtrqsolの最適値を実験的に決定して記録した二次元マップ36と、エンジン回転数Ne、目標トルクtrqsol及び新気量(吸入空気量のことであり燃料を含まない。以下、同じ。)FAirの変化に対して、目標燃料噴射量Fsolの最適値を実験的に決定して記録した目標燃料噴射量マップとしての三次元マップ37と、エンジン回転数Neと目標トルクtrqsolの変化に対して、目標空燃比A/Fsolの最適値を実験的に決定して記録した目標空燃比マップとしての二次元マップ38とがそれぞれメモリ上に電子的に格納されている。
【0054】前記目標空燃比A/FsolがNOxの低減とスモークの低減とを両立させるように排気の還流量を決定するための制御目標値となるものである。すなわち、図6にディーゼルエンジンの空燃比と排気中のNOx量との関係を例示するように、空燃比が上昇するとNOx量が増大する傾向があるので、排気還流量を多くして空燃比を下げれば、NOxの発生を少なくすることができる。」(段落【0051】ないし【0054】)

(ウ)「【0057】排気還流制御
一方、前記目標トルク演算部41において求められた目標トルクtrqsolとエンジン回転数Neとを用いて、目標空燃比演算部43においてメモリ上の二次元マップ38を参照して、前記のNOx及びスモークの両立を図るための目標空燃比A/Fsolを決定する。このように、予め設定されたマップ38を参照して目標空燃比A/Fsolを決定することで、制御の精度及び応答性が高められる。そして、この目標空燃比A/Fsolと前記目標噴射量演算部42において求められた目標噴射量Fsolとを用いて、目標新気量演算部44において目標新気量FAsolを算出し(FAsol=Fsol×A/Fsol)、この目標新気量FAsolを目標として、新気量制御部45において新気量制御を行う。この新気量制御は新気供給量自体を直接調節するのではなく、排気の還流量を調節することによって新気量を変化させるものである。すなわち、新気の補正量を決定するのではなく、目標とする新気量FAsolに基づいてEGR弁24の操作量EGRsolを決定し、その操作量EGRsolに対応するようにEGR弁の開度を制御する。前記目標空燃比演算部43、目標新気量演算部44及び新気量制御部45が排気還流制御手段35dに対応している。」(段落【0057】)

(エ)「【0062】(排気還流制御及び燃料噴射量制御の全体の流れ)次に、前記ECU35による排気還流及び燃料噴射量制御の全体的な流れを図8に基づいて説明する。この制御はメモリ上に電子的に格納された制御プログラムに従い、エンジン1の回転に同期して実行される。
【0063】まず、同図のステップS1?S3に示すように、エアフローセンサ11によって検出される吸入空気量及びクランク角センサ9によって検出されるクランク角度(°CA)に基づいて、気筒毎に吸入空気量FAirが求められる。また、クランク角センサ9からの出力によって求められるエンジン回転数Ne、アクセル開度センサ32によって検出されるアクセル開度Acc及び前記吸入空気量FAirに基づいて、目標燃料噴射量Fsolが求められる(ステップS4?S6)。
【0064】続いて、アクセル開度Acc、エンジン回転数Ne等に基づいてエンジン1が低負荷ないし中負荷の定常運転状態にあるか、或いは加速運転状態にあるかの過渡判定が行なわれ(ステップS7)、定常運転時には基本目標空燃比が設定され、それに基づいて目標吸入空気量が求められて、EGR弁基本制御が行なわれ、さらに、この基本制御が気筒毎の吸入空気量FAirに基づく気筒毎のEGR弁制御によって補正される(ステップS8?S11)。一方、加速運転時には加速時の目標空燃比が設定され、加速時のEGR弁制御及び噴射量制御が行なわれる(ステップS12?S14)。」(段落【0062】ないし【0064】)

(オ)「【0069】(過渡判定)図11に過渡判定(図8のステップS4?S7)の具体的な制御手順を示す。この過渡判定は加速判定であり、アクセル開度の変化による判定と、燃料噴射量の変化による判定とを行う。すなわち、エンジン1が定常運転状態から加速運転状態に移行したときには、燃料噴射量の増量に応じて吸入空気量を増やす必要があるので、EGR弁24を速やかに閉じる側に作動させて、排気の還流量を減らすようにしており、そのようなEGR弁24の制御を実行するための過渡判定である。尚、車両の減速時には、一部の運転領域を除いて燃料噴射を中断し(フューエルカット)、そのときには、EGR弁24の開度は零として、排気還流を行わないようにしている。
【0070】具体的に、まずアクセル開度Accの変化に基づく判定手順として、アクセル開度Accとエンジン回転数Neと吸入空気量Qavとを用いて、図5の三次元マップ37より燃料噴射量F(=目標噴射量Fsol)を読み込むとともに、アクセル開度の今回値Accと前回値Acc′とに基づいてその変化量ΔAcc=Acc-Acc′を求める(ステップB1?B3)。一方、燃料噴射量Fとエンジン回転数Neとを用いて二次元マップから加速判定基準αccを読み込む(ステップB4)。
【0071】この加速判定基準αccは、前記アクセル開度変化量ΔAccに基づいて加速判定をするためのものであり、例えばエンジン回転数Neが高いほど大きくなって加速と判定され難くなる一方、燃料噴射量Fが多いほど小さくなって加速と判定され易くなるというように燃料噴射量F及びエンジン回転数Neに対応づけて設定されていて、その設定されたマップがメモリ上に電子的に格納されている。また、低負荷運転時はもともと排気還流量が多いので、アクセル開度の増大変化(燃料噴射量の増量)が大きいときには速やかに排気還流量を低減しなくてはならない。そこで、前記αccは燃料噴射量が多いほど小さくなるように設定されている。
【0072】そして、加速係数α=ΔAcc/αccが1よりも大のときにエンジン1が加速運転状態にあると判定し、加速係数αと別途、求めた目標空燃比TA/F(=A/Fsol)とに基づいて、過渡時のEGR弁操作量KTegr(=EGRsol)をマップから読み込む(ステップB5?B7)。すなわち、アクセル開度の増大変化が大きいほど排気の還流量を速やかに減らす必要があるので、そのために、前記のEGR弁操作量KTegrのマップは、加速係数αが大きくなるほどEGR弁24の開度が小さくなるようにその操作量が実験的に求められて設定され、メモリ上に電子的に格納されている。
【0073】続いて、燃料噴射量の変化に基づく加速判定を行う。前記アクセル開度に基づく加速判定の場合は、その判定に基づいて言わば見込みでEGR弁操作量を決定するのであるが、次の燃料噴射量に基づく加速判定の場合は、実際の加速要求を燃料噴射量に基づいてチェックし、その加速要求に見合った制御を行なうようにしている。
【0074】すなわち、燃料噴射量の今回値Fと前回値F′とに基づいてその変化率ΔF=F/F′を求め、燃料噴射量Fとエンジン回転数Neとを用いて二次元マップから加速判定基準Fkを読み込む(ステップB8,B9)。このFkも前記αccと同様に設定されてメモリ上に電子的に格納されている。そして、噴射量変化係数β=ΔF/Fkが1よりも大のときに加速運転状態と判定して、加速時の制御に進む一方、小のときには定常運転状態と判定して、定常時の制御に進む(ステップB10,B11)。」(段落【0069】ないし【0074】)

(カ)「【0081】(加速係数αに基づく加速判定時の制御)一方、前記図11のステップB6において加速判定がなされたときには、ステップB7で求められる過渡時の目標EGR弁操作量KTegrは、加速係数α及びTA/Fの大きさに応じて異なり、加速係数αが所定以上に大きいときにはEGR弁24の開度は零とされる。すなわち、運転者の加速要求が大きい場合には、排気の還流が行なわれなくなり、各気筒2の吸入空気量が最大限に大きくなるので、スモーク量の増大を抑えつつ、燃料噴射量を増量してエンジン出力を高めることができるようになる。
【0082】また、その場合には、EGR弁24に対しプリセットを与える制御を行ない、エンジン1が前記加速運転状態から再び定常運転状態に移行するときに、排気還流制御に速やかに移行できるようにする。すなわち、EGR弁24によりEGR通路23を閉じたとき、弁本体24cがスプリング24dによって弁座に押圧される力ができるだけ小さくなるような、ひいては押圧力が零となるような所定のEGR弁駆動負圧(プリセット負圧)を負圧室に作用させて、スプリング24dによる閉方向の押圧力とEGR弁駆動負圧とを釣り合わせるようにしている。このプリセット負圧は、図4(b)に示すように、EGR弁24を閉方向に制御しEGR弁リフト量が零に到達した時点のEGR弁駆動負圧である。
【0083】具体的に、EGR弁24にプリセット負圧を与えるための制御フローは、図13に示すようになる。すなわち、まず、EGR弁操作量Tegrが、EGR弁24のリフト量が零となる操作量であるときは、リフトセンサ26の値EGRVliFtを読み込む(ステップD1,D2)。そして、この値EGRVliFtがリフト量零に対応する値EGRV0よりも大きいときには、その値EGRV0と等しくなるまでEGR弁制御を行なって(ステップD3,D4)、前記EGR弁駆動負圧をプリセット負圧EGRV0になるまで低下させる。
【0084】一方、前記ステップD1において、EGR弁操作量Tegrが前記のリフト量零に対応する操作量でないときには、前記ステップD2,D3の手順は行わずに、通常のEGR弁制御を実行して(ステップD1→D4)、しかる後にリターンする。
【0085】(噴射量変化係数βに基づく加速判定時の制御)また、図11のステップB11において加速判定がなされたときには、図14の各ステップに示すように、まず、噴射量変化係数β、燃料噴射量F及びエンジン回転数Neを用いて、これらの変化における最適な過渡時目標空燃比KTA/F(=A/Fsol)を記録した三次元マップからKTA/Fを読み込む(ステップG1)。この過渡時目標空燃比KTA/Fは、排気の還流量を低下させてスモークの生成を抑えながら速やかにエンジン出力を高めることができるように、定常時の目標空燃比TA/Fよりもリーン側に設定されている。前記三次元マップは、図示しないが、燃料噴射量Fが少ないほど、また噴射量変化係数βが大きいほど、さらにはエンジン回転数Neが低いほどそれぞれリーン側になるように、それぞれの値の変化に対する最適なKTA/Fの値を実験的に求めて記録したものであり、メモリ上に電子的に格納されている。
【0086】続いて、前記の過渡時目標空燃比KTA/Fと燃料噴射量Fとに基づいて、過渡時の目標吸入空気量TQ(=FAsol)を算出する(ステップG2)。そして、このTQに基づいて先の定常運転時と同様にEGR弁操作量を決定し、排気の還流量を速やかに減らして、吸入空気量を増大させるようにしている(以下のステップG5に続く図12のステップC4?C6,図13のステップD1?D4)。」(段落【0081】ないし【0086】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(カ)及び図面の記載からみて、次のことが分かる。

(キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、刊行物には、エンジンのEGR弁の開度を制御する方法が記載されているといえ、そのためのステップが記載されていることが分かる。

(ク)上記(ア)の「電磁弁28が後述のECU35からの制御信号によって負圧通路27を連通・遮断することによって、負圧室のEGR弁駆動負圧が調節され、そのことによって、弁本体24cによりEGR通路23の開度がリニアに調節される」(段落【0047】)との記載及び図面によれば、ECUにおいて制御信号を生成し、該制御信号をEGR弁に送ることで、EGR弁を制御していることが分かる。

(ケ)上記(ア)ないし(カ)並びに上記(キ)及び(ク)によれば、エンジンのEGR弁の開度を制御する方法は、エンジンの燃料噴射量の変化による加速運転状態に基づいてEGR弁の操作量を調節して、制御信号を生成するステップを含んでいるといえる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

「エンジンの燃料噴射量の変化による加速運転状態に基づいてEGR弁の操作量を調節して、制御信号を生成し、
前記制御信号を前記EGR弁に送る、
ステップを含むEGR弁の開度を制御する方法。」

4.対比・判断
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、その構造または技術的意義からみて、刊行物に記載された発明における「エンジン」は、本願発明における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「EGR弁」は「排気ガス再循環弁」に、「燃料噴射量の変化による加速運転状態に」は「現在の過渡速度状態及び現在の過渡負荷状態の少なくとも1つ」に、「制御信号」は「弁作動部位置信号」に、「EGR弁の開度を制御する方法」は「方法」に、それぞれ相当する。
また、刊行物に記載された発明における「EGR弁の操作量を調節」は、本願発明における「ベース位置を調節」に、「排気ガス再循環弁の位置を調節」という限りにおいて相当する。

したがって、本願発明と刊行物に記載された発明とは、
「内燃機関の現在の過渡速度状態及び現在の過渡負荷状態の少なくとも1つに基づいて排気ガス再循環弁の位置を調節して、弁作動部位置信号を生成し、前記弁作動部位置信号を前記排気ガス再循環弁に送る、ステップを含む方法。」
である点で一致し、次の2点で相違する。

[相違点1]
排気ガス再循環弁の位置調節に関し、本願発明は、「内燃機関の排気ガス再循環弁のベース位置を求め」、前記内燃機関の現在の過渡速度状態及び現在の過渡負荷状態の少なくとも1つに基づいて前記「ベース位置を調節」するのに対し、刊行物に記載された発明では、本願発明における排気ガス再循環弁に相当するEGR弁のベース位置を求めるかどうか明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
本願発明は、「内燃機関の吸気部の圧力のために弁作動部位置信号を調節」するのに対し、刊行物に記載された発明は、そのような発明特定事項を備えていない点(以下、「相違点2」という。)。

上記各相違点について検討する。
[相違点1について]
排気ガス再循環弁の位置を制御する方法において、排気ガス再循環弁のベース位置を求め、該ベース位置を調節して前記排気ガス再循環弁を制御する信号を生成することは、本願の優先日前に周知の技術(例えば、特開2001-295702号公報の段落【0030】及び【0031】並びに特開平11-44261号公報の段落【0035】及び【0045】参照。以下、「周知技術1」という。)である。
そうすると、刊行物に記載された発明において、周知技術1を採用し、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように、「排気ガス再循環弁のベース位置を求め」、前記内燃機関の現在の過渡速度状態及び現在の過渡負荷状態の少なくとも1つに基づいて前記「ベース位置を調節」することは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
排気ガス再循環弁の位置を制御する方法において、内燃機関の吸気部の圧力のために排気ガス再循環弁を調節することは、本願の優先日前に周知の技術(例えば、特開平9-217658号公報の段落【0015】ないし【0020】及び特開2000-110628号公報の段落【0038】ないし【0040】参照。以下、「周知技術2」という。)であるので、刊行物に記載された発明において、周知技術2を採用し、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように、「内燃機関の吸気部の圧力のために弁作動部位置信号を調節」することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2から当業者が容易に予測し得るものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-11 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-03 
出願番号 特願2006-507170(P2006-507170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 安井 寿儀
柳田 利夫
発明の名称 弁作動部の位置を判断するための方法及び装置  
代理人 須田 洋之  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 平野 誠  

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