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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1248928
審判番号 不服2010-18076  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-10 
確定日 2011-12-15 
事件の表示 特願2007-220423号「コネクタとそのハウジング」拒絶査定不服審判事件〔平成20年7月3日出願公開、特開2008-153193号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成19年8月27日(パリ条約の例による優先権主張2006年12月18日、台湾)の出願であって、平成22年5月11日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月17日)、これに対し、同年8月10日に審判請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年8月10日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月10日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「コネクタのハウジングであって、少なくとも一つの発光素子を備え、前記発光素子は少なくとも一つのピンを有し、前記ハウジングは、前記発光素子が容置される本体と、前記本体と連結し、前記発光素子の前記ピンを締結して、前記発光素子を前記本体に固設する少なくとも一つの締結構造と、からなり、前記締結構造は、弾性変形して前記ピンを締結することを特徴とするコネクタのハウジング。」とあったものを「コネクタのハウジングであって、少なくとも一つの発光素子を備え、前記発光素子は少なくとも一つのピンを有し、前記ハウジングは、前記発光素子が容置される本体と、前記本体と連結し、前記発光素子の前記ピンを締結して、前記発光素子を前記本体に固設する少なくとも一つの締結構造と、からなり、前記締結構造は、前記本体に複数のスロットを設け、前記スロットには槽孔と締結片が隣設されると共に、前記締結片は前記槽孔の一側から沿設され、前記槽孔と前記締結片は前記スロットの他側に設けられ、前記締結片は弾性変形して前記ピンを前記スロットの他側に締結することを特徴とするコネクタのハウジング。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、締結構造について、「弾性変形して前記ピンを締結する」とあったものを「前記本体に複数のスロットを設け、前記スロットには槽孔と締結片が隣設されると共に、前記締結片は前記槽孔の一側から沿設され、前記槽孔と前記締結片は前記スロットの他側に設けられ、前記締結片は弾性変形して前記ピンを前記スロットの他側に締結する」と限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先権主張の基礎となる出願日前に頒布された刊行物である特開2002-352918号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、モジュラープラグが挿着されるモジュラージャックに関し、特に、発光ダイオードを有するモジュラージャックに関する。
【従来の技術】一般に、電話設備やLAN(ローカルエリアネットワーク)において使用されるコネクタとして、発光ダイオードを備えたモジュラージャックが公知であり、このようなモジュラージャックには、例えば、米国特許第5,685,737号公報に記載されているものがある。
図5は、この米国特許第5,685,737号公報に開示されたモジュラージャック1を示しており、該モジュラージャック1は、前面側からモジュラープラグ(図示せず)が嵌合可能な凹部2が形成されたハウジング3と、前記凹部2内に並列に配設された所要数の端子4と、前記ハウジング3の前面側に設けられた一対の表示器5とを備え、前記端子4の下端部は基板の所定回路(図示せず)に接続されるようになっている。
前記凹部2の前記端子4に対向する側の中央部分には、階段状の溝6が形成され、該溝6に前記モジュラープラグのロック部(図示せず)が係合可能となっている。そして、前記溝6の左右側方で、前記凹部2の両側部分の下方にはそれぞれ挿着溝7が形成され、該各挿着溝7の内側面には前後方向に沿ってガイド突起8が対向するように突設され、前記各挿着溝7の後端側にはさらにスリット溝9が形成されている。
前記各表示器5は、両側面の前後方向に沿ってガイド溝10が形成された表示部11と、該表示部11の後端部に設けられたリード部12とを備え、該リード部12は後方に延出する水平部13と、該水平部13から下方の前記基板側に屈曲する鉛直部14とから構成されている。したがって、前記ガイド突起8を前記ガイド溝10に係合させると共に前記リード部12を前記スリット溝9に係合させることにより、前記表示器11(「5」の誤記と認める。)は前面側から視認可能なように前記挿着溝7に挿着される。
このような構成において、前記モジュラージャック1に前記モジュラープラグ(図示せず)を嵌合すると、一方(例えば、図5の右側)の表示器5が点灯し、前記モジュラージャック1とモジュラープラグとが電気的に接続された状態である旨を表示する。また、前記モジュラージャック1と前記モジュラープラグ間でデータが取り交わされている間は、他方(例えば、図5の左側)の表示器5が点滅する。
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記した従来のモジュラージャックでは、前記表示部11の側面にガイド溝10を形成させる必要があるため、加工が複雑となり、市販の表示器11を利用することができず、製造コストを増加させる要因となっていた。
また、前記表示器5は前記溝6の左右側方且つ前記凹部2の両側部分の下方に設置されているため、前記モジュラージャック1に前記モジュラープラグを嵌合させると、該モジュラープラグのケーブルにより、前記表示部11の前面側が覆われ、表示が視認不能又は困難になるおそれがあった。
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、製造コストの低減化を図り、表示を確実に視認することのできるモジュラージャックを提供するものである。」(段落【0001】?【0009】)
b)上記aの記載事項及び【図5】の図示内容によると、各表示器5は2本のリード部12を備えることが示されているといえる。

上記aの記載事項、上記bの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案して、従来技術を中心にまとめると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「モジュラージャック1に備えられるハウジング3であって、
前面側に一対の発光ダイオードよりなる表示器5を設け、
各表示器5に表示部11と2本のリード部12とを備え、
ハウジング3は、凹部2に表示部11が挿着される挿着溝7が形成され、
挿着溝7に突設されたガイド突起8を表示部11に形成されたガイド溝10に係合させると共にリード部12をスリット溝9に係合させることにより、表示器5を挿着溝7に挿着させる
モジュラージャック1のハウジング3。」

(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先権主張の基礎となる出願日前に頒布された刊行物である実願昭61-126767号(実開昭63-32481号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「2、実用新案登録請求の範囲
上面に開口部が形成され第一側面には、上面から第一の溝部が形成され、前記第一側面と対向する第二側面には第二の溝部が形成された絶縁ケースと、電線の芯線部及び被覆部を圧着するための舌片と接続用端子部を基部より一体的に薄板金属で形成した接続子とを備え、電線圧着後の前記接続子の基部面を、前記ケース上面に対して略垂直におき、圧着後の舌片が前記ケースの開口部内に納まる様に挿入するとともに、圧着された電線を前記第一の溝部によつてし、端子部を第二の溝部によって保持する構成とした電気接続子。」(第1ページ第4?15行)
b)「産業上の利用分野
本考案は、各種電子機器全般に広く使用されている電気接続子のうち、プリント基板用等として活用されるものに関する。」(第1ページ第17?20行)
c)「本考案は、この様な問題点を解決するもので、小型化を目的とするものである。」(第2ページ第15?16行)
d)「実施例
第1図?第4図に示すように、上面に開口部を設けた絶縁ケース12の側面7には、電線Aを保持するために入口を電線外径より小さくした溝部Bを設け、更に対向する側面8には、接続子9の基部10から一体的に延長した端子部11を保持できる様な溝部Cを設けている。
そして絶縁ケース12の上面の開口部から、基部面10がハウジング上面に対して垂直になる様に接続子9を絶縁ケース12に嵌合保持させている。この際基部面10を絶縁ケース12の壁面13が常に押しつけており、接続子9の端子部11の溝C内に設けた14の面に押し付けた構造になり、確実な保持が為される。
この構造では、従来不可欠であった弾性舌片の代用として、側面7、8を利用しているので部品点数が少なくて小型化でき、また接続子9の基部面10を垂直に組立てている事で、狭ピッチの配線も可能となる。
第5図は電線A圧着後の前記接続子9を、キャリア方向の接続子間ピッチで連結したものを連鎖状接続子とし、前記絶縁ケース12に、同時挿入する様にした状態を示している。
この構成によれば、極小の電気接続子が得られると共に、連鎖状電気接続子ピッチ寸法17が大きくても、絶縁ケースピッチ15と等しくピッチ寸法16を設定すれば、一括挿入組み立てが可能となる。」(第3ページ第14行?第5ページ第1行)
e)「考案の効果
以上のように本考案によれば絶縁ケースの側面を抜け止めとして活用するので、小型化が図れる。」(第5ページ第2?4行)
f)上記d?eの記載事項、第1?3図の図示内容によると、溝部Cに槽状の孔と絶縁ケース12の抜け止めとを隣接させ、抜け止めを溝部Cの手前側から形成し、槽状の孔を溝部Cの奥側に設けた端子部11の抜け止め構造について示されている。

上記a?eの記載事項、上記fの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「端子部11の抜け止め構造は、
絶縁ケース12の側面7に溝部Cを設け、
溝部Cに槽状の孔と絶縁ケース12の抜け止めとを隣接させ、
抜け止めを溝部Cの手前側から形成し、槽状の孔を溝部Cの奥側に設け、
抜け止めは、弾性舌片の代用として、溝部Cを設けた側面8を活用し、接続子9の端子部11を保持できる
端子部11の抜け止め構造。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「モジュラージャック1」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「コネクタ」に相当し、以下同様に、
「ハウジング3」は「ハウジング」に、
「発光ダイオードよりなる表示器5」は「発光素子」に、
「2本のリード部12」は「少なくとも一つのピン」に、
「ハウジング3」は、また、凹部2に表示部11が挿着される挿着溝7が形成されることから、「発光素子が容置される本体」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「挿着溝7に突設されたガイド突起8を表示部11に形成されたガイド溝10に係合させると共にリード部12をスリット溝9に係合させることにより、表示器5を挿着溝7に挿着させる」ことと、本件補正発明の「本体と連結し、発光素子のピンを締結して、発光素子を本体に固設する少なくとも一つの締結構造」とは、前者において、ハウジング3凹部2の挿着溝7に挿着され、離れなくなることから、両者は、「発光素子のピンを係合して、発光素子を本体に固設する少なくとも一つの係合構造」である点で共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「コネクタのハウジングであって、少なくとも一つの発光素子を備え、前記発光素子は少なくとも一つのピンを有し、前記ハウジングは、前記発光素子が容置される本体と、前記発光素子の前記ピンを係合して、前記発光素子を前記本体に固設する少なくとも一つの係合構造と、からなるコネクタのハウジング。」

[相違点1]
発光素子のピンを係合して、発光素子を本体に固設する少なくとも一つの係合構造が、本件補正発明では、本体と連結し、発光素子のピンを締結して、発光素子を本体に固設する少なくとも一つの締結構造であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、挿着溝7に突設されたガイド突起8を表示部11に形成されたガイド溝10に係合させると共にリード部12をスリット溝9に係合させることにより、表示器5を挿着溝7に挿着させる点。

[相違点2]
本件補正発明では、発光素子が一つでもスロットの数が複数あるのに対して、刊行物1に記載された発明では、発光素子が一つでは、スロットの数が一つである点。

[相違点3]
締結構造が、本件補正発明では、本体と連結し、スロットには槽孔と締結片が隣設されると共に、締結片は槽孔の一側から沿設され、槽孔と締結片はスロットの他側に設けられ、締結片は弾性変形してピンをスロットの他側に締結する構成であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、当該発明特定事項を具備するか否か不明である点。

4.当審の判断
(1)上記相違点1について
刊行物1に、従来の技術として提示されている米国特許第5,685,737号公報(特にFig.1?3を参照。)には、リード受け部(lead receiving section)26に設けられた突起対(pairs of protuberances)28、30によりリード移動止め受(lead receiving detent)32を形成したことが記載されている。
そして、刊行物1に記載された発明は、刊行物1の従来技術の項に図5として示されているモジュラージャック1を中心にまとめたものであり、その図5に示されたモジュラージャック1は、前記2.(1)a)に記載されているように米国特許第5,685,737号公報に開示されたものである。
したがって、刊行物1に記載された発明におけるリード部12をスリット溝9に係合させる係合手段に、米国特許第5,685,737号公報に記載されたリードをリード移動止め受32によりハウジングに係合固定する技術事項を適用して、リード部12をスリット溝9に締結させることは、当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について
発光素子を備えたコネクタの技術分野において、一つの発光素子の2つのピンをハウジングへの挿入方向に2列に配置することは、本願の優先権の主張の基礎となる出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2003-243097号公報の発光ダイオード13の配置や、特開2000-30811号公報の光放射デバイス46の配置を参照。以下「周知の技術事項1」という。)。
したがって、刊行物1に記載された発明の表示器5のリード部12が係合されるスリット溝9を、上記周知の技術事項1に倣って、リード部12の数に対応させて、複数である2列構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(3)上記相違点3について
まず、本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「端子部11の抜け止め構造」と本件補正発明の「発光素子の」「締結構造」とは、前者では、溝部Cを設けた側面8を活用して端子部11を保持するものであるから、両者は、「部材の締結構造」である点で共通し、以下同様に、
「絶縁ケース12の側面7に溝部Cを設け」ることと「本体に複数のスロットを設け」ることとは、「本体にスロットを設け」る点で共通し、
「溝部Cに槽状の孔と絶縁ケース12の側面を活用した抜け止めとを隣接させ」ることと「スロットには槽孔と締結片が隣設される」こととは、後者における「締結片」は、本体と連結して形成されるものであるから、両者は、「スロットには槽孔と本体と連結して形成される抜け止め片が隣設される」ことで共通し、
「抜け止めを溝部Cの手前側から形成し、槽状の孔を溝部Cの奥側に設け」ることと「締結片は槽孔の一側から沿設され、槽孔と締結片はスロットの他側に設けられ」ることとは、「槽孔はスロットの他側に設けられ」ることで共通する。
「抜け止めは、弾性舌片の代用として、側面7、8を活用し、接続子9を絶縁ケース12に嵌合保持させ」ることと、「締結片は弾性変形してピンをスロットの他側に締結する」こととは、「抜け止め片は弾性舌片の代用として部材をスロットの他側に締結する」ことで、
それぞれ共通する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、「部材の締結構造は、本体にスロットを設け、スロットには槽孔と本体と連結して形成される抜け止め片が隣設され、槽孔はスロットの他側に設けられ、抜け止め片は弾性舌片の代用として部材をスロットの他側に締結する、部材の締結構造。」と言い換えることができる。
また、コネクタの技術分野において、端子の抜け止め係合のために、抜け止め片を、本体と連結する弾性片により形成するとともに、抜け止め片を槽孔の一側から沿設させることは、本願の優先権主張の基礎となる出願前に周知の技術事項である(例えば、特開平9-82392号公報の可撓性の係止腕15(段落【0004】、【図6】)や、特開平9-102347号公報の可撓性係止片4の係止鉤4aが端子16の係止端部16bに衝合すること(段落【0015】、【図8】)を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
そして、上記「相違点1について」で検討したように、刊行物1に記載された発明において、リード部12をスリット溝9に締結させることは、当業者が容易になし得たものであるから、その締結させる構造として、刊行物2に記載された発明の締結構造を採用することも、当業者が容易になし得たものである。
そして、その際に、刊行物2に記載された発明の抜け止め片は、弾性舌片の代用として用いられるものであることから、抜け止め片に弾性舌片の弾性機能を残すために、上記周知の技術事項2に倣って、弾性片とすること、及び、その弾性片を槽孔の部材の挿入側から沿設させることは、当業者が適宜なし得たものである。
さらに、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を適用するに際して、刊行物2に記載された発明の槽孔と抜け止め片とを、刊行物1に記載された発明のスリット溝9のどの箇所に設けるのかは、スリット溝9の形状や、リード部12の形状に応じて、当業者が決定し得たものである。
これらのことから、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明及び上記周知の技術事項2を適用して、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

(3)小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年8月10日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年4月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「コネクタのハウジングであって、少なくとも一つの発光素子を備え、前記発光素子は少なくとも一つのピンを有し、前記ハウジングは、前記発光素子が容置される本体と、前記本体と連結し、前記発光素子の前記ピンを締結して、前記発光素子を前記本体に固設する少なくとも一つの締結構造と、からなり、前記締結構造は、弾性変形して前記ピンを締結することを特徴とするコネクタのハウジング。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1?2、刊行物1?2の記載事項及び刊行物1?2に記載された発明は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明において、締結構造について、「前記本体に複数のスロットを設け、前記スロットには槽孔と締結片が隣設されると共に、前記締結片は前記槽孔の一側から沿設され、前記槽孔と前記締結片は前記スロットの他側に設けられ、前記締結片は弾性変形して前記ピンを前記スロットの他側に締結する」とあったものを「弾性変形して前記ピンを締結する」とその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-12 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-01 
出願番号 特願2007-220423(P2007-220423)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 松下 聡
長崎 洋一
発明の名称 コネクタとそのハウジング  
代理人 牛木 護  

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