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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1249697
審判番号 不服2009-22889  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2012-01-04 
事件の表示 特願2006-528205「無線通信システムにおいてTDDとFDDとの間でリソース配分を統合するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日国際公開、WO2005/032172、平成19年 3月22日国内公表、特表2007-507180〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成16年9月25日(パリ条約による優先権主張2003年9月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年9月16日付けの拒絶の理由の通知に対して、平成21年1月19日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年7月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

II.平成21年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年11月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正前・補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。

〈補正前〉
「 時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間での無線通信の遷移を制御する装置であって、
サービスリクエストを受信するように構成された受信機と、
前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信と前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)と、
複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成されたポリシーサーバと、
ここで、前記複数のポリシー関連入力は、1つ又は複数のサービスポリシーと、管理ポリシーと、挙動ポリシーとを含み、
前記ポリシーサーバの出力に従って、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間の通信モードを変更するように構成された遷移装置と
を具えたことを特徴とする装置。」

〈補正後〉(下線は請求人が付与。)
「 無線通信のハンドオーバのための装置であって、
複数のポリシー関連入力を含むサービスリクエストを受信するように構成された受信機と、
時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御(RNC)の通信と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御(RNC)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するために前記複数のポリシー関連入力を評価するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)と、
通信のモードを選択するように構成されたFDD-TDDセレクタと、
該FDD-TDDセレクタは、
所定の閾値に対する前記複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成されたポリシーサーバと、
ここで、前記複数のポリシー関連入力は、1つ又は複数のサービスポリシーと、管理ポリシーと、挙動ポリシーとを含み、
前記ポリシーサーバの出力に従って、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間の通信モードを変更するように構成されたハンドオーバ装置とを含むことを特徴とする装置。」

本件補正は、

補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間での無線通信の遷移を制御する装置」について、「無線通信のハンドオーバのための装置」とするものであり、(補正事項1)

補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「サービスリクエスト」について、「複数のポリシー関連入力を含むサービスリクエスト」と限定するものであり、(補正事項2)

補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信」と「周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信」とにおける、「無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信」について、それぞれ、「無線ネットワーク制御(RNC)の通信」とするものであり、(補正事項3)

補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)」について、「無線リソース管理を実行するために前記複数のポリシー関連入力を評価するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)」と限定するものであり、(補正事項4)

補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「装置」について、「通信のモードを選択するように構成されたFDD-TDDセレクタと」、「を含む」とするものであり、(補正事項5)

補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ポリシーサーバ」と、「通信モードを変更するように構成された」「装置」について、「該FDD-TDDセレクタ」が、「含む」とするものであり、(補正事項6)

補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「通信モードを変更するように構成された遷移装置とを具えたこと」について、「通信モードを変更するように構成されたハンドオーバ装置とを含むこと」に変更するものであるが、(補正事項7)

これらの補正事項のうち、補正事項4について検討する。

本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(国際出願翻訳文)(以下、「当初明細書等」という。)には、補正事項4に関して次のような記載がある。(下線は当審にて付与。)

A.「【0020】
本発明のRNC204、208は、それぞれTDD-FDDセレクタ206、210を備えて構成される。TDD-FDDセレクタ206、210は、受信RABリクエストにとって最適の技術タイプを決定するための、所望の1つまたは複数のプロセッサとすることができる。すなわち、例えば、RABリクエスト、リソース利用可能性、および/またはその他の関連する考慮事項に関して提供されたパラメータに基づいて、TDD-FDDセレクタ206、210は、個々のタイプのコネクションリクエストを処理するのに最も効率的なシステム技術タイプに基づいてコネクションリクエストがリソースの割り当てを受けるように、無線リソースマネージャ(RRM:radio resource manager)を始めとするRNCの既存機能と連携して、リソースを割り当てるために動作する。例えば、対称性が最優先の考慮事項だと仮定すると、対称トラフィック(すなわちアップリンクとダウンリンクのトラフィック量が同程度)を有するコネクションリクエストは、FDD技術をもちろん実施する、そのようなトラフィックを処理する際により効率的な、FDD RNC208によって好ましくは処理される。同様に、非対称トラフィック(すなわち一方の方向のトラフィック量が他方よりも多い)を有するコネクションリクエストは、TDD技術をもちろん実施する、そのようなトラフィックを処理する際により効率的な、TDD RNC204によって好ましくは処理される。」

B.「【0024】
今度は図3を参照すると、本発明の別の実施形態における、統合TDD-FDD RNC304が提供されている。統合TDD-FDD RNC304は、TDD RNCとFDD RNCの従来の機能を統合する。したがって、この実施形態では、TDD-FDDセレクタが1つだけ提供される。TDD-FDDセレクタ806は、上で説明したように動作し、受信RABリクエストはTDDモードで処理されるべきか、それともFDDモードで処理されるべきかを決定する。上で説明したように、TDD-FDDセレクタは、個々のRABリクエストにとってどのモードが適切かを決定するとき、対称性、データ速度、アプリケーションタイプ、リソース利用可能性、およびその他の任意の関連パラメータを評価することができる。例えば、WTRU320および322は交わったカバレージエリア324に存在するので、WTRU320および322には、必要に応じてTDDモードまたはFDDモードのどちらかでリソースを割り当てることができる。
【0025】
今度は図4を参照すると、本発明による、システムリソースを割り当てるための方法400が示されている。方法400は、無線アクセスベアラ(RAB)リクエストが受信されるステップ402において開始する。リクエストは、TDD RNCまたはFDD RNCのどちらかによって受信されることができ、統合TDD-FDD RNCが提供される場合は、リクエストは、TDDモードまたはFDDモードのどちらかで受信されることができる。次にステップ404において、受信リクエストに関するパラメータが評価される。上で説明したように、パラメータは、受信RABに関する情報を提供する任意のパラメータとすることができる。一般に、評価されると好ましいパラメータとして、対称性、データ速度、およびアプリケーションタイプを挙げることができる。」

C.「【0029】
上で述べたように、サービスが特定のタイプのセル内でWTRUに提供されると、そのセルは、そのWTRUに関して好ましいセルかまたは好ましくないセルかのどちらかである。したがって、要求されたサービスが提供されると、方法400はステップ410または414からステップ416に進む。ステップ416において、何か最適化を実行できるかどうかを決定するため、確立されたコネクションに関するパラメータが評価される。例えば、WTRUはTDDセルに割り当てられたが、FDDセルの方が好ましいと決定されたサービスをそれ以前に要求していた場合、WTRUがFDDセルに移動したかどうか、または別の理由でFDDサービスが利用可能になったかどうかを決定するため、WTRUの位置を監視することができる。ステップ416では、WTRUが現在動作しているセルのタイプがまだWTRUの好ましいセルかどうかを決定するため、対称性(すなわちコネクションの対称ステータス)、データ速度、アプリケーションタイプ、および/またはその他の任意の関連パラメータに関して、既存のコネクションを評価することもできる。すなわち、最初の評価ではTDDセルの方が好ましいという決定に達したが、状況または使用法が変化した結果、FDDセルの方が好ましくなることもある。ステップ416で行われた評価に基づいて、何らかのタイプの最適化を実行する(すなわち例えばWTRUを一方のタイプのセルから別のタイプに移す)ことが可能ならば、方法400はステップ418からステップ420に進み、現在のセル配分を必要に応じて再配分する。再配分が完了すると、さらなる最適化を探すため、方法400はステップ416に戻ることができる。ステップ416における評価の結果、現在は最適化が可能でないならば、方法400はステップ416に直接戻り、何か可能な最適化を見つけるため、既存のコネクションの監視および評価を続行することができる。」

D.「【0032】
上述したように、すべてのトラフィック(TDDおよびFDD)を、FDD RNC508を介して開始し、また終了するため、好ましくは追加機能がFDD RNC508に提供される。好ましい一実施形態では、FDD RNC508は、図6に示されるように構成される。FDD RNC508は、FDD RRM604を含み、通常通りIuプロトコル602、FDD Iubプロトコル606、およびFDD Iurプロトコル610を実行するように構成される。さらに、FDD RNC508は、TDDサービス無線ネットワーク制御装置(S-RNC)無線リソースマネージャ(RRM)608を含み、TDD Iurプロトコル610を実行するように構成される。FDD RNC508に追加される追加機能(すなわちTDD SRNC RRM608およびTDD Iurプロトコル610)は、典型的なFDD RNCですでに実行されている機能と類似しており、例えばソフトウェアアップグレードとして追加することができる。TDD RNC504は好ましくは、制御RNC(C-RNC) TDD RRM612を含むように構成され、さらに通常通りTDD Iubプロトコル614、およびTDD Iurプロトコル613をサポートするように構成される。」

E.「【0034】
図7は、本発明の代替実施形態による、TDD-FDDセレクタ702を含むRNC700のブロック図である。RNC700は、TDDモードとFDDモードの間の切り替えを可能にする。RNC700は好ましくは、TDDおよびFDDモード両方の通信のための無線リソース管理を実行できるように、FDD RRM708とTDD RRM710の両方を含む。」

F.「【0036】
TDD/FDDセレクタ702は、ハンドオーバユニット704と、ポリシーサーバ706とを含む。ハンドオーバユニット704は、ポリシーサーバ706の出力に従って、TDD-FDDハンドオーバおよびFDD-TDDハンドオーバを実行する。
【0037】
ポリシーサーバ706は、1つまたは複数のポリシーに関する入力を受信し、適切な通信モードに関する決定を下す。1つまたは複数のポリシーが、FDD/TDDハンドオーバを開始するために定義される。典型的なポリシーカテゴリとして、1)サービス品質(QoS)、2)サービス、3)管理、および4)挙動を挙げることができるが、必要に応じて任意の追加のカテゴリを含むこともできる。QoSポリシーは、電力または品質閾値などのQoS条件を定義する。サービスポリシーは、データ速度非対称性、またはリアルタイム(RT)サービス(例えば音声通話)対非リアルタイム(NRT)サービス(例えばウェブブラウジング)など、サービス特性条件を定義する。管理ポリシーは、運用、管理、および保守(OA&M)条件を定義する。これは、負荷平衡目的に利用されるRTポリシー、または保守に関係するNRT面を含む。挙動ポリシーは、ユーザ位置または速度などの1つまたは複数のユーザ挙動条件を定義する。」

G.「【0040】
図8は、本発明による、TDDモードとFDDモードの間のハンドオーバのためのプロセス800のフローチャートである。最初に、WTRUが、ある特定の通信モードで通信を確立する(ステップ802)。次にWTRUは、ウェブブランジングなどある特定のサービスを要求する(ステップ804)。次にRNC700が、通信モードの遷移が行われるべきであるように、複数の所定のポリシーのうち1つまたは複数がサービスリクエストについて満たされているかどうかを決定する(ステップ806)。1つまたは複数のポリシー(QoS、位置、速度など)が満たされている場合、ポリシーサーバ706は、サービスが認められるべき通信モードを指示し、RNC700は、その指示に従って通信モードの遷移を実行する(ステップ808)。ポリシーが満たされていない場合、RNC700は、現在の通信モードを維持する(810)。
【0041】
例えば、WTRUがTDDモードにある時に音声呼が到着した場合、各ポリシーの関連入力がポリシーサーバに入力される。TDDからFDDへのハンドオーバについて1つまたは複数のポリシー条件が満たされている場合、ポリシーサーバ706は、FDDモードへの遷移が行われるべきであることを指示し、RNC700は、FDDモードへの遷移を実行する。」

「無線リソースマネージャ(RRM)」に関する 上記A、D、Eの記載及びそれ以外の当初明細書等の記載を見ても、「時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)」 は、RNCの既存機能で、無線リソース管理を実行するものであることが理解できるのみであり、複数のポリシー関連入力を評価するように構成されることは記載も示唆もされていない。上記F、Gの記載から、複数のポリシー関連入力を評価するのは、「TDD-FDDセレクタ」又は「TDD-FDDセレクタ」の「ポリシーサーバ」である。請求人が補正の根拠としている【0024】、【0025】、【0029】、図4、404、416(上記B、C参照)には、パラメータが評価されることは記載されているが、「時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)」がパラメータを評価することは記載されていない。

そして、図7の記載から、「TDD-FDDセレクタ」や「ポリシーサーバ」と、「TDD RRM」及び「FDD RRM」は別の要素であり、「TDD-FDDセレクタ」や「ポリシーサーバ」に含まれるものではないので、「時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)」が、ポリシー関連入力を評価することは、上記A?Gの記載を含む当初明細書等の全体をみても、自明な事項とはいえない。

したがって、補正事項4を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項、すなわち、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について

1.本願発明
平成21年11月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明という。」)は、平成21年1月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間での無線通信の遷移を制御する装置であって、
サービスリクエストを受信するように構成された受信機と、
前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信と前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)と、
複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成されたポリシーサーバと、
ここで、前記複数のポリシー関連入力は、1つ又は複数のサービスポリシーと、管理ポリシーと、挙動ポリシーとを含み、
前記ポリシーサーバの出力に従って、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間の通信モードを変更するように構成された遷移装置と
を具えたことを特徴とする装置。」

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-10339号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

A.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チャネル割当方法および通信装置に関し、より具体的には、移動通信システムにおいて、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルと、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルの双方を割り当てることができる場合に、適切なチャネル割当を行うチャネル割当方法および通信装置に関する。」

B.「【0007】図1の例において、基地局21は、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリア31、およびCDMA-FDD方式に基づくサービスエリア41を有する。また、基地局22は、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリア32、およびCDMA-FDD方式に基づくサービスエリア42を有する。また、基地局23は、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリア33、およびCDMA-FDD方式に基づくサービスエリア43を有する。移動局11は、例えば、図1に示すように、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリア(サービスエリア31)およびCDMA-FDD方式に基づくサービスエリア(サービスエリア41)の双方に在圏するときは、基地局(基地局21)と、CDMA-TDD方式またはCDMA-FDD方式のいずれかに基づく無線通信を行うことができる。
【0008】制御局51は、各基地局を制御し、移動局と基地局との間の無線通信に用いるチャネルの管理を行っている。すなわち、制御局51は、現在のチャネルの状態(各サービスエリアで用いられているチャネル、空きチャネルの状態等)を把握し、管理を行っている。そして、チャネル割当要求があると、現在のチャネルの状態を考慮して、チャネル割当てを行う。チャネルの割当要求は、サービスエリアで呼が生起したとき、他のサービスエリアから自サービスエリアへハンドオーバ呼が入ってきたとき等に発生する。
【0009】図2は、制御局の構成例を示すブロック図である。図2に示す制御局51は、制御部56、記憶部57、および通信部58、59を備える。制御部56は各種の制御を行う。記憶部57には、現在のチャネルの状態が記憶されており、制御部56は、その記憶されている現在のチャネルの状態を考慮して、チャネル割当てを行う。また、制御部56は、通信部58を介して各基地局と、通信部59を介して交換局等と通信を行うことができる。」

C.「【0011】図3は、移動通信システムの別の例を示す図である。図3は、CDMA-FDD方式によるサービスを提供する基地局と、CDMA-TDD方式による同一のサービスを提供する基地局とが分かれている場合の例である。
【0012】図3の例では、各基地局につき1つのサービスエリア(セル)を設けている。ただし、例えば、セルを複数のセクタに分割して、1つの基地局が複数のサービスエリア(セクタ)を有するようにすることもできる。
【0013】図3の例において、基地局24はCDMA-TDD方式に基づくサービスエリア34を有し、基地局25はCDMA-TDD方式に基づくサービスエリア35を有し、基地局26はCDMA-FDD方式に基づくサービスエリア46を有する。移動局12は、例えば、図3に示すように、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリア(サービスエリア34)およびCDMA-FDD方式に基づくサービスエリア(サービスエリア46)の双方に在圏するときは、基地局(基地局24または基地局26)と、CDMA-TDD方式またはCDMA-FDD方式のいずれかに基づく通信を行うことができる。
【0014】制御局52は、各基地局を制御し、移動局と基地局との間の無線通信に用いるチャネルの管理を行っている。そして、チャネル割当要求があると、現在のチャネルの状態を考慮して、チャネル割当てを行う。制御局52についても、制御局51と同様に、図2に示すように構成することができる。
【0015】このような移動通信システムにおいて、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルと、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルの双方を割り当てることができる場合に、どちらのチャネルを割り当てるかが問題となる。」

D.「【0086】(第4実施形態)本発明の第4実施形態においては、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックまたは干渉が大きい場合に、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割り当てられており、かつ、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割当可能な移動局のうち、上りのトラヒック(移動局から基地局への通信のトラヒック)と下りのトラヒック(基地局から移動局への通信のトラヒック)とのバランスがとれている移動局について、その割当チャネルを、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替える。
【0087】また、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックまたは干渉が大きい場合に、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割り当てられており、かつ、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割当可能な移動局のうち、上りのトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれていない移動局について、その割当チャネルを、CDMA-FDD方式に基づくチャネルからCDMA-TDD方式に基づくチャネルに切り替える。
【0088】このような切り替えを行うのは、CDMA-TDD方式の方がCDMA-FDD方式よりも、バランスがとれていないトラヒックを扱いやすいからである。CDMA-TDD方式においては、トラヒックのバランスがとれていない場合に、例えば図9に示すように、上りトラヒック(「上り」)と下りトラヒック(「下り」)とのバランスに合わせて、割当タイムスロットを設定することができる。
【0089】なお、音声通信では、上りトラヒックと下りトラヒックとのバランスがとれていることが比較的多く、データ通信では、上りトラヒックと下りトラヒックとのバランスがとれていないことが比較的多い。
【0090】したがって、上りトラヒックと下りトラヒックとのバランスがとれているか否かを調べずに、現在音声通信を行っている移動局について、その割当チャネルを、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えるようにすることもできる。また、現在データ通信を行っている移動局について、その割当チャネルを、CDMA-FDD方式に基づくチャネルからCDMA-TDD方式に基づくチャネルに切り替えるようにすることもできる。
【0091】移動局が現在行っている通信の種類として、音声通信およびデータ通信以外の種類を基準に用いて、CDMA-TDD方式に基づくチャネルとCDMA-FDD方式に基づくチャネルとの間の切り替えを行う移動局を選定するようにしてもよい。
【0092】本実施形態では、サービスエリアのトラヒックまたは干渉が大きい場合に切り替えを行うようにしているが、トラヒックまたは干渉の大小とは無関係に切り替えを行うようにしてもよい。
【0093】また、本実施形態では、上りトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれている移動局をCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えるようにしている。ただし、その割当チャネルを、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えることにより、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアの上りのトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれるようになる移動局について、その割当チャネルを、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えるようにすることもできる。例えば、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアにおいて、下りトラヒックが上りトラヒックに比べて大きい(高い)場合には、上りトラヒックが下りトラヒックよりも大きい移動局について切り替えを行うようにする。
【0094】また、上りトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれている移動局をCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えるようにしているが、その割当チャネルを、CDMA-FDD方式に基づくチャネルからCDMA-TDD方式に基づくチャネルに切り替えることにより、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアの上りのトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれるようになる移動局について、その割当チャネルを、CDMA-FDD方式に基づくチャネルからCDMA-TDD方式に基づくチャネルに切り替えるようにすることもできる。
【0095】また、チャネル割当要求があった際に、該チャネル割当要求に対して、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルおよびCDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルの双方が割当可能である場合には、該チャネル割当要求に係る通信の種類に応じて、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルまたはCDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルの一方を割り当てることも考えられる。例えば、該チャネル割当要求に係る通信の種類が音声通信の場合には、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割り当て、該チャネル割当要求に係る通信の種類がデータ通信の場合には、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割り当てることが考えられる。
【0096】(その他)以上の説明では、ある方式に基づくサービスエリアのトラヒックまたは干渉が大きくなった場合に、何らかの基準(ハンドオーバの頻度等)により、他の方式のチャネルに切り替える移動局を決定することについても説明したが、その基準としては種々のものが考えられ、例えば、単純なものとしてランダムに選ぶことも考えられる。」

以上のことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「移動局11は、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリア(サービスエリア31)およびCDMA-FDD方式に基づくサービスエリア(サービスエリア41)の双方に在圏するときは、基地局(基地局21)と、CDMA-TDD方式またはCDMA-FDD方式のいずれかに基づく無線通信を行うことができ、
制御局51は、各基地局を制御し、移動局と基地局との間の無線通信に用いるチャネルの管理を行う、すなわち、制御局51は、現在のチャネルの状態(各サービスエリアで用いられているチャネル、空きチャネルの状態等)を把握し、管理を行っており、
チャネル割当要求があると、現在のチャネルの状態を考慮して、チャネル割当てを行い、チャネルの割当要求は、サービスエリアで呼が生起したとき、他のサービスエリアから自サービスエリアへハンドオーバ呼が入ってきたとき等に発生し、
制御局51は、制御部56、記憶部57、および通信部58、59を備え、記憶部57には、現在のチャネルの状態が記憶されており、制御部56は、その記憶されている現在のチャネルの状態を考慮して、チャネル割当てを行い、制御部56は、通信部58を介して各基地局と、通信部59を介して交換局等と通信を行うことができ、
CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックまたは干渉が大きい場合に、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割り当てられており、かつ、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割当可能な移動局のうち、上りのトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれている移動局について、その割当チャネルを、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替える通信装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-521937号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

E.「【0039】
通常の作動中、セルラー電話機108は、加入者が電話をかけるか受けるまで、待機モードである。電話をかける場合、セルラー電話機108のマイクロプロセッサ500は、要求されるサービスの特徴、たとえば通信のビット・レート、および/またはアップリンクとダウンリンク通信間に予測される非対称性、および/または要求されるサービスの質を決定する。セルラー電話機108によって予測される非対称性および要求されるビット・レートは、セルラー電話機108によって実行されるアプリケーションから決定することができる。非対称性およびビット・レートは、電話中ずっと、セルラー電話機108またはシステムのインフラストラクチャのいずれかによって測定することができる。
【0040】
さらに、移動端末108の状況、たとえばセルラー電話機の速度および位置もまた、マイクロプロセッサ500によって決定することができる。セルラー電話機108の状況は、完全に、または部分的に、基地局104によって決定することもできる。
【0041】
ひとたび決定されると、セルラー電話機108は、要求されるサービスの特徴、セルラー電話機108の状況、およびサービスの要求を基地局104に伝送する。
【0042】
図8を参照しながら説明すると、基地局104はサービスの要求を受け取り(ステップ802)、セルラー電話機およびそれらに割り当てられた二重化スキームに関するデータを含むシステム・データベースを分析することによって、FDDおよびTDDスキームが両方とも利用可能であるかどうかを決定する。FDDおよびTDDスキームがどちらも利用できない場合、システムへのアクセスがセルラー電話機108に対して拒絶される(ステップ806)。TDDまたはFDDスキームの一方だけが利用可能である場合、利用可能な二重化スキームがセルラー電話機108に割り当てられる(ステップ808)。次いで、セルラー電話機108にFDDまたはTDDスキームのいずれかが割り当てられたことを反映するようにシステムのデータベースを更新することによって、システムの状態が更新される(ステップ814)。次いで、システムを使用している現在の加入者をサポートするための保護帯域要件が評価され(ステップ816)、たとえば、保護帯域のサイズを決定するための受入れ可能な干渉レベル(低レベルの干渉はより大きい保護帯域サイズを必要とする)に対応する値を選択し、かつ使用者の要求に基づいて細分範囲のサイズを選択することによって、予め定められた範囲の帯域幅の細分帯域のサイズが評価される。
【0043】
TDDおよびFDDスキームの両方が利用可能である場合、基地局104のマイクロプロセッサ200は、セルラー電話機108によって使用される好適な二重化スキームを決定する(ステップ810)。好適な二重化スキームは、とりわけ、セルラー電話機108の状況および基地局104がサービス要求と共にセルラー電話機108から受け取ったセルラー電話機108の特徴に基づいて決定される(ステップ810)。さらに、好適な二重化スキームを識別するために、システムの干渉に関連する特徴を使用することができる。干渉に関連する特徴、たとえば、既存の使用者に対する干渉および/または新しい使用者に対する干渉については、基地局104が計算することができる。干渉に関連する特徴を計算するために、新しい使用者と既存の使用者との間の相互作用を推定することができる。また、使用する二重化スキームおよびセルの種類の結果変化する干渉のレベルもまた考慮される。
【0044】
端末の速度、端末の位置、要求ビット・レート、アップリンク/ダウンリンク通信の非対称性、要求されたサービスの質、既存の使用者への干渉および/または新しい使用者への干渉に関する値に各々、それぞれの重み付け値K1、K2、K3、K4、K5、K6およびK7が乗算される。
【0045】
セルラー電話機108の速度および位置に対応する重み付け値をどのように導出し、使用するかの一例を、下で説明する。」

F.「【0048】
VelがV1より低い場合、第1利得値G1がセルラー電話機108に割り当てられ、第1重み付け値K1が乗算される(ステップ910)。同様に、VelがV1とV2の間である場合には、第2利得値G12がセルラー電話機108に割り当てられ(ステップ912)、第1重み付け値K1が乗算される(ステップ910)。VelがV2とV3の間である場合には、第3利得値G13がセルラー電話機108に割り当てられ(ステップ914)、第1重み付け値K1が乗算される(ステップ910)。
【0049】
セルラー電話機108の位置も分析され、セルラー電話機108が、
1.マクロセルのみの中にある(ステップ916)
2.マクロセルおよびマイクロセル内にある(ステップ918)、
3.マクロセル、マイクロセル、およびピコセル内にある(ステップ920)
かどうかが決定される。
【0050】
他の位置、たとえばセルラー電話機108がマクロセルおよびピコセル内のみに位置しているかどうかを試験することができる。
【0051】
セルラー電話機がマクロセルのみの中にある場合、第4利得値G21がセルラー電話機108に割り当てられ(ステップ922)、第2重み付け値K2が乗算される(ステップ924)。セルラー電話機108がマクロセルおよびピコセル内にある場合、第5利得値G22がセルラー電話機108に割り当てられ(ステップ926)、第2重み付け値K2が乗算される(ステップ924)。セルラー電話機108がマクロセル、マイクロセルおよびピコセル内に位置する場合、第6利得値G23がセルラー電話機108に割り当てられ(ステップ928)、第2重み付け値K2が乗算される(ステップ924)。
【0052】
ひとたび計算されると、重み付けされた値(重み付け値KおよびK2を乗算された値)が加算され(ステップ930)、マイクロプロセッサ500は、加算された値が予め定められた閾値を超えるかどうかを決定し(ステップ932)、その結果により、TDDスキームまたはFDDスキームをセルラー電話機108に割り当てる(ステップ812)かどうかが決定される。
【0053】
説明しないが(明瞭さを維持するため)、重み付けられた値は、二重化スキームの選択に影響を及ぼす他の要素に関連して上述したのど(審決注:「と」の誤記と認められる。)同様の方法で計算することができる。
【0054】
利得値G11、G12、G13、G21、G22、G23は定数であり、その値は、シミュレーションを通して、または経験的に、システム運用者によって予め定められる。
【0055】
ひとたび好適な二重化スキームが決定されると(ステップ810)、それはセルラー電話機108に割り当てられる。次いでシステムは、セルラー電話機108に割り当てられた二重化スキームを示すために、システム・データベースを更新する(ステップ814)。次いでシステムの保護帯域要件が評価され、それを使用してシステム・データベースが更新される。
【0056】
次いで基地局104は、次のサービス要求を待つ(ステップ818)。次のサービス要求を受け取ると、上述のプロセスが再始動される(ステップ802)。
【0057】
上の実施例は、サービスが要求されたときに二重化スキームを割り当てる文脈で説明したが、二重化スキームは、セルラー電話機108が起動している期間中、つまりサービスが提供されている期間中、割り当てることができるので、二重化スキームの最適選択に関連する要素が加入者の行動のために変化すると、セルラー電話機108は二重化スキームを変更することができる。」

以上のことから、引用例2には、次の事項が記載されている。

「移動局に対してTDDおよびFDDスキームのどちらが割り当てられるか決定するため、端末の速度、端末の位置、要求ビット・レート、アップリンク/ダウンリンク通信の非対称性、要求されたサービスの質、既存の使用者への干渉および/または新しい使用者への干渉に関する値に各々、それぞれの重み付け値K1、K2、K3、K4、K5、K6およびK7が乗算され、例えば、速度および位置に対応する重み付け値を使用する場合、重み付けされた値が加算され、基地局104のマイクロプロセッサ500は、加算された値が予め定められた閾値を超えるかどうかを決定し、その結果により、TDDスキームまたはFDDスキームをセルラー電話機108に割り当てるかどうかが決定される。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「制御局51」は、「各基地局を制御し、移動局と基地局との間の無線通信に用いるチャネルの管理を行っている」ので、本願発明の「無線ネットワーク制御装置(RNC)」に対応する。

引用発明の「通信装置」は、「制御局51」から構成され、移動局への割当チャネルをCDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えるので、本願発明の「時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間での無線通信の遷移を制御する装置」と、時分割複信(TDD)と周波数分割複信(FDD)との間での無線通信の遷移を制御する装置である点で共通する。

引用発明の「チャネル割当要求」は、サービスエリアで呼が生起したとき、他のサービスエリアから自サービスエリアへハンドオーバ呼が入ってきたとき等に発生し、チャネル割当てというサービスの要求であるので、本願発明の「サービスリクエスト」に相当する。そして、引用発明において、制御局51は、「通信部58」を介して基地局と通信するので、「通信部58」で「チャネル割当要求」を受信することは明らかであり、引用発明の「通信部58」は、本願発明の「サービスリクエストを受信するように構成された受信機」に相当する。

引用発明の移動局は、CDMA-TDD方式に基づくチャネル又はCDMA-FDD方式に基づくチャネルで通信するので、引用発明の「制御局51」は、CDMA-TDD方式に基づくチャネル又はCDMA-FDD方式に基づくチャネルを移動局に割り当てることは明らかであり、現在のチャネルの状態(各サービスエリアで用いられているチャネル、空きチャネルの状態等)を把握し、管理を行っているから、引用発明の「制御局51」は、前記時分割複信(TDD)の通信と前記周波数分割複信(FDD)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)を備えているといえる。

引用発明において、「CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックまたは干渉が大きい場合に、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割り当てられており、かつ、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割当可能な移動局のうち、上りのトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれている移動局について、その割当チャネルを、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替える」ことから、引用発明は、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックの大きさ、移動局の上り下りのトラヒックのバランスに基づいて、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えるかどうかを判断しており、これらのCDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックの大きさ、移動局の上り下りのトラヒックのバランスは、本願発明の「ポリシー関連入力」に相当し、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えることは、通信の適切なモードを決定しているといえる。そして、引用発明の制御局51には、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替えることを決定する何らかの判断部を備えていることは明らかであり、引用発明のこの判断部と、本願発明の「複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成されたポリシーサーバ」とは、複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成された判断部である点で共通する。

そして、本願の明細書(国際出願翻訳文)【0037】に記載されているように、本願発明において、「サービスポリシー」は、データ速度非対称性を含み、「管理ポリシー」は、負荷平衡目的に利用されるRTポリシーを含むので、引用発明の上記移動局の上り下りのトラヒックのバランスは、本願発明の「サービスポリシー」に相当し、引用発明の上記CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックの大きさは、本願発明の「管理ポリシー」に相当する。

また、引用発明において、上記「CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのトラヒックまたは干渉が大きい場合に、CDMA-TDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割り当てられており、かつ、CDMA-FDD方式に基づくサービスエリアのチャネルを割当可能な移動局のうち、上りのトラヒックと下りのトラヒックとのバランスがとれている移動局について、その割当チャネルを、CDMA-TDD方式に基づくチャネルからCDMA-FDD方式に基づくチャネルに切り替える」ことは、引用発明の前記判断部の出力に従って、無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する時分割複信(TDD)と、無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する周波数分割複信(FDD)との間の通信モードを変更するといえる。そして、そのような動作を行う遷移装置を具えていることは明らかである。

したがって、両者は、
「時分割複信(TDD)と周波数分割複信(FDD)との間での無線通信の遷移を制御する装置であって、
サービスリクエストを受信するように構成された受信機と、
前記時分割複信(TDD)の通信と前記周波数分割複信(FDD)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)と、
複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成された判断部と、
ここで、前記複数のポリシー関連入力は、1つ又は複数のサービスポリシーと、管理ポリシーとを含み、
前記判断部の出力に従って、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)との間の通信モードを変更するように構成された遷移装置と
を具えたことを特徴とする装置。」
で、一致するものであり、次の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間での無線通信の遷移を制御する装置であるのに対し、引用発明は、時分割複信(TDD)と周波数分割複信(FDD)との間での無線通信の遷移を制御する装置であるものの、時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間での無線通信の遷移かどうか明らかではない点、

[相違点2]
本願発明では、時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)であるのに対し、引用発明では、時分割複信(TDD)の通信と周波数分割複信(FDD)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)であるものの、前記通信は時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信かどうか明らかではない点。

[相違点3]
本願発明では、複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成されたポリシーサーバを具えるのに対し、引用発明では、複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成された判断部を具えるものの、判断部はポリシーサーバではない点。

[相違点4]
本願発明では、複数のポリシー関連入力は、挙動ポリシーを含むのに対し、引用発明では、挙動ポリシーを含むのか明らかではない点。

[相違点5]
本願発明では、無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間の通信モードを変更するものであるのに対し、引用発明では、無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する時分割複信(TDD)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する周波数分割複信(FDD)との間の通信モードを変更するものであるものの、通信モードを変更は無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間かどうか明らかではない点。

4.判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]、[相違点2]、[相違点5]について
本願発明は、ポリシーサーバを具えるが、ポリシーサーバに関する実施形態は本願の明細書(国際出願翻訳文)の【0034】?【0041】段落に記載された1つの実施形態のみであり(図7、図8及び【0044】段落の図面の簡単な説明の図7、図8の項も参照。)、この実施形態では、1つのRNC700でTDDモードとFDDモードの切り替えを行うものである。また、本願の特許請求の範囲の請求項5には、「当該装置は、独立型汎用無線ネットワーク制御装置(RNC)に含まれることを特徴とする請求項1記載の装置。」と記載されており、請求項5に係る発明は、本願発明(請求項1に係る発明)に従属し、本願発明が「独立型汎用無線ネットワーク制御装置(RNC)に含まれる」ことを特定していることから、本願発明は、本願発明の構成が1つのRNCに含まれるものも含む発明であると解される。そうすると、本願発明の「時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間での無線通信の遷移」という構成は、1つのRNCにおいて時分割複信(TDD)と周波数分割複信(FDD)との間での通信モードの遷移を含むと解することができ、相違点1において本願発明と引用発明とは実質的に相違しない。なお、仮にこの点で相違するとしても、引用発明において複数の制御局を設けて、TDDとFDDを個別に制御することは、当業者の設計的事項に過ぎない。
同様に相違点2に関して、本願発明の「時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信と周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)の通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)」は、時分割複信(TDD)の通信と周波数分割複信(FDDの通信との両方に対して、無線リソース管理を実行するように構成された、時分割複信(TDD)無線リソースマネージャ(RRM)および周波数分割複信(FDD)無線リソースマネージャ(RRM)を含むと解することができるので、相違点2において本願発明と引用発明とは実質的に相違しない。
さらに、相違点5に関して、本願発明の「無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)無線ネットワーク制御装置(RNC)との間の通信モードを変更する」ことは、無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記時分割複信(TDD)と、前記無線通信のアップリンクとダウンリンクの両方に関する前記周波数分割複信(FDD)との間の通信モードを変更することを含むと解することができるので、相違点5において本願発明と引用発明とは実質的に相違しない。

[相違点3]について
通信の技術分野において、サーバに通信のための処理を行わせることは周知技術である。そして、様々な通信処理を行う移動通信システムの制御局をどのように構成するかは当業者の設計的事項であるので、引用発明において、複数のポリシー関連入力に基いて通信の適切なモードを決定するように構成された制御局の判断部を周知のサーバで構成するようにして、本願発明のようにポリシーサーバとすることは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点4]について
引用例2には、移動局に対してTDDおよびFDDスキームのどちらが割り当てられるか決定するため、端末の速度、端末の位置(本願発明の「挙動ポリシー」に相当する。)、要求ビット・レート、アップリンク/ダウンリンク通信の非対称性(本願発明の「サービスポリシー」に相当する。)、要求されたサービスの質、既存の使用者への干渉および/または新しい使用者への干渉に関する値に各々、それぞれの重み付け値K1、K2、K3、K4、K5、K6およびK7が乗算され、重み付けされた値(重み付け値KおよびK2を乗算された値)が加算され、例えば、速度および位置に対応する重み付け値を使用する場合、基地局のマイクロプロセッサ500は、加算された値が予め定められた閾値を超えるかどうかを決定し、その結果により、TDDスキームまたはFDDスキームをセルラー電話機108に割り当てるかどうかが決定されることが記載されており、引用発明において、引用例2に記載された事項を適用して、複数のポリシー関連入力は、挙動ポリシーを含むように構成することは当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-03 
結審通知日 2011-08-05 
審決日 2011-08-18 
出願番号 特願2006-528205(P2006-528205)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 561- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 由晴  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 稲葉 和生
青木 健
発明の名称 無線通信システムにおいてTDDとFDDとの間でリソース配分を統合するための方法およびシステム  
復代理人 市原 政喜  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 濱中 淳宏  

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