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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1250305
審判番号 不服2009-19805  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-15 
確定日 2012-01-10 
事件の表示 特願2004- 2699「装置の完全な全域を利用する円滑なグレイ成分置換戦略」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日出願公開、特開2004-222279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成16年1月8日(優先権主張:平成15年1月15日 米国)の出願であって、平成20年9月3日付けで拒絶理由が通知され、平成20年12月8日付けで意見書が提出されたが、当該拒絶理由通知書に記載された理由により平成21年6月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成21年10月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

2.拒絶査定の内容
拒絶査定は、平成20年9月3日付け拒絶理由通知書に記載された理由の内、理由(2)によってなされたものである。
平成20年9月3日付けで通知した拒絶理由通知書における理由(2)は以下のとおりである。

「 (理由2)
この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1に記載された「色再製装置色素空間」、「色素値」、「色独立(color independent)の色空間」、「装置色素空間」及び「色素空間値」の、それぞれの定義が不明である。また、他の請求項についても同様である。
請求項1に「前記色独立の色空間での値をスケーリング(scaling)して、得ることのできる最大全域(maximum gamut)を、装置色素空間での色素値で満たし」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。また、他の請求項及び【0018】等についても同様である。
請求項1に「前記色独立空間での前記スケーリングされた値に対応する色素空間値を決定する」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。また、他の請求項及び【0018】等についても同様である。
請求項1に「前記色独立空間での、前記スケーリングされた値に対応する前記色素空間値が、画像を生成するために印刷装置を制御するために利用可能である」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。また、他の請求項についても同様である。
請求項1に「色再製装置のための拡張された色全域を得るために利用可能なグレイ成分置換」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。また、他の請求項についても同様である。
請求項2に「前記決定された色素空間値を円滑化(smoothing)する」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。また、他の請求項についても同様である。
請求項4に記載された「ワーパー(warper)」の定義が不明である。
【0011】に「従来のグレイ成分置換(GCR)及び/又はグレイ成分置換/下色除去(GCR/UCR)技術は、円滑なやり方(smooth manner)での印刷装置のトータルの全域を活用しない」と記載されているが、具体的にどのような意味か不明である。
【0013】に記載された「CMYキューブ(cube)」の定義が不明である。
また、他の段落についても同様である。
【0013】に「CMYキューブ(cube)の内部のポイントが、印刷装置の全体の全域を満たすように、CMYキューブの内部のポイントをワープさせる(warping)ことによる、円滑なやり方での、印刷装置のトータルの全域を利用する」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0014】に「ポイントは、L*a*b色空間で反らされる・・・において、有用である」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか全体的に不明である。
【0017】に「測色カラー信号を、装置に従属する主要色素信号に変換するステップであって、当該変換が引き続く黒色素追加を説明する(accounts for)ように、各主要色素信号が、カラー印刷を表示する際に使用されるべき色素の濃度を規定する」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0018】に「CMYからCMYKへの変換は次に、カラー全域境界(color gamut boundary)の角(corner)においてCMYK値を変更しない平均化フィルタで円滑化される」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0019】が、具体的にどのような構成であるのか全体的に不明である。
【0020】が、具体的にどのような構成であるのか、図1を参照しても全体的に不明である。
【0021】に「・・・印刷技術に対して、シアン、マゼンタ、または黄色色素を、黒色素に付加することは、結合された色を、黒単独よりは明るくさせる」と記載されているが、意味不明である。
【0022】に記載された「対応値ポイント(correspondence value point)」、「Vcmyポイント」、「キューブのCMY角(corner)」及び「最大暗さ」のそれぞれの定義が不明である。また、他の段落についても同様である。
【0022】に「キューブのCMY角(corner)に対するL*a*b値は、それが、最大暗さを生成するための100%のCMYK技術で作られているか、或いは、最大暗さを生成するための100%黒技術で作られているかに関らず、プリンタの最大暗さポイントのL*a*bである」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0022】に「L*a*b空間での最大プリンタ全域が決定される」と記載されているが、具体的にどのようにして「最大プリンタ全域」を決定するのか不明である。
【0022】に「初期黒値から、L*a*b対応値ポイントを通して、ラインが描かれる」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0023】に記載された「初期黒ポイント」及び「ポイント「Kstart」」のそれぞれの定義が不明である。また、他の段落についても同様である。
【0023】に「最大プリンタ全域の最頂部表面は、CMYキューブの最頂部表面と同じである」と記載されているが、「最大プリンタ全域」は、Kを含む場合(CMYK)ではないのか?
【0023】に「最大プリンタ全域を構築するために、最大クロマ(即ち、MK、CMK、CK、CYK、YK、および、YMKと名称付けられたポイント)の、6個の暗いポイントのために、追加のL*a*bデータが決定される」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0024】に「初期ブロック(・)ポイント」及び「初期ブロック・ポイント・ライン」のそれぞれの定義が不明である。
【0025】に「ステップS140において、L*a*b対応ポイント、即ちVcmyポイントは、最大プリンタ全域の3次元L*a*b色空間内の、対応ポイントL*a*bポイント、Vcmyk、にワープされる(warped)。ここで・・・」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0026】に「ステップS140において、・・・スロープの不連続が円滑化される」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。
【0027】乃至【0034】は、全体的に不明りような記載が散見され、具体的にどのような構成であるのか著しく不明である。
【0035】に「スキャナまたは他の入力装置105は、特定の画像に対するC,MおよびY値を検知する・・・検知されたL*a*b値(Vc,VM,およびVY)に変換する・・・及び/又は、それをワープする(warps)・・・ワープされたバージョン(warped version)である・・・スロープ連続性スムーザ/平均化・フィルタ150は、円滑化された修正されたC''M''Y''およびK''値を出力する・・・利用装置に送られる」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか、全体的に著しく不明である。 」

そして、「依然として、発明の詳細な説明や請求項の記載からは、本願発明が、どのような目的を達成するためにどのような作用でどのような効果が得られるものなのか不明である。」として拒絶査定がされた。

3.本願特許請求の範囲

平成21年10月15日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の内、請求項1の記載は以下のとおりである。
なお、当該補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項1を引用する請求項2を新たな請求項1とし、これに限定的減縮を行うとともに、拒絶査定の理由である拒絶の理由1の理由に対して、これを解消するために、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。

「【請求項1】
色再生装置色空間での色値を、装置独立(device independent)の色空間での色値Vcmyに変換する段階と、
前記装置独立の色空間での最大印刷全域を決定するための第1の決定段階と、
前記色値Vcmyをスケーリング(scaling)する段階であって、前記スケーリングされた値は、得ることのできる最大全域(maximum gamut)を、装置色空間での色値で満たすような段階と、
前記装置色空間における色値を決定する段階であって、前記決定された色値は、前記装置独立空間での前記スケーリングされた値に対応するものである段階と
を含み、
前記決定された色値は、画像を生成するための印刷装置を制御するために利用可能であって、
前記決定された色値を円滑化する段階をさらに含み、前記円滑化する段階は、互いに異なる第1?第3の円滑化関数のうち、第1の円滑化関数を用いてCMYキューブの縁上の点を円滑化し、第2の円滑化関数を用いて前記キューブの面上の点を円滑化し、第3の円滑化関数を用いて前記キューブの内部の点を円滑化する
ことを特徴とする、色再生装置のための拡張された色全域を得るために利用可能なグレイ成分置換の方法。」

4.当審の判断

当該補正された請求項1の記載が特許法第36条第4項および第6項第2号の規定を満たしているか否かについて検討する。

以下、拒絶理由で指摘したいくつかの点について検討する。

(1)「請求項1に「前記色独立の色空間での値をスケーリング(scaling)して、得ることのできる最大全域(maximum gamut)を、装置色素空間での色素値で満たし」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。また、他の請求項及び【0018】等についても同様である。」について

補正により、請求項1における当該内容は次のように補正された。
「前記装置独立の色空間での最大印刷全域を決定するための第1の決定段階と、
前記色値Vcmyをスケーリング(scaling)する段階であって、前記スケーリングされた値は、得ることのできる最大全域(maximum gamut)を、装置色空間での色値で満たすような段階と、」

当該文章において、「得ることのできる最大全域(maximum gamut)」とは、「前記装置独立の色空間」において得ることのできる最大全域を意味することが構文上明らかである。
また、該「得ることのできる最大全域(maximum gamut)」は「装置色空間での色値で満たすような」とされていることから、該「得ることのできる最大全域(maximum gamut)」が「装置色空間」でないことが意味合い上明らかであって、「装置色空間」でない色空間は「装置独立の色空間」以外に存在しないことから、該「得ることのできる最大全域(maximum gamut)」は「前記装置独立の色空間」において得ることのできる最大全域を意味するといえる。

しかしながら、そもそも「装置独立の色空間」は装置に依存しない仮想の色空間であって、装置色空間のように、装置による物理的制約界が存在しない。「得ることのできる」とは、どのような技術的意味であるのか、発明の詳細な説明を参酌しても理解することはできない。
「前記装置独立の色空間での最大印刷全域を決定するための第1の決定段階」とあるが、該最大印刷全域をどのように決定するものであるか、その決定処理がどのようになされるのかも不明である。
物理的制約の存在しない空間において“最大全域”とはどのように定義されるものであり、「前記装置独立の色空間での最大印刷全域を決定するための第1の決定段階」とはどのような決定段階であるのか依然として不明である。

意見書においては、本願発明が「印刷デバイスの最大CMYKカラー全域におけるCMY色空間のCMYポイントの全てを、L*a*b色空間にマッピング」するものである旨の説明がされているが、請求項1の記載は、そのような構成を意味しない。

よって、拒絶理由において指摘した当該事項は、依然として解消していない。

(2)「請求項1に「色再製装置のための拡張された色全域を得るために利用可能なグレイ成分置換」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。また、他の請求項についても同様である。」について

補正により、請求項1における当該記載は「色再生装置のための拡張された色全域を得るために利用可能なグレイ成分置換」と補正された。
しかしながら、「グレイ成分置換」とはどのような置換であるのか、請求項1の他の構成要件に「グレイ値成分」を意味する記載は存在せず、請求項1の他の構成要件がどのように関連して「グレイ成分置換」をすることになるのか依然として不明であり、何が「色再生装置のための拡張された色全域を得るために利用可能なグレイ成分置換の方法」となるのか不明である。

発明の詳細な説明の段落【0011】?【0035】の記載内容が「グレイ成分置換」に関する記載であることは理解できるが、拒絶理由通知において、これらの段落に対して指摘した点は何ら補正がされていないため、発明の詳細な説明においても「グレイ成分置換」が具体的にどのような手法により実行されるものであるのか不明である。
そして、当該段落【0011】?【0035】の記載内容と請求項1の構成要件との対応も明確でない。
審判請求書において、当該不明を解消するための主張は何らされていない。

なお、審判請求人(出願人)は、平成20年12月8日付け提出の意見書において、次のように述べている。
「2.本願発明の主題及び不明とされた点についてのご説明等
(1)はじめに(本願発明の技術思想について)
本願発明にかかるシステム及び方法は、典型的には印刷方法のひとつとして実施されるものであり、具体的には、プリントジョブに対する入力色信号の較正(キャリブレーション)のために、3次元カラーキャリブレーション・ルックアップテーブルを用いるものです。特に、本願発明にかかるシステム及び方法は、CMYKカラー値を計算し、CMY色空間及びL*a*b色空間に基づいた較正(キャリブレーション)において使用されます。この点は、本願明細書段落0018?0019の記載にも裏付けられております。
特に、本願発明にかかるシステム及び方法は、第1に、デバイス依存のCMY色空間(CMY 三次元カラーキューブ)におけるあるCMY値を、デバイス依存のL*a*b色空間における対応するL*a*bカラー値へ変換する(ワープさせる)ところに特徴があります。例えば、いくつかのCMY値は、CMY色空間における最大クロマポイント(例えば、シアン、シアン-マゼンタ、マゼンタ、マゼンタ-イエロー、イエロー、及びイエロー-シアン)、及び最大暗さポイント(maximum darkness point)であります。このことは、本願明細書段落0018?0022の記載にも裏付けられております。
本願発明にかかるシステム及び方法は、対応するL*a*bカラー値をスケーリングするものであるため、この対応するL*a*bカラー値は、印刷デバイス(プリンタ)のCMYKカラー全域を埋めるものとなります。例えば、本願発明にかかるシステム及び方法は、L*a*b色空間における印刷デバイスの最大CMYKカラー全域を定義し、この対応するL*a*bカラー値を、L*a*b色空間から、プリントデバイスによって獲得可能な最大カラー全域へと変換する(ワープさせる)こととなります。このことは、本願明細書段落0018?0019の記載、及び同段落0022?0025の記載等にも裏付けられております。
さらに、本願発明にかかるシステム及び方法は、印刷デバイスの最大CMYKカラー全域におけるCMY色空間のCMYポイントの全てを、L*a*b色空間にマッピングし、最大カラー全域においてスケーリングされたL*a*bカラーポイントに基づいた「四面体補間法(tetrahedral interpolation)」によってCMYKカラー値を決定するものです。例えば、本願発明にかかるシステム及び方法は、スケーリングされた全てのL*a*bカラーポイント(マッピングされたCMY色空間のCMYポイント)と、CMYK色空間における全てのCMYKポイントとの間の線形関係を決定します。このことは、本願明細書段落0026?0034の記載等に裏付けられております。
例えば、図1におけるVcmy及びVcmykは、それぞれ対応するL*a*bカラー値及びスケーリングされたL*a*bカラー値であります。さらに、L*a*b色空間における印刷デバイスの最大カラー全域は、最大プリンタ全域3次元L*a*b色空間となります。このことは、本願明細書段落0022及び0025の記載等に裏付けられております。
さらに、本願発明にかかるシステム及び方法は、計算されたCMYKカラー値を、平均フィルタを用いて円滑化(smoothing)しますので、CMYK色空間(CMYKカラーキューブ)のコーナーに位置付けられたCMYK値は維持されます。このことは、本願明細書段落0018の記載等にも裏付けられております。」

しかしながら、
「特に、本願発明にかかるシステム及び方法は、第1に、デバイス依存のCMY色空間(CMY 三次元カラーキューブ)におけるあるCMY値を、デバイス依存のL*a*b色空間における対応するL*a*bカラー値へ変換する(ワープさせる)ところに特徴があります。」
と主張するものの、請求項1にはそのような内容は記載されていない。
請求項1には、「色再生装置色空間での色値を、装置独立(device independent)の色空間での色値Vcmyに変換する段階」と、「前記決定された色値を円滑化する段階をさらに含み、前記円滑化する段階は、互いに異なる第1?第3の円滑化関数のうち、第1の円滑化関数を用いてCMYキューブの縁上の点を円滑化し、第2の円滑化関数を用いて前記キューブの面上の点を円滑化し、第3の円滑化関数を用いて前記キューブの内部の点を円滑化する」ことが記載されているのであって、請求人の当該主張と請求項1の記載は対応しない。

また、当該主張の内、
「本願発明にかかるシステム及び方法は、印刷デバイスの最大CMYKカラー全域におけるCMY色空間のCMYポイントの全てを、L*a*b色空間にマッピングし、最大カラー全域においてスケーリングされたL*a*bカラーポイントに基づいた「四面体補間法(tetrahedral interpolation)」によってCMYKカラー値を決定するものです。例えば、本願発明にかかるシステム及び方法は、スケーリングされた全てのL*a*bカラーポイント(マッピングされたCMY色空間のCMYポイント)と、CMYK色空間における全てのCMYKポイントとの間の線形関係を決定します。」
なる主張から、本願発明の目的は漠然とは把握することができる。
しかしながら、「印刷デバイスの最大CMYKカラー全域におけるCMY色空間のCMYポイントの全てを、L*a*b色空間にマッピング」したものについて、どのような関係をもって印刷デバイスの「CMYKカラー値」を決定することになるのかは著しく不明である。
「明細書段落0026?0034の記載等に裏付けられております。」と主張するが、当該段落から発明の目的を推察することはできるものの、どのようにして「CMYKカラー値」を決定することになるのかを当該段落の記載から理解することはできない。

なお、請求人(出願人)は、
「本願発明にかかるシステム及び方法は、対応するL*a*bカラー値をスケーリングするものであるため、この対応するL*a*bカラー値は、・・・」
と主張をしているが、請求項1には「装置独立(device independent)の色空間での色値Vcmyに変換する段階」と記載されており、請求項1における装置独立(device independent)の色空間は、意見書で主張する「対応するL*a*bカラー値」ではない。
段落【0022】には、「L*a*b値の決定のための一つの模範的技術は、対応値ポイント(correspondence value point)(これは、図1に示されるようにVcmyポイントとして指定され得る)を決定するための、CMYキューブでの四面体の補間である。」とは記載されているものの、当該段落に「装置独立(device independent)の色空間での色値Vcmyに変換する段階」が記載されているとはいえない。
よって、当該主張はその論拠を欠くものである。

また、意見書では、更に、
「本願発明にかかるシステム及び方法は、対応するL*a*bカラー値をスケーリングするものであるため、この対応するL*a*bカラー値は、印刷デバイス(プリンタ)のCMYKカラー全域を埋めるものとなります。例えば、本願発明にかかるシステム及び方法は、L*a*b色空間における印刷デバイスの最大CMYKカラー全域を定義し、この対応するL*a*bカラー値を、L*a*b色空間から、プリントデバイスによって獲得可能な最大カラー全域へと変換する(ワープさせる)こととなります。このことは、本願明細書段落0018?0019の記載、及び同段落0022?0025の記載等にも裏付けられております。」
としているが、ここで、「L*a*b色空間における印刷デバイスの最大CMYKカラー全域を定義し」とあるものの、この「定義し」の意味は不明であり、また、このことは、本願明細書段落【0018】?【0019】、【0022】?【0025】の記載等に裏付けられているものではない。

前記したように、本願発明にかかるシステム及び方法が、「印刷デバイスの最大CMYKカラー全域におけるCMY色空間のCMYポイントの全てを、L*a*b色空間にマッピングし、最大カラー全域においてスケーリングされたL*a*bカラーポイント」に基づいて「CMYKカラー値を決定する」ことを目的としていることは推察できる。

しかしながら、請求項1には段落【0023】?【0026】に記載されている内容(当該段落の記載内容自体も明確ではないが)が請求項1には表現されておらず、請求項1における「グレイ成分置換」が具体的にどのような構成であるのかは不明である。

(3)その他

拒絶理由においては、例えば次の点が指摘されている。
「【0023】に「最大プリンタ全域の最頂部表面は、CMYキューブの最頂部表面と同じである」と記載されているが、「最大プリンタ全域」は、Kを含む場合(CMYK)ではないのか?」
「【0023】に「最大プリンタ全域を構築するために、最大クロマ(即ち、MK、CMK、CK、CYK、YK、および、YMKと名称付けられたポイント)の、6個の暗いポイントのために、追加のL*a*bデータが決定される」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。」

これについて、前者の指摘は補正により明りょうになる示唆であるものの、何ら補正はされず、また後者の指摘は本願発明を正しく認定するために特に重要な点であるものの、これについての回答は何らされていない。

そして、段落【0023】?【0026】の記載内容は、上述したような目的が推察できるとしても、具体的にどのような処理を実行することにより、当該目的を達成することができるのか、発明の詳細な説明として、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度の内容が、明確かつ十分に記載されてはいない。

拒絶理由において指摘した当該事項は、依然として解消していない。

結局、上記拒絶理由として指摘した事項は依然として著しく不明であって、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものではなく、発明の詳細な説明には、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度の明確かつ十分な記載がされているものではない。

5.むすび

以上のとおりであるから、この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないとした拒絶査定に誤りはない。

よって、原査定を取り消す、この出願の発明は特許すべきものであるとする審判請求の趣旨は認められないから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-08 
結審通知日 2011-08-15 
審決日 2011-08-26 
出願番号 特願2004-2699(P2004-2699)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 536- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 千葉 輝久
溝本 安展
発明の名称 装置の完全な全域を利用する円滑なグレイ成分置換戦略  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  

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