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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1249667 |
審判番号 | 不服2008-25526 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-12 |
確定日 | 2012-01-04 |
事件の表示 | 特願2002-540178「非平行なイオンビームで行う複モードのイオン注入」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月10日国際公開,WO02/37524,平成16年 6月10日国内公表,特表2004-517469〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2001年10月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年10月30日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成20年2月22日付けの拒絶理由通知に対して,同年5月22日に意見書が提出されたが,同年6月11日に拒絶査定がされ,これに対し,同年9月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年10月10日付けで手続補正がされ,その後当審において平成22年10月15日付けで審尋がされ,平成23年4月14日に回答書が提出されたものである。 第2 平成20年10月10日付けの手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成20年10月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成20年10月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,本件補正前の請求項17を,本件補正後の請求項17とする補正(以下「本件補正事項」という。)を含むものであって,本件補正前後の請求項17は,次のとおりである。 (1)本件補正前の請求項17 「ワークピースにイオンを注入する方法であって, イオンビームを発生させる工程と, 基準の向きに関して第一の角度に向けられたワークピースについて第一の注入を実行する工程と, 基準の向きに関して第二の角度に向けられたワークピースについて第二の注入を実行する工程と, を含み, 第一および第二の角度が,基準の向きに関して反対の符号をもつ,ところの方法。」 (2)本件補正後の請求項17 「ワークピースにイオンを注入する方法であって, イオンビームを発生させる工程と, 基準の向きに関して第一の角度に向けられたワークピースについて第一の注入を実行する工程と, 基準の向きに関して第二の角度に向けられたワークピースについて第二の注入を実行する工程と, を含み, 第一および第二の角度が,基準の向きに関して反対の符号をもち,さらに第一および第二の角度がイオンビームの発散角度の半分に等しいか,またはそれよりも大きい, ところの方法。」 2 新規事項の追加の有無,及び補正目的の適否について 本件補正事項は,補正前の請求項17に,「さらに第一および第二の角度がイオンビームの発散角度の半分に等しいか,またはそれよりも大きい」との事項を付加するものである。当該事項は,本願の願書に最初に添付された明細書の【0025】,【0026】に基づくものであり,また,補正前の「第一の角度」及び「第二の角度」を更に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって,本件補正事項は,特許法第17条の2第3項の規定に適合し,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件の検討 以上で検討したとおり,本件補正事項は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項17に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下で更に検討する。 3-1 本件補正後の請求項17に係る発明 本件補正後の請求項17に係る発明(以下「補正発明」という。)は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項17に記載されたとおりのものである(上記1(2))。 3-2 引用例に記載された事項と引用発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開昭63-226922号公報(以下「引用例」という。)には,第1図とともに,次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。 ア「再び第1図に戻ると,Siイオン注入において,1回目のイオン注入は同図(a)に示される如く,半導体基板1をイオン注入方向に対し+7°傾けて,150KeVの注入エネルギー,注入ドーズ量0.9×10^(13)cm^(-2)で1分注入する。この1回目のイオン注入で作られるソース注入層7とドレイン注入層6とは第1図(a)に実線で示す。 次に,第1図(b)に示される如く,半導体基板1をイオン注入方向に対して-7°傾け,150KeVの注入エネルギー,注入ドーズ量0.9×10^(13)cm^(-2)で1分注入する。このとき作られるソース注入層7,ドレイン注入層6は第1図(b)に点線で示す。」(第2頁右下欄第3行?第14行) イ「図示のように,従来のイオン注入方法では,面チャネリングを防ぐため半導体基板に対し+7゜の角度で注入している。これをやや詳しく説明すると,半導体基板1の結晶をみると結晶が密な部分と粗の部分とがあり,イオンを基板面に垂直に注入すると結晶の密な部分ではイオンが入り難く浅くしか注入されないが,粗な部分ではイオンが入り易く深くまで注入される。その結果,イオン注入の深さにバラツキがあり,量産においては均一性が損なわれ再現性が悪いので,前記した如くイオンを半導体基板に対し+7°の角度で注入する。なお図において,7°の角度は説明のため誇張して示される。」(第2頁左上欄第1行?第13行) (2)上記(1)によれば,引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体基板1をイオン注入方向に対し+7°傾けて,150KeVの注入エネルギー,注入ドーズ量0.9×10^(13)cm^(-2)で1分注入する工程と, 次に,半導体基板1をイオン注入方向に対して-7°傾け,150KeVの注入エネルギー,注入ドーズ量0.9×10^(13)cm^(-2)で1分注入する工程と, を含むイオン注入方法。」 3-3 補正発明と引用発明との対比 補正発明と,引用発明とを対比する。 (1)引用発明における「半導体基板1」は,補正発明における「ワークピース」に相当する。また,引用発明の「イオン注入方法」は,「半導体基板1」にイオンを注入する方法であるから,補正発明と引用発明は「ワークピースにイオンを注入する方法」である点で一致する。また,引用発明が「イオンビームを発生させる工程」を有していることは明らかである。 (2)引用発明における「イオン注入方向」は,補正発明における「基準の向き」に相当し,引用発明における「イオン注入方向に対し+7°」及び「イオン注入方向に対して-7°」が,補正発明における「第一の角度」及び「第二の角度」に相当する。また,補正発明と引用発明は「第一および第二の角度が,基準の向きに関して反対の符号をもつ」点で一致する。 (3)上記(2)から,引用発明における「半導体基板1をイオン注入方向に対し+7°傾けて,150KeVの注入エネルギー,注入ドーズ量0.9×10^(13)cm^(-2)で1分注入する工程」は,補正発明における「基準の向きに関して第一の角度に向けられたワークピースについて第一の注入を実行する工程」に相当し,引用発明における「半導体基板1をイオン注入方向に対して-7°傾け,150KeVの注入エネルギー,注入ドーズ量0.9×10^(13)cm^(-2)で1分注入する工程」は,補正発明における「基準の向きに関して第二の角度に向けられたワークピースについて第二の注入を実行する工程」に相当する。 そうすると,補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。 <一致点> 「ワークピースにイオンを注入する方法であって,イオンビームを発生させる工程と,基準の向きに関して第一の角度に向けられたワークピースについて第一の注入を実行する工程と,基準の向きに関して第二の角度に向けられたワークピースについて第二の注入を実行する工程と,を含み,第一および第二の角度が,基準の向きに関して反対の符号をもつ,ところの方法。」である点。 <相違点> 補正発明は「第一および第二の角度がイオンビームの発散角度の半分に等しいか,またはそれよりも大きい」のに対し,引用発明では「第一及び第二の角度」と「イオンビームの発散角度」の関係が,そのように規定されていない点。 3-4 相違点についての判断 (1)引用例の上記3-2(1)イで摘記した箇所において,「イオンを基板面に垂直に注入」したとき,半導体基板の結晶の粗密に起因してイオン注入深さがバラつくと説明されていること,上記3-2(1)アで摘記した箇所において,「イオン注入方向」を基準に基板の傾きを規定していること,更に,引用例の第1図に,注入イオンが複数本の矢線で図示され,当該矢線と,一点鎖線で図示された基板の法線との角度が示されていることからみて,引用例では,イオンビームの方向が基板に対して一様であることが前提となっていると理解できる。すなわち,引用例には,引用発明におけるイオンビームの発散角度が0°(平行なイオンビーム)であることが記載されているに等しいものと理解できる。 一方,補正発明では,イオンビームの発散角度の範囲について特定されていないから,イオンビームの発散角度が0°(平行なイオンビーム)の場合を含むものと認められる。 そうすると,補正発明は,発散角度が0°の場合において引用発明と区別のつかないものであるといえる。 よって,補正発明は,引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し,特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。 (2)なお,引用発明の発散角度を0°と特定できないとしても,上記3-2(1)ア,イで摘記した引用例の記載からみて,引用例では,少なくとも平行なイオンビームを想定した検討がなされていると理解できるから,引用発明におけるイオンビームとして,技術的に可能な範囲でなるべく平行に近いもの(発散角度が小さいもの)を用いることが示唆されているといえる。 一方,引用発明における「第一及び第二の角度」の大きさは7°であるところ,発散角度の半分が7°以下であるイオンビームは,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,次の周知例1?3にも記載されているとおり,周知のイオンビームである。 ・周知例1:特開昭63-301456号公報 「この場合に静電レンズ3とウェーハ5の間に第1図(b)に示すようにイオンビーム2の照射領域の両端にほぼ平行の接地電位の筒の先に測定電極7を設け,この測定電極7に流入するイオンビーム2の電流値を電流計8にて計測し,その電流値が最大となるように静電レンズ電源6を制御し,イオンビーム2の収斂状態を補正する平行度計測手段によりイオンビーム2の平行度を±1°に安定させている。」(第3頁左下欄第11行?第19行) ・周知例2:特開平4-368122号公報 「図5にイオン注入時のイオンビームと半導体基板との位置関係を示す。現在用いられている一般的な角度スキャン方式のイオン注入装置では,半導体基板位置でのイオンビームの平行度が良くなく(3インチ基板内で±1.5°《図5のΔ》程度)」(【0003】) ・周知例3:特開平5-166483号公報 「【0034】図7の(A)図によると,水平方向の発散角を0度近傍に抑え,垂直方向のビーム傾きも0度近傍に抑えるには,電界レンズ6へ約30KVの電圧を印加すればよいことが分かる。・・・(以下略)・・・」 そうすると,引用発明において,なるべく平行に近いイオンビームとして上記周知のイオンビームを採用することにより,「第一および第二の角度がイオンビームの発散角度の半分に等しいか,またはそれよりも大きい」設定とすることは,当業者が引用発明を実施するに当たり,引用例の示唆に沿って自然に到達し得たことである。 よって,補正発明は,周知の事項を勘案し引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3-5 独立特許要件についてのまとめ 以上のとおり,本件補正後の特許請求の範囲の請求項17に記載されている事項により特定される発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。よって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 4 補正却下の決定についてのまとめ 以上検討したとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成20年10月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?27に係る発明は,平成17年7月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定されるものであり,その内の請求項17に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記第2,1(1)に本件補正前の請求項17として摘記したとおりのものである。 2 引用発明 引用発明は,上記第2,3-2(3)で認定したとおりのものである。 3 対比・判断 上記第2,2で検討したように,補正発明は,実質的に,本件補正前の請求項17に対し,「さらに第一および第二の角度がイオンビームの発散角度の半分に等しいか,またはそれよりも大きい」との限定事項を付加したものである。また,上記第2,3,3-3で検討したとおり,補正発明と引用発明は,上記限定事項の点でのみ相違するものである。 そうすると,上記限定事項を有さない本願発明は,引用発明と構成上の差異を有さないから,本願発明と引用発明は,同一の発明であるということができる。 4 本願発明についての結論 以上検討したとおり,本願発明は,引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し,特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。 第4 結言 以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-29 |
結審通知日 | 2011-08-03 |
審決日 | 2011-08-19 |
出願番号 | 特願2002-540178(P2002-540178) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) P 1 8・ 113- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和瀬田 芳正 |
特許庁審判長 |
齋藤 恭一 |
特許庁審判官 |
小川 将之 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 非平行なイオンビームで行う複モードのイオン注入 |
代理人 | 堀 明▲ひこ▼ |