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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1248908
審判番号 不服2010-5354  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-10 
確定日 2011-12-14 
事件の表示 特願2004-507300号「ナノ粒子充填アンダーフィル」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 4日国際公開、WO03/101164、平成17年 9月 8日国内公表、特表2005-527113号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願の発明
本願は、2003(平成15)年5月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2002(平成14)年5月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項に係る発明は、平成18年5月12日付け手続補正書にて補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
基板に電気的に接着されて基板との間にアンダーフィル接着剤を有する電子部品を含み、前記アンダーフィル接着剤が、ポリエポキシド樹脂と、硬化触媒と、球形の非凝集、非晶質かつ固体である表面処理ナノ粒子との混合物を含む硬化性アンダーフィル接着用組成物の反応生成物を含む、電子アセンブリ。」(以下「本願発明」という。)

2.引用例の記載事項と引用発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日より前に頒布された刊行物である、国際公開第01/46320号パンフレット(以下「第1引用例」という)には、次の(a)?(d)の事項が記載されている。なお、原文の後の括弧{}内は当審での訳文である(第1引用例のファミリー文献である特表2003-518187号公報参照)。
(a)「Anhydride curing agents, suitable for use with epoxy functional liquid oligomers, may contain one or more anhydride functional groups. Curing agents may be selected from phthalic anhydride, substituted phthalic anhydrides, hydrophthalic anhydrides, substituted hydrophthalic anhydrides, succinic anhydride, substituted succinic anhydrides, halogenated anhydrides, multifunctional carboxylic acids, and polycarboxylic acids. Preferred anhydride curing agents include phthalic anhydride, dodecenyl succinic anhydride, tetrahydrophthalic anhydride, nadic methyl anhydride, hexahydrophthalic anhydride, pyromellitic dianhydride, and methyltetrahydrophthalic anhydride, and the like. In addition, polysebacic polyanhydride (PSPA), polyazelaic polyanhydride (PAPA), 5- (2, 5-dioxotetrahydrofuryl)-3-methyl-3-cyclohexene-1, 2dicarboxylic anhydride, trimellitic anhydride, maleinized polybutadiene, polyoctadecene maleic anhydride copolymer also provide adequate curing. Addition of a curing catalyst or accelerator increases the rate of thermal cure by anhydride curing agents. Suitable curing accelerators include substituted imidazoles, and zinc catalysts such as zinc 2-ethylhexanoate and zinc stearate.」(第12頁第9?23行)
{「【0039】
エポキシ官能性液体オリゴマーと使用するのに適した無水物硬化剤は、1つ以上の無水物官能基を含有してもよい。硬化剤は、フタル酸無水物、置換フタル酸無水物、ヒドロフタル酸無水物、置換ヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、置換コハク酸無水物、ハロゲン化無水物、多官能性カルボン酸、及びポリカルボン酸から選択されてもよい。好ましい無水物硬化剤には、フタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルナド酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ピロメリト酸二無水物、及びメチルテトラヒドロフタル酸無水物などがある。更に、ポリセバシン酸ポリアンヒドリド(PSPA)、ポリアゼライン酸ポリアンヒドリド(PAPA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、トリメリト酸無水物、マレイン化ポリブタジエン、ポリオクタデセンマレイン酸無水物コポリマーもまた十分な硬化を提供する。硬化触媒または促進剤の添加が、無水物硬化剤による熱硬化の速度を増大させる。適した硬化促進剤には、置換イミダゾール、及び亜鉛2-エチルヘキサノエート、及びステアリン酸亜鉛などの亜鉛触媒などがある。」}
(b)「Example 18 contains 23. 17% nano-silica particle. This particular particle was made by treating amorphous silica sol surface with octyltriethoxysilane. The tensile strength of example 18 is higher than unfilled version. 」(第22頁第16?19行)
{「 【0087】
・・・実施例18は、23.17%のナノシリカ粒子を含有する。この特定の粒子は、非晶質シリカゾルの表面をオクチルトリエトキシシランで処理することによって作製された。実施例18の引張強度は充填剤無しの変型より大きい。」}
(c)「1. A thermomechanical-shock-resistant cured composition for solventless, hydrophobic resin encapsulation of electronic components, said composition comprising :
a non-silicone oligomer including a flexible hydrocarbon backbone comprisng from 20 to 700 carbon atoms having reactive functionality selected from epoxy groups, (meth) acrylate groups, carboxyl groups, hydroxyl groups, isocyanate groups, amine groups, allyl groups, phenolic groups, vinyl groups, vinyl ether groups, anhydride groups, alkyd groups, cyanate ester groups, silyl groups, and mercapto groups ;
up to 40% by weight of an adhesion promoter selected from the group consisting of organofunctional silane coupling agents, alkoxy silane modified polyenes, alkoxy silane modified polyols and alkoxy silane modified polyanhydrides, and
optionally, a viscosity-modifying component, wherein said cured composition has a glass transition temperature below 0 C. 」(第27頁第2?16行)
{「【請求項1】 電子部品の無溶剤の疎水性樹脂封入のための熱機械衝撃抵抗性硬化組成物であって、
エポキシ基、(メタ)アクリレート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミン基、アリル基、フェノール基、ビニル基、ビニルエーテル基、無水物基、アルキド基、シアネートエステル基、シリル基、及びメルカプト基から選択された反応性官能基を有し20?700個の炭素原子を含む柔軟炭化水素主鎖を有する非シリコーンオリゴマーと、
有機機能性シランカップリング剤、アルコキシシラン改質ポリエン、アルコキシシラン改質ポリオール及びアルコキシシラン改質ポリアンヒドリドからなる群から選択された定着剤40重量%までと、
任意に、粘度調整成分と、を含み、0℃より低いガラス転移温度を有する、熱機械衝撃抵抗性硬化組成物。」}
(d)「5. A thermomechanical-shock-resistant cured composition according to claim 1 or claim 2 further comprising at least one filler selected from the group consisting of clay, silane treated nanoparticle silicas having diameters of from 4 to 75 nm, fumed silica, fused silica, mineral quartz powder, fused quartz, aluminum oxide, glass powder, mica, kaolin, dolomite, graphite, soot, carbon fibers and textile fibers.」(第27頁第28行?第28頁第3行)
{「【請求項5】 粘土、4?75nmの直径を有するシラン処理ナノ粒子シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、鉱物石英粉末、溶融石英、酸化アルミニウム、ガラス粉末、マイカ、カオリン、ドロマイト、黒鉛、煤、炭素繊維及び紡織繊維からなる群から選択された少なくとも1つの充填剤を更に含む、請求項1または請求項2に記載の、熱機械衝撃抵抗性硬化組成物。」}

【第1引用例に記載されている発明】
上記(a)?(d)の記載事項からみて、上記第1引用例には、
「電子部品の無溶剤の疎水性樹脂封入のための熱機械衝撃抵抗性硬化組成物であって、
エポキシ基の反応性官能基を有し20?700個の炭素原子を含む柔軟炭化水素主鎖を有する非シリコーンオリゴマーと、
有機機能性シランカップリング剤、アルコキシシラン改質ポリエン、アルコキシシラン改質ポリオール及びアルコキシシラン改質ポリアンヒドリドからなる群から選択された定着剤40重量%までと、
粘度調整成分と、
硬化触媒と、
非晶質シリカゾルの表面をオクチルトリエトキシシランで処理することによって作製された、4?75nmの直径を有するシラン処理ナノ粒子シリカとを含み、0℃より低いガラス転移温度を有する、熱機械衝撃抵抗性硬化組成物。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)同じく原査定における拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日より前に頒布された刊行物である、特開2002-37620号公報(以下「第2引用例」という)には、次の(e)及び(f)の事項が記載されている。
(e)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真球状シリカ粒子集合体、その製造方法およびそれを用いた樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、非合着・非凝集性真球状シリカ粒子からなり、粒径の分布幅が広く、半導体封止材用シリカフィラー、特にフリップチップ用アンダーフィル材料に適したシリカフィラーなどとして好適な真球状シリカ粒子集合体、このものを、粒度分布の分散度(CV値)が制御可能に効率よく製造する方法、および上記真球状シリカ粒子集合体を含み、半導体封止材用などとして用いられる樹脂組成物に関するものである。」(第2頁第2欄第12?23行)

(f)「【0007】また、封止材の低熱膨張及び高熱伝導化を図るために、フィラーの高充填が望まれており、そのためには、粒径の小さなフィラー(サブミクロンから数ミクロンレベル)が必要となる。さらに、フィラーの形状としては、局所応力の問題や、高充填時の溶融粘度上昇による低圧トランスファー成形時における金線の変形、切断の問題などから、真球状のフィラーが好ましい。」(第3頁第3欄第5?11行)

3.発明の対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明でいう、電子部品の「樹脂封入」のための硬化組成物と、本願発明でいう、電子部品と基板との間の「アンダーフィル接着剤」とは、いずれも電子部品の樹脂封止材料の使用の一態様であって、引用発明でいう「エポキシ基の反応性官能基」を有するオリゴマーを含んで形成される組成物は、「ポリエポキシド樹脂」といえるし、引用発明の「非晶質シリカゾルの表面をオクチルトリエトキシシランで処理することによって作製された、4?75nmの直径を有するシラン処理ナノ粒子シリカ」は、本願発明でいう「非晶質かつ固体である表面処理ナノ粒子」に相当するから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりと認められる。
[一致点]
「ポリエポキシド樹脂と、硬化触媒と、非晶質かつ固体である表面処理ナノ粒子との混合物を含む組成物の反応生成物からなる、電子部品の樹脂封止材料に係る発明」である点。
[相違点1] 本願発明は、電子部品の樹脂封止材料を、基板と電子部品との間の「アンダーフィル接着剤」とする「電子アセンブリ」であるのに対し、引用発明は電子部品の「樹脂封入」のための組成物とするにとどまり、アンダーフィル接着剤とする態様や、基板を含む電子アセンブリとすることについては言及がない点。
[相違点2] 本願発明の表面処理ナノ粒子が「球形の非凝集」とされるのに対し、引用発明ではそれについての言及がない点。

4.当審の判断
(1)上記の相違点1について検討する。
第2引用例の記載事項(e)にも示されているように、電子部品の樹脂封止材料に係る技術分野では、アンダーフィル接着剤(アンダーフィル材料)としての使用の態様も周知のものであって、引用発明の「樹脂封入」のための組成物を、アンダーフィル接着剤として、基板を含む電子アセンブリを構成するのは、当業者にとって格別想到し難いこととはいえない(なお、特開2001-302758号公報の【0042】?【0047】、特開2001-77246号公報の【0008】参照)。
(2)上記の相違点2について検討する。
上記第2引用例記載事項(e)の、「非合着・非凝集性真球状シリカ粒子からなり、粒径の分布幅が広く、半導体封止材用シリカフィラー、特にフリップチップ用アンダーフィル材料に適したシリカフィラー」とする記載、同じく(f)の、「フィラーの形状としては、局所応力の問題や、高充填時の溶融粘度上昇による低圧トランスファー成形時における金線の変形、切断の問題などから、真球状のフィラーが好ましい。」とする記載は、表面処理ナノ粒子として「球形の非凝集」のものが好適であることを示唆したものといえ、上記相違点2で指摘されている本願発明と同様の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(3)更に、上記の相違点1及び2で指摘されている二つの構成を併せ備える本願発明の効果について検討しても、引用発明及び上記各引用例の記載事項から想定されるところを超えるものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記各引用例に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項の発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-14 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-03 
出願番号 特願2004-507300(P2004-507300)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
田口 傑
発明の名称 ナノ粒子充填アンダーフィル  
代理人 古賀 哲次  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  
代理人 青木 篤  
代理人 小林 良博  

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