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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1251232
審判番号 不服2009-14239  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-07 
確定日 2012-02-02 
事件の表示 特願2000-542796「静電チャック電源」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月14日国際公開、WO99/52144、平成14年 4月 9日国内公表、特表2002-510879〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、1999年3月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年4月3日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月28日付けで拒絶の理由が通知され、同21年2月24日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、同21年3月31日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同21年8月7日に本件審判の請求がされ、同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において、平成22年11月10日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、同23年5月16日に意見書及び手続補正書が提出された。
本件出願の請求項1乃至4に係る発明は、平成23年5月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「半導体処理装置において例えば半導体ウェーハのような基板を保持する装置であって、
基板支持表面の下に埋め込まれた電極を備える静電チャックと、
前記静電チャックの前記電極へ結合され、前記基板と前記静電チャックの間の電位差によって前記基板が保持されるように可変チャッキング電圧を前記電極へ供給する可変電圧電源を含むESC電源と、
前記静電チャックに結合され、前記半導体処理装置内にプラズマを生成するために使用されるRF信号のピークピーク又はピーク電圧を測定するRFプローブと、前記ピークピーク又はピーク電圧を表す大きさを有するDC信号とを含むチャッキング監視回路と、
前記DC信号を伝達関数に入力することによって、前記基板と前記静電チャックの間の前記電位差を表すチャッキングインジケータ値を生成するプラズマ検出回路とを含み、前記伝達関数は前記静電チャックの実験的調査から得られ、
前記装置は、前記ESC電源に結合され、前記チャッキングインジケータ値に応答して、動的に前記電位差を所定値に維持するように前記ESC電源を制御するシステム制御ユニットと、
を備える、基板保持装置。」

2.引用刊行物
当審における拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成9年10月9日に頒布された「国際公開第97/37382号」(以下「刊行物1」という。)、及び、同じく本願の優先権主張の日前である平成6年11月25日に頒布された「特開平6-326176号公報」(以下、「刊行物2」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている。
(1) 刊行物1の記載事項
刊行物1には以下の記載がある。なお、括弧内は、刊行物1の対応する日本語文献である特表2000-507745号公報を参照した日本語翻訳文及び同公報における該当箇所である。
ア 第1ページ第2行?第7行(第6ページ第3行?第6行)
「 Background of the Invention
The present invention relates to the manufacture of semiconductor devices. More specifically, the present invention relates to methods and apparatuses for securely clamping a semiconductor wafer on an electrostatic (ESC) chuck of a plasma processing chamber during wafer processing.」
(発明の背景
本発明は、半導体装置の製造に関する。更に特定すれば、本発明は、ウエハ処理の間、プラズマ処理チャンバの静電(ESC)チャック上に半導体ウエハを確実にクランプする方法および装置に関するものである。)
イ 第4ページ第13行?第5ページ末行(第9ページ第13行?第10ページ第12行)
「Further, the plasma-induced negative wafer bias may unduly increase the potential difference between the negatively-biased wafer and the positive pole of the bipolar chuck. An excessively high potential difference may cause arcing, i.e., sparking, between the lower surface of the wafer and the upper surface of the chuck, resulting in pit mark damage. Over time, the surface of the chuck may be damaged to the point where it becomes impossible to keep the heat-exchange gas properly sealed. Note that this arcing problem may also occur in a monopolar chuck system when the potential difference between the monopolar chuck and the negatively biased wafer becomes excessively large.
If the d.c. bias potential is substantially constant during plasma processing, it may be possible to compensate for this imbalance by appropriately modifying, in a static manner, the voltage levels supplied to the chuck. For example, the positive pole in a bipolar chuck may be biased less positively with respect to the common reference voltage level to substantially eliminate the above-mentioned electrostatic force imbalance and to reduce the risk of electrostatic arcing. ・・・ In a monopolar system, e.g., the system shown in Fig. 2, the entire chuck may be biased less positively to account for the negative bias level of the wafer when plasma is present.
However, the d.c. bias potential of a given wafer does not stay constant during processing and may in fact vary from process step to process step. Consequently, the variations in the potential differences between the wafer and the chuck and the electrostatic forces generated thereby cannot be eliminated by biasing of the chuck's power supply in a static manner.
In view of the foregoing, what is desired is an improved method and apparatus for clamping a wafer to its electrostatic chuck during plasma processing that will be able to respond in a real time manner to the dynamic nature of the plasma process.」
(更に、プラズマ誘導によるウエハの負バイアスにより、負にバイアスされたウエハとバイポーラ・チャックの正極との間の電位差が過度に増大することがある。過剰に大きい電位差は、アーク、すなわちウエハの下面とチャックの上面との間でスパークを生じ、その結果ピット・マーク損傷を起こす場合がある。時間とともに、熱交換ガスを適当に封じておくのが不可能となるまでチャックの表面が損傷を受ける場合がある。なお、単極性チャック・システムにおいても、単極性チャックと負にバイアスされたウエハとの間の電位差が過剰に大きくなった場合に、このアークの問題が発生することがあることを注記しておく。
プラズマ処理の間、直流バイアス電位がほぼ一定であれば、チャックに供給される電圧レベルを静的に適切に変更することによって、この不均衡を補償することが可能な場合がある。例えば、共通基準電圧レベルに対するバイポーラ・チャックの正極の正バイアスを低下させて、上述の静電力の不均衡をほぼ解消するとともに、静電アークの危険性を低下させることができる。・・・単極性システム、例えば図2に示されるシステムでは、チャック全体の正バイアスを低下させて、プラズマが存在する場合のウエハの負バイアス・レベルを考慮することができる。
しかしながら、所与のウエハの直流バイアス電位は処理の間一定でなく、実際にはプロセス・ステップ毎に異なる場合がある。このため、静的にチャックの電源をバイアスすることによって、ウエハとチャックとの間の電位差のばらつきおよびそれによって発生する静電力のばらつきを解消することはできない。
前述の点に鑑み、要望されているのは、プラズマ・プロセスの動的性質にリアルタイムで応答することが可能な、プラズマ処理の間ウエハをその静電チャックにクランプする改良された方法および装置である。)
ウ 第8ページ第11行?第9ページ末行(第12ページ第3行?第13ページ第21行)
「Fig. 4 schematically illustrates an exemplary embodiment of the dynamic feedback electrostatic (ESC) chuck system in accordance with one aspect of the present invention. The ESC chuck system of Fig. 4 is said to be in a dynamic feedback configuration since the wafer d.c. bias level is dynamically inferred and employed to modify the potential levels supplied by the ESC power supply to the ESC chuck poles. Although a bipolar ESC chuck is shown in this schematic illustration, the dynamic feedback concept applies, as will be shown later in a subsequent Fig. 9, equally well to a monopolar ESC chuck.
Referring now to Fig. 4, there is shown a bipolar ESC chuck 302, which comprises a donut portion 304 and a base portion 306. As is conventional, bipolar ESC chuck 302 is energized by an RF generator 420 through a match circuit 424, which serves to maximize the power transfer from RF generator 420 to the plasma. The RF peak-to-peak voltage (V_(PK-PK)) is sensed by a wafer bias sensor (WBS) 400 at a predefined measuring point 402 on the ESC chuck through a conductor 403. Point 402 is preferably located at the base portion 306 of bipolar ESC chuck 302 although it may also be located anywhere on the chuck, e.g., at the donut portion 304. Preferably, point 402 is located at a chuck location that is not exposed to the plasma environment. In this manner, the RF peak-to-peak voltage may be sensed without jeopardizing the long-term survivability of conductor 403 by not exposing it to the highly reactive plasma environment. The absence of a wafer bias sensor contact, e.g., conductor 403, from the plasma processing chamber also minimizes any potential for contamination.
In accordance with one aspect of the present invention, the measured RF peak-to-peak voltage, which is an a.c. signal, is then converted to a d.c. voltage level by wafer bias sensor 400. It has been found that the d.c. bias voltage of the wafer, V_(DC-W), is related to the peak-to-peak voltage (V_(PK-PK)) measured at the ESC chuck by the following equation:
V_(DC-W)≡-(V_(PK-PK)/2)+2V_(PL) (Eq.1)
where V_(PL) represents the plasma voltage and V_(DC-W) represents the d.c. bias voltage of the wafer when RF power is applied to the chuck and plasma is present in the plasma processing chamber.
For a typical plasma processing environment, the plasma voltage V_(PL) may be around 20-70 volts. In contrast, the peak-to-peak voltage supplied by the RF source to the chuck (V_(PK-PK)) is typically much greater, e.g., up to 2,000 volts and more typically around 300-1500 volts. Since the plasma voltage V_(PL) is much smaller than the peak-to-peak voltage measured on the chuck (V_(PK-PK)), the approximated d.c. bias voltage of the wafer (V_(DC-WA)) may be approximately represented by the following relationship when the plasma voltage V_(PL) is ignored:
V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2) (Eq.2)
(当審注;「≒」は、「ニアリーイコール」を表す。以下、同様。)
It follows from Eq. 2 that the approximated d.c. bias voltage of the wafer, V_(DC-WA), can be inferred indirectly and with reasonable accuracy from the chuck's measured peak-to-peak voltage, V_(PK-PK).
The function of the wafer bias sensor circuit (WBS) 400 is to derive the aforementioned approximated wafer d.c. bias voltage (V_(DC-WA)) from the RF peak-to-peak voltage measured on the ESC chuck. This approximated wafer d.c. voltage (V_(DC-WA)) may then be used as a feedback voltage into the variable ESC power supply 412 to modify the potential levels supplied to the two poles, e.g., poles 304 and 306, of the bipolar ESC chuck. 」
(図4は、本発明の一態様にしたがった、動的フィードバック静電(ESC)チャック・システムの例示的な実施形態を概略的に示す。図4のESCチャック・システムは、ウエハ直流バイアス・レベルを動的に推測し、ESC電源によってESCチャック極に供給される電位レベルを変更するために用いるので、動的フィードバック構成であるといわれる。この概略図ではバイポーラESCチャックを示すが、後の図9で後に示すように、動的フィードバックの概念は単極性ESCチャックに等しく当てはまる。
ここで図4を参照すると、ドーナツ部304およびベース部306から成るバイポーラESCチャック302が示されている。従来のように、バイポーラESCチャック302は、整合回路424を介してRF発生器420によって付勢される。整合回路424は、RF発生器420からプラズマへの電力伝達を最大にするよう機能する。導線403を介して、ESCチャック上の所定の測定点402で、ウエハ・バイアス・センサ(WBS)400によってRFピーク・ピーク電圧(V_(PK-PK))が検知される。点402は、バイポーラESCチャック302のベース部306に位置すると好ましいが、チャック上のどこに位置しても良く、例えばドーナツ部304であっても良い。好ましくは、点402は、プラズマ環境に露呈されないチャック位置に位置する。このようにして、導線403を高度な反応性プラズマ環境に露呈しないことによって、導線403の長期的な存続性を危険にさらすことなく、RFピーク・ピーク電圧を検知することができる。また、プラズマ処理チャンバにウエハ・バイアス・センサのコンタクト例えば導線403がないことによって、汚染のいかなる可能性も最小に抑えられる。
本発明の一態様にしたがって、交流信号である測定されたRFピーク・ピーク電圧は、次いで、ウエハ・バイアス・センサ400によって直流電圧レベルに変換される。ウエハの直流バイアス電圧V_(DC-W)は、以下の式によって、ESCチャックにおいて測定されたピーク・ピーク電圧(V_(PK-PK))に関係づけられることがわかっている。
V_(DC-W)≡-(V_(PK-PK)/2)+2V_(PL) (式1)
ここで、V_(PL)はプラズマ電圧を表し、V_(DC-W)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す。
典型的なプラズマ処理環境では、プラズマ電圧V_(PL)は約20ないし70ボルトである。これに対して、RF源によってチャックに供給されるピーク・ピーク電圧(V_(PK-PK))は通常はるかに大きく、例えば2,000ボルトまでであり、更に典型的には約300ないし1500ボルトである。プラズマ電圧V_(PL)は、チャック上で測定されるピーク・ピーク電圧(V_(PK-PK))よりもはるかに小さいので、プラズマ電圧V_(PL)を無視すると、ウエハの近似直流バイアス電圧(V_(DC-WA))は、以下の関係によって近似的に表すことができる。
V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2) (式2)
式2から、ウエハの近似直流バイアス電圧V_(DC-WA)は、チャックの測定されたピーク・ピーク電圧V_(PK-PK)から間接的にかつ相応の精度で推測可能であることになる。
ウエハ・バイアス・センサ回路(WBS)400の機能は、ESCチャック上で測定されたRFピーク・ピーク電圧から、前述の近似ウエハ直流バイアス電圧(V_(DC-WA))を導出することである。次いで、この近似ウエハ直流電圧(V_(DC-WA))を可変ESC電源412へのフィードバック電圧として用いて、バイポーラESCチャックの二つの極、例えば極304および306に供給される電位レベルを変更することができる。)
エ 第10ページ第23行?第26行(第14ページ第17行?第19行)
「It should be noted that although variable ESC power supply 412 is implemented herein by a balanced bridge coupled in series with a d.c. supply source, other conventional variable d.c. power supplies that can modify their outputs responsive to a d.c. input signal may well be employed.」
(可変ESC電源412は、直流供給源と直列に結合した平衡ブリッジによって履行されているが、直流入力信号に応答して出力を変更可能な他の従来の可変直流電源の使用も充分可能であることを注記しておく。)
オ 第11ページ第3行?第9行(第14ページ第25行?第15ページ第4行)
「Fig. 5A shows one implementation of wafer bias sensor 400 of FIG. 4, which performs negative peak detection on the a.c. signal obtained on bipolar ESC chuck 302 to infer the wafer d.c. bias voltage. It should be borne in mind that the particular implementation shown in Fig. 5A is only exemplary and conventional circuits exist for performing similar negative peak detection task. Since wafer bias sensor 400 is designed to perform negative peak detection on the a.c. RF signal, its components are preferably selected to handle the high voltage, high frequency a.c. signal measured.」
( 図5Aは、図4のウエハ・バイアス・センサ400の一実施態様を示す。ウエハ・バイアス・センサ400は、バイポーラESCチャック302上で得られた交流信号の負のピーク検出を行ってウエハ直流バイアス電圧を推測する。なお、図5Aに示す特定の実施態様は例示のみであり、同様の負ピーク検出のタスクを行う従来の回路が存在することに留意されたい。ウエハ・バイアス・センサ400は交流RF信号の負ピーク検出を行うように設計されているので、測定対象の高電圧高周波数交流信号を処理するように、その構成要素を選択すると好ましい。)
カ 第14ページ第29行?第15ページ第27行(第19ページ第4行?第20ページ第4行)
「As mentioned earlier, the dynamic feedback concept applies equally well to monopolar electrostatic chucks. Fig. 9 schematically illustrates, in one embodiment, a monopolar chuck system employing the dynamic feedback technique of the present invention. In Fig. 9, monopolar chuck 200 is positively biased to provide the desired clamping force although, as is known, it may also be negatively biased. Modifications to the circuit of Fig. 9 to implement dynamic sensing to a negatively biased monopolar chuck is within the abilities of those skilled in the art.
Referring now to Fig. 9, wafer 108 is disposed atop dielectric layer 202 of monopolar chuck 200. The chuck's peak-to-peak voltage is detected at point 902 on the chuck and processed by wafer bias sensor (WBS) 400 to infer the approximated wafer d.c. bias voltage. Like point 402 of Fig. 4, pickup point 902 is preferably located at a chuck location that is not exposed to the plasma environment to maximize sensor survivability and minimize the risk of introducing contamination into the wafer processing chamber.
Wafer bias sensor 400 is, in one embodiment, implemented by the negative peak detection circuit of Fig. 5A. The inferred wafer d.c. bias voltage output by wafer bias sensor 400 is then employed as a feedback voltage to modify the potential level supplied by d.c. voltage source 904 to monopolar chuck 200. For example, the more negatively biased the wafer is, the more negative the inferred wafer d.c. bias voltage, which is output by wafer bias sensor 400, will become. Responsive to this inferred d.c. bias voltage, d.c. voltage source 904 will accordingly reduce the positive d.c. potential level supplied to chuck 200. RF filter 417, RF generator 422, RF match 424 and d.c. blocking capacitors have been discussed in connection with Fig. 4.
The dynamic feedback feature advantageously keeps the potential difference between the monopolar chuck and its wafer substantially unchanged from process step to process step. Consequently, the risk of inadvertently creating an excessively high potential difference between the wafer and the monopolar chuck is minimized, thereby reducing the possibility of causing dielectric breakdown damage to the dielectric layer 202 or pit mark damage (due to arcing) to either the upper surface of the chuck or the wafer.」
(初めの方で述べたように、動的フィードバックの概念は単極性静電チャックにも等しく充分に適用される。図9は、一実施形態において、本発明の動的フィードバック技法を用いる単極性チャック・システムを概略的に示す。図9では、単極性チャック200を正にバイアスして所望のクランプ力を与えるが、公知のように、負にバイアスすることも可能である。図9の回路を変形して、負にバイアスした単極性チャックに動的検知を実施することは、当業者の能力内である。
ここで図9を参照すると、単極性チャック200の誘電層202上にウエハ108が配置されている。チャック上の点902でチャックのピーク・ピーク電圧を検出し、ウエハ・バイアス・センサ(WBS)400によって処理して、近似ウエハ直流バイアス電圧を推測する。図4の点402と同様、捕捉点902は、好ましくは、プラズマ環境に露呈されないチャックの位置に配置されて、センサの残存性を最大に高めるとともに、ウエハ処理チャンバ内に汚染が入る危険性を最小に抑える。
一実施形態では、ウエハ・バイアス・センサ400は図5Aの負ピーク検出回路によって履行されている。ウエハ・バイアス・センサ400によって出力された推測ウエハ直流バイアス電圧を、次いでフィードバック電圧として用いて、直流電圧源904によって単極性チャック200に供給される電位レベルを変更する。例えば、ウエハが負にバイアスされるほど、ウエハ・バイアス・センサ400から出力される推測ウエハ直流バイアス電圧は一層負になる。この推測直流バイアス電圧に応答して、直流電圧源904は、チャック200に供給する正の直流電位レベルをそれに応じて低下させる。RFフィルタ417、RF発生器422、RF整合424および直流阻止コンデンサは、図4に関連して既に論じた。
動的フィードバックの特徴は、単極性チャックとそのウエハとの間の電位差を、プロセス・ステップ毎にほぼ不変のままにするという利点がある。したがって、ウエハと単極性チャックとの間に過剰に大きい電位差を偶発的に生成する危険性は最小に抑えられ、このため誘電層202への絶縁破壊損傷またはチャックもしくはウエハの上面への(アークによる)ピット・マーク損傷の可能性が低下する。)
キ ここで、図面の図9を参照すると、誘電層202上にウエハ108が設けられ、誘電層202の下には単極性チャック200が設けられているのが見て取れる。単極性チャック200が電極を備えること、及び、単極性チャック200に備えられた電極が直流電圧源904に結合されていることは明らかである。
また、摘記事項カの「ウエハが負にバイアスされるほど、ウエハ・バイアス・センサ400から出力される推測ウエハ直流バイアス電圧は一層負になる。この推測直流バイアス電圧に応答して、直流電圧源904は、チャック200に供給する正の直流電位レベルをそれに応じて低下させる」の記載から、直流電圧源904は可変電圧電源と言えるものであることは明らかである。
摘記事項アに記載されているように、刊行物1記載の装置はプラズマ処理チャンバの静電チャックに関するものであることから、RF発生器420によって発生するRF信号は、プラズマ処理チャンバ内にプラズマを生成するために使用されるものであることは明らかである。そして、摘記事項カの「チャック上の点902でチャックのピーク・ピーク電圧を検出」の記載、及び図9を参照することにより、点902は単極性静電チャック200に結合され、RF信号のピーク・ピーク電圧を検出するRFプローブであることが理解できる。
ク 刊行物1記載の発明
図9を参照しながら刊行物1記載の事項を本願発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。
「ウエハ処理の間、半導体ウエハを確実にクランプする装置であって、
ウエハ108を支持する誘電層202の下に電極を備える単極性静電チャック200と、
前記単極性静電チャック200の前記電極へ結合され、ウエハ108と単極性静電チャック200の間の電位差によってウエハ108が保持されるように単極性静電チャック200に供給される電位レベルを変更する可変電圧電源を含む直流電圧源904と、
前記単極性静電チャック200に結合され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマを生成するために使用されるRF信号のピーク・ピーク電圧を検出するRFプローブと、
前記ピーク・ピーク電圧を、式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』(V_(PK-PK)は、ピーク・ピーク電圧を表し、V_(DC-WA)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す)により直流電圧レベルに変換するウエハ・バイアス・センサ400とを含み、
前記装置は、前記単極性静電チャック200とウエハ108との間の電位差を、プロセス・ステップ毎にほぼ不変のままにする、半導体ウエハを確実にクランプする装置。」(以下、「引用発明」という。)
(2) 刊行物2の記載事項
刊行物2には、以下の記載がある。
ケ 段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、プラズマ処理装置において被処理体の自己バイアス電圧を測定する自己バイアス測定方法および装置ならびに被処理体を載置台上に静電吸着力で保持する静電吸着装置に関する。」
コ 段落【0024】
「コイル42は、コンデンサ48と協働して、この直流回路に誘導または混入した高周波ノイズを除去するためのハイパスフィルタを構成する。電流計44は、この直流回路を流れる電流、つまり半導体ウエハW(被処理体)と静電チャックシート30の導電膜36(静電吸着用電極)との間の漏れ電流を検出し、その電流検出値を表す漏れ電流検出信号MLを制御部50に出力する。可変直流電源46は、制御部50からの電圧制御信号ESで指定された任意の直流電圧V0を出力できるように構成されている。制御部50は、たとえばマイクロコンピュータからなり、後述するように本実施例における自己バイアス電圧測定の制御および静電吸着力の制御・調整を行う。」
サ 刊行物2記載の事項
上記摘記事項ケないしコから、刊行物2には、以下の事項が記載されているものと認められる。
「静電吸着装置において、例えばマイクロコンピュータからなる制御部50により、漏れ電流検出信号MLに基づき、可変直流電源46が、任意の直流電圧を出力するように制御すること、及び、制御部50が、可変直流電源46と漏れ電流を検出する電流計44に結合されること。」(以下、「刊行物2記載事項」という。)

3.対比及び当審の判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「ウエハ108」、「単極性静電チャック200」、「直流電圧源904」、「ピーク・ピーク電圧」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「静電チャック」、「ESC電源」、「ピークピーク電圧」に相当する。
引用発明は、「ウエハ処理」を行うのであるから、「半導体処理装置」と言えるものであることは明らかである。また、引用発明の「クランプする」ことは、「保持する」ことであるから、引用発明の「ウエハ処理の間、半導体ウエハを確実にクランプする装置」は本願発明の「基板を保持する装置」に相当する。
引用発明の「ウエハ108を支持する誘電層202」は「基板支持表面」と言えるものであることは明らかである。
引用発明の「単極性静電チャック200に供給される電位レベルを変更する」ことは、本願発明の「可変チャッキング電圧を電極へ供給する」ことに相当する。
引用発明の「プラズマ処理チャンバ内」は、本願発明の「半導体処理装置内」に相当する。
引用発明の「検出」することは、本願発明の「測定」することに相当する。
引用発明の「式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』(V_(PK-PK)は、ピーク・ピーク電圧を表し、V_(DC-WA)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す)」は伝達関数と言えるものであるから、引用発明の「ピーク・ピーク電圧を、式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』(V_(PK-PK)は、ピーク・ピーク電圧を表し、V_(DC-WA)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す)により直流電圧レベルに変換する」ことは、「ピークピーク電圧を伝達関数に入力することによって、基板と静電チャックの間のプラズマの影響による電位差を生成する」限りにおいて、本願発明の「ピークピーク電圧を表す大きさを有するDC信号を伝達関数に入力することによって、基板と静電チャックの間の電位差を表すチャッキングインジケータ値を生成する」ことと共通する。
引用発明の「単極性静電チャック200とウエハ108との間の電位差を、プロセス・ステップ毎にほぼ不変のままにする」ことは、「基板と静電チャックの間のプラズマの影響による電位差に応答して、動的に前記電位差を所定値に維持するようにESC電源を制御する」限りにおいて、本願発明の「チャッキングインジケータ値に応答して、動的に電位差を所定値に維持するようにESC電源を制御する」ことと共通する。
したがって、両者は、
「半導体処理装置において基板を保持する装置であって、
基板支持面の下に電極を備える静電チャックと、
前記静電チャックの前記電極へ結合され、前記基板と前記静電チャックの間の電位差によって前記基板が保持されるように可変チャッキング電圧を前記電極へ供給する可変電圧電源を含むESC電源と、
前記静電チャックに結合され、前記半導体処理装置内にプラズマを生成するために使用されるRF信号のピークピーク電圧を測定するRFプローブと、
前記ピークピーク電圧を伝達関数に入力することによって、基板と静電チャックの間のプラズマの影響による電位差を生成するものであり、
前記基板と前記静電チャックの間のプラズマの影響による電位差に応答して、動的に前記電位差を所定値に維持するように前記ESC電源を制御する、
基板保持装置。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
静電チャックにおける電極の構造に関して、本願発明では、基板支持表面の下に「埋め込まれた」ものであると特定しているのに対して、引用発明における単極性静電チャック200における電極は埋め込まれているのかどうか不明な点。
<相違点2>
RF信号のピークピーク電圧を測定し、基板と静電チャックの間の電位差を表すチャッキングインジケータ値を生成する手段として、本願発明では、RF信号のピークピーク又はピーク電圧を測定するRFプローブと、「ピークピーク又はピーク電圧を表す大きさを有するDC信号とを含むチャッキング監視回路」を有し、「DC信号を伝達関数に入力することによって、基板と静電チャックの間の電位差を表すチャッキングインジケータ値を生成するプラズマ検出回路」を含んでいると特定しているのに対して、引用発明では、RFプローブを有し、また、ピーク・ピーク電圧を式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』(V_(PK-PK)は、ピーク・ピーク電圧を表し、V_(DC-WA)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す)という伝達関数により直流電圧レベルに変換しているものの、DC信号やチャッキングインジケータ値、チャッキング監視回路やプラズマ検出回路を有しているのかどうか不明な点。
<相違点3>
本願発明は、伝達関数が、「静電チャックの実験的調査から得られ」たものであると特定しているのに対して、引用発明では、式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』(V_(PK-PK)は、ピーク・ピーク電圧を表し、V_(DC-WA)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す)で表されたものである点。
<相違点4>
基板と静電チャックの間のプラズマの影響による電位差に応答して、動的に前記電位差を所定値に維持するようにESC電源を制御することに関して、本願発明では、それらを制御する「システム制御ユニットを備える」としているのに対して、引用発明では、そのような制御を行う制御ユニットを備えているのかどうか不明な点。
(2) 当審の判断
上記相違点について検討する。
ア <相違点1>について
静電チャックにおいて、電極を埋め込むことは例示するまでもなく従来周知の事項であって、引用発明においても、電極を埋め込むようにすることに格別の困難性を有するものではない。
イ <相違点2>について
引用発明では、式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』(V_(PK-PK)は、ピーク・ピーク電圧を表し、V_(DC-WA)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す)により、ピーク・ピーク電圧をウエハの直流バイアス電圧に変換しており、この式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』(V_(PK-PK)は、ピーク・ピーク電圧を表し、V_(DC-WA)は、チャックにRF電力が印加され、プラズマ処理チャンバ内にプラズマが存在する場合のウエハの直流バイアス電圧を表す)が伝達関数と言えるものであることは明らかである。
また、引用発明ではDC信号やチャッキングインジケータ値、チャッキング監視回路、プラズマ検出回路を有していることの特定はない。しかしながら、本願発明において、目的とするところは、電極からウェーハへの一定電位差ΔV(=V_(dc)-V_(chuck))を達成することにあり(本願の明細書の段落【0014】参照)、DC信号やチャキングインジケータ値、チャッキング監視回路やプラズマ検出回路は、上記電極からウェーハへの一定電位差ΔVを保つために使用される信号、値、回路であるところ、引用発明においても、静電チャックと基板との間の電位差を一定に保つために、ピークピーク電圧を検出し、それにより単極性静電チャック200とウエハ108との間の電位差を、プロセス・ステップ毎にほぼ不変のままにする、すなわち、本願発明と同様の電極からウェーハへの一定電位差ΔVを保っており、両者の目的の間に相違はない。
してみれば、上記相違点は、構造上の微差に過ぎないものである。
上記点につき、請求人は、平成23年5月16日付け意見書において、「引用文献1(当審注:刊行物1)では、チャックのピークピーク電圧を検出し、近似ウェハ直流バイアス電圧を推測しており(19頁11-13行)、この推測ウェハ直流バイアス電圧をフィードバック電圧として用いている(19頁18-21行)。即ち、引用文献1では、『ピークピーク電圧を表す大きさを有するDC信号』を用いてはいない。また、引用文献1では『伝達関数』という概念がない。更に、引用文献1では、『基板(ウェハ)と静電チャック(単極性チャック)との間の電位差を不変のままにする』(19頁28-29行)制御を行っているが、『基板と静電チャックの間の電位差を表すチャッキングインジケータ値を生成』はしていない。それ故、引用文献1には、上記のプロセスを実行する『チャッキング監視回路』は記載されていない。」(第2ページ第23行?第31行)と主張している。
しかしながら、引用発明において、式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』が伝達関数であることは明らかである。
また、本願発明も、引用発明も、目的とするところは同様であって、その導出過程でDC信号やチャッキングインジケータ値、チャッキング監視回路やプラズマ検出回路を用いているとしても、そのことにより特別な作用ないし効果がなんら認められるものではないことから、上記相違点は、構造上の微差と考えざるを得ないことは上記の通りである。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
ウ <相違点3>について
一般に計測された値から目的とする値を関数を用いて推定する場合、当該関数を実験的調査、すなわち、実験により得られた値から関数を推定することは、例えば、特開平7-167614号公報(段落【0021】参照。)や特公平8-16498号公報(段落【0021】参照。)に見られるように従来周知の技術であることから、引用発明においても、ピーク・ピーク電圧をウエハの直流バイアス電圧に変換する際に引用発明において用いられている式『V_(DC-WA)≒-(V_(PK-PK)/2)』に代えて、実験的調査によって得られた伝達関数を用いることは、当業者が容易になし得たものである。
エ <相違点4>について
刊行物2記載事項は、「静電吸着装置において、例えばマイクロコンピュータからなる制御部50により、漏れ電流検出信号MLに基づき、可変直流電源46が、任意の直流電圧を出力するように制御すること、及び、制御部50が、可変直流電源46と漏れ電流を検出する電流計44に結合されること。」である。すなわち、静電チャックにおいて、制御部、すなわち、制御装置により、信号を検出するとともに、電源の電圧を制御することは刊行物2に記載されている。そして、引用発明も、刊行物2記載事項も、ともに、測定値を利用して静電チャックにおける電圧を制御するものであることから、引用発明においても、制御部、すなわち、制御装置を用い、当該制御装置により、基板と静電チャックの間のプラズマの影響による電位差に応答して、動的に前記電位差を所定値に維持するようにESC電源を制御するものとすることは、当業者が容易になし得たものである。
オ <作用ないし効果>について
本願発明によってもたらされる作用ないし効果についても、引用発明及び刊行物2記載事項から予測可能なものであって、格別のものはない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明、刊行物2記載事項及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-23 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-12 
出願番号 特願2000-542796(P2000-542796)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一浅野 麻木  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 豊原 邦雄
刈間 宏信
発明の名称 静電チャック電源  
代理人 安齋 嘉章  

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