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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
管理番号 1250157
審判番号 不服2008-2948  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-07 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2001-575523「コーディエライトセラミックスハニカムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月18日国際公開、WO01/77043〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2001年4月6日(優先権主張2000年4月7日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成19年7月5日付けの拒絶理由が通知され、同年8月31日に意見書が提出され、同年12月27日付けで拒絶査定された。
これに対し、平成20年2月7日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同年3月3日に明細書に係る手続補正書が提出され、平成22年9月9日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を利用した審尋がなされたが、その応答期間内に回答がなかったものである。
その後、平成23年5月23日付けの拒絶理由が当審より通知されるとともに、平成20年3月3日付け手続補正が却下され、平成23年7月22日付けで意見書とともに手続補正書が提出されている。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成23年7月22日付けで提出された手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】コーディエライト化原料に成形助剤を添加混合して原料バッチとした後、この原料バッチを押し出し成形、乾燥、次いで焼成することによって結晶相の主成分がコーディエライトであるハニカム構造体を製造する方法であって、焼成工程において、最高温度保持時間が4時間以上であるとともに、少なくとも最高温度から1300℃までの降温速度が、100℃/時間以下であることを特徴とするコーディエライトセラミックスハニカムの製造方法。」

3.当審の拒絶理由
当審において、平成23年5月23日付けで通知した拒絶の理由のうち、「6.特許法第29条第2項違反について」の概要は、次のとおりである。
本願発明1?8は、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.引用文献の記載事項
(1)引用文献1:特公昭60-41022号公報
(ア)「本発明は・・・コージエライト系セラミツクスの製造法に関するものである。
コージエライト系セラミツクスは・・・ハニカム形状に成形して利用されている。」(第2欄第13?20行)
(イ)「コージエライト系セラミツクス・・・の製造法は、通常タルク、粘土、アルミナ原料を用いてコージエライト組成になるよう配合、混練し、成形、乾燥したのち、窯炉にて1300?1440℃にて焼成し、この温度で数時間保持した後、50?150℃/時間で除冷する製造法、すなわち1300?1440℃より1100℃までは1?7時間で徐冷する製造法であつた。」(第2欄第21?27行)
(ウ)「・・・選ばれた原料を調合計算して混合し、この混合物に必要な助剤を加え、プラスチツク状に変形可能なバツチとし、その可塑化したバツチを、例えばハニカム状のスリツトを有する口金より押出し、ハニカム状に成形し、乾燥する。」(第4欄第8?12行)
(エ)「実施例 3
実施例1により得られた成形乾燥器を通常の焼成法により1370℃で、2.5時間焼成したのち通常の焼成法の通り50℃/時間の冷却速度で除冷したところ、40?900℃の平均熱膨張係数が1.16×10^(-6)/℃であつた。」(第6欄第21?26行)

(2)引用文献2:特開平5-254958号公報
(オ)「・・・本発明は低熱膨脹で高多孔度のコージエライトボディに関するものである。・・・さらにより詳しくは、該ボディはハニカム構造を有するものである。」(段落【0001】)
(カ)「・・・酸化アルミニウム生成成分は、それ自体酸化アルミニウム、または焼成されたときに酸化アルミニウムを形成するいかなる材料であってもよい。・・・その酸化アルミニウム生成成分は、直径で約3から約8マイクロメーター・・・の平均粒子サイズを有する。・・・いくつかの好ましい酸化アルミニウム生成成分は、アルミナ、およびアルミナと水酸化アルミニウムの組合せである。・・・」(段落【0019】)
(キ)「(一般的な方法)表1および2に示したタルク、か焼タルク、カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、石英、溶融シリカ、黒鉛、およびセルロースファイバーの組合せを約2から約4部のメチルセルロースおよび約0.5から約0.75部のステアリン酸ナトリウムとともにブレンドする。
・・・練り混ぜた後に、・・・ハニカムボディに押し出す。このように形成されたボディを・・・乾燥するまで加熱する。
乾燥の後に、・・・約1400℃の温度に加熱して約7時間保持する。・・・熱膨脹係数をハニカムの開口チャネルの長さに平行な方向、ここでは軸方向と称する方向に沿って測定する。表1および2に記載した熱膨脹係数は、25から800℃に亘る範囲の平均値である。・・・」(段落【0040】?【0042】)
(ク)「(実施例)表1の組成物AからNは、熱膨脹係数が約4×10^(-7)℃^(-1)以下で気孔率が42容積%より大きい・・・」(段落【0043】)

(3)引用文献5:特開平5-330943号公報
(ケ)「一般的に、コージエライトセラミック製品を製造するには、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、およびマグネシアを与える化学物質を、分析により実質的に41?56.5%のSiO_(2)、30?50%のAl_(2)O_(3)、および9?20%のMgOからなるコージエライトを製造するような粘土、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、およびアルミナの比率で使用する。」(段落【0016】)
(コ)「セルの開いた、薄壁のハニカム構造を成形する場合、本発明により、コージエライトは、低膨脹がセルの軸に沿い、高膨脹が薄壁を横切るように配向する・・・」(段落【0027】)
(サ)「これらの試料を・・・以下に示す標準的な自動車用64時間焼成予定を使用した。
・・・
1390℃に8時間保持
8.0時間以内に1390?650℃
・・・」(段落【0038】?【0039】)
(シ)「・・・表Iは、実施例に使用した各種基本組成物のセラミック前駆物質を重量部で示す。・・・大体の平均粒子径(APS)を括弧内に示す。平均粒子径はすべてミクロンで表示する」(段落【0041】)として、表Iには、平均粒子径4.0?4.5μmのAl_(2)O_(3)を使用する点が示されている。

5.引用発明について
(a)引用文献1には、記載事項(イ)に、「コージエライト系セラミツクス・・・の製造法は、通常タルク、粘土、アルミナ原料を用いてコージエライト組成になるよう配合、混練し、成形、乾燥したのち、窯炉にて1300?1440℃にて焼成し、この温度で数時間保持した後、50?150℃/時間で除冷する製造法、すなわち1300?1440℃より1100℃までは1?7時間で徐冷する製造法であつた。」と記載されている。
(b)上記(イ)の「・・・原料を用いてコージエライト組成になるよう配合、混練」するにあたり、記載事項(ウ)に、「・・・選ばれた原料を調合計算して混合し、この混合物に必要な助剤を加え、プラスチツク状に変形可能なバツチ」とする点、この「バツチ」を「ハニカム状のスリツトを有する口金より押出し、ハニカム形状に成形し、乾燥する」点が記載されている。
(c)また、上記(イ)の「コージエライト系セラミツクス」は、記載事項(ア)、(ウ)に「ハニカム形状に成形」する点が記載されている。
(d)上記(イ)の「1300?1440℃にて焼成し、この温度で数時間保持した後、50?150℃/時間で除冷する製造法、すなわち1300?1440℃より1100℃までは1?7時間で徐冷する製造法であつた。」について、記載事項(エ)に、「1370℃で、2.5時間焼成したのち・・・50℃/時間の冷却速度で除冷」する点が記載されている。

上記(a)?(d)の検討を踏まえ、上記(ア)?(エ)の事項を本件補正発明の記載ぶりに則して整理すると、引用文献1には、「原料を用いてコージエライト組成になるよう配合、混練し、必要な助剤を加えてバツチとし、このバツチをハニカム形状に押出し成形、乾燥したのち、窯炉にて1370℃にて2.5時間焼成した後、1100℃まで50℃/時間で除冷する、コージエライト系セラミツクスの製造法。」なる発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

6.当審の判断
本願発明と引用発明を比較する。
(a)引用発明の「原料」は、「コージエライト組成になるよう配合」されるものであるから、本願発明の「コーディエライト化原料」に相当する。
(b)引用発明の「必要な助剤」、「バツチ」は、それぞれ本願発明の「成形助剤」、「原料バッチ」に相当する。
(c)引用発明の「コージエライト系セラミックス」は、上記「バツチ」を「ハニカム形状に押出し成形、乾燥」したのち「焼成」したものであるから、本願発明の「結晶相の主成分がコーディエライトであるハニカム構造体」及び「コーディエライトセラミックスハニカム」に相当する。
(d)引用発明の「1370℃」は、本願発明の「最高温度」に相当する。
(e)引用発明の「1370℃にて2.5時間焼成」したことは、本願発明の「最高温度保持時間が4時間以上である」ことと、最高温度保持時間が所定時間である点で共通する。
(f)引用発明の「1100℃までは50℃/時間で除冷する」ことは、少なくとも「1300℃」を通ることから、本願発明の「少なくとも最高温度から1300℃までの降温速度が、100℃/時間以下」である点で重複する。

上記(a)?(f)を踏まえると、両者は、
「コーディエライト化原料に成形助剤を添加混合して原料バッチとした後、この原料バッチを押し出し成形、乾燥、次いで焼成することによって結晶相の主成分がコーディエライトであるハニカム構造体を製造する方法であって、焼成工程において、最高温度保持時間が所定時間であるとともに、最高温度から1300℃までの降温速度が、100℃/時間以下であるコーディエライトセラミックスハニカムの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点A
本願発明は、「最高温度保持時間が4時間以上」であるのに対し、引用発明では「2.5時間」である点。

上記相違点Aについて検討する。
引用文献2には、記載事項(オ)に、「・・・本発明は低熱膨脹で高多孔度のコージエライトボディに関するものである。・・・さらにより詳しくは、該ボディはハニカム構造を有するものである。」と記載され、このハニカム構造のコージエライトボディの焼成条件として、記載事項(キ)に、「約1400℃の温度に加熱して約7時間保持する。」と記載され、焼成されたハニカムの熱膨張係数は、記載事項(ク)に、「約4×10^(-7)℃^(-1)以下」であると記載されているから、引用文献2には、「ハニカム構造の低熱膨脹で高多孔度のコージエライトボディ」について、焼成条件として「約1400℃の温度に加熱して約7時間保持する」点、焼成されたハニカムの熱膨張係数が「約4×10^(-7)℃^(-1)以下」である点が開示されているといえる。
また、引用文献5には、記載事項(ケ)に、「・・・コージエライトセラミック製品を製造するには、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、およびマグネシアを与える化学物質を・・・使用する。」と記載され、この「コージエライトセラミック製品」の構造として、記載事項(コ)に、「薄壁のハニカム構造」と記載され、焼成条件として、記載事項(サ)に、「1390℃に8時間保持」、「8.0時間以内に1390?650℃」と記載されており、前記「8.0時間以内に1390?650℃」とすることは、降温速度が92.5℃/時間以上であるといえるから、引用文献5には、「ハニカム構造のコージエライトセラミック製品」について、焼成条件として「1390℃に8時間保持」するとともに「92.5℃/時間以上で1390?650℃」に降温する点が開示されているといえる。
そして、引用文献1、2、5の焼成時の最高温度は、いずれも1300℃よりも高いという点で共通している。
また、引用文献1と引用文献2、5とでは、同様の原料を用いたハニカム構造のコージェライト系セラミックスの製造に関するという点でも共通する。
したがって、引用発明の最高温度保持時間として、引用文献2の「約7時間」または引用文献5の「8時間」保持する技術を採用することで、相違点Aに係る本願発明の特定事項をなすことは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、低熱膨張係数が得られる等の本願の作用効果も、引用文献1、2、5から当業者が予測しうる程度のものである。

7.意見書における主張について
なお、請求人は、平成23年7月22日付けの意見書の(4)において、「また、低熱膨張化という観点では、最高温度の保持時間を長くすればするほど良いことが明らかです。しかし、最高温度保持はコスト高となるので、温度を下げる過程においてもコーディエライトの結晶を大きくする目的で、コーディエライトが分解しない温度領域、すなわち、少なくとも最高温度から1300℃の温度領域に限って、本願発明では100℃/時間以下の徐冷を行っています。
なお、今回新たに引用された引用文献5において、その[0039]段落に「1390℃(最高保持温度)に8時間保持後8.0時間以内に1390?650℃まで冷却すること」が記載されています。しかし、引用文献5では徐冷を650℃まで実施しており、最高温度保持時間は4時間以上ですが、徐冷する温度範囲が大きいことから、上述した引用文献1と同じ問題が発生することは明らかであります。」と主張しているので、以下に検討する。

本願請求項1には、徐冷により至る冷却温度をどれくらいにするかの特定がないことから、徐冷する温度範囲の大小を論ずる請求人の主張は、請求項1の記載に基づかないものであり、採用できない。
そして、引用文献1の、最高温度から1100℃までの降温速度を50℃/時間とすること、引用文献5の、最高温度から650℃まの降温速度を92.5℃/時間とすることはいずれも、本願発明の「少なくとも最高温度から1300℃までの降温速度を100℃/時間以下とする」ことを満たしているといえる。

8.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1、2、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-09 
結審通知日 2011-08-16 
審決日 2011-08-30 
出願番号 特願2001-575523(P2001-575523)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 賢一  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 中澤 登
吉川 潤
発明の名称 コーディエライトセラミックスハニカムの製造方法  
代理人 澤田 達也  
代理人 杉村 興作  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 憲司  

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