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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1250993
審判番号 不服2011-5310  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-09 
確定日 2012-01-26 
事件の表示 特願2005-289718号「空気調和機の室外機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日出願公開、特開2007-101025号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年10月3日の出願であって平成23年1月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

II.平成23年3月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年3月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。「本体筐体の側面又は背面に設けられ該本体筐体の持ち上げ操作時に手を掛けることのできる一又は複数の取手部を有してなる空気調和機の室外機であって,
少なくとも一つの前記取手部に,他の部分よりも薄肉に形成された部分,周囲が他の部分よりも薄肉に形成された部分,他の部分よりも軟性の材料で形成された部分のいずれかであって,配線を通すのに必要な広さに応じてその一部若しくは全部を除去することによって前記本体筐体内側と外側とを連通させる連通孔が形成される部分である除去対象部が設けられてなることを特徴とする空気調和機の室外機。」(下線部は補正個所を示す)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「除去対象部」を構成する部分の選択肢の一部である「周囲を間欠的な切り込みに囲まれた部分」を削除するとともに、「除去された場合に」とあったものを「除去することによって」とするものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭58-144519号(実開昭60-054064号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
1-ア「本考案は空気調和機の室外ユニットに係り、特に梱包の簡略化を図ると共に室外ユニット自体の運搬性を高めることができる空気調和機の室外ユニットに関するものである。」(明細書1ページ14行?17行)

1-イ「本考案は、室外ユニットのハウジングの底板に、ドレン水の排水口を兼用する手掛け穴を形成し、またハウジングの側板には電線引込口を兼用する手掛け穴を形成することによって上記目的を達成するものである。」(明細書3ページ2?6行)

1-ウ「室外ユニットの外形はハウジング1によって略直方体に区画形成されている。ハウジング1内にあって図中背面及び左側面に臨んで熱交換器2が配設され、右側面の側板3の略上半分には電気部品箱4がその内方に取り付けられている。電気部品箱4の下方には、第2図にも示す如く室内ユニットとの間を連結する電気配線5が挿通されると共にこれを電気部品箱4内へ案内する電線引込口6が形成されている。この電線引込口6には、これに手を掛けて室外ユニット自体を持ち上げることができるように、その開口部周縁を補強するリブとして把手部材7が嵌着されている。この把手部材7は第3図に示す如く略90°湾曲された箱形の筒状に形成され、挿入された手の指の湾曲に沿うように構成されている。また、この湾曲形状は第2図にも示す如く、これに挿通される電線5の端子8が電気部品箱4内の端子板9へ案内されるよう構成されている。また、電線引込み口6の開口部周縁には把手部材7のフランジ部13が係合し、ハウジング1の側板3に対して補強リブとして機能するように構成されている。」(明細書3ページ12行?4ページ12行)

1-エ「また、室外ユニットの重量によっては3人用、4人用の手掛け穴を形成しても良い。」(明細書5ページ11行?12行)

そして、第1図には、ハウジング1の側板3に二つの電線引込み口6を形成した室外ユニットが示され、第2図には、電線引込み口6に嵌着した筒状の把手部材7がハウジング1の内側と外側とを連通する孔を有するとともに、その孔に電線5を通した状態の断面が示され、第3図には、略90°湾曲された箱形の筒状に形成された、孔を有する把手部材7が示されている。

上記記載事項について検討すると、記載1-ア、1-イには、空気調和機の室外ユニットのハウジング1の側板に、電線引込口6を兼用する手掛け穴を形成することが示されている。
記載1-ウには、室外ユニットのハウジング1に、室内ユニットとの間を連結する電気配線5が挿通されると共にこれを電気部品箱4内へ案内する電線引込口6を形成し、この電線引込口6に略90°湾曲された箱形の筒状に形成された把手部材7を嵌着し、これに手を掛けて室外ユニット自体を持ち上げることができるようにしたものが示されている。

これら記載事項1-ア?1-ウ及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「ハウジング1の側板3に設けられこれに手を掛けて室外ユニット自体を持ち上げることができるようにした複数の電線引込み口6に嵌挿した把手部材7を有してなる空気調和機の室外ユニットであって、
前記電線引込み口6に嵌挿した把手部材7に電線5を通すために前記ハウジング1の内側と外側とを連通させる孔が形成されている空気調和機の室外ユニット。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-98356号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

2-ア 「【発明の属する技術分野】この発明は、冷凍装置、特に冷凍装置本体の下部に台枠を設けた冷凍装置に関するものである。
【従来の技術】図7は、従来の冷凍装置における冷凍装置本体の構成を示す概略斜視図である。この図において、1は冷凍装置本体で、以下に述べる各構成要素により構成されている。即ち、10は台枠で、図示していないが、冷凍装置を構成する周知の圧縮機、フィンチューブ式熱交換器、送風機等を支承しているものである。11及び12は上記各装置を囲むように台枠10に取り付けられ、冷凍装置本体1の箱体の一部を形成する左及び右側面パネル、13は同じく冷凍装置本体1の箱体の前面上部を形成する上部前面パネル、14は箱体の前面下部を形成する前面サービスパネル、15は箱体前面で、上部前面パネル13と前面サービスパネル14との間に設けられた前面ガード、16は箱体の上面に設けられた上面ガード、17は箱体内の過度の温度上昇を防止するため、前面サービスパネルに形成された換気用のスリット、18及び19は前面サービスパネル14及び右側面パネル12の下部にそれぞれ設けられたノックアウト穴で、いずれかのノックアウト穴を開口することにより、もしくは、台枠10に図示しない穴を設けることにより、冷凍装置本体1と、図示していない冷蔵庫等の客先設置の冷凍応用品とを接続する吸入配管20及び液配管21を冷凍装置本体1の前方、側方あるいは下方の3方向に取り出すことができるようにしたものである。」(段落【0001】、【0002】)

2-イ「【発明が解決しようとする課題】従来の冷凍装置は以上のように構成され、吸入配管20、液配管21及び電気配線等の取り出しのために、前面サービスパネルや側面パネルにノックアウト穴18、19を形成していた・・・・・・」(段落【0005】)

これら記載事項より、引用例2には、「冷凍装置の前面サービスパネルや側面パネルに複数のノックアウト穴を形成し、いずれかのノックアウト穴を開口することにより、吸入配管、液配管及び電気配線等を前方や側方に取り出すことができるようにすること。」が記載されているといえる。

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「ハウジング1」は、本願補正発明の「本体筐体」に相当し、以下同様に、「ハウジング1の側板3」は「本体筐体の側面」に、「これに手を掛けて室外ユニット自体を持ち上げることができるようにした複数の」「電線引込み口6に嵌挿した把手部材7」は「該本体筐体の持ち上げ操作時に手を掛けることのできる一又は複数の」「取手部」に、「空気調和機の室外ユニット」は「空気調和機の室外機」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「前記電線引込み口6に嵌挿した把手部材7に電線5を通すために前記ハウジング1の内側と外側とを連通させる孔が形成されている」と、本願補正発明の「少なくとも一つの前記取手部に,他の部分よりも薄肉に形成された部分,周囲が他の部分よりも薄肉に形成された部分,他の部分よりも軟性の材料で形成された部分のいずれかであって,配線を通すのに必要な広さに応じてその一部若しくは全部を除去することによって前記本体筐体内側と外側とを連通させる連通孔が形成される部分である除去対象部が設けられてなる」とは、「少なくとも一つの前記取手部に,配線を通すために前記本体筐体内側と外側とを連通させることが可能な部分が設けられている」点で共通する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「本体筐体の側面又は背面に設けられ該本体筐体の持ち上げ操作時に手を掛けることのできる一又は複数の取手部を有してなる空気調和機の室外機であって,
少なくとも一つの前記取手部に,配線を通すために前記本体筐体内側と外側とを連通させることが可能な部分が設けられている空気調和機の室外機。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
取手部に設けられる、配線を通すために本体筐体内側と外側とを連通させることが可能な部分が、本願補正発明では、「他の部分よりも薄肉に形成された部分,周囲が他の部分よりも薄肉に形成された部分,他の部分よりも軟性の材料で形成された部分のいずれかであって,配線を通すのに必要な広さに応じてその一部若しくは全部を除去することによって前記本体筐体内側と外側とを連通させる連通孔が形成される部分である除去対象部」であるのに対し、引用発明では、「電線5を通すために前記ハウジング1の内側と外側とを連通させる孔」である点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
引用例2には、本願補正発明及び引用発明と共通する技術分野に属する冷凍装置において、本願補正発明の「本体筐体の側面又は背面」に対応する前面サービスパネル14や側面パネル12に複数のノックアウト穴を形成し、いずれかのノックアウト穴を開口することにより、吸入配管、液配管及び電気配線等を前方や側方に取り出すことができるようにすることが示されている。
すなわち、引用例2には、冷凍装置の本体筐体の側面等に、電気配線等を通すために本体筐体内側と外側とを連通させることが可能な部分をノックアウト穴により複数形成し、他の冷凍応用品との接続の都合に応じていずれかのノックアウト穴を選択的に開口して、電気配線等を通すことが記載されている。
一方、引用発明は、本体筐体の側面又は背面(ハウジング1の側板3)に、複数の取手部(電線引込み口6に嵌挿した把手部材7)を有しているものであるから、引用発明に引用例2記載のものを適用し、複数の取手部(電線引込み口6に嵌挿した把手部材7)にノックアウト穴を形成し、運搬性向上の必要、配線の都合に応じて、いずれかのノックアウト穴を選択的に開口して、配線を通すことが可能なようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、引用例2記載のものを適用するにあたり、ノックアウト穴の形態として、「他の部分よりも薄肉に形成された部分」とし、配線等の対象物を「通すのに必要な広さに応じてその一部若しくは全部を除去することによって前記本体筐体内側と外側とを連通させる連通孔が形成される部分である除去対象部」としたものは、例えば、特開2004-63872号公報(電線挿通孔52に設けられた、電線等で突き破ることが可能な他の部分より薄いノックアウト部材52a:段落【0044】,図9等参照)や、特開2002-233041号公報(電線挿通孔3に設けられた、電線等で突き破ることが可能な他の部分より薄いノックアウト部材3a:段落【0017】,図1等参照)に示すように従来周知であり、同様に、「周囲が他の部分よりも薄肉に形成された部分」とし、配線等の対象物を「通すのに必要な広さに応じてその一部若しくは全部を除去することによって前記本体筐体内側と外側とを連通させる連通孔が形成される部分である除去対象部」としたものも、例えば、特開平9-326572号公報(外周に切り取りのための溝5,6を設けた配線用のノックアウト部2:段落【0052】,図3等参照)、特開平2005-52328号公報(同芯のサークル状スリット8aと多数の分割状スリット8bとによりノックアウト孔として構成され、対象となる飲用缶の大きさに応じて開口可能な飲用容器受け8:段落【0029】,図8?11等参照)に示すように従来周知であることから、ノックアウト穴として、これら周知の形態を選択して、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が適宜なし得たことである。

また、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年10月15日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「本体筐体の側面又は背面に設けられ該本体筐体の持ち上げ操作時に手を掛けることのできる一又は複数の取手部を有してなる空気調和機の室外機であって,
少なくとも一つの前記取手部に,他の部分よりも薄肉に形成された部分,周囲が他の部分よりも薄肉に形成された部分,他の部分よりも軟性の材料で形成された部分,周囲を間欠的な切り込みに囲まれた部分のいずれかであって,その一部若しくは全部が除去された場合に前記本体筐体内側と外側とを連通させる連通孔が形成される部分である除去対象部が設けられてなることを特徴とする空気調和機の室外機。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明の「除去対象部」を構成する部分の選択肢に「周囲を間欠的な切り込みに囲まれた部分」を付加するとともに、「除去することによって」を「除去された場合に」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、実質的に、その選択肢の一部を削除したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載されたもの並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2011-11-24 
結審通知日 2011-11-29 
審決日 2011-12-13 
出願番号 特願2005-289718(P2005-289718)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 直欣  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
発明の名称 空気調和機の室外機  
代理人 大島 泰甫  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 小羽根 孝康  
代理人 藤原 清隆  

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