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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1249136
審判番号 不服2010-22836  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-08 
確定日 2011-12-22 
事件の表示 特願2006-521953号「ICデバイス用の圧力装着ソケット及びZIF(ZeroInsertionForce)ソケット」拒絶査定不服審判事件〔2005年2月10日国際公開、WO2005/013429、平成19年1月11日国内公表、特表2007-500426号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年7月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年7月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年6月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年10月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成22年10月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、「IC(集積回路)デバイスのピンを回路基板の接触パッドに結合するソケットシステムであって、
ソケット上に設けられて前記ICデバイスの前記ピンがその内部に挿入される際に実質的にゼロ挿入力となるZIF開口部を有し、
前記ソケット上に設けられた圧力装着リードを有し、この圧力装着リードは、前記回路基板の前記接触パッドに対して押圧力を与えるように前記圧力装着リードを押圧するための押圧機構を備えるものであり、
前記圧力装着リードにピンを結合するための機構を更に有し、
前記圧力装着リードにピンを結合するための前記機構は、前記圧力装着リードに結合され、前記ZIF開口部内の前記ピンを取り巻くフォークリードと、前記フォークリードを前記ピンに対して押圧する駆動プレート及び駆動レバーを有し、
前記駆動レバーが引っ張られると、前記駆動プレートが、前記フォークリードに向かうよう前記ピンの長さ方向に対して垂直である横方向にのみ押圧されるとともに、前記フォークリードの一つを押し曲げることにより、前記フォークリードが前記ピンを押圧し、前記ピンが前記フォークリードを通じて前記圧力装着リードに結合され、
前記ソケットは、前記圧力装着リードが前記接触パッドに対して押圧されるように前記回路基板に装着される、
ソケットシステム。」と補正された。
上記請求項2に係る補正は、発明を特定するための事項である、ピンが圧力装着リードに結合されることに関し、「駆動レバーが引っ張られると」駆動プレートが押圧され、「フォークリードの一つを押し曲げることにより、前記フォークリードが前記ピンを押圧し、前記ピンが前記フォークリードを通じて前記圧力装着リードに結合され」ることを限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2000-173731号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図1?47とともに以下の事項が記載されている。
(1)「ピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118と電気的に係合可能とした複数の端子57を格子状に備えた板状のベースハウジング51と、このベースハウジング51の上側に配置された、前記リードピン118を挿通可能とした複数のスルーホール56を格子状に備えた板状のスライド部材52とを少なくとも有し、前記リードピン118が前記スルーホール56を通してベースハウジング51内の端子装着部までゼロ挿入力で挿入可能となる位置と、端子装着部まで挿入されたリードピン118と前記端子57を電気的に係合させる位置の間で、スライド部材52をベースハウジング51の板面に平行な面内でスライドできるようにしたスライド手段が設けられているピングリッドアレイパッケージ用ソケット50において、
前記ベースハウジング51に格子状に備えたそれぞれの端子57は、ベースハウジング51の底面から斜め下方に臨ませた片持梁状のテイル片81を有する表面実装端子57としたことを特徴とするピングリッドアレイパッケージ用ソケット。」(請求項1)
(2)「図1に実施形態のピングリッドアレイパッケージ用ソケット50(単に「ソケット」とも言う)の全体を斜視図で示した。略方形の板状としたベースハウジング51の上側に、ベースハウジング51と同じ平面形状の板状としたスライドカバー52が直接重ねて設置してある。スライドカバー52は、ベースハウジング51の板面に平行な面内でスライド可能となっている。
・・・(中略)・・・スライドカバー52をスライドさせる為のスライド機構が構成されている。・・・(中略)・・・
スライドカバー52の略全面に格子状に設けられているのが、ピングリッドアレイパッケージのリードピンを挿通可能としたスルーホール56である。これらのスルーホール56と1対1で対向するように、ベースハウジング51には端子装着部が格子状に設けてあり、そこに、リードピンと電気的に係合可能の端子57が配置されているのである。
・・・(中略)・・・
ベースハウジング51は、・・・(中略)・・・略全面に格子状に端子受入空洞60が形成され、各端子受入空洞60に、ベースハウジング51の下面側から端子57が圧入によって装着されている。」(段落【0015】?【0019】)
(3)「端子57は、ベースハウジング51の底面から斜め下方に臨ませた片持梁状のテイル片81を有する表面実装端子としてある。ソケット50をプリント基板(図示せず)上に搭載すると、テイル片81がプリント基板の表面に格子状に設けた複数の導電パッドに対し、1対1の関係で、所定の接触圧のもとに当接できるようになっている。
この端子57は、・・・(中略)・・・ベース板82の他側部の両側縁から連続させて、ピングリッドアレイパッケージのリードピンと電気的に係合する為の、互いに対向するコンタクト片85が立ち上げてある。コンタクト片85の高さはベースハウジング51の厚さに略等しくしてある・・・(中略)・・・。
更に、ベース板82の他側縁から連続させて、ベース板82の斜め下方に、ベース板82より細幅のテイル片81が片持梁状に延びている。テイル片81は、先端部が鈍角に屈曲(又は湾曲)されて、下面側にプリント基板側の導電パッドに対するコンタクト部86が形成されている。」(段落【0028】?【0030】)
(4)「図42に示されている・・・(中略)・・・スライドカバー52のベースハウジング51に対する位置は、スライドカバー52の各スルーホル56が、ベースハウジング51の端子受入空洞60で、端子57のコンタクト片85に隣接して形成された各ピン受入空洞77と対向するように設定されている。即ち、スライドカバー52をこの停止位置に配置することで、ピングリッドアレイパッケージのリードピンをゼロ挿入力でベースハウジング51の端子装着部まで挿入可能となるのである。・・・(中略)・・・
図45には、スライドカバー52の上にピングリッドアレイパッケージ117を載置し、そのリードピン118をピン受入空洞77まで挿入した状態が示されている。スライドカバー52のスルーホール56のテーパー孔部分56aで案内されるリードピン118は、挿入に当たって、他に接触するものがなく、ピン受入空洞77までゼロ挿入力で挿入することができる。
スライドカバー52上にピングリッドアレイパッケージ117を載置し、リードピン118をピン受入空洞77までゼロ挿入力のもとに挿入した後、偏心カム部材53を更に反時計回りの方向に90度回転させることで、ピングリッドアレイパッケージ117とソケット50の接続を完了することができる。」(段落【0049】?【0051】)
(5)「図43、44に示されているように、スライドカバー52がベースハウジング51に合致したこの状態は、ベースハウジング52の各スルーホール56が、ベースハウジング51の各端子57のコンタクト片85の上方に丁度位置するように設定されている。従って、図45のように、スライドカバー52の上にピングリッドアレイパッケージ117を載置してスライドカバー52をスライドさせると、スルーホール56を通して挿通されたリードピン118は、ピン受入空洞77の位置から、図46に示すコンタクト片85の位置まで移動して、リードピン118と端子57が電気的に係合することになる。即ち、このスライドカバー52の位置が、リードピン118と端子57を電気的に係合させる位置であり、ピングリッドアレイパッケージ117とソケット50の接続を完了する位置である。」(段落【0056】)
(6)「図1に表れた金属ネイル75は図47に示したようなものである。圧入部120をベースハウジング51の四隅に設けられた圧入孔76に圧入して固定する。ソケット50を実装するプリント基板(図示せず)にテイル部121を半田付けする。金属ネイル75を半田付けすることで、ベースハウジング51の底面に片持状に臨ませた端子57のテイル片81は、そのコンタクト部86がプリント基板側の導電パッドに所定の接触圧で当接することになるのである。・・・(中略)・・・この発明によれば、ベースハウジングの底面から片持状に臨ませたテイル片をプリント基板などの表面の導電パッドに所定の接触圧で当接できるように構成したので、プリント基板などの上に実装する際のソケットとプリント基板のアッセンブリが容易にできる効果がある。」(段落【0060】及び【0061】)
これらの記載事項(1)?(6)及び図1?47を総合すると、上記引用刊行物には、「ピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118と端子57を電気的に係合可能とし、端子57のテイル片81をプリント基板の表面に設けた導電パッドに所定の接触圧で当接できるように構成したピングリッドアレイパッケージ用ソケット50であって、
ソケット50のベースハウジング51及びスライドカバー52に設けられるピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118がゼロ挿入力のもとに挿入されるピン受入空洞77、端子受入空洞60及びスルーホール56を有し、
ソケット50のベースハウジング51の端子受入空洞60に装着されている端子57がベースハウジング51の底面から斜め下方に臨ませた片持梁状のテイル片81を有し、このテイル片81はプリント基板の表面に設けた導電パッドに対し、所定の接触圧のもとに当接して端子57が表面実装端子となるものであり、
テイル片81を有する端子57はリードピン118と電気的に係合するものであって、
スライドカバー52の上にピングリッドアレイパッケージ117を載置してスライドカバー52をスライドさせるとリードピン118と端子57が電気的に係合し、
ベースハウジング51の四隅に固定された金属ネイル75はプリント基板にテイル部121を半田付けすることで、片持状に臨ませた端子57のテイル片81がそのコンタクト部86をプリント基板側の導電パッドに所定の接触圧で当接することになる、
ピングリッドアレイパッケージ用ソケット50。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「ピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118」は、その機能・構成からみて、前者の「IC(集積回路)デバイスのピン」に相当し、以下同様に、後者の「プリント基板の表面に設けた導電パッド」は前者の「回路基板の接触パッド」に、後者の「ピングリッドアレイパッケージ用ソケット50」は前者の「ソケットシステム」に、後者の「ソケット50のベースハウジング51及びスライドカバー52」は前者の「ソケット」にそれぞれ相当する。
また、後者の「ピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118と端子57を電気的に係合可能とし、端子57のテイル片81をプリント基板の表面に設けた導電パッドに所定の接触圧で当接できるように構成」することは、テイル片81が端子57に設けられるものであって、かつ「テイル片81はプリント基板の表面に設けた導電パッドに対し、所定の接触圧のもとに当接して端子57が表面実装端子となる」から、端子57を介してピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118とプリント基板の表面に設けた導電パッドを結合するといえるので、前者の「IC(集積回路)デバイスのピンを回路基板の接触パッドに結合する」ことに相当する。
後者の「ソケット50のベースハウジング51及びスライドカバー52に設けられるピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118がゼロ挿入力のもとに挿入されるピン受入空洞77、端子受入空洞60及びスルーホール56」は、その機能からみて、前者の「ソケット上に設けられて前記ICデバイスの前記ピンがその内部に挿入される際に実質的にゼロ挿入力となるZIF開口部」に相当する。
後者の「ソケット50のベースハウジング51の端子受入空洞60に装着されている端子57が」有する「ベースハウジング51の底面から斜め下方に臨ませた片持梁状のテイル片81」は「プリント基板の表面に設けた導電パッドに対し、所定の接触圧のもとに当接して端子57が表面実装端子となるもの」であるから、前者の「ソケット上に設けられた圧力装着リード」に相当し、前者と同様に「回路基板の前記接触パッドに対して押圧力を与えるように圧力装着リードを押圧するための押圧機構を備える」ものといえる。
後者の「テイル片81を有する端子57はリードピン118と電気的に係合するものであって、スライドカバー52の上にピングリッドアレイパッケージ117を載置してスライドカバー52をスライドさせるとリードピン118と端子57が電気的に係合」するものであるから、後者も前者と同様に「圧力装着リードにピンを結合するための機構」を有するものといえる。
そして、後者の「ベースハウジング51の四隅に固定された金属ネイル75はプリント基板にテイル部121を半田付けすることで、片持状に臨ませた端子57のテイル片81がそのコンタクト部86をプリント基板側の導電パッドに所定の接触圧で当接することになる」ことは、金属ネイル75が固定されたベースハウジング51はピングリッドアレイパッケージ117の一部であるから、前者のソケットについて、「圧力装着リードが接触パッドに対して押圧されるように回路基板に装着される」ことに対応する。
そうすると、両者は、「IC(集積回路)デバイスのピンを回路基板の接触パッドに結合するソケットシステムであって、
ソケット上に設けられて前記ICデバイスの前記ピンがその内部に挿入される際に実質的にゼロ挿入力となるZIF開口部を有し、
前記ソケット上に設けられた圧力装着リードを有し、この圧力装着リードは、前記回路基板の前記接触パッドに対して押圧力を与えるように前記圧力装着リードを押圧するための押圧機構を備えるものであり、
前記圧力装着リードにピンを結合するための機構を更に有し、
前記ソケットは、前記圧力装着リードが前記接触パッドに対して押圧されるように前記回路基板に装着される、
ソケットシステム。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
相違点:圧力装着リードにピンを結合するための機構について、本願補正発明が「圧力装着リードに結合され、ZIF開口部内のピンを取り巻くフォークリードと、前記フォークリードを前記ピンに対して押圧する駆動プレート及び駆動レバーを有し、
前記駆動レバーが引っ張られると、前記駆動プレートが、前記フォークリードに向かうよう前記ピンの長さ方向に対して垂直である横方向にのみ押圧されるとともに、前記フォークリードの一つを押し曲げることにより、前記フォークリードが前記ピンを押圧し、前記ピンが前記フォークリードを通じて前記圧力装着リードに結合され」るのに対して、引用発明は「ピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118がゼロ挿入力のもとに挿入される」ものの、そのようなものではない点。

そこで、上記相違点について検討する。
例えば、実願昭62-62949号(実開昭63-168974号)のマイクロフイルムや特開2001-60482号公報等に示されるように、ICソケットとして知られているような、ZIFのソケットにおいて、ソケット本体に接続されるリード端子が挿入される孔を開口し、当該孔内にY字状の端子が設けられ、Y字状の端子は分かれた部分が挿入されたリード端子を挟むような平行面で構成され、Y字状の端子の分かれた部分の一方をリード端子の方に押圧するようにスライドするスライダ及び回動可能のL字型のレバーをソケット本体に設け、L字型のレバーが垂直であるときには、スライダはY字状の端子の分かれた部分を押圧しておらず、リード端子は孔に挿入されてY字状の端子の分かれた部分の間に位置させられ、その後、L字型のレバーの垂直部分の上端をソケット本体の外側に向かって回動させると、L字型のレバーの水平部分付近を中心として回動し、水平部分がスライダをカムのように押圧して水平にスライドさせ、Y字状の端子の分かれた部分の一方が横方向に押圧されてリード端子の方に押し曲げられ、リード端子とY字状の端子が接触・接続されることによって、Y字状の端子の下端側が基板への接続部分とリード端子をZIFで接続する構成は、従来周知である。
引用発明において、ピングリッドアレイパッケージ117のリードピン118がゼロ挿入力のもとに挿入され、プリント基板の表面に設けた導電パッドに接続する端子57のテイル片81に接続する具体的手段として、上記周知の技術を採用することは、同じくZIFのソケットであって、そのことによる格別の効果もないのであるから、当業者が適宜なし得た設計的事項といえる。そして、上記周知技術におけるY字状の端子の下端側が基板への接続部分であるから、当該部分が引用発明の端子57のテイル片81に対応するものである。
ところで、本願補正発明は駆動レバーが引っ張られるものであるが、上記周知のもののL字型のレバーは、L字型のレバーの垂直部分の上端をソケット本体の外側に向かって回動させると、L字型のレバーの水平部分付近を中心として回動し、水平部分がスライダをカムのように押圧するものである。
これについて、本願の明細書の段落【0023】には「図6及び図7を参照すると、ピン114がZIF開口部204内のフォークリード212間に挿入された後、これらフォークリードを曲げるように、駆動レバー214がフォークリード212の一つに対して駆動プレートを押圧するために引っ張られる様子が示される。」と記載され、請求人は平成23年5月9日付け回答書で、「図6及び7において、駆動レバー214の駆動プレート216と連結されていない方の端部(図6における上端部)が正面左方向に『引っ張られる』と、駆動レバー214の駆動プレート216と連結されている方の端部(図6における下端部)は正面右方向に移動します。つまり、駆動レバー214はその両端部の間のどこか一点を中心に旋回動を行います。そして、駆動プレート216は駆動レバー214の下端部と連結されているため、駆動プレート216全体が同様に正面右方向に移動し、フォークリード212の左側のフォークを押し曲げることになります。このように、図6及び7には、『駆動レバー214がフォークリード212の一つに対して駆動プレートを押圧するために引っ張られる』ことが明確に示されていると思料致します。」と述べている。そうすると、本願補正発明の駆動レバー214は回動するものであって、そのようなものの上端を引っ張るものを含むと解される。
したがって、駆動レバーが引っ張られることについて、本願補正発明と上記周知のものとに実質的な差異はない。さらにいえば、引くか押すかについても、本願補正発明及び引用発明においては、左方向に引くか、右方向に押すかという表現上の違いにすぎないから、このことについても、実質的な差異はない。
なお、付言すると、たとえ、本願補正発明は回動する角度が小さいとして仮定しても、回動する角度をどの程度とするかにすぎず、そのことによる格別の技術的意義もなく、単なる設計上の選択的事項といえる。さらに、仮に、単に回動しないで引っ張るものであったとしても、単に直接スライダを引っ張るようなすことが格別とはいえない。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
そうすると、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その効果についても格別とはいえない。

4.むすび
上記したように、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年4月22日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「IC(集積回路)デバイスのピンを回路基板の接触パッドに結合するソケットシステムであって、
ソケット上に設けられて前記ICデバイスの前記ピンがその内部に挿入される際に実質的にゼロ挿入力となるZIF開口部を有し、
前記ソケット上に設けられた圧力装着リードを有し、この圧力装着リードは、前記回路基板の前記接触パッドに対して押圧力を与えるように前記圧力装着リードを押圧するための押圧機構を備えるものであり、
前記圧力装着リードにピンを結合するための機構を更に有し、
前記圧力装着リードにピンを結合するための前記機構は、前記圧力装着リードに結合され、前記ZIF開口部内の前記ピンを取り巻くフォークリードと、前記フォークリードを前記ピンに対して押圧する駆動プレート及び駆動レバーを有し、前記駆動プレートは、前記ピンが前記フォークリードを通じて前記圧力装着リードに結合されるように、前記フォークリードに向かうよう前記ピンの長さ方向に対して垂直である横方向にのみ押圧され、
前記ソケットは、前記圧力装着リードが前記接触パッドに対して押圧されるように前記回路基板に装着される、
ソケットシステム。」

1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、前記「第2の2.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2の1.」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、ピンが圧力装着リードに結合されることに関し、「駆動レバーが引っ張られると」駆動プレートが押圧され、「フォークリードの一つを押し曲げることにより、前記フォークリードが前記ピンを押圧し、前記ピンが前記フォークリードを通じて前記圧力装着リードに結合され」るとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の3.」に記載したとおり、引用発明及び記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-21 
結審通知日 2011-07-27 
審決日 2011-08-09 
出願番号 特願2006-521953(P2006-521953)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 中川 真一
稲垣 浩司
発明の名称 ICデバイス用の圧力装着ソケット及びZIF(ZeroInsertionForce)ソケット  
代理人 早川 裕司  

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