• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800236 審決 特許
不服200815319 審決 特許
不服200625545 審決 特許
不服200829241 審決 特許
不服200722835 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1251278
審判番号 不服2008-24338  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-22 
確定日 2012-02-03 
事件の表示 特願2002-559414「プロテインキナーゼインヒビターとして有用なピラゾール化合物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 1日国際公開、WO02/59112、平成16年 6月17日国内公表、特表2004-517927〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2001年12月20日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2000年12月21日、アメリカ合衆国(US)、2001年 4月27日、アメリカ合衆国(US)〕を国際出願日とする出願であって、その発明の名称は「プロテインキナーゼインヒビターとして有用なピラゾール化合物」というものである。本願については、平成19年11月 2日付けで拒絶理由通知があったのち、平成20年 5月 7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年 6月20日付けで拒絶査定がなされたため、これに対し、平成20年 9月22日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されている。そして、平成22年10月12日付け(発送日:平成22年10月13日)で指定期間を3ヶ月とする審尋がされたが、指定期間及び延長期間を経過しても請求人からは回答書は提出されていない。

第2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願は明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に適合しないという理由及び特許請求の範囲の記載が第36条第6項第1号に適合しないという理由を含んでいる。

第3 本願発明

平成20年 9月22日付けの手続補正による特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除及び明りようでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
この出願の請求項1?9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年 9月22日付けの手続補正により補正された明細書(以下、これを「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?9に記載されたとおりのものと認められ、請求項1?9の記載は以下のとおりである(なお、請求項9において、化合物名の前に記載された番号は、審決において便宜的に付加したものである。)

【請求項1】 式IIIの化合物:
【化1A】

または薬学的に受容可能なその塩、エステルもしくはエステルの塩であって、ここで:
Z^(1)は、窒素またはCR^(8)であり、Z^(2)は、窒素またはCHであり、そしてZ^(3)は、窒素またはCR^(X)であり、ただし、Z^(1)およびZ^(3)の1つは、窒素であり;
R^(X)は、T-R^(3)またはL-Z-R^(3)であり;
Qは、-N(R^(4))-、-O-、-S-または-CH(R^(6))-から選択され;
R^(1)は、T-(環D)であり;
環Dは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルもしくはカルボシクリルより選択される5?7員の単環式環であるか、もしくは8?10員の二環式環であり、該ヘテロアリール環もしくはヘテロシクリル環は、窒素、酸素もしくは硫黄より選択される1?4個の環へテロ原子を有し、ここで、環Dの置換可能な環炭素の各々は独立して、オキソ、T-R^(5)もしくはV-Z-R^(5)によって置換されており、そして環Dの置換可能な環窒素の各々は独立して-R^(4)によって置換されており;
Tは、原子価結合またはC_(1?4)アルキリデン鎖であり、ここで、Qが-CH(R^(6))-である場合、該C_(3)およびC_(4)アルキリデン鎖のメチレン単位は、必要に応じて、-O-、-S-、-N(R^(4))-、-CO-、-OC(O)NH-もしくは-NHCO_(2)-によって置き換えられており;
Zは、C_(1?4)アルキリデン鎖であり;
Lは、-O-、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-N(R^(6))SO_(2)-、-SO_(2)N(R^(6))-、-N(R^(6))-、-CO-、-CO_(2)-、-N(R^(6))CO-、-N(R^(6))C(O)O-、-N(R^(6))CON(R^(6))-、-N(R^(6))SO_(2)N(R^(6))-、-N(R^(6))N(R^(6))-、-C(O)N(R^(6))-、-OC(O)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)O-、-C(R^(6))_(2)S-、-C(R^(6))_(2)SO-、-C(R^(6))_(2)SO_(2)-、-C(R^(6))_(2)SO_(2)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))C(O)-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))C(O)O-、-C(R^(6))=NN(R^(6))-、-C(R^(6))=N-O-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))SO_(2)N(R^(6))または-C(R^(6))_(2)N(R^(6))CON(R^(6))-であり;
R^(2)およびR^(2)’は独立して、-R、-T-W-R^(6)より選択されるか、またはR^(2)およびR^(2)’はそれらの介在元素と一緒になって、窒素、酸素または硫黄より選択される0?3個の環へテロ原子を有する、5?8員の、不飽和もしくは部分的に不飽和な縮合環を形成し、ここで、R^(2)およびR^(2)’によって形成された該縮合環の置換可能な環炭素の各々は独立して、ハロ、オキソ、-CN、-NO_(2)、-R^(7)または-V-R^(6)によって置換されており、そしてR^(2)およびR^(2)’によって形成された該縮合環の置換可能な環窒素の各々は独立して、R^(4)によって置換されており;
R^(3)は、-R、-ハロ、-OR、-C(=O)R、-CO_(2)R、-COCOR、-COCH_(2)COR、-NO_(2)、-CN、-S(O)R、-S(O)_(2)R、-SR、-N(R^(4))_(2)、-CON(R^(7))_(2)、-SO_(2)N(R^(7))_(2)、-OC(=O)R、-N(R^(7))COR、-N(R^(7))CO_(2)(C_(1?6)脂肪族)、-N(R^(4))N(R^(4))_(2)、-C=NN(R^(4))_(2)、-C=N-OR、-N(R^(7))CON(R^(7))_(2)、-N(R^(7))SO_(2)N(R^(7))_(2)、-N(R^(4))SO_(2)Rまたは-OC(=O)N(R^(7))_(2)より選択され;
各Rは独立して、水素、あるいは、必要に応じて、C_(1?6)脂肪族、C_(6?10)アリール、5?10個の環原子を有するヘテロアリール環、または5?10個の環原子を有するヘテロシクリル環より選択される置換基より選択され;
各R^(4)は独立して、-R^(7)、-COR^(7)、-CO_(2)(必要に応じて、置換されたC_(1?6)脂肪族)、-CON(R^(7))_(2)またはSO_(2)R^(7)より選択され;
各R^(5)は独立して、-R、ハロ、-OR、-C(=O)R、-CO_(2)R、-COCOR、-NO_(2)、-CN、-S(O)R、-SO_(2)R、-SR、-N(R^(4))_(2)、-CON(R^(4))_(2)、-SO_(2)N(R^(4))_(2)、-OC(=O)R、-N(R^(4))COR、-N(R^(4))CO_(2)(必要に応じて、置換されたC_(1?6)脂肪族)、-N(R^(4))N(R^(4))_(2)、-C=NN(R^(4))_(2)、-C=N-OR、-N(R^(4))CON(R^(4))_(2)、-N(R^(4))SO_(2)N(R^(4))_(2)、-N(R^(4))SO_(2)Rまたは-OC(=O)N(R^(4))_(2)より選択され;
Vは、-O-、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-N(R^(6))SO_(2)-、-SO_(2)N(R^(6))-、-N(R^(6))-、-CO-、-CO_(2)-、-N(R^(6))CO-、-N(R^(6))C(O)O-、-N(R^(6))CON(R^(6))-、-N(R^(6))SO_(2)N(R^(6))-、-N(R^(6))N(R^(6))-、-C(O)N(R^(6))-、-OC(O)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)O-、-C(R^(6))_(2)S-、-C(R^(6))_(2)SO-、-C(R^(6))_(2)SO_(2)-、-C(R^(6))_(2)SO_(2)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))C(O)-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))C(O)O-、-C(R^(6))=NN(R^(6))-、-C(R^(6))=N-O-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))SO_(2)N(R^(6))-または-C(R^(6))_(2)N(R^(6))CON(R^(6))-であり;
Wは、-C(R^(6))_(2)O-、-C(R^(6))_(2)S-、-C(R^(6))_(2)SO-、-C(R^(6))_(2)SO_(2)-、-C(R^(6))_(2)SO_(2)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))-、-CO-、-CO_(2)-、-C(R^(6))OC(O)-、C(R^(6))OC(O)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))CO-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))C(O)O-、-C(R^(6))_(2)=NN(R^(6))-、-C(R^(6))=N-O-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))SO_(2)N(R^(6))-、-C(R^(6))_(2)N(R^(6))CON(R^(6))-、または-CON(R^(6))-であり;
各R^(6)は独立して、水素または必要に応じて置換されたC_(1?4)脂肪族基より選択されるか、あるいは、同一の窒素原子上の2つのR^(6)基が該窒素原子と一緒になって、5?6員のヘテロシクリル環またはヘテロアリール環を形成し;
各R^(7)は独立して、水素または必要に応じて置換されたC_(1?6)脂肪族基より選択されるか、あるいは、同一の窒素原子上の2つのR^(7)基が該窒素原子と一緒になって、5?8員のヘテロシクリル環またはヘテロアリール環を形成し;そして R^(8)は、-R、ハロ、-OR、-C(=O)R、-CO_(2)R、-COCOR、-NO_(2)、-CN、-S(O)R、-SO_(2)R、-SR、-N(R^(4))_(2)、-CON(R^(4))_(2)、-SO_(2)N(R^(4))_(2)、-OC(=O)R、-N(R^(4))COR、-N(R^(4))CO_(2)(必要に応じて、置換されたC_(1?6)脂肪族)、-N(R^(4))N(R^(4))_(2)、-C=NN(R^(4))_(2)、-C=N-OR、-N(R^(4))CON(R^(4))_(2)、-N(R^(4))SO_(2)N(R^(4))_(2)、-N(R^(4))SO_(2)Rまたは-OC(=O)N(R^(4))_(2)より選択される、化合物または薬学的に受容可能なその塩、エステルもしくはエステルの塩。
【請求項2】 請求項1に記載の化合物であって、Qが-N(R^(4))-、-S-、または-CH(R^(6))-であり、そして該化合物が、以下の式IIIa、IIIb、IIIc、またはIIIdの化合物:
または薬学的に受容可能なその誘導体もしくはプロドラッグである、化合物。
【請求項3】 請求項2に記載の化合物であって、該化合物が、以下からなる群より選択される1つ以上の特徴を有する、化合物:
(a)R^(x)が、水素、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ、アセトアミド、またはC_(1?4)脂肪族基であること;
(b)R^(1)が、T-(環D)であり、ここで、Tが原子価結合またはメチレン単位であること;
(c)環Dが、5?7員の単環式または8?10員の二環式のアリール環またはヘテロアリール環であること;および
(d)R^(2)が、-Rまたは-T-W-R^(6)であり、かつR^(2)’が水素であるか、またはR^(2)およびR^(2)’が一緒になって必要に応じて置換されたベンゾ環を形成すること。
【請求項4】 請求項3に記載の化合物であって、ここで:
(a)R^(x)が、水素、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ、アセトアミド、またはC_(1?4)脂肪族基であり;
(b)R^(1)が、T-(環D)であって、ここで、Tが原子価結合またはメチレン単位であり;
(c)環Dが、5?7員の単環式または8?10員の二環式のアリール環またはヘテロアリール環であり;そして
(d)R^(2)が、-Rまたは-T-W-R^(6)であり、かつR^(2)’が水素であるか、またはR^(2)およびR^(2)’が一緒になって必要に応じて置換されたベンゾ環を形成する、化合物。
【請求項5】 請求項3に記載の化合物であって、該化合物が、以下からなる群より選択される1つ以上の特徴を有する、化合物:
(a)R^(1)が、T-(環D)であり、ここでTは、原子価結合であり、そしてQが、-S-または-NH-であること;
(b)環Dが、5?6員の単環式または8?10員の二環式のアリール環またはヘテロアリール環であること;および
(c)R^(2)が-Rであり、R^(2)’が水素であり、ここでRは、水素、C_(1?6)脂肪族、フェニル、5?6員のヘテロアリール環、または5?6員の複素環式環から選択されること。
【請求項6】 請求項5に記載の化合物であって:
(a)R^(1)が、T-(環D)であり、ここでTは、原子価結合であり、そしてQが、-S-または-NH-であり;
(b)環Dが、5?6員の単環式または8?10員の二環式のアリール環またはヘテロアリール環であり;そして
(c)R^(2)が-Rであり、R^(2)’が水素であり、ここでRは、水素、C_(1?6)脂肪族、フェニル、5?6員のヘテロアリール環、または5?6員の複素環式環から選択される、化合物。
【請求項7】 請求項5に記載の化合物であって、該化合物が、以下からなる群より選択される1つ以上の特徴を有する、化合物:
(a)R^(X)が、水素、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、メチルアミノまたはアセトイミドであること;
(b)R^(1)が、T-(環D)であり、ここでTは、原子価結合であり、そしてDは、5?6員のアリール環またはヘテロアリール環であり、ここで環Dは、-ハロ、-CN、-NO_(2)、-N(R^(4))_(2)、必要に応じて置換されたC_(1?6)脂肪族基、-OR、-CO_(2)R、-CON(R^(4))_(2)、-OCO(R^(4))_(2)、-N(R^(4))COR、-N(R^(4))SO_(2)R、-N(R^(6))COCH_(2)CH_(2)N(R^(4))_(2)、または-N(R^(6))COCH_(2)CH_(2)CH_(2)N(R^(4))_(2)から選択される1?2個の基で必要に応じて置換されていること;
および
(c)R^(2)が、水素、または置換もしくは非置換のC_(1?6)脂肪族であること。
【請求項8】 請求項7に記載の化合物であって:
(a)R^(X)が、水素、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、メチルアミノまたはアセトイミドであり;
(b)R^(1)が、T-(環D)であり、ここでTは、原子価結合であり、そして環Dは、5?6員のアリール環またはヘテロアリール環であり、ここで環Dは、-ハロ、-CN、-NO_(2)、-N(R^(4))_(2)、必要に応じて置換されたC_(1?6)脂肪族基、-OR、-CO_(2)R、-CON(R^(4))_(2)、-OCO(R^(4))_(2)、-N(R^(4))COR、-N(R^(4))SO_(2)R、-N(R^(6))COCH_(2)CH_(2)N(R^(4))_(2)、または-N(R^(6))COCH_(2)CH_(2)CH_(2)N(R^(4))_(2)から選択される1?2個の基で必要に応じて置換されており;そして
(c)R^(2)が、水素、または置換もしくは非置換のC_(1?6)脂肪族である、化合物。
【請求項9】 以下からなる群より選択される、化合物:
1.N^(5)-(1H-インダゾール-6-イル)-N^(3)-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-[1,2,4]トリアジン-3,5-ジアミン;
2.N{4-[3-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-[1,2,4]トリアジン-5-イルスルファニル]-フェニル}-アセトアミド;
3.[5-(3-メトキシ-ベンジル)-[1,2,4]トリアジン-3-イル]-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-アミン;
4. N^(3)-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-N^(5)-ピリジン-3-イルメチル-[1,2,4]トリアジン-3,5-ジアミン;
5.[5-(ベンゾチアゾール-6-イルスルファニル)-[1,2,4]トリアジン-3-イル]-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-アミン;
6.{4-[3-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-[1,2,4]トリアジン-5-イルオキシ]-フェニル}-アセトニトリル;
7.N-{4-[3-(1H-インダゾール-3-イルアミノ)-[1,2,4]トリアジン-5-イルアミノ]-フェニル}-メタンスルフォンアミド;
8.(1H-インダゾール-3-イル)-[5-(チオフェン-2-イルメチルスルファニル)-[1,2,4]トリアジン-3-イル]-アミン;
9.N^(5)-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-N^(3)-ピリジン-3-イルメチル-[1,2,4]トリアジン-3,5-ジアミン;
10.[3-(ベンゾチアゾール-6-イルスルファニル)-[1,2,4]トリアジン-5-イル]-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-アミン;
11.{4-[5-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-[1,2,4]トリアジン-3-イルオキシ]-フェニル}-アセトニトリル;
12.N^(5)-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-N^(3)-(1H-インダゾール-6-イル)-[1,2,4]トリアジン-3,5-ジアミン;
13.N-{4-[5-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-[1,2,4]トリアジン-3-イルスルファニル]-フェニル}-アセトアミド;
14.N^(5)-(1H-インダゾール-3-イル)-N^(3)-(1H-インダゾール-6-イル)-[1,2,4]トリアジン-3,5-ジアミン;
15.(1H-インダゾール-3-イル)-[3-(3-メトキシ-フェニルスルファニル)-[1,2,4]トリアジン-5-イル]-アミン;
16.N^(5)-(1H-インダゾール-6-イル)-N^(3)-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)ピリダジン-3,5-ジアミン;
17.N-{4-[6-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-ピリダジン-4-イルスルファニル]-フェニル}-アセトアミド;
18.[5-(3-メトキシ-ベンジル)-ピリダジン-3-イル]-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-アミン;
19.N^(3)-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-N^(5)-ピリジン-3-イルメチル-ピリダジン-3,5-ジアミン;
20.[5-(ベンゾチアゾール-6-イルスルファニル)-ピリダジン-3-イル]-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-アミン;
21.{4-[6-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-ピリダジン-4-イルオキシ]-フェニル}-アセトニトリル;
22.N-{4-[6-(1H-インダゾール-3-イルアミノ)-ピリダジン-4-イルアミノ]-フェニル}-メタンスルホンアミド;
23.(1H-インダゾール-3-イル)-[5-(チオフェン-2-イルメチルスルファニル)-ピリダジン-3-イル]-アミン;
24.N^(5)-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-N^(3)-ピリジン-3-イルメチル-ピリダジン-3,5-ジアミン;
25.[6-(ベンゾチアゾール-6-イルスルファニル)-ピリダジン-4-イル]-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-アミン;
26.{4-[5-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-ピリダジン-3-イルオキシ]-フェニル}-アセトニトリル;
27.N^(5)-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)-N^(3)-(1H-インダゾール-6-イル)-ピリダジン-3,5-ジアミン;
28.N-{4-[5-(5-シクロプロピル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-ピリダジン-3-イルスルファニル]-フェニル}-アセトアミド;
29.N^(5)-(1H-インダゾール-3-イル)-N^(3)-(1H-インダゾール-6-イル)-ピリダジン-3,5-ジアミン;および
30.(1H-インダゾール-3-イル)-[6-(3-メトキシ-フェニルスルファニル)-ピリダジン-4-イル]-アミン。

第4 当審の判断

1.特許法第36条第4項について
(1)特許法第36条第4項の規定
特許法第36条第4項は「発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。」と規定する。発明の実施とは、物の発明の場合には、その物の生産、使用等をいい、方法の発明の場合には、その方法の使用をいうと解されている。
したがって、明細書の発明の詳細な説明の記載が第36条第4項の規定に適合するためには、請求項に物の発明が記載されている場合には、明細書の記載に基づき、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)がその物を生産でき、使用できる程度の記載が必要であり、請求項に方法の発明が記載されている場合には、その方法を使用できる程度の記載が必要であるといえる。

(2)特許法第36条第4項への適合性の判断
上記(1)をふまえ、本願明細書の発明の詳細な説明の第36条第4項への適合性を以下で検討する。

(2-1)本願明細書の記載
本願明細書の請求項の上記記載からみて、請求項1ないし9に記載された発明は化合物の発明であると認められる。本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

ア.
「 【0135】
代表的な式IIIの化合物を、以下の表3に示す。
(表3)
【0136】
【化16】



イ.
「 【0144】
本発明の化合物は一般に、一般スキームI?VIIにより例示されるように、類似の化合物について当業者に公知の方法によって、調製され得る。・・・
【0151】
(スキームIV)
【0152】
【化20】

上記のスキームIVは、式IIIaの化合物の調製のための一般的な経路を示す。12を提供する、アミノピラゾール(またはアミノインダゾール)での11の処理は、Heterocycles,51,5,1999,1035-1050に記載される様式と類似の様式で実施され得る。Farmaco.Ed.Sci.,27,1972,591-600に記載される様式と類似の様式で、R^(1)-QHで置換することによって、中間体13を得る。式IIIaの化合物(ここで、R^(X)は水素である)の調製について、塩素を、還元によって除去し得る。あるいは、式IIIaの化合物(ここで、R^(X)は水素以外である)の調製について、塩素を、当業者に公知の方法によって置換し、種々のR^(X)置換基を有する化合物を得得る。」

ウ.
「 【0153】
(スキームV)
【0154】
【化21】

上記のスキームVは、式IIIbの化合物の調製のための一般的な経路を示す。化合物15を与えるR^(1)-QHでの臭素の置換は、Heterocycles,51,5,1999,1035-1050に記載される様式と類似の様式で実施され得る。塩素の置換は、上記の通りに連続して行われ得る。」

エ.
「 【0155】
(スキームVI)
【0156】
【化22】

上記のスキームVIは、式IIIcおよびIIIdの化合物の調製のための一般的な経路を示す。アミノピラゾール(またはアミノインダゾール)での置換、続くR^(1)-QHでの置換は、Indian J.Chem.Sect.B,29,5,1990,435-439に記載される様式と類似の様式で実施され得る。」

(2-2)本願明細書に記載された化学構造式について
上記ア.の表3に記載された化学構造式III-1ないしIII-30で表される化合物(以下、番号順に「本願例示化合物1」などといい、これらをまとめて「本願例示化合物」という。)は、それぞれ記載された順に、請求項9に列挙された化合物の名称に対応するものであると認められる。また、本願例示化合物1ないし30は、請求項1ないし4の定義にも該当すると認められる。そのうち、本願例示化合物1ないし3、5ないし7、10ないし18、20ないし22、25ないし30は、請求項2に記載された式IIIaないしIIIdにおいてTが単結合である場合に該当することからみて、請求項5及び6の定義にも該当すると認められる。また、さらにそのうちの本願例示化合物2、3、6、7、11、13、15、17、18、21、22、26、28、30は、環Dが5?6員のアリール環またはヘテロアリール環である場合に該当することからみて、請求項7及び8の定義に該当すると認められる。
このように、本願明細書には、請求項1ないし9における化合物の定義に該当する化学構造式が記載されているということはできる。しかし、本願明細書には、上記本願例示化合物の化学構造式の他には、請求項1ないし9の定義に該当する具体的化合物の名称や化学構造式のように、具体的な化合物の構造が認識できるような記載はない。

(2-3)本願明細書における化合物の製造方法に関する記載について
(2-3-1) 本願明細書には、本願例示化合物について、その製造実施例や物性値は一切記載されていない。また、本願明細書には、本願例示化合物以外の化合物についても、その具体的製造実施例は一切記載されていない。

(2-3-2) 本願明細書には、上記イ.ないしエ.に指摘した部分に、化合物の製造方法を一般的に説明する記載があり、化合物の構造からみて、本願例示化合物1ないし8に対応するのは、上記エ.のスキームVIの下段の反応に関する記載、本願例示化合物9ないし15に対応するのは、上記エ.のスキームVIの上段の反応に関する記載であると認められ、本願例示化合物16ないし23に対応するのは上記ウ.の記載であり、本願例示化合物24ないし30に対応するのは、上記イ.の記載であると認められる。

(2-3-3) 本願例示化合物1ないし8についての上記エ.のスキームVIの下段の反応式は、式19の3,5-ジクロロ-1,2,4-トリアジン化合物の5位の塩素を-Q-R^(1)で置換して、式20の3-クロロ-5-置換-トリアジン化合物を得て、さらに3位をアミノピラゾールまたはアミノインダゾールのアミノ窒素原子の位置で置換して化合物IIIdを得る一般的な反応経路を説明したものと認められる。しかし、本願明細書には、上記各反応工程を行う際の溶媒、試薬の添加量、反応温度等の反応条件については記載されていない。

(2-3-4) 上記エ.には、「アミノピラゾール(またはアミノインダゾール)での置換、続くR^(1)-QHでの置換はIndian J.Chem.Sect.B,29,5,1990,435-439(以下、「参考文献1」という。)に記載される様式と類似の様式で実施され得る」との記載があり、式19の3,5-ジクロロ-1,2,4-トリアジン化合物の5位の塩素を-Q-R^(1)で置換して、式20の3-クロロ-5-置換-トリアジン化合物を得る反応工程を行う条件を検討する際の手がかりを得るための一応の記載があるということはできる。しかし、これに続く、式20の3-クロロ-5-置換-トリアジン化合物の3位をアミノピラゾールまたはアミノインダゾールのアミノ窒素原子の位置で置換して化合物IIIdを得る反応工程について、本願明細書には反応工程を行う際の溶媒、試薬の添加量、反応温度等の反応条件を説明する記載はなく、また、反応条件を検討する際に直接参考となる文献も記載もされていない。

(2-3-5) 上記イ.には、アミノピラゾール(またはアミノインダゾール)での式11の化合物の処理に対する参考文献としてHeterocycles,51,5,1999,1035-1050(以下、「参考文献2」という。)が挙げられている。
しかし、上記イ.のアミノピラゾール(またはアミノインダゾール)での式11の化合物の処理に関する記載は、上記エ.のスキームVIにおける式20の化合物とは異なるピリダジン化合物についての記載であって、しかも、上記イ.の記載は、-Q-R^(1)を結合させる前にアミノピラゾール(またはアミノインダゾール)を結合させるスキームIVの合成経路に関するものである点で、上記エ.の-Q-R^(1)を結合させてからアミノピラゾール(またはアミノインダゾール)を結合させるスキームVIにおける合成経路とは異なるものである。そして、上記エ.における式20の化合物は、上記イ.における式11の化合物とは、複素環の化学構造の相違のみならず、-Q-R^(1)という大きな置換基の有無の点でも相違し、化合物の反応性が異なると考えられるから、本願明細書の記載及び技術常識に基づき、上記エ.のスキームVIに従い、式20の化合物から化合物IIIdを製造する反応工程を行うには、上記イ.において式11の化合物から式12の化合物を製造する反応工程に対して参考文献2が提示されていても、当業者がIIIdの化合物を製造するには、試行錯誤によって独自に反応条件を検討するほかない。

(2-3-6) このように、本願明細書の全記載及び技術常識を考慮しても、本願明細書の記載に基づき、当業者が上記エ.スキームVIの式19の化合物の1,2,4-トリアジン環に結合する塩素原子を-Q-R^(1)に該当する基で置換して式20の3-クロロ-5-置換-トリアジン化合物を得て、さらに式20の化合物の3位をアミノピラゾールまたはアミノインダゾールのアミノ窒素原子の位置で置換して化合物IIIdを製造するには、試行錯誤によって反応条件を検討するほかなく、当業者に通常期待し得る程度をこえる過度の負担を強いるものである。
その他の請求項1ないし9に記載された発明の化合物も、本願例示化合物1ないし8と同様に、所定の位置に所定の置換基を導入する多段階反応を行って目的物を製造する必要があるものである。そして、すでに本願例示化合物1ないし8について述べたのと同様に、本願明細書には請求項1ないし9に記載された発明の化合物についても、具体的製造例の記載がなく、本願明細書の全記載を検討しても、そのような多段階反応を行うための条件を検討するための手がかりとなる記載もない。したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、当業者が請求項1ないし9に記載された発明の化合物を製造することができるとはいえない。
したがって、本願明細書には、当業者が請求項1ないし9に記載された発明の化合物を製造できる程度の記載がされているとはいえないから、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載したものとはいえない。

(3)特許法第36条第4項についてのむすび
本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1ないし9に記載された発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載したものとはいえないから、特許法第36条第4項に適合するものではない。

2.特許法第36条第6項第1号について
(1)特許法第36条第6項第1号の規定
特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の請求項に記載された発明について、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」を求めている。第36条第6項第1号への適合性、いわゆる明細書のサポート要件については、以下のように解されている。
「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許出願人(特許拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟の原告)又は特許権者(平成15年法律第47号附則2条9項に基づく特許取消決定取消訴訟又は特許無効審判請求を認容した審決の取消訴訟の原告、特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟の被告)が証明責任を負うと解するのが相当である。」(平成17年11月11日知的財産高等裁判所判決(平成17年(行ケ)第10042号特許取消決定取消請求事件))

そこで、以下、この観点に立って、本願発明について検討する。

(2)特許法第36条第6項第1号への適合性の判断
(2-1)本願発明の適用分野について、本願明細書の記載をみると、たとえば、以下の記載がある。
「ヒト糖尿病を処置するための新しい治療剤を見出すことが、引き続き必要である。このプロテインキナーゼAurora-2およびGSK-3は、それぞれ癌および糖尿病におけるそれらの重要な役割に帰因して、新たな治療の発見のための特に魅力的な標的である。」(【0013】)
「(発明の説明) 現在、本発明の化合物およびそれらの薬学的組成物が、プロテインキナーゼインヒビターとして、特にAurora-2のインヒビターとして有効であることが見出されている。これらの化合物は…」(【0014】)
これら記載などからみて、本願発明は、Aurora-2およびGSK-3のようなプロテインキナーゼに対するインヒビターとしての有用性が期待される化合物を提供するという課題を解決しようとしたものであると認められる。

(2-2)上記課題に対し、本願明細書には、実際に本願発明化合物を製造した具体的実施例が記載されておらず、また、本願発明化合物を製造するための手がかりとなる記載もなく、技術常識を考慮して本願明細書の全記載を検討しても、当業者が本願発明化合物を製造することができるとはいえないことは、すでに上記1.で述べたとおりである。
そうすると、技術常識を考慮しても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、本願発明化合物が実際に提供できるように記載されていないのであるから、プロテインキナーゼインヒビターとしての有用性が期待される化合物を提供するという本願発明における課題は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。

(3)特許法第36条第6項第1号についてのむすび
本願発明における課題は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないから、本願発明は発明の詳細な説明に記載した発明ではなく、本願明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。

第5 むすび
以上のとおり、この出願は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、その余の点について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-31 
結審通知日 2011-09-01 
審決日 2011-09-26 
出願番号 特願2002-559414(P2002-559414)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 玲英子  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 井上 千弥子
齋藤 恵
発明の名称 プロテインキナーゼインヒビターとして有用なピラゾール化合物  
代理人 大塩 竹志  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ