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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F01C 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F01C |
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管理番号 | 1251444 |
審判番号 | 不服2010-14649 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-02 |
確定日 | 2012-02-01 |
事件の表示 | 特願2004- 23031「ハイブリッドエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月11日出願公開、特開2005-214105〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成16年1月30日の出願であって、平成19年1月16日付けで明細書を補正する手続補正書が提出され、平成21年9月7日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成21年12月8日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで明細書、特許請求の範囲及び図面を補正する手続補正書が提出されたが、平成22年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成22年7月2日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同時に同日付けで明細書、特許請求の範囲及び図面を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成23年1月31日付けで書面による審尋がなされたものである。 第2 平成22年7月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年7月2日付けの手続補正を却下する。 [理由] [1]補正の内容 1.特許請求の範囲について 平成22年7月2日付けの明細書、特許請求の範囲及び図面についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年12月8日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1を下記の(b)に示す請求項1と補正することを含むものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 発電機(12)と電動機(13)とロータリーエンジン(14)とをエンジン区画に納めたハイブリッドエンジンにおいて、 ロータリーエンジン(14)は、ロータ収納室を形成する環状中間部材(9)を備えた円筒状ハウジングと、前記収納室内に設けたロータ(6)及びこれに取り付けたピボット翼(7)と、当該エンジンを支持するためのジャーナルを備えた一対の端板(1)と、前記各端板の内面に軸支されている複数のアクチュエータ(2)と、各アクチュエータ(2)の内面で軸支されてロータ(6)に固定されているファンディスク(5)と、前記端板に軸支されてアクチュエータ(2)を貫くシャフト(8)を備え、 ピボット翼(7)は、付勢されて前記環状中間部材と係合することで、前記ロータ収納室内に吸気室、圧縮室、燃焼室及び排気室を形成し、 ロータリーエンジン(14)は、また、前記燃焼室に燃料を取り入れ、前記吸気室に空気を取り入れるために、前記円筒状ハウジングに設けられている第1通路と、ピボット翼(7)を前記環状中間部材に強制的に係合させるために前記ロータに設けられている動力手段を備え、 前記環状中間部材は、ロータ内で半径方向に延びるスロット備え、さらに、ファンディスク(5)を貫き、複動軸受(23,37)を介してピボット翼(7)をアクチュエータ(2)と連結させる作動ピン(4)と、ファンディスク(5)を貫いてピボット翼(7)をアクチュエータ(2)と連結させる固定ピン(3)とに区分されるアクチュエータピンを備え、アクチュエータ(2)は、ロータ軸受(21)に関して相対的に偏心して取り付けられたアクチュエータ軸受(20)を貫いて端板(1)と連結し、 ロータリーエンジン(14)は、さらにまた、前記ピボット翼(7)が外側に動いた際に、前記燃焼室からガスを排気するために前記スロットを排気口に接続する第2通路を備えているところの ハイブリッドエンジンであって、ファンディスク(5)が、ロータリーエンジンの吸排気口に新鮮な空気を供給することでロータリーエンジンの燃焼室を過給し、前記アクチュエータピンが、前記ピボット翼と対になって往復運動をもたらし、前記ロータと対になって振動の少ない回転運動をもたらす前記のハイブリッドエンジン。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 発電機(12)と電動機(13)とロータリーエンジン(14)をエンジン区画に収めたハイブリッドエンジンにおいて、前記のロータリーエンジンが、 ロータ収納室を形成し、半径方向に延びるスロットを有する環状中間部材(9)を備えた円筒状ハウジングと、 前記収納室内に設けたロータ(6)と、 前記エンジンを支持するためのジャーナルを備えた一対の端板(1)と、 ロータ軸受(21)に対し偏心して取り付けられたアクチュエータ軸受(20)において、前記の各端板の内側面で軸支された一対のアクチュエータ(2)と、 前記各アクチュエータの内側面で軸支され、ロータ(6)に固定されたファンディスク(5)と、 前記各端板に軸支され、前記アクチュエータ(2)を挿通して延びるシャフト(8)と、 付勢されることで前記環状中間部材と係合し、前記ロータ収納室内に吸気室、圧縮室、燃焼室及び排気室を形成するところの、前記ロータに旋回可能に取り付けたピボット翼(7)と、 前記燃焼室に燃料を取り入れ、前記吸気室に空気を取り入れるために、前記円筒状ハウジングに設けた第1通路と、 前記ピボット翼(7)を前記環状中間部材(9)に強制的に係合されるための押圧手段であって、前記ピボット翼(7)に設けた水平スロット内をスライド可能に挿通し、前記ファンディスク(5)を介して前記ピボット翼(7)を前記アクチュエータ(2)に連結させるための、前記ロータ(6)に固定された作動ピン(4)と、前記ファンディスク(5)を介して前記ピボット翼(7)を前記アクチュエータ(2)に連結させるための固定ピン(3)とを有する押圧手段と、 前記ピボット翼(7)が外側に旋回した時に前記燃焼室から排気ガスを排気するために、前記環状部材のスロットを排気口に接続する第2通路 を備え、 前記ファンディスク(5)が、ロータリーエンジンの吸排気口に新鮮な空気を供給することでロータリーエンジンの燃焼室を過給し、前記作動ピンが前記ピボット翼と連動し、前記ロータに少ない振動の回転運動をもたらす上記のハイブリッドエンジン。」 (なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。) 2.明細書について 本件補正は、明細書について、本件補正により補正される前の(すなわち、願書に最初に添付した明細書の)下記の(a)に示す段落【0018】を下記の(b)に示す段落【0018】と補正することを含むものである。 (a)本件補正前の明細書の段落【0018】 「【0018】 本発明のロータリーエンジンは、背景技術で説明した米国特許第3,971,347号のピボット翼と、米国特許第4,307,695号のアクチュエータを組合せて利用する。しかし、米国特許第4,307,695号のシリンダー・ピストン機構やスーパーチャージャは使用しない。本発明のハイブリッドエンジンでは、主たる動力源がロータリーエンジンであり、主たるエネルギー源は燃料であって、電動機は要求された場合を除いて、ロータリーエンジンをアシストするだけである。ピボット翼7はピボット運動(回動)を支援する固定ピンを備えるが、この固定ピンは、ロータの回転運動を安定化させることにも寄与している。各ピボット翼7はまた、ロータの回転ごとにピボット翼の可逆回動を可能にする作動ピンを備えている。 回動可能にロータに取り付けられたピボット翼を、環状中間部材に強制的に係合させる手段としては、例えば、前記米国特許第4,307,695号明細書又は特公昭52-14363号公報に示されるように、ロータの内部に延びるスロットに設けた押圧手段(スプリングとピストンで構成される)を使用することができる。」 (b)本件補正後の明細書の段落【0018】 「【0018】 本発明のロータリーエンジンは、背景技術で説明した米国特許第3,971,347号のピボット翼と、米国特許第4,307,695号のアクチュエータを組合せて利用する。しかし、米国特許第4,307,695号のシリンダー・ピストン機構やスーパーチャージャは使用しない。本発明のハイブリッドエンジンでは、主たる動力源がロータリーエンジンであり、主たるエネルギー源は燃料であって、電動機は要求された場合を除いて、ロータリーエンジンをアシストするだけである。ピボット翼7はピボット運動(回動)を支援する固定ピンを備えるが、この固定ピンは、複動軸受(23,37)を介してピンの両端がアクチュエータ内で終わっていることで、ロータの回転運動の安定化に寄与している。各ピボット翼7はまた、ロータの回転ごとにピボット翼と相互に作用しあう作動ピンを備えている。これらの作動ピンは、各ピボット翼に穿設された水平スロット77に、スライド可能に挿通されているので、ロータの一回転ごとにピボット翼と呼応して、前記水平スロット内を摺動する。 回動可能にロータに取り付けられたピボット翼を、環状中間部材に強制的に係合させる手段としては、例えば、前記米国特許第4,307,695号明細書又は特公昭52-14363号公報に示されるように、ロータの内部に延びるスロットに設けた押圧手段(スプリングとピストンで構成される)を使用することができる。」 (なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。) 3.図面について 本件補正は、図面について、本件補正により補正される前の(すなわち、願書に最初に添付した図面における)図1、6及び7に描かれるピボット翼7に、水平スロット77を設けることを追加することを含むものである。 [2]本件補正の適否についての判断 本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1に追加された「前記ピボット翼(7)に設けた水平スロット内をスライド可能に挿通し、・・・(前記ロータ(6)に固定された作動ピン(4))」、明細書の段落【0018】に追加された「作動ピンは、各ピボット翼に穿設された水平スロット77に、スライド可能に挿通されている」及び図面の図1、6及び7に追加された「ピボット翼7に、水平スロット77を設けること」は、何れも、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されておらず、また、当初明細書等から自明のことでもない。 なお、平成22年7月2日付けの審判請求書において、「本願発明の作動ピンが、ピボット翼に穿設された水平スロット内に、スライド可能に挿通されていることは、当初明細書の記載された次の事実から自明であると言える。 (イ)ロータに旋回可能に取り付けられたピボット翼には、固定ピンと作動ピンとが挿通されていること(図1参照)、また、作動ピンはロータの回転ごとに、ピボット翼を作用すること(段落[0009]、[0018]及び図5,6,7参照)、 (ロ)ピボット翼は、旋回可能にロータに取り付けられ、ピボット翼が旋回することで、ロータ収納室内に吸気室、圧縮室、燃焼室及び排気室が形成されること(段落[0008]及び図6,7参照)、 すなわち、本願発明のピボット翼は、固定ピンを軸として旋回することで、ロータ収納室内に吸気室、圧縮室、燃焼室及び排気室を形成する部材である。このことは、上記(イ)(ロ)に摘記した事実から首肯される事柄であるから、本願発明のピボット翼には水平スロットが設けられ、その水平スロット内に作動ピンがスライド可能に挿通されていることは自明であると考える。」と主張している。 しかしながら、当初明細書等には、ピボット翼にスロットが設けられることについて記載も示唆もないので、当該主張は受け入れられない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反する。 [3]むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本件発明について 1.本件発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし5に係る発明は、平成19年1月16日付け及び平成21年12月8日付けの手続補正書により補正された明細書並びに平成21年12月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 「この出願については、平成21年 9月 7日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 (理由1について) 請求項1-5で特定される、ピボット翼、ロータ及びアクチュエータ等の構成部材の動作態様に関して、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、各部材がどのように動作するか、依然として不明確である。 特に、ピボット翼は固定ピンを軸にロータに回転可能に取り付けられており、固定ピンとピボット翼に挿通される作動ピンとの間の距離は一定である(図6、7参照。)が、仮に、アクチュエータが作動すると、固定ピンと作動ピンとの間の距離は変化すると推測される(図5参照。)。よって、ピボット翼及びアクチュエータは作動不可能であると推測されることに対して、発明の詳細な説明及び図面、意見書を参酌しても、十分に説明されていない。 ・・・・・ 後 略 ・・・・・」 また、「平成21年9月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由1」の概要は、以下のとおりである。 「1.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 【理由1について】 請求項1-8で特定される、ピボット翼、ロータ及びアクチュエータ等の構成部材の動作態様に関して、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、各部材がどのように動作するか不明確である。 例えば、ピボット翼は固定ピンを軸にロータに回転可能に取り付けられており、固定ピンとピボット翼に挿通される作動ピンとの間の距離は一定である(図6、7参照。)が、仮に、アクチュエータが作動すると、固定ピンと作動ピンとの間の距離は変化すると推測される(図5参照。)。よって、ピボット翼及びアクチュエータは作動不可能であると推測される。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」 3.当審の判断 以下に示すように、上記2.原査定の拒絶の理由の「平成21年9月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由1」の概要において指摘された点は解消しておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1ないし5に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 請求項1ないし5において特定される、「ピボット翼」、「ロータ」及び「アクチュエータ」等の構成部材の動作態様に関して、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、各構成部材がどのように動作するか、不明確である。 特に、ピボット翼は固定ピンを軸にロータに回転可能に取り付けられており、固定ピンとピボット翼に挿通される作動ピンとの間の距離は一定である(図6及び7参照。)が、仮に、アクチュエータが作動すると、固定ピンと作動ピンとの間の距離は変化すると推測される(図5参照。)。 よって、ピボット翼及びアクチュエータは作動不可能であると推測されるところ、このように推測されることに対して、発明の詳細な説明及び図面、意見書を参酌しても、十分に説明されていない。 4.むすび したがって、本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-30 |
結審通知日 | 2011-09-07 |
審決日 | 2011-09-22 |
出願番号 | 特願2004-23031(P2004-23031) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(F01C)
P 1 8・ 536- Z (F01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石黒 雄一 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 安井 寿儀 |
発明の名称 | ハイブリッドエンジン |
代理人 | 朝倉 正幸 |