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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M |
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管理番号 | 1249571 |
審判番号 | 不服2010-2391 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-04 |
確定日 | 2012-01-05 |
事件の表示 | 特願2004-160865「医療用チューブの接合方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-334542〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成16年5月31日の出願であって、平成21年10月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月4日に拒絶査定不服審判が請求され、平成23年6月23日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、同年8月29日付けで、意見書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成22年2月4日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「外径を縮径した一方のチューブの端部を、内径を拡径した他方のチューブの端部に挿入して重ね合わせ、そのときの重ね合わせた接合部の肉厚が、接合部以外のチューブの肉厚とほぼ変わらない形状とし、前記チューブは、印加周波数1MHzでの、温度20℃における誘電損失ε・tanδ(ε:誘電率、tanδ:誘電力率)が0.012以上で、0.7以下である材料からなり、更に少なくとも両チューブの接合部の内周に至るように導電性の芯金を挿入し、前記接合部外周には導電性の型枠を配置して、両チューブの接合部を挟み、前記芯金と前記型枠との間で、両チューブの接合部を外周及び内周から押圧しつつ、前記芯金と前記型枠との間に高周波電圧を印加し、誘電加熱により両チューブの接合面を溶着させて接合することを特徴とする医療用チューブの接合方法。」 3 刊行物 当審の拒絶の理由において引用された特開昭59-42921号公報、特開昭53-97623号公報及び特開平4-39028号公報(以下、それぞれ「刊行物1」、「刊行物2」及び「刊行物3」という。)には次のとおり記載されている。 (1)刊行物1 (1-1)「本発明は、合成樹脂製の管状部材の接合方法に係るもので、さらに詳しくは、ポリ塩化ビニル等の誘電損失係数の比較的大きい材料より成る管状部材の高周波誘電加熱溶着による接合方法の改良に関するものである。 従来、ポリ塩化ビニル、ナイロン樹脂等の接合には、高周波誘電加熱を利用した接合方法がとられている。この方法によれば、厚い部材でも表面と内部との温度差がなく均一に加熱でき、また局部的な選択加熱も可能であるので、合成樹脂の高周波誘電加熱溶着方法はきわめて有効な接合方法である。」(1頁左下欄13行?同頁右下欄4行) (1-2)「従来、管状部材の高周波誘電加熱溶着方法には、第4図に示すように、先ず大口径管状4aの内部に小口径管状部材4bを挿入し、2つの管状部材4a、4bの重なり合う部分である被着部5の内部へ小口径管状部材4bの内径とほぼ等しい外径を有する電極2を挿入し、一方被着部5の外周面6を電極3の半体3a、3bで包囲し、両電極2、3間に高周波電圧を印加するという工程を採っていた。」(1頁右下欄7?15行) 上記記載事項から刊行物1には次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 「大口径管状部材4aの内部に小口径管状部材4bを挿入し、それらの管状部材の重なり合う部分である被着部5の内部へ小口径管状部材4bの内径とほぼ等しい外径を有する電極2を挿入し、被着部5の外周面を電極3の半体3a、3bで包囲し、両電極2、3間に高周波電圧を印加してポリ塩化ビニル等の誘電損失係数の比較的大きい材料からなる合成樹脂製の管状部材を高周波誘電加熱を利用して接合する方法。」 (2)刊行物2 (2-1)「従来、熱可塑性樹脂管同士を熱溶融嵌合しようとする場合、熱可塑性樹脂管受口の内周縁と熱可塑性樹脂管挿口の外周縁とを熱溶融してそれぞれ同勾配の溶融面を形成し、両溶融面をつき合わせて接合することがある…(中略)…。」(1頁左下欄最下行?右下欄4行) (2-2)「本願の要旨は截頭円錐形凸部と截頭円錐形凹部とを有し、凸部のテーパー面が凹部のテーパー面より急勾配とされてなる加熱治具の凸部及び凹部を用いて、それぞれ熱可塑性樹脂管受口の内周縁及び熱可塑性樹脂管挿口の外周縁を熱溶融して、両者の溶融面を接合することを特徴とする熱可塑性樹脂管の接合方法に存する。」(1頁右下欄11?18行) (2-3)「2は熱可塑性樹脂管の受口であり、その管端部内周縁は加熱治具1の凸部11のテーパー面の長さL_(11) よりも長い傾斜面21をもっている。この部分に加熱された加熱治具1の凸部11を充分押圧することにより、加熱治具1の凸部11の外周面の形状に合致する溶融面22を形成する。…(中略)…3は熱可塑性樹脂管の挿口である。管端部外周縁に設けられた傾斜面に加熱された加熱治具1の凹部12を充分押圧することにより、加熱治具1の凹部12の内面形状に合致する溶融面31を形成する。…(中略)…受口2の溶融面22に挿口3の溶融面31の部分を押し込んで両者の溶融面を相互につき合わせて接合する。」(2頁左上欄9行?右上欄12行) 第4図及び第5図の記載からみて、内径を拡径した端部を受口とした熱可塑性樹脂管2に、外径を縮径した熱可塑性樹脂管2の端部を挿入して重ね合わせ、そのときの重ね合わせた接合部の肉厚を、接合部以外のチューブの肉厚とほぼ変わらない形状であることが窺える。 以上から、刊行物2には、熱可塑性樹脂管を接合するにあたり、一方のチューブである熱可塑性樹脂管の外径を縮径した端部を、他方のチューブである熱可塑性樹脂管の内径を拡径した端部に挿入して重ね合わせ、そのときの重ね合わせた接合部の肉厚が、接合部以外のチューブの肉厚とほぼ変わらない形状として接合する技術が記載されている。 (3)刊行物3 (3-1)「第1図は、直管状の二つのポリエチレン管1,2を、これらと同種、つまり、ポリエチレン製の管状継手3を介して同心状に圧接接合する方法を示し、上記ポリエチレン管1,2の端面はそれぞれ、ほぼ45度の外向きの傾斜面1a,2aに形成されている一方、上記管状継手3はその内径D1が上記両ポリエチレン管1,2の内径d1と等しく、外径D2が上記両ポリエチレン管1,2の外径d2よりもやや大きく設定されているとともに、その軸線方向の両端面がそれぞれ、ほぼ45度の内向き傾斜面3a,3aに形成されている。 上記のような二つのポリエチレン管1,2の間に上記管状継手3を、傾斜端面1a,2aと3a,3aとがそれぞれ面接触するように同心状に介在させるとともに、上記二つのポリエチレン1,2に第1図の矢印f1,f2で示す軸力を加えて、上記の面接触する傾斜端面1a,3aおよび2a,3aどうしを圧接する。」(2頁右下欄17行?3頁左上欄15行) 第2図及び第3図の記載からみて、ポリエチレン管と管状継手との重ね合わせた接合部の肉厚がポリエチレン管及び管状継手の肉厚とほぼ変わらない形状であることが窺える。 ポリエチレン管1,2と管継手3は熱可塑性樹脂管といえる。 以上から、刊行物3には、熱可塑性樹脂管を接合するにあたり、一方のチューブである熱可塑性樹脂管の外径を縮径した端部を、他方のチューブである熱可塑性樹脂管の内径を拡径した端部に挿入して重ね合わせ、そのときの重ね合わせた接合部の肉厚が、接合部以外のチューブの肉厚とほぼ変わらない形状として接合する技術が記載されている。 4 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「小口径管状部材4b」及び「大口径管状部材4a」はそれぞれ本願発明の「一方のチューブ」及び「他方のチューブ」に相当する。したがって、引用発明の「大口径管状部材4aの内部に小口径管状部材4bを挿入し、」と、本願補正発明の「外径を縮径した一方のチューブの端部を、内径を拡径した他方のチューブの端部に挿入して重ね合わせ、そのときの重ね合わせた接合部の肉厚が、接合部以外のチューブの肉厚とほぼ変わらない形状とし、」とは、「一方のチューブの端部を、他方のチューブの端部に挿入して重ね合わせ、」である限りにおいて共通している。 また、引用発明の「それらの管状部材の重なり合う部分である被着部5の内部」は、その構造または機能からみて、本願発明の「両チューブの接合部の内周」に相当し、以下同様に、「電極2」は「導電性の芯金」に、「被着部5の外周面」は「接合部外周」に、「電極3の半体3a,3b」は「導電性の型枠」に、それぞれ相当する。したがって、引用発明の「それらの管状部材の重なり合う部分である被着部5の内部へ小口径管状部材4bの内径とほぼ等しい外径を有する電極2を挿入し、被着部5の外周面を電極3の半体3a、3bで包囲し、」は本願発明の「少なくとも両チューブの接合部の内周に至るように導電性の芯金を挿入し、前記接合部外周には導電性の型枠を配置して、両チューブの接合部を挟み、」に相当する。 また、引用発明の「両電極2、3間に高周波電圧を印加して」と本願発明の「前記芯金と前記型枠との間で、両チューブの接合部を外周及び内周から押圧しつつ、前記芯金と前記型枠との間に高周波電圧を印加し、」とは「前記芯金と前記型枠との間に高周波電圧を印加し、」である限りにおいて共通している。 さらに、引用発明の「ポリ塩化ビニル等の誘電損失係数の比較的大きい材料からなる合成樹脂製の管状部材を高周波誘電加熱を利用して接合する」は本願発明の「誘電加熱により両チューブの接合面を溶着させて接合する」に相当する。 したがって、両者は「一方のチューブの端部を、他方のチューブの端部に挿入して重ね合わせ、更に少なくとも両チューブの接合部の内周に至るように導電性の芯金を挿入し、前記接合部外周には導電性の型枠を配置して、両チューブの接合部を挟み、前記芯金と前記型枠との間に高周波電圧を印加し、誘電加熱により両チューブの接合面を溶着させて接合するチューブの接合方法」の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 一方のチューブの端部を、他方のチューブの端部に挿入して重ね合わせる点について、本願発明においては、「外径を縮径した一方のチューブの端部を、内径を拡径した他方のチューブの端部に挿入して重ね合わせ、そのときの重ね合わせた接合部の肉厚が、接合部以外のチューブの肉厚とほぼ変わらない形状とし」ているのに対し、引用発明においては、「大口径管状部材4aの内部に小口径管状部材4bを挿入」している点。 (相違点2) チューブについて、本願発明は「チューブは、印加周波数1MHzでの、温度20℃における誘電損失ε・tanδ(ε:誘電率、tanδ:誘電力率)が0.012以上で、0.7以下である材料」としているのに対し、引用発明においては、誘電損失ε・tanδ(ε:誘電率、tanδ:誘電力率)の値が明らかでない点。 (相違点3) 芯金と型枠との間に高周波電圧を印加する点について、本願発明は「芯金と前記型枠との間で、両チューブの接合部を外周及び内周から押圧しつつ」行うのに対し、引用発明においては、両チューブの接合部を外周及び内周から押圧しつつ」行うのか明らかでない点。 (相違点4) 接合するチューブについて、本願発明のチューブは医療用であるのに対し、引用発明のチューブはその用途が明らかでない点。 5 判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物2及び3には、一方のチューブである熱可塑性樹脂管の外径を縮径した端部を、他方のチューブである熱可塑性樹脂管の内径を拡径した端部に挿入して重ね合わせ、そのときの重ね合わせた接合部の肉厚が、接合部以外のチューブの肉厚とほぼ変わらない形状として接合することが記載されている。 そして、引用発明も、刊行物2及び3に記載された技術も共に合成樹脂管の接合方法に関するものである。 さらに、引用発明のチューブの接合方法において、前記芯金と前記型枠との間に高周波電圧を印加し、誘電加熱により両チューブの接合面を溶着させて接合するに際して刊行物2又は3に記載された技術を適用することについての困難性も認められない。 したがって、引用発明に上記刊行物2又は3に記載された技術を適用して相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。 (相違点2について) 本願発明のチューブについての「前記チューブは、印加周波数1MHzでの、温度20℃における誘電損失ε・tanδ(ε:誘電率、tanδ:誘電力率)が0.012以上で、0.7以下である材料からなり、」は、本願発明の方法での誘電加熱による融着が可能な熱可塑性樹脂の範囲を示していると認められる。 一方、引用発明において用いられる材料は塩化ビニルであるところ、刊行物1には、当該材料の印加周波数1MHzでの誘電損失ε・tanδが0.012以上で、0.7以下の範囲内であるかどうかについての記載は見あたらない。 しかしながら、塩化ビニルは、本件明細書において、印加周波数1MHzでの誘電損失ε・tanδが0.012以上で、0.7以下の範囲内のものとして挙げられているもの(段落【0026】を参照。)であるし、また、「0.012」、「0.7」の値に臨界的意義を認めることもできない。 したがって、相違点2は実質的に相違するものとはいえない。 (相違点3について) 2部材の接合において、接合面に向けて押圧力を加えることは周知慣用の技術手段である。そして、引用発明に刊行物2又は3に記載された技術事項を適用したチューブの接合方法において、その接合の際に接合面に向けて押圧力を加えることは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項にすぎない。 したがって、引用発明において相違点3に係る本願発明の特定事項とすることは当業者が容易に想到し得る程度の事項にすきない。 (相違点4について) 合成樹脂材料の医療用チューブを熱溶着することは普通に行われているところであるから、引用発明の用途として医療用を選択し、相違点4に係る本願発明の特定事項とすることも当業者が容易に想到し得ることである。 そして、相違点1ないし4に係る本願発明の特定事項とすることによる効果を総合して判断しても、当業者が予測し得る範囲のものであって、格別のものは認められない。 よって、本願発明は、引用発明、刊行物2及び3に記載された技術及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、刊行物2及び3に記載された技術及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-11-02 |
結審通知日 | 2011-11-08 |
審決日 | 2011-11-21 |
出願番号 | 特願2004-160865(P2004-160865) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 智弥 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
田合 弘幸 蓮井 雅之 |
発明の名称 | 医療用チューブの接合方法 |
代理人 | 松井 茂 |