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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1249078
審判番号 不服2010-21442  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-24 
確定日 2011-12-21 
事件の表示 特願2007-333078「触覚をフィードバックするマン-マシンインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月31日出願公開、特開2008-176779〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年12月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年11月30日(US)米国)を国際出願日とする特願平9-520741号の一部を平成19年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成21年10月21日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年1月29日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年5月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年9月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 補正却下の決定
1.補正却下の決定の結論
平成22年9月24日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2.理由
(2-1)補正の内容
本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
ソフトウェアプログラムを実行するホストコンピュータを用いて動作するように構成されたビデオゲームコントローラであって、
センサを有する本体であって、該センサは、物理的状態信号を測定するように構成されており、該物理的状態信号は使用者の身体部分の動きの測定値である、該本体と、
前記センサに接続されており、前記物理的状態信号を受信し、一以上の駆動信号をホストコンピュータからの仮想状態信号に応答して出力するプロセッサであって、該仮想状態信号は前記物理的状態信号に関連し得る、該プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、使用者の身体に接触し且つ該使用者の身体上においてアレイ状に配列された複数のアクチュエータに接続されており、該プロセッサは、一以上の駆動信号を、前記複数のアクチュエータのうち少なくとも二つのアクチュエータに出力するように構成されており、前記少なくとも二つのアクチュエータは、前記一以上の駆動信号を前記プロセッサから受け取って、触覚効果を順次に且つ前記アレイにおいて配列された順に出力する、
ビデオゲームコントローラ。」
と補正されている。

上記補正は、補正前の請求項1に係る発明における「使用者の身体に接触した複数のアクチュエータ」を「使用者の身体に接触し且つ該使用者の身体上においてアレイ状に配列された複数のアクチュエータ」と限定し、
補正前の請求項1に係る発明における「少なくとも二つのアクチュエータ」について、「触覚効果を順次に出力する」を「触覚効果を順次に且つ前記アレイにおいて配列された順に出力する」と限定するものである。
したがって、該補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規程に適合するか)否かについて以下に検討する。

(2-2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-146751号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(a)「【産業上の利用分野】本発明は、計算機内部にあるデータとしての仮想物体を、操作者にあたかも存在するかのように感じさせて、造形作業などを計算機内部で行わせ、製品の使い勝手などを、試作することなく事前に体験することができるもの、あるいは、遠方などにある対象物体を、操作者があたかも手元にあるように感じながら操作できるもの等に適用可能な力覚呈示デバイス、データ入力デバイス、およびデータ入力装置に関するものである。」

(b)「【0064】図1は、本発明の一実施例における力覚呈示デバイスと情報処理手段と表示手段との関連を示す図である。力覚を受ける装置操作者は、力覚呈示デバイス1を掌で持つ。力覚呈示デバイス1は情報処理手段2とケーブル3にて接続されている。力覚を呈示するのに関連する情報は、画像情報として、表示手段4に表示される。操作者はこの表示画面を見ることにより、得られる力覚がどのような原因によるものかを容易に知ることができる。なお、力覚呈示デバイス1が3次元空間のどの位置にあるかは、位置検出手段(図示せず)が力覚呈示デバイス1に搭載されおり、情報処理手段2は随時その情報を知ることができるようになっている。操作者が力覚呈示デバイス1を動かすことにより、反力を与えることが必要かどうかが情報処理手段2により計算され、情報処理手段2から力覚呈示デバイス1に必要な反力情報を返す。力覚呈示デバイス1では、反力情報にもとづき、内蔵する反力発生手段により、反力を発生する。反力の発生の基本となる原理は、力覚呈示デバイス1の内部に設置された電動機による加速度を用いるものである。以下、上述したような第1、第2、第3の本発明の具体例を、図2、図3、図4、図5の順に説明する。
【0065】図2は、回転方向の力覚を呈示する場合の回路を説明するためのブロック図であり、図3はその制御動作原理を示す信号波形図である。情報処理手段2にて決定された必要な力覚情報は、駆動制御手段11に入力される。駆動制御手段11では、電動機14の駆動回路12およびスイッチ回路13に指令信号を入力する。駆動回路12はスイッチ回路13を経由して、電動機14に接続されているので、電動機のON/OFFの駆動が可能になるものである。次に図3を用いて駆動制御の方法及び動作原理を説明する。図3の(a)の信号は情報処理手段2から出力された必要な反力情報を示すものである。すなわち、時刻t1からt2までは反力「大」の指令が出力され、時刻t2からt3までは反力「なし」の指令が出力され、時刻t3からt4までは反力「小」の指令が出力されているものとする。(b)の信号は駆動制御手段11の出力信号波形である。駆動制御手段11では、反力「大」の指令に対して、電動機14を間欠的に駆動する。ONのときの駆動レベルは反力に対応するよう大きい駆動レベルとする。ONパルスの時間の幅は、電動機14が起動でき、かつ速度が加速状態である時間幅に設定しておく。OFFの時間の幅は、起動した電動機14が停止するまでの時間よりも長く設定しておく。一方、反力「なし」の場合は駆動制御手段11は電動機14の駆動指令をOFFにしたままである。また、反力「小」の場合には駆動制御手段11は、あまり大きくないONパルスにより間欠駆動する。同図の(c)は(b)の駆動指令に対応する電動機14の速度応答を示した図である。ONパルスが加わると電動機14は起動し、急速に速度が上昇する。速度が飽和しないうちにONパルスはOFFされるので、電動機14の速度は減少し始め、やがて停止する。反力が大きい場合は起動のときの速度の上昇が速く、反力が小さい場合には起動のときの速度の上昇が比較的遅くなる。同図(d)は電動機14の加速度応答を示したものである。ONパルスが印加されているときには正方向の比較的大きな加速度が得られており、OFF期間中の停止してしまうまでは逆方向の比較的小さい加速度が得られる。またONパルスの大きさにより加速度の大きさに差ができる。一方、ある物体を把持している場合、その物体がある運動をはじめようとして加速度を生じた場合、把持している側には、加速度と物体の質量をかけたものが反力として得られる。したがって、同図(d)のような加速度を生じさせた場合には、操作者は同図(d)に示す方向とは逆の反力を手に感じることができる。さらに、人間の感覚は非線形性があり、小さい刺激に対しては殆ど感じないという、検知限界があり、OFF期間の加速度は検知できない。したがって、ON期間に感じた加速度だけを反力として感じることができる。」

(c)「【0068】次に、第4の本発明のデータ入力デバイスの一実施例である、各手指の曲がりを入力する部分について説明する。図6はその斜視図である。図1の力覚呈示デバイスと兼用可能な、データ入力デバイス30はケーブル3により、情報処理手段2と接続され、情報処理手段2は表示手段4と接続されている。操作者はデータ入力デバイス30を掌でおおうように把持する。このとき、人差指および中指の先端部分はデータ入力デバイス30の表面上の窪み34、33の上に添えられる。窪み33、34には、圧力センサ31a,31b,31c,31d,31e、32a,32b,32c,32d,32eが搭載されており、指の押す力を検出することができるようになっている。たとえば右手で把持するとして人差指の場合、窪み34に指の腹が添えられ、指を曲げようとする力は圧力センサ32dで検出することができる。また、指を前にずらそうとする力は圧力センサ32aで検出でき、指を手前に戻そうとする力は圧力センサ32eで検出でき、指を右にずらそうとする力は圧力センサ32bで検出でき、指を左にずらそうとする力は圧力センサ32cで検出することができる。圧力センサとしては感圧式の導電ゴムなどが可能である。このようにして検出された指の力は、情報処理手段2に送られ、表示手段4による表示で確認することにより、例えば複数のポインティングデバイスによる複数点の位置情報と等価な情報として用いられる。また、指の力の情報を、遠隔地や仮想物体を操作するための手指あるいは手指に相当する物の曲げ角度として用いることができる。図7は図6で説明したデータ入力デバイス30を添えられる指と直行方向、すなわち窪みの長手方向とは直角に切った断面図である。窪み34は空白で表示されている。また、圧力センサは右から32c,32d,32bが描かれている。また、圧力センサは指の腹に直接当たらないようにカバー36で被われている。指による圧力の変化は増幅回路35c,35d,35bを経て、情報処理手段2へ送られる。【0069】なお、図9および図10での実施例では指の腹の部分に対して全ての方向の圧力を検出し、同様に全ての方向に対して反力を生じることができる事例で説明しているが、指の押す方向のみの検出および制御することができるデバイスとすることも容易に考えられることである。また、圧力の検出に圧力センサを用いる例で説明しているが、駆動軸42b,42c,42dへの駆動負荷より指が押している力を計算で求める方法でも可能である。また、図6では指の先端部分の腹の部分のみの検出および制御ができる場合を記述しているが、それ以外の指部分の圧力検出および制御も同様の方法で可能であることは明白である。
【0070】図8は、第5の本発明であるデータ入力装置の一実施例を示す斜視図である。図6、図7で説明したデータ入力デバイス30を掌で把持して操作する。データ入力デバイス30に入力された手指の腹の圧力に基づく手指の曲げ意図はケーブル3を通して情報処理手段2に送られて仮想の手指の曲げ角度などに変換される。仮想の手指の曲げ角度は表示手段4により、画面の中で仮想物体40に示すごとく、手指の形状そのままに表示される。このとき、仮想物体41との相互の位置関係も画像として表示されている。操作者はこの表示を見ながらデータ入力デバイスの操作を行うため、容易に仮想物体41の操作が実現できる。なお、図8で用いたデータ入力デバイスには、手の空間の位置及び姿勢を検知する検出器が必要であるが、その形状や取り付け方法については、従来公知であるので、図8ではその具体記述は省略している。
【0071】図9は、第6の本発明である、データ入力デバイス30の指に反力を与える部分の一実施例を示した構成断面図である。指の腹が入る窪み34に対して、図7と同様に圧力検出センサ32c,32d,32bを設ける。各圧力センサは可動部分41c、41d,42bに搭載されており、駆動軸42c,42d,42bを回転させることによりピニオン歯車とラック歯車の関係により、圧力センサを指の当たる方向に移動制御することができる。図9では、駆動方法として回転系の駆動方法で例を示したが、ボイスコイルモータなどによる直進型の電動機を用いて可動部分41c,41d,41bを駆動することなども可能であることは明白である。また圧力センサの代わりに変位検知手段でも可能である。
【0072】図10は、第7の本発明である制御系の構成を示した回路ブロック図である。圧力センサの検出した圧力情報は増幅器35c,35d,35bを経由して情報処理手段2へ送られると共に、比較制御手段45c,45d,45bに送られ、情報処理手段2より送られてきた目標反力値が得られるよう比較制御処理が行われる。比較制御手段45c,45d,45bの出力は駆動軸42c,42d,42bに送られることにより、目標値通りの反力が得られるよう制御される。
【0073】以上、手指に反力を与える構成および制御方法については、図9および図10を用いて説明したが、簡単な方法としては、反力を与える代わりに手指が仮想物体に接触したことを、振動を用いて認知させる方法も考えられる。この場合は、図9において駆動軸42c,42d,42bを電動機で振動させることなどにより容易に実現することができる。
【0074】また、上記実施例では、電動機として直流電動機を用いて説明したが、電磁気力による電動機である必要はなく、例えば圧電素子の振動を利用したいわゆる超音波モータなどでも同様のことが可能である。
【0075】第8の本発明については、再び図8を用いて説明する。図8は、第8の本発明であるデータ入力装置を使用している一例を示す図でもある。図9、図10で説明したデータ入力デバイス(ここでは力覚呈示デバイス)30を掌で把持して操作する。力覚呈示デバイス30に入力された手指の腹の圧力に基づく手指の曲げ意図はケーブル3を通して情報処理手段2に送られて仮想の手指の曲げ角度などに変換される。仮想の手指の曲げ角度は表示手段4により、画面の中で仮想物体40に示すごとく、手指の形状そのままに表示される。このとき、仮想物体41との相互の位置関係も画像として表示されている。画面上での手指の位置が仮想物体41に当たっている場合は、情報処理手段2は画面を表示しているわけであるので、画面上で指の位置が仮想物体41に接触していることは容易に知ることができる。このとき情報処理手段2は力覚呈示デバイス30に対して反力を大きく与えるように指示を送る。力覚呈示デバイス30では手の指に反力を与えるので操作者は容易に手指の先が仮想物体41に当たっていることを知ることができ、かつ、表示手段4からの画像出力を併せて知ることができるので、より高度な作業が実現できる。例えば、仮想物体41が剛体ではなく、粘土などの弾塑性体の場合などには微妙な変形作業などが可能になる。」

(d)「【0104】図44は、振動波モータを用いた第28および第29および第30の本発明の一実施例を示したものである。図44において、デバイス30の表面に指を添えたとき、指の腹があたるところに振動波モータ156を具備し、その下に垂直方向の圧力を検出する圧力センサ32を具備している。圧力センサ32による検出結果は逆数演算手段157に入力され、圧力の逆数値を得る。得られた圧力の逆数値は乗算手段158に入力され、力目標値との乗算が行われる。乗算結果は、駆動回路159におくられ、振動波モータ156を駆動する。振動波モータ156は駆動回路159により、指の腹が接触する面内での力Fxを発生する。この力Fxにより指の腹が水平方向の反力を感じることができる。振動波モータ156から指に与える力Fxは、指が強く押しているかどうかで変化する。すなわち、振動波モータ156の弾性体の面を強く押していればいるほど大きな力を得ることができる。したがって同じ駆動指令を与えても、指の押しつけ力が大きければ大きい反力を得ることができ、指の押しつけ力が小さければ小さな反力しか得ることができない。押しつけ力は圧力センサ32で検出できているので、その逆数を得て、反力の目標値と乗算することにより、押しつけ力の影響をキャンセルすることができ、目標値通りの反力を得ることができる。」

よって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
なお、上記(c)段落【0068】には、「図1の力覚呈示デバイスと兼用可能な、データ入力デバイス30は」と記載されている。よって、力覚提示デバイスは、データ入力デバイスと兼用可能であり、兼用した場合には同一のデバイスをさすから、以下ではデータ入力デバイスに統一して認定した。

「仮想物体を、操作者にあたかも存在するかのように感じさせて、造形作業などを行わせ、製品の使い勝手などを、事前に体験することができるものに適用可能なデータ入力デバイスであって、
データ入力デバイス30の表面上の窪み34には、圧力センサ32b,32c,32dが搭載されており、指の押す力を検出することができるようになっており、
検出された指の力は、情報処理手段2に送られ、表示手段4による表示で確認することにより、例えば複数のポインティングデバイスによる複数点の位置情報と等価な情報として用いられ、指の力の情報を、遠隔地や仮想物体を操作するための手指あるいは手指に相当する物の曲げ角度として用いることができ、
データ入力デバイス30に入力された手指の腹の圧力に基づく手指の曲げ意図はケーブル3を通して情報処理手段2に送られて仮想の手指の曲げ角度などに変換され、
仮想の手指の曲げ角度は表示手段4により、画面の中で仮想物体40に示すごとく、手指の形状そのままに表示され、
このとき、仮想物体41との相互の位置関係も画像として表示されており、画面上での手指の位置が仮想物体41に当たっている場合は、情報処理手段2は画面を表示しているわけであるので、画面上で指の位置が仮想物体41に接触していることは容易に知ることができ、
このときデータ入力デバイス30に対して反力を与えることが必要かどうかが情報処理手段2により計算され、情報処理手段2からデータ入力デバイス30に必要な反力情報を送り、
データ入力デバイス30では、圧力センサ32c,32d,32bの各圧力センサが可動部分41c、41d,41bに搭載されて、電動機を用いて可動部分41c、41d,41bを駆動することにより、圧力センサを指の当たる方向に移動制御し、
情報処理手段2にて決定された必要な反力情報が、駆動制御手段11に入力され、反力情報に応じて電動機が駆動され、指に反力を与えるので、操作者は容易に手指の先が仮想物体41に当たっていることを知ることができる、
データ入力デバイス30。」

(2-3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「情報処理手段2」は本願発明の「ソフトウェアプログラムを実行するホストコンピュータ」に相当する。また、「ビデオゲームコントローラ」は「データ入力デバイス」に含まれる概念である。したがって、引用発明と本願補正発明とは、「ソフトウェアプログラムを実行するホストコンピュータを用いて動作するように構成されたデータ入力デバイス」である点で共通するといえる。

引用発明の「圧力センサ32b,32c,32d」は、本願発明の「センサ」に相当する。また、引用発明の圧力センサはデータ入力デバイス30の表面上の窪み34に搭載されているから、該データ入力デバイスはセンサを有する本体であるといえる。また、引用発明の圧力センサにおいては、指の力の情報を、遠隔地や仮想物体を操作するための手指あるいは手指に相当する物の曲げ角度として用いることができるものであるから、該圧力センサは、指の押す力の強度を測定しているものと言え、さらに検出された指の力は、情報処理手段2に送られるものであるから、引用発明の「圧力センサ」の出力は、本願補正発明の「物理的状態信号」に相当し、引用発明と本願補正発明とは、「センサを有する本体であって、該センサは、物理的状態信号を測定するように構成されており、該物理的状態信号は使用者の身体部分の動きの測定値である、該本体」を備える点で一致するといえる。

引用発明の「情報処理手段2」は、圧力センサの検出した指の力が送られるものであるから、引用発明の「情報処理手段2」と本願補正発明の「プロセッサ」とは、「前記センサに接続されており、前記物理的状態信号を受信する処理手段」である点で共通する。
また、引用発明の「情報処理手段2」は、画面上で指の位置が仮想物体41に接触しているとき、データ入力デバイス30に対して反力を大きく与えることが必要かどうかを計算し、データ入力デバイス30に必要な反力情報を送るものである。したがって、引用発明の「反力情報」は、仮想空間における状態を示す情報であるといえるから、本願補正発明の「仮想状態信号」に相当する。
また、引用発明において、情報処理手段2にて決定された必要な反力情報は、駆動制御手段11に入力され、駆動制御手段11は、反力情報に応じて電動機が駆動するから、駆動制御手段11が電動機14に一以上の駆動信号を出力していることは明らかである。したがって、引用発明の「情報処理手段2」と本願補正発明の「プロセッサ」とは、一以上の駆動信号を処理手段からの仮想状態信号に応答して出力する点で共通する。
また、引用発明は、操作者の指の力を測定した圧力センサの値を入力とし、情報処理装置によって反力を与えるか否かを計算し、反力情報を返すものであることから、物理的状態信号を入力とし、仮想状態信号を出力するものといえる。また、このことから、物理的状態信号と仮想状態信号は互いに関連し得るものであるといえる。
したがって、引用発明と本願補正補正発明とは、「前記センサに接続されており、前記物理的状態信号を受信し、一以上の駆動信号を仮想状態信号に応答して出力する処理手段であって、該仮想状態信号は前記物理的状態信号に関連し得る、処理手段」を備える点で共通するといえる。

引用発明は、電動機を用いて可動部分41c、41d,41bを駆動することにより、圧力センサを指の当たる方向に移動制御するものであるから、このような機構は、使用者の身体に接触する複数のアクチュエータであるといえる。また、引用発明は、情報処理手段2にて決定された必要な反力情報が、駆動制御手段11に入力され、反力情報に応じて電動機が駆動され、指に反力を与えるので、駆動信号により、触覚効果を出力するものであるといえる。
したがって、引用発明と本願発明とは、「前記処理手段は複数のアクチュエータに接続されており、該処理手段2は、一以上の駆動信号を、前記複数のアクチュエータに出力するように構成されており、前記複数のアクチュエータは、前記一以上の駆動信号を前記処理手段から受け取って、触覚効果を出力する」点で共通するといえる。

したがって、両者は、
「ソフトウェアプログラムを実行するホストコンピュータを用いて動作するように構成されたデータ入力デバイスであって、
センサを有する本体であって、該センサは、物理的状態信号を測定するように構成されており、該物理的状態信号は使用者の身体部分の動きの測定値である、該本体を備え、
前記センサに接続されており、前記物理的状態信号を受信し、一以上の駆動信号を仮想状態信号に応答して出力する処理手段であって、該仮想状態信号は前記物理的状態信号に関連し得る、処理手段とを備え、
前記処理手段は複数のアクチュエータに接続されており、該処理手段は、一以上の駆動信号を、前記複数のアクチュエータに出力するように構成されており、前記複数のアクチュエータは、前記一以上の駆動信号を前記処理手段から受け取って、触覚効果を出力する、
データ入力デバイス。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明のデータ入力デバイスは、ビデオゲームコントローラであるのに対し、
引用発明のデータ入力デバイスは、ビデオゲームコントローラではない点。

(相違点2)
本願補正発明は、ホストコンピュータとプロセッサとで信号を処理するものであって、プロセッサがビデオゲームコントローラに備えられ、前記物理的状態信号を受信するのが該プロセッサであり、該プロセッサが駆動信号をホストコンピュータからの仮想状態信号に応答して出力するのに対し、
引用発明は、処理手段が物理的状態信号を受信し、処理手段が仮想的状態信号に応答して駆動信号を出力しているが、処理手段はホストコンピュータであって、ホストコンピュータと、ビデオゲームコントローラに備えられたプロセッサとで処理をおこなうものではない点。また、そのために、ビデオゲームコントローラに備えられた前記プロセッサが、前記物理的状態信号を受信し、ホストコンピュータからの仮想状態信号に応じて駆動信号を出力するものではない点。

(相違点3)
本願補正発明のアクチュエータは、プロセッサによって制御されるものであり、また、アクチュエータは使用者の身体上においてアレイ状に配置されており、該プロセッサは少なくとも2つのアクチュエータに駆動信号を出力し、該少なくとも2つのアクチュエータは触覚効果を順次に且つ前記アレイにおいて配列された順に出力するのに対し、
引用発明のアクチュエータはプロセッサによって制御されるものであるか否かが明確ではなく、アクチュエータは使用者の身体上においてアレイ状に配置されておらず、プロセッサが少なくとも2つのアクチュエータに駆動信号を出力するものではなく、該少なくとも2つのアクチュエータが触覚効果を順次に且つ前記アレイにおいて配列された順に出力するものではない点。

(2-4)当審の判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)
一般に、仮想物体を操作するデータ入力デバイスをビデオゲームコントローラとして用いることは本願優先日前に周知であって、引用発明のデータ入力デバイスをビデオゲームコントローラとするように構成することは当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
入力デバイスにプロセッサを設けて必要な処理を行わせることは本願優先日前に周知(<1>特開平4-291289号公報【0004】、【0018】、【0019】、図2、データグローブは・・・手位置・姿勢算出プロセッサとから構成されているの記載、<2>特開平7-213742号公報【0022】、図8、図9、グラブ1の後ろに取り付けられた・・・電子モジュール100を有している。図8(図9の誤記と認める。)は、電子モジュール100の構成を示すブロック図である。マイクロプロセッサ84は、・・・タイミングを制御するの記載、<3>特表平3-505381号公報、請求項10、マイクロプロセッサおよびこれに関連する回路を当該デバイス自体が内蔵している請求項1ないし9いずれかに記載のデータ処理装置用コントロールデバイスの記載を参照。)であり、プロセッサとホストコンピュータとで分担して情報処理を行うことは通常のことであるから、引用発明において、ビデオゲームコントローラにプロセッサを備え、該プロセッサが前記物理的状態信号を受信し、ホストコンピュータからの仮想状態信号に応じて駆動信号を出力するように構成することは当業者が適宜なし得ることである。

(相違点3について)
入力デバイスにプロセッサを設けることは上記のように本願優先日前に周知であり、デバイスの制御にプロセッサを用いることは常とう手段である。また、複数の可動部品を並べて使用者の身体と接触させ、触覚を伝える機構において、各可動部品を定められた順序で動作させることで、使用者に接触箇所が移動する感覚を与える技術は、本願優先日前に周知(<4>特開平7-219704号公報段落【0016】ないし【022】、蛇15の鼓動をプレイヤの手に伝える。また、各変位部6を波打つように順次内側及び外側へ往復運動させることにより、手の中で蛇15がうごめく感触を与える。<5>特開平7-185129号公報段落【0023】、図1、図5、敵キャラクターが剣を用いて攻撃してきて、味方キャラクターが右上から切られた場合には、図5に示すように、右上から左下への直線上にある振動パッド3を最も強く、かつ右上の振動パッド3から左下へと順番に振動させる。・・・すると、プレイヤーはまるで剣で右上から左下へと切られたような感覚を得ることができる。<6>特表平5-506736号公報第10頁右下欄、テクスチャーアレーと力アプリケータとへの命令の適当な組合わせによって、指先に数え切れない感覚を印加することができる。例えば、単一の列に沿う3個のテクスチャー要素を伸ばしそこで力台をして指先を押圧せしめるように差動することによって、指先に実質上の物体の垂直の縁に接触が疑似される。その列の3個の伸ばされたテクスチャー要素が隣接する列の3個の要素が持ち上げられるのと同時に引っ込まされた場合、物体の縁が指先に沿って移動する感覚が生成されるの記載を参照。)である。したがって、引用発明のアクチュエータを、プロセッサによって制御し、アクチュエータを使用者の身体上においてアレイ状に配置し、該プロセッサに少なくとも2つのアクチュエータに駆動信号を出力させ、該少なくとも2つのアクチュエータに触覚効果を順次に且つ前記アレイにおいて配列された順に出力させるよう構成することで上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明が奏する効果は当業者が引用発明及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

(2-5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
以上のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年1月29日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ソフトウェアプログラムを実行するホストコンピュータを用いて動作するように構成されたビデオゲームコントローラであって、
センサを有する本体であって、該センサは、物理的状態信号を測定するように構成されており、該物理的状態信号は使用者の身体部分の動きの測定値である、該本体と、
前記センサに接続されており、前記物理的状態信号を受信し、一以上の駆動信号をホストコンピュータからの仮想状態信号に応答して出力するプロセッサであって、該仮想状態信号は前記物理的状態信号に関連し得る、該プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、使用者の身体に接触した複数のアクチュエータに接続されており、該プロセッサは、一以上の駆動信号を、前記複数のアクチュエータのうち少なくとも二つのアクチュエータに出力するように構成されており、前記少なくとも二つのアクチュエータは、前記一以上の駆動信号を前記プロセッサから受け取って、触覚効果を順次に出力する、
ビデオゲームコントローラ。」

2.引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2.(2-2)」に記載したとおりである。

3.対比、判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「使用者の身体に接触した複数のアクチュエータ」を「使用者の身体に接触し且つ該使用者の身体上においてアレイ状に配列された複数のアクチュエータ」と限定するのを省き、
本願補正発明の「少なくとも二つのアクチュエータ」について、「触覚効果を順次に出力する」を「触覚効果を順次に且つ前記アレイにおいて配列された順に出力する」と限定するのを省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」に記載したとおり、引用発明及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-22 
結審通知日 2011-07-26 
審決日 2011-08-09 
出願番号 特願2007-333078(P2007-333078)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 佐藤 匡
安久 司郎
発明の名称 触覚をフィードバックするマン-マシンインターフェース  
代理人 柏岡 潤二  
代理人 池田 正人  
代理人 山口 和弘  
代理人 城戸 博兒  
代理人 池田 成人  
代理人 野田 雅一  
代理人 山田 行一  

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