ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J |
---|---|
管理番号 | 1249558 |
審判番号 | 不服2008-25010 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-30 |
確定日 | 2012-01-05 |
事件の表示 | 特願2002- 8256「コロイド状微粒子スラリーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月29日出願公開、特開2003-210970〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年1月17日の出願であって、平成20年2月12日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月12日付けで意見書が提出され、同年8月28日付けで拒絶査定がなされ、同年9月30日付けで拒絶査定に対する不服の審判請求がなされ、同年12月12日付けで審判請求書の請求の理由を変更する手続補正書(方式)が提出され、その後、当審において平成23年4月26日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成23年7月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年7月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 分散媒として有機溶媒、アンモニア及び水を含んでなる、ゾルゲル法により製造された後の、球状粒子が単分散しているコロイド状金属酸化物微粒子スラリーの分散媒を遠心分離法による固液分離によって一旦除去し、コロイド状微粒子を乾燥させることなく再び分散媒を加えた後に高圧ホモジナイザーで分散させるコロイド状微粒子スラリーの製造方法。」 第3 引用文献の記載事項 当審拒絶理由では、本願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である以下の引用文献を引用した。 引用文献1:特公平4-57605号公報 引用文献2:特開平7-66188号公報 引用文献3:特開平8-176064号公報 引用文献4:特開2000-109533号公報 引用文献5:特開昭63-182204号公報 引用文献6:特開平9-208213号公報 引用文献7:特開昭63-240936号公報 引用文献8:特開平10-310416号公報 1 引用文献1(特公平4-57605号公報)の記載 引用文献1には、次の事項が記載されている(なお、他の文献も含め、下線は当審で付したものである。また、丸付き数字は、○1、○2等と表記する。以下、順に、「引用文献1記載事項(1)」ないし「引用文献1記載事項(7)」という。)。 (1)「特許請求の範囲 1 水に分散しているシリカゾルを遠心分離して液層を除去し、取出した沈降シリカ層に親水性有機溶媒を加えてシリカをこの溶媒中に均一に分散させることを特徴とする有機溶媒分散シリカゾルの製造方法。」(第1欄第1ないし6行) (2)「(産業上の利用分野) 本発明は、有機溶媒分散シリカゾルの製造方法、とくには水分散シリカからの有機溶媒分散シリカゾルの製造方法に関するものである。」(第2欄第19ないし22行) (3)「(問題点を解決するための手段) 本発明は遠心分離により水とシリカを分離し、そこから水だけを除去し、代わりに目的とする有機溶媒を加えて再分散させることで上記の問題点を解決した有機溶媒分散シリカゾルの製造方法を提供するもので、この第1の発明は水に分散しているシリカゾルを遠心分離して液層を除去し、・・・(中略)・・・ これをさらに詳細に説明すると、本発明の操作手順は ○1 水分散シリカゾルを遠心分離で水層とシリカ層とに分離する。 ○2 上澄みの水層を除去した後、目的の親水性有機溶媒を加えて沈降しているシリカ層を再分散させる。 ○3 含水有機溶媒とシリカゾルとを再び遠心分離する。 ○4 所望の含水量になるまで○2○3の操作を反復するとともに、所望のシリカ濃度になるように加える溶媒の量を調整する。」(第4欄第13ないし43行) (4)「手順 ○1 本発明に適用されるシリカゾルは水分散されているシリカゾルであれば、例えば水ガラスから製造されるものや、アルコキシシラン類の加水分解により製造されたものなど、これまで公知の方法で得られた如何なる製法によるものでもよい。・・・(中略)・・・遠心分離の際、与える遠心力が少ない場合、すなわち回転数が低すぎる場合には、分散媒とシリカゾルの分離に多くの時間を必要とし、また過大な遠心力を与えると、分離されたシリカゾルの凝集が強力になり、次工程における再分散が困難になる。したがつて、分散されているシリカゾルの粒径に応じて回転数を適宜選択するのが望ましい。」(第5欄第20ないし37行) (5)「手順 ○2 分離された水および/または有機溶媒の分散媒をシリカゾルから分離する方法はシリカゾルが乾燥しないように注意して行なえばろ過やデカンテーシヨンなど如何なる方法を用いてもよい。」(第5欄第38ないし42行) (6)「ここで使用される親水性有機溶媒は・・・(中略)・・・ この有機溶媒によつて沈降しているシリカ層を再分散するには一般の攪拌で充分であるが、より効率的に進めるにはホモジナイザーなどの高分散装置を用いるのが好ましい。」(第5欄第43行ないし第6欄第12行) (7)「実施例 1 テトラメトキシシランの加水分解によつて得られた平均粒径200nm、シリカ濃度20重量%の水分散シリカゾル500gを、3000rpmで10分間遠心分離した。分離された水350gをデカンテーシヨンで除去し、代わりに無水アセトン350gをいれ、ホモジナイザーでシリカをアセトン中に再分散させた。これを再び遠心分離してシリカと含水アセトンとに分離し、後者をデカンテーシヨンで除去した後、等量の無水アセトンを加えホモジナイザーで再分散させた。以上の工程を4回繰り返してアセトン分散シリカゾル500gを、シリカ濃度19.5%、含水量0.9%で得た。この工程の前後でシリカゾルの粒径の変化は観測されなかつた。」(第8欄第28ないし41行) 2 引用文献2(特開平7-66188号公報)の記載 引用文献2には、次の事項が記載されている(以下、まとめて、「引用文献2記載事項」という。)。 「【0023】また、塗布液の原料として用いられるシリカゾル(A)は、次のような方法で得ることができる。すなわちシリカゾル(A)は、下記一般式で示されるアルコキシシランを、水、有機溶媒およびアルカリ触媒の存在下に加水分解重縮合させることにより得られる。」(【0023】) 「【0026】本発明ではこれらのアルコキシシランを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などが挙げられ、より具体的には、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのエチレングリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチルなどのエルテル類などが用いられる。」(【0026】) 「【0027】アルカリ触媒としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属触媒、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤など、水溶液中でアルカリ性を示す化合物が用いられ、反応混合物のpHが7?12、好ましくは8?11となるような量で用いられる。」(【0027】) 「【0028】シリカゾル(A)の調製法をさらに詳細に説明すると、たとえば、水-アルコール混合溶媒を攪拌しながら、この混合溶媒にアルコキシシランおよび、たとえばアンモニア水などのようなアルカリ触媒を添加してアルコキシシランを反応させる。・・・(中略)・・・ 【0032】また、このようにしてシリカ粒子を生成・成長させた後、用いられている溶媒の沸点以下の温度で一定時間加熱処理を行なってもよい。このような加熱処理を行なうと、アルコキシシランの重縮合がより一層促進され、密度の大きなシリカ粒子が分散したシリカゾルが得られる。」(【0028】ないし【0032】) 「【0035】シリカゾル(A)としては、上記方法で得られた未精製のシリカゾルをそのまま用いることもできるが、後述するようにシリカゾル(A)とアルコキシシランまたはその部分加水分解物(B)との反応を行なう前に、予めシリカゾルから限外ろ過などの手段により、溶媒を水と有機溶媒との混合溶媒から水に置換させておくことが、上記のような本発明に係る半導体装置を製造する際に用いられるシリカ系絶縁膜形成用塗布液を得る上で好ましい。」(【0035】) 3 引用文献3(特開平8-176064号公報)の記載 引用文献3には、次の事項が記載されている(以下、「引用文献3記載事項」という。)。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、パラキシレンを酢酸中で液相酸化して製造したテレフタル酸の酢酸スラリ-の分散媒を水に置換し、テレフタル酸の水スラリ-を調製する方法に関する。」(【0001】) 4 引用文献4(特開平2000-109533号公報)の記載 引用文献4には、次の事項が記載されている(以下、「引用文献4記載事項」という。)。 「【0038】以下、本発明の水系被覆材について詳細に説明する。・・・(中略)・・・具体的には、例えば、得られたウレタン(メタ)アクリレートを含む溶液を溶媒置換で純水に置換して、水系ウレタン(メタ)アクリレート(以下、エマルションと示す)を得ることができる。」(【0038】) 5 引用文献5(特開昭63-182204号公報)の記載 引用文献5には、次の事項が記載されている(以下、「引用文献5記載事項」という。)。 「2.特許請求の範囲 (1) 加水分解可能な有機金属化合物をアルコール性溶液中で加水分解してえられる水和物微粒子懸濁体より無機酸化物微粒子の有機溶媒単分散体を製造するに際し、・・・(中略)・・・第三の工程;カツプリング処理を施されたアルコール性溶液懸濁体のアルコール性溶媒を有機溶媒に溶媒置換して酸化物微粒子の有機溶媒単分散体をうる工程を含むことを特徴とする有機酸化物微粒子の有機溶媒単分散体の製法。」(第1ページ左下欄第4ないし19行) 6 引用文献6(特開平9-208213号公報)の記載 引用文献6には、次の事項が記載されている(以下、「引用文献6記載事項」という。)。 「【0017】コロイド状シリカの球状粒子については、粒径はD=2720/Sの式で計算する。」(【0017】) 7 引用文献7(特開昭63-240936号公報)の記載 引用文献7には、次の事項が記載されている(以下、「引用文献7記載事項」という。)。 「1 マトリックス型であり、大きさが500 nm以下の球状粒子形状をした物質の分散コロイド系を製造する方法において」(第1ページ左下欄第6ないし8行) 8 引用文献8(特開平10-310416号公報)の記載 引用文献8には、次の事項が記載されている(以下、「引用文献8記載事項」という。)。 「【0038】上記のような絞り機構を有した装置としては、一般に、高圧ホモジナイザーと呼ばれている市販の装置が好適に使用できる。 【0039】高圧ホモジナイザーの基本的な構成は、シリカスラリーを加圧する高圧発生部と絞り機構よりなる。高圧発生部としては、一般にプランジャーポンプと呼ばれている高圧ポンプが好適に採用される。高圧ポンプには、一連式、二連式、三連式などの各種の形式があり、また動力としては、空圧、電動、油圧などの形式があるが、絞り機構の入口側と出口側との差圧が400?3500kgf/cm^(2)の範囲に維持できるものであれば特に制限なく採用できる。 ・・・(中略)・・・ 【0043】高圧ホモジナイザーの代表例を具体的に例示すると、ナノマイザー(株)製の商品名;ナノマイザー、マイクロフルイディクス製の商品名;マイクロフルイダイザー、スギノマシン製のアルティマイザー及びミラクル製のナノメーカーなどを挙げることができる。上記で例示した装置はいずれも流通式であるため、出口側で取り出されたシリカ分散液は一応に(審決注:「一応に」は「一様に」の誤記である。特許第3922758号公報の【0041】を参照。)粉砕、解砕または分散等の処理を受けたことになるため均一性が高い点で、超音波分散やホモジナイザー等のバッチ式とは異なり優れている。 【0044】また、粉砕、解砕または分散処理が高効率で行われること、不純物の混入が極めて少ないこと、大量処理にも適応可能なことなど、工業的に利用するのには適している。」(【0038】ないし【0044】) 第4 引用文献1に記載された発明 引用文献1記載事項(4)には、シリカゾルがアルコキシシラン類の加水分解により製造されるものであることが記載されている。 引用文献1記載事項(3)には、遠心分離された水がシリカゾルから一旦除去され、再び有機溶媒が加えられることが記載されている。 引用文献1記載事項(5)には、遠心分離された水をシリカゾルから分離する方法はシリカゾルが乾燥しないように行う方法であることが記載されている。 引用文献1記載事項(6)および(7)には、有機溶媒を加えた後にホモジナイザーで分散させることが記載されている。 したがって、引用文献1記載事項(1)ないし(7)からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「アルコキシシラン類の加水分解により製造された後の、シリカゾルが分散している水分散シリカゾルの水を遠心分離によって一旦除去し、シリカゾルを乾燥させることなく再び有機溶媒を加えた後にホモジナイザーで分散させる有機溶媒分散シリカゾルの製造方法。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 1 一致点 本願発明における「ゾルゲル法により製造された」は、本願明細書の【0004】の「金属アルコキシドを加水分解させて製造される球状粒子が単分散しているコロイド状の金属酸化物微粒子(以下では、ゾルゲル法により製造された金属酸化物微粒子ともいう。)」という記載からみて、「金属アルコキシドを加水分解させて製造された」ことを意味している。また、引用発明における「アルコキシシラン類」は、金属アルコキシドの一種である。よって、引用発明における「アルコキシシラン類の加水分解により製造された」は、本願発明における「ゾルゲル法により製造された」に相当する。 引用発明のシリカゾルは水分散しているから、引用発明における「水」は、ゾルゲル法により製造された後の、「分散媒」という点で、本願発明における「分散媒として有機溶媒、アンモニア及び水を含んでなる」分散媒と一致する。 引用発明における「シリカゾル」は、引用文献1記載事項(7)の「テトラメトキシシランの加水分解によつて得られた平均粒径200nm、シリカ濃度20重量%の水分散シリカゾル500g」における「平均粒径200nm」というという記載からみて、本願発明における「コロイド状微粒子」に相当する。 引用発明における「水分散シリカゾル」は、本願発明における「コロイド状金属酸化物微粒子スラリー」に相当する。 引用発明における「有機溶媒」は、シリカゾルを乾燥させることなく再び加えられるものであるから、本願発明における「コロイド状微粒子を乾燥させることなく再び分散媒を加えた」の「分散媒」に相当する。 引用発明における「遠心分離」は、それによって水分散シリカゾルの水を除去しているから、本願発明における「遠心分離法による固液分離」に相当する。 引用発明における「有機溶媒分散シリカゾル」は、有機溶媒を再び加えた後も、コロイド状のスラリーであることは明らかであり、また、「この工程の前後でシリカゾルの粒径の変化は観測されなかつた。」(引用文献1記載事項(7))と記載されているから、本願発明における「コロイド状微粒子スラリー」に相当する。 引用発明における「ホモジナイザー」と本願発明における「高圧ホモジナイザー」は、「ホモジナイザー」という点で一致する。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。 「ゾルゲル法により製造された後の、粒子が分散しているコロイド状金属酸化物微粒子スラリーの分散媒を、遠心分離法による固液分離によって一旦除去し、コロイド状微粒子を乾燥させることなく再び分散媒を加えた後にホモジナイザーで分散させるコロイド状微粒子スラリーの製造方法。」 2 相違点 そして、以下の3点で相違する。 <相違点1> ゾルゲル法により製造された後の、「分散媒」が、本願発明では、「分散媒として有機溶媒、アンモニア及び水を含んでなる」ものであるのに対し、引用発明では、「水」である点。 <相違点2> 「粒子」が、本願発明では、「球状」で「単分散」しているのに対し、引用発明では、分散しているものの、どのようなものか明らかでない点。 <相違点3> 「再び分散媒を加えた後」の「分散」を行う「ホモジナイザー」が、本願発明では、「高圧ホモジナイザー」であるのに対し、引用発明では、「ホモジナイザー」である点。 第6 相違点についての判断 そこで、上記相違点1ないし3について、以下に検討する。 1 相違点1について 引用文献2記載事項の【0023】、【0027】、及び【0035】には、アルコキシシランを水、有機溶媒及びアルカリ触媒であるアンモニアの存在下に加水分解重縮合させることにより、シリカゾルを得た後、水、有機溶媒およびアルカリ触媒であるアンモニアの混合溶媒を水に置換させることが記載されている。 また、引用文献3ないし5記載事項に記載されるように、分散媒を有機溶媒から水や他の有機溶媒に置換することは、一般的に行われていることでもある。 他方、引用文献1記載事項(4)の「本発明に適用されるシリカゾルは水分散されているシリカゾルであれば、・・・(中略)・・・アルコキシシラン類の加水分解により製造されたものなど、これまで公知の方法で得られた如何なる製法によるものでもよい。」の記載によると、引用発明における分散媒を水としたシリカゾルは、公知の如何なる製法で得られたものでよいものである。 したがって、引用発明におけるゾルゲル法により製造された後の、「分散媒」を、有機溶媒、アンモニア及び水を含んでなるものとすることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。 2 相違点2について 粒子をコロイド状に分散させる際に、粒子形状を球状とすることは、引用文献6及び7記載事項に記載されている。 また、「単分散」とは、全ての粒子が同じ大きさ、即ち均一であることを意味するものであるところ、引用文献1記載事項(1)によると、引用発明は、粒子を溶媒中に均一に分散させるものである。 したがって、引用発明において、粒子の形状を「球状」とし、当該粒子を「単分散」の状態にすることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。 3 相違点3について 引用文献1記載事項(6)に、「ホモジナイザーなどの高分散装置を用いるのが好ましい。」と記載されており、「高圧ホモジナイザー」は、高い分散処理性能を有する装置として周知の手段である(引用文献8記載事項を参照。)。 そうすると、引用発明において、粒子の分散性を高めるために、「高圧ホモジナイザー」を採用することは、当業者であれば容易に想到し得た設計事項である。 4 効果について 審判請求人は、「コロイド状金属酸化物微粒子スラリーを遠心分離後に再度分散媒中に微分散させる際に高圧ホモジナイザーを用いると、分散媒を変更した後のコロイド状金属酸化物微粒子スラリー中のコロイド状金属酸化物微粒子の平均粒子径を、製造後のものの平均粒子径よりも小さくすることができる」(平成23年7月11日付け意見書の(3)を参照。)と主張する。 しかし、引用文献8記載事項の以下の記載のように、「高圧ホモジナイザー」は、分散液を一様に粉砕、解砕または分散するものであって、通常の「ホモジナイザー」より均一性が高く、また、粉砕、解砕または分散処理を高効率で行えるものである。 「【0043】高圧ホモジナイザーの代表例を具体的に例示すると、ナノマイザー(株)製の商品名;ナノマイザー、マイクロフルイディクス製の商品名;マイクロフルイダイザー、スギノマシン製のアルティマイザー及びミラクル製のナノメーカーなどを挙げることができる。上記で例示した装置はいずれも流通式であるため、出口側で取り出されたシリカ分散液は一様に粉砕、解砕または分散等の処理を受けたことになるため均一性が高い点で、超音波分散やホモジナイザー等のバッチ式とは異なり優れている。 【0044】また、粉砕、解砕または分散処理が高効率で行われること、不純物の混入が極めて少ないこと、大量処理にも適応可能なことなど、工業的に利用するのには適している。」 さらに、下記の刊行物の記載のように、「高圧ホモジナイザー」は、流体中の液体あるいは固体粒子を微細化することができ、スラリー材の微粒化にも利用できることが一般的に知られている。 ・「混練・分散の基礎と先端的応用技術」(株式会社テクノシステム、2004年1月26日発行、第613ページ左欄ないし第614ページ左欄)の「3.3 高圧ホモジナイザー式乳化分散機 高圧ホモジナイザーは高圧プランジャーポンプ等によって、試料流体をノズルから高圧(300?3000kg/cm^(2))で噴射させ、次の二つの機構によって試料流体中の液体あるいは固体粒子を微細化する。・・・(略)・・・これらの高圧ホモジナイザーは最終的にサブミクロンやナノサイズの超微細粒子を得るための精乳化用分散機として利用されている。また、本機もいわゆる固液分散系試料の微粒化に利用できることは言うまでもない。」 してみると、審判請求人の主張する効果は、引用発明において「ホモジナイザー」として「高圧ホモジナイザー」を使用したことによる当然の効果にすぎない。 したがって、本願発明を全体としてみても、本願発明の効果は、引用発明及び引用文献2ないし8記載事項からみて格別なものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2ないし8記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-11-04 |
結審通知日 | 2011-11-08 |
審決日 | 2011-11-22 |
出願番号 | 特願2002-8256(P2002-8256) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B01J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 雅博 |
特許庁審判長 |
北村 明弘 |
特許庁審判官 |
中澤 登 加藤 友也 |
発明の名称 | コロイド状微粒子スラリーの製造方法 |