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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1248927
審判番号 不服2010-18014  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-10 
確定日 2011-12-15 
事件の表示 特願2000- 33170「プリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月17日出願公開、特開2001-223467〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件出願は、平成12年2月10日を出願日とする出願であって、平成21年11月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成22年1月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成22年8月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けの手続補正書によって明細書を補正する手続補正がなされ、その後、当審における平成23年6月13日付けの書面による審尋がなされ、これに対して平成23年8月19日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成22年8月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年8月10日付けの手続補正を却下する。

1.本件補正の内容
平成22年8月10日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関してみれば、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年1月22日付けの手続補正書により補正された)下記(1)に示す請求項1を、下記(2)に示す請求項1へと補正するものである。

(1)本件補正前の請求項1
「【請求項1】 少なくとも以下(a)?(g)の工程を備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法:
(a)コア材の両面に、樹脂絶縁層を積層し、コア基板を形成する工程;
(b)前記コア基板に、レーザにより貫通孔を形成する工程;
(c)前記コア基板に、粗化面を形成する工程;
(d)前記貫通孔内面および前記コア基板全表面に、金属膜を形成する工程;
(e)前記金属膜の全表面上に電解めっき膜を形成する工程;
(f)前記全表面上に電解めっき膜が形成されたコア基板の両面に感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して、露光・現像処理し、レジストのパターンを形成する工程;
(g)前記レジストパターン形成により露出した電解めっき膜とその下の金属膜を溶解除去し、前記レジストを剥離除去し、金属膜および電解めっき膜からなる導体回路およびスルーホールを形成する工程。」

(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】 少なくとも以下(a)?(l)の工程を備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法:
(a)コア材の両面に、樹脂絶縁層を積層し、コア基板を形成する工程;
(b)前記コア基板に、レーザにより貫通孔を形成する工程;
(c)前記コア基板に、粗化面を形成する工程;
(d)前記貫通孔内面および前記コア基板全表面に、金属膜を形成する工程;
(e)前記金属膜の全表面上に電解めっき膜を形成する工程;
(f)前記全表面上に電解めっき膜が形成されたコア基板の両面に感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して、露光・現像処理し、レジストのパターンを形成する工程;
(g)前記レジストパターン形成により露出した電解めっき膜とその下の金属膜を溶解除去し、前記レジストを剥離除去し、金属膜および電解めっき膜からなる導体回路およびスルーホールを形成する工程;
(h)前記スルーホールに樹脂を充填する工程;
(i)前記工程を経た基板両面にシクロオレフィン系樹脂からなる層間絶縁層を形成する工程;
(j)前記層間絶縁層にバイアホールを形成する工程;
(k)前記工程を経た基板両面にソルダーレジスト層を形成する工程;
(l)前記ソルダーレジスト層に開口を設け、前記開口に半田バンプを形成する工程。」

(なお、下線は補正箇所を示す。)

2.本件補正の適否についての判断

2.-1 本件補正の目的
(1)請求項1に関する補正事項について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に「(h)前記スルーホールに樹脂を充填する工程;
(i)前記工程を経た基板両面にシクロオレフィン系樹脂からなる層間絶縁層を形成する工程;
(j)前記層間絶縁層にバイアホールを形成する工程;
(k)前記工程を経た基板両面にソルダーレジスト層を形成する工程;
(l)前記ソルダーレジスト層に開口を設け、前記開口に半田バンプを形成する工程。」を追加することを含むものである。
しかしながら、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1のいずれの発明特定事項をも限定するものとはいえず、特許請求の範囲の限定的減縮に該当しない。
そして、本件補正は、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正のいずれかを目的とするものでもないことは自明である。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

2.-2 独立特許要件
本件補正が、仮に、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(1)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-87865号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、例えば、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として積み上げ方式やラミネート方式で製造されるプリント配線板とその製造方法に関するものである。」(段落【0001】)

(イ)「【0010】・・・(前略)・・・従来公知のセミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法等により配線層を形成することができるので、例えば配線層の幅や間隔が100μm以下、特に60μm以下といった、より微細かつ正確な配線層を形成できる。」(段落【0010】)

(ウ)「【0013】ここでいう耐熱性樹脂からなる絶縁基板(コア基板)としては、公知の材質、構造を有するものが制限なく使用される。代表的なものを挙げると、ガラス基材?BT(ビスマレイミド-トリアジン)レジン樹脂基板、ガラス基材?エポキシ樹脂基板、ガラス基材?ポリイミド樹脂基板、紙基材?フェノール樹脂基板、紙基材?エポキシ樹脂基板、紙基材?テフロン基板、コンポジット樹脂基板や、鉄、アルミニウム、銅などを金属芯にして、ポリイミド、エポキシ、テフロン等の絶縁層を形成した金属芯基板、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等のフレキシブル基板、あるいはアルミナ、窒化アルミニウム、ガラスセラミック等のセラミック基板等が挙げられるが、これらの材質に限定されるものではない。もちろん、これらの基板は単層基板に限らず、多層基板であってもよい。該耐熱性絶縁基板に貫通穴が必要ならば、ドリル、レーザ、プラズマ等の既存の穴あけ技術が利用できる。」(段落【0013】)

(エ)「【0033】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面とともに説明する。
(実施形態1)図2(b)は本発明の実施形態1に係るプリント配線板100の断面図である。この配線基板100は、BT(ビスマレイミド-トリアジン)樹脂-ガラス複合材からなる絶縁基板1の上下面に厚み25μmの易粗化性のエポキシ絶縁樹脂からなる被覆層2が形成されている。被覆層2および貫通穴3の内壁面には薄膜層7および電解銅めっき層8からなる配線層9、9が形成されている。この配線層9は薄膜層7と電解銅めっき層8とを併せて、厚みが18μmに形成されている。プリント基板100の上下面に形成された配線層9、9は貫通穴内の配線層(貫通穴内導体10)を介して互いに導通している。
【0034】次に、このプリント基板100の製造方法について、図1乃至図2を参照しつつ説明する。図1(a)に示すように、銅張り層を有しないBT(ビスマレイミド-トリアジン)樹脂?ガラス複合材からなる絶縁基板1の表面にロールコータを用いて易粗化性のエポキシ絶縁樹脂を厚み32μmで印刷した後、150℃で2時間キュアして、易粗化性樹脂の被覆層2を形成する。次に、図1(b)に示すように、ドリルを用いて貫通穴3を形成する。続いて、絶縁基板1上の被覆層2の表面をその厚みが25μmになるように研磨して整面した後、貫通穴3の内壁面を洗浄する。
【0035】続いて、被覆層2の表面を過マンガン酸カリウム溶液(45g/l)で粗化する。次に、Sn-Pdコロイド溶液(奥野製薬製;OPC-80)に浸漬してPd触媒核を吸着させる。ついで、図1(c)に示すように、無電解銅めっき(奥野製薬製;ビルドカッパー)により易粗化性樹脂からなる被覆層2と貫通穴3を含む絶縁基板1の表面全体に0.5?1.0μmの薄膜層4を形成する。
【0036】そして、図1(d)に示すように、ホットラミネータを用いて厚さ25μmの感光性ドライフィルムレジストDF1(日本合成化学製;NIT-225)を薄膜層4上にラミネートして、レジスト層5を形成する。ついで、フォトマスク6を介して上下面の配線層のパターンを露光し、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、図2(a)に示すように、配線用開口パターン7を形成する。
【0037】その後、配線用開口パターン7内の薄膜層4上のレジスト残さを酸性脱脂により除去し、露出した薄膜層4の表面を硫酸?過酸化水素系エッチング液(奥野製薬製;OPC-400)により活性化する。これにより薄膜層4と次述する電解銅めっき層8との密着性を向上できる。ついで、図2(b)に示すように、薄膜層4を通じて硫酸銅系の電解めっきを行い、露出した薄膜層4の上に電解銅めっき層8を形成する。
【0038】そして、図2(c)に示すように、残っためっきレジスト層5を剥離する。その後、過硫酸塩系エッチング剤(荏原コージライト製;PB-228)により、電解銅めっき層8から露出する薄膜層4、および電解銅めっき層8の表層近傍をソフトエッチングして除去して、図2(d)に示すように、電解銅めっき層8とその下方の薄膜層4からなる第1層目の配線層9、および貫通穴3内の配線層である貫通穴内導体10を形成する。」(段落【0033】ないし【0038】)

(オ)「【0045】上記において、本発明の実施形態1および2にかかるプリント配線板100および200のうち、本発明の特徴部分である第1層目について説明したが、各プリント配線板の第2層目以上について説明する。
(実施形態3)図5(a)に示すように、第1層目の配線層9および貫通穴内導体10の形成、接続を完了した図2(d)の貫通穴3に絶縁性樹脂を穴埋め印刷した後、150℃で2時間キュアして、充填層30を形成する。
【0046】その後、図5(b)に示すように、プリント配線板100の第1層目の配線層9、充填層30および粗化済みの被覆層2の表面にロールコータを用いてBT樹脂からなる絶縁樹脂を厚み60μmで塗布した後、150℃で2時間キュアして、BT樹脂の絶縁層21を形成する。絶縁層21は、BT樹脂からなるため、絶縁性に優れる反面、表面粗化が困難である。
【0047】続いて、図5(c)に示すように、粗化が容易でないBT樹脂の絶縁層21の表面に易粗化性のエポキシ絶縁樹脂を厚み32μmで印刷した後、150℃で2時間キュアして、易粗化性樹脂の表面被覆層22を形成する。そして、エキシマレーザを用いて、図6(a)に示すように留め穴ビア用の開口パターン23形成し、配線層4の一部を露出させる。
【0048】続いて、表面被覆層22および絶縁層21に形成した留め穴ビア用の開口パターン23の内壁面を過マンガン酸カリウム溶液(45g/l)で粗化する。次に、Sn-Pdコロイド溶液(奥野製薬製;OPC-80)に浸漬してPd触媒核を吸着させる。その後、無電解銅めっき(奥野製薬製;ビルドカッパー)により露出した配線層9の上面および留め穴ビア用の開口パターン23の内壁面に0.5?1.0μmの薄膜層24を形成した。そして、ホットラミネータを用いて厚さ25μmの図示しない感光性ドライフィルムレジストDF1(日本合成化学製;NIT-225)を無電解銅めっきの薄膜層24上にラミネートして、レジスト層を形成する。ついで、フォトマスクを介して上下面の配線層パターンを露光し、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、配線用開口パターンを形成する。次いで、薄膜層24を通じて硫酸銅系の電解めっきを行い、露出した薄膜層24の上に厚さ約22μmの電解銅めっき層28を形成する。そして、残っためっきレジスト層を剥離した後、過硫酸塩系エッチング剤(荏原コージライト製;PB-228)で露出した薄膜層24と電解銅めっき層28の表層近傍をソフトエッチングして除去して、図6(b)に示すように、第2層目の配線層29および留め穴めっき導体25の形成し、プリント配線板300を得る。」(段落【0045】ないし【0048】)

(2)上記(1)(ア)ないし(オ)及び図面の記載より分かること
(a)上記(エ)及び図1の記載より、絶縁基板1の両面に、エポキシ絶縁樹脂からなる被覆層2を積層し、積層体を形成していることが分かる。

(b)上記(ウ)及び(エ)並びに図1の記載より、貫通穴3はレーザによっても形成できることが分かる。

(c)上記(ア)ないし(オ)並びに図面の記載より、
絶縁基板1の両面に、エポキシ絶縁樹脂からなる被覆層2を積層する工程;
前記絶縁基板1の両面に被覆層2を積層したものに、貫通穴3を形成する工程;
前記積層したものに、粗化面を形成する工程;
前記貫通穴3内面および前記積層したものの全表面に、無電解銅めっきにより薄膜層4を形成する工程;
薄膜層4が形成された積層体の両面に感光性ドライフィルムレジストDF1をラミネートして、レジスト層5を形成し、フォトマスク6を介して、露光、現像処理し、配線用開口パターン7を形成する工程;
薄膜層4を通じて電解めっきを行い、露出した薄膜層4の上に電解銅めっき層8を形成する工程;
残ったレジスト層5を剥離除去し、薄膜層4および電解銅めっき層8からなる第1層目の配線層9及び貫通穴内導体10を形成する工程;
前記貫通穴内導体10に絶縁性樹脂を穴埋め印刷する工程;
前記工程を経た基板両面にBT樹脂からなるからなる絶縁層21を形成する工程;
前記絶縁層21に第2層目の配線層29および留め穴めっき導体25を形成する工程;
を少なくとも備えるプリント配線板の製造方法であることが分かる。

(3)刊行物に記載された発明
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「刊行物に記載された発明」という。)。

「 少なくとも以下の工程を備えるプリント配線板の製造方法:
絶縁基板1の両面に、エポキシ絶縁樹脂からなる被覆層2を積層し、積層体を形成する工程;
前記積層体に、レーザにより貫通穴3を形成する工程;
前記積層体に、粗化面を形成する工程;
前記貫通穴3内面および前記積層体全表面に、無電解銅めっきにより薄膜層4を形成する工程;
薄膜層4が形成された積層体の両面に感光性ドライフィルムレジストDF1をラミネートして、レジスト層5を形成し、フォトマスク6を介して、露光、現像処理し、配線用開口パターン7を形成する工程;
薄膜層4を通じて電解めっきを行い、露出した薄膜層4の上に電解銅めっき層8を形成する工程;
残ったレジスト層5を剥離除去し、薄膜層4および電解銅めっき層8からなる第1層目の配線層9及び貫通穴内導体10を形成する工程;
前記貫通穴内導体10に絶縁性樹脂を穴埋め印刷する工程;
前記工程を経た基板両面にBT樹脂からなるからなる絶縁層21を形成する工程;
前記絶縁層21に第2層目の配線層29および留め穴めっき導体25を形成する工程。」

(4)対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物に記載された発明における「絶縁基板1」、「エポキシ絶縁樹脂からなる被覆層2」、「積層体」、「貫通穴3」、「第1層目の配線層9」、「貫通穴内導体10」、「絶縁性樹脂」、「穴埋め印刷」及び「第2層目の配線層29および留め穴めっき導体25」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「コア材」、「樹脂絶縁層」、「コア基板」、「貫通孔」、「導体回路」、「スルーホール」、「樹脂」、「充填」及び「バイアホール」に、それぞれ相当する。
また、刊行物に記載された発明における「薄膜層4」は、無電解銅めっきにより形成されるものであるから、本件補正発明における「金属膜」に相当し、また、刊行物に記載された発明における「電解銅めっき層8」は、その機能又は技術的意義からみて、本件補正発明における「電解めっき膜」に相当する。
さらに、刊行物に記載された発明における「BT樹脂からなるからなる絶縁層21」は層間を絶縁する層であるから、「樹脂からなる層間絶縁層」という限りにおいて、本件補正発明における「シクロオレフィン系樹脂からなる層間絶縁層」に相当する。

してみると、本件補正発明と刊行物に記載された発明とは、
「 少なくとも以下の工程を備えるプリント配線板の製造方法:
コア材の両面に、樹脂絶縁層を積層し、コア基板を形成する工程;
前記コア基板に、レーザにより貫通孔を形成する工程;
前記コア基板に、粗化面を形成する工程;
前記貫通孔内面および前記コア基板全表面に、金属膜を形成する工程;
金属膜および電解めっき膜からなる導体回路及びスルーホールを形成する工程;
前記スルーホールに樹脂を充填する工程;
前記工程を経た基板両面に樹脂からなる層間絶縁層を形成する工程;
前記層間絶縁層にバイアホールを形成する工程。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
導体回路及びスルーホールの形成が、
本件補正発明においては、「前記貫通孔内面および前記コア基板全表面に、金属膜を形成する工程; 前記金属膜の全表面上に電解めっき膜を形成する工程; 前記全表面上に電解めっき膜が形成されたコア基板の両面に感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して、露光・現像処理し、レジストのパターンを形成する工程; 前記レジストパターン形成により露出した電解めっき膜とその下の金属膜を溶解除去し、前記レジストを剥離除去し、金属膜および電解めっき膜からなる導体回路およびスルーホールを形成する工程」であるのに対し、
刊行物に記載された発明においては、本件補正発明の「導体回路」及び「スルーホール」にそれぞれ相当する「第1層目の配線層」及び「貫通穴内導体10」の形成が、「前記貫通穴3内面および前記積層体全表面に、無電解銅めっきにより薄膜層4を形成する工程; 薄膜層4が形成された積層体の両面に感光性ドライフィルムレジストDF1をラミネートして、レジスト層5を形成し、フォトマスク6を介して、露光、現像処理し、配線用開口パターン7を形成する工程; 薄膜層4を通じて電解めっきを行い、露出した薄膜層4の上に電解銅めっき層8を形成する工程; 残ったレジスト層5を剥離除去し、薄膜層4および電解銅めっき層8からなる第1層目の配線層9及び貫通穴内導体10を形成する工程」である点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
スルーホールに樹脂を充填する工程の後、
本件補正発明においては、「基板両面にシクロオレフィン系樹脂からなる層間絶縁層を形成する工程; 前記層間絶縁層にバイアホールを形成する工程; 前記工程を経た基板両面にソルダーレジスト層を形成する工程; 前記ソルダーレジスト層に開口を設け、前記開口に半田バンプを形成する工程。」を有しているのに対し、
刊行物に記載された発明においては、「基板両面にBT樹脂からなるからなる絶縁層21を形成する工程; 前記絶縁層21に第2層目の配線層29および留め穴めっき導体25を形成する工程。」を有するものの、本件補正発明の層間絶縁層に相当する絶縁層21がシクロオリフィン系樹脂からなること、及び絶縁層21に本件補正発明のバイアホールに相当する第2層目の配線層29および留め穴めっき導体25を形成する工程を経た基板両面にソルダーレジスト層を形成する工程;前記ソルダーレジスト層に開口を設け、前記開口に半田バンプを形成する工程を有してことが明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

(5)判断
上記相違点について検討する。

<相違点1>について
上記2.-2(1)(イ)にあるように、刊行物には「従来公知のセミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法等により配線層を形成することができる」と記載されており、刊行物に記載された発明において、本件補正発明の「導体回路」及び「スルーホール」にそれぞれ相当する「第1層目の配線層」及び「貫通穴内導体10」の形成に、いずれの形成法による工程を採用するかは、当業者が必要に応じて適宜決定し得る事項である。さらに、配線基板の技術分野において、配線層を、「貫通孔内面および基板全表面に、金属膜を形成する工程、前記金属膜の全表面上に電解めっき膜を形成する工程、前記全表面上に電解めっき膜が形成された基板の両面にドライフィルムを貼り付け、露光・現像処理し、レジストのパターンを形成する工程、前記レジストパターン形成により露出した電解めっき膜とその下の金属膜を溶解除去し、前記レジストを剥離除去し、金属膜および電解めっき膜からなる導体回路およびスルーホールを形成する工程」により形成することも、本件出願前に広く一般に知られた周知の技術(例えば、特開昭63-110794号公報[特に、第2図]及び特開昭64-49299号公報[特に、第2図]等参照。以下、以下、「周知技術1」という。)であり、感光性ドライフィルムにフォトマスクフィルムを載置させることも慣用的に行われていることである(例えば、特開平7-321461号公報[特に、図4及び5]及び特開2000-22334号公報[平成12年1月21日出願公開。特に、段落【0065】]等参照。以下、「慣用技術」という。)。
したがって、刊行物に記載された発明において、本件補正発明の「導体回路」及び「スルーホール」にそれぞれ相当する「第1層目の配線層」及び「貫通穴内導体10」の形成として、「前記貫通穴3内面および前記積層体全表面に、無電解銅めっきにより薄膜層4を形成する工程; 薄膜層4が形成された積層体の両面に感光性ドライフィルムレジストDF1をラミネートして、レジスト層5を形成し、フォトマスク6を介して、露光、現像処理し、配線用開口パターン7を形成する工程; 薄膜層4を通じて電解めっきを行い、露出した薄膜層4の上に電解銅めっき層8を形成する工程; 残ったレジスト層5を剥離除去し、薄膜層4および電解銅めっき層8からなる第1層目の配線層9及び貫通穴内導体10を形成する工程」に代えて上記周知技術1及び慣用技術を採用し、本件補正発明の上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2>について
配線基板の技術分野において、スルーホールに樹脂を充填する工程の後に、「スルーホールに樹脂を充填する工程を経た基板両面に層間絶縁層を形成する工程;前記層間絶縁層にバイアホールを形成する工程;前記工程を経た基板両面にソルダーレジスト層を形成する工程;前記ソルダーレジスト層に開口を設け、前記開口に半田バンプを形成する工程。」を備えることは、本件出願前に周知の技術(例えば、特開2000-22339号公報[平成12年1月21日出願公開。特に、段落【0042】ないし【0062】及び特開平11-307932号公報[特に、段落【0027】ないし【0052】]等参照。以下、「周知技術2」という。)であり、また、シクロオレフィン系樹脂からなる層間絶縁層も本件出願前に周知(例えば、特開平8-259784号公報[特に、【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】並びに段落【0001】及び【0021】]等参照。以下、「周知技術3」という。)のものである。
したがって、刊行物に記載された発明において、本件補正発明におけるスルーホールに相当する貫通穴内導体10に絶縁性樹脂を充填する工程の後に、上記周知技術2及び3を適用して、本件補正発明の上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件補正発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3並びに慣用技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術1ないし3並びに慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


第3.本願発明について

1.手続の経緯及び本願発明
平成22年8月10日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、平成22年1月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.の1.(1)に記載したとおりのものである。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物(特開平11-87865号公報)には、前記第2.の2.-2のとおりのものが記載されている。

3.対比・判断
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物に記載された発明における「絶縁基板1」、「エポキシ絶縁樹脂からなる被覆層2」、「積層体」、「貫通穴3」、「第1層目の配線層9」及び「貫通穴内導体10」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「コア材」、「樹脂絶縁層」、「コア基板」、「貫通孔」、「導体回路」及び「スルーホール」に、それぞれ相当する。
また、刊行物に記載された発明における「薄膜層4」は、無電解銅めっきにより形成されるものであるから、本願発明における「金属膜」に相当し、また、刊行物に記載された発明における「電解銅めっき層8」は、その機能又は技術的意義からみて、本願発明における「電解めっき膜」に相当する。
してみると、本願発明と刊行物に記載された発明とは、
「 少なくとも以下の工程を備えるプリント配線板の製造方法:
コア材の両面に、樹脂絶縁層を積層し、コア基板を形成する工程;
前記コア基板に、レーザにより貫通孔を形成する工程;
前記コア基板に、粗化面を形成する工程;
前記貫通孔内面および前記コア基板全表面に、金属膜を形成する工程;
金属膜および電解めっき膜からなる導体回路及びスルーホールを形成する工程。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点A>
導体回路およびスルーホールの形成が、
本願発明においては、「前記貫通孔内面および前記コア基板全表面に、金属膜を形成する工程; 前記金属膜の全表面上に電解めっき膜を形成する工程; 前記全表面上に電解めっき膜が形成されたコア基板の両面に感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して、露光・現像処理し、レジストのパターンを形成する工程; 前記レジストパターン形成により露出した電解めっき膜とその下の金属膜を溶解除去し、前記レジストを剥離除去し、金属膜および電解めっき膜からなる導体回路およびスルーホールを形成する工程」であるのに対し、
刊行物に記載された発明においては、本願発明の「導体回路」及び「スルーホール」にそれぞれ相当する「第1層目の配線層」及び「貫通穴内導体10」の形成が、「前記貫通穴3内面および前記積層体全表面に、無電解銅めっきにより薄膜層4を形成する工程; 薄膜層4が形成された積層体の両面に感光性ドライフィルムレジストDF1をラミネートして、レジスト層5を形成し、フォトマスク6を介して、露光、現像処理し、配線用開口パターン7を形成する工程; 薄膜層4を通じて電解めっきを行い、露出した薄膜層4の上に電解銅めっき層8を形成する工程; 残ったレジスト層5を剥離除去し、薄膜層4および電解銅めっき層8からなる第1層目の配線層9及び貫通穴内導体10を形成する工程」である点(以下、「相違点A」という。)。

そこで、上記相違点Aについて検討する。

上記第2.の2.-2(1)(イ)にあるように、刊行物には「従来公知のセミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法等により配線層を形成することができる」と記載されており、刊行物に記載された発明において、本願発明の「導体回路」及び「スルーホール」にそれぞれ相当する「第1層目の配線層」及び「貫通穴内導体10」の形成に、いずれの形成法による工程を採用するかは、当業者が必要に応じて適宜決定し得る事項である。さらに、配線基板の技術分野において、配線層を、「貫通孔内面および基板全表面に、金属膜を形成する工程、前記金属膜の全表面上に電解めっき膜を形成する工程、前記全表面上に電解めっき膜が形成された基板の両面にドライフィルムを貼り付け、露光・現像処理し、レジストのパターンを形成する工程、前記レジストパターン形成により露出した電解めっき膜とその下の金属膜を溶解除去し、前記レジストを剥離除去し、金属膜および電解めっき膜からなる導体回路およびスルーホールを形成する工程」により形成することも、本件出願前に広く一般に知られた周知技術1であり、感光性ドライフィルムにフォトマスクフィルムを載置させることも慣用技術である。
したがって、刊行物に記載された発明において、本願発明の「導体回路」及び「スルーホール」にそれぞれ相当する「第1層目の配線層」及び「貫通穴内導体10」の形成として、「前記貫通穴3内面および前記積層体全表面に、無電解銅めっきにより薄膜層4を形成する工程; 薄膜層4が形成された積層体の両面に感光性ドライフィルムレジストDF1をラミネートして、レジスト層5を形成し、フォトマスク6を介して、露光、現像処理し、配線用開口パターン7を形成する工程; 薄膜層4を通じて電解めっきを行い、露出した薄膜層4の上に電解銅めっき層8を形成する工程; 残ったレジスト層5を剥離除去し、薄膜層4および電解銅めっき層8からなる第1層目の配線層9及び貫通穴内導体10を形成する工程」に代えて上記周知技術1及び慣用技術を採用し、本願発明の上記相違点Aに係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明及び周知技術1並びに慣用技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術1並びに慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-13 
結審通知日 2011-10-18 
審決日 2011-10-31 
出願番号 特願2000-33170(P2000-33170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 57- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森藤 淳志  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 岡崎 克彦
中川 隆司
発明の名称 プリント配線板の製造方法  
代理人 田下 明人  

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