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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H02H
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02H
管理番号 1251455
審判番号 不服2010-28632  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-17 
確定日 2012-02-01 
事件の表示 特願2006- 45841「変流器の動作を管理するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 7日出願公開,特開2006-238691〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成18年2月22日(パリ条約による優先権主張2005年2月22日,英国)の出願であって,平成21年7月7日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,平成22年1月14日付けで意見書が提出され,同年8月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.特許請求の範囲の記載要件について
(1)請求項8及び9の記載内容
本願の特許請求の範囲の請求項8及び9は以下のように記載されている。

「【請求項8】
一般的にここで添付の図面を参照して説明され,かつ/または添付の図面に示された,グループ内に配置されていて,かつ,三相電源システムの一部を形成する保護リレーに接続されている,複数の変流器の動作を管理する方法。
【請求項9】
一般的にここで添付の図面を参照して説明され,かつ/または添付の図面に示された,グループ内に配置されていて,かつ,三相電源システムの一部を形成するリレーに接続されている,複数の変流器の動作を管理するための,モジュールを備えている保護リレー。」

(2)平成21年7月7日付けの拒絶理由通知の概要
平成21年7月7日付けの拒絶理由通知には,理由2として以下のような記載がある。
「理由2
この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項8,9
本願請求項8,9に係る発明は,請求項の記載が図面等で代用されており,発明の範囲が著しく不明確である。
よって,請求項8,9に係る発明は明確でない。」

(3)判断
請求項8及び9における「一般的にここで添付の図面を参照して説明され,かつ/または添付の図面に示された」との記載は,請求項の記載を,図面等で代用するものである。

一般的に,図面は多義的に解されあいまいな意味を持つものであることから,図面等で代用された記載により特定される請求項8,9に係る発明が,明確であるとは到底いえない。

したがって,本願は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものといわざるをえない。

3.進歩性について
仮に,本願の特許請求の範囲の請求項8における「一般的にここで添付の図面を参照して説明され,かつ/または添付の図面に示された」との記載には技術的な意味はなく,かかる記載は全く無用なものであるため,かかる記載を無視しても,請求項8に係る発明を明確に把握できると解される場合について,以下検討しておくこととする。

(1)本願の発明
本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は,実質的に,次の事項により特定されるとおりのものと認められる。
「グループ内に配置されていて,かつ,三相電源システムの一部を形成する保護リレーに接続されている,複数の変流器の動作を管理する方法。」

(2)引用例
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-39956号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
本発明は,電力系統の端子電流を検出して差動保護装置に入力する電流変成器(以下CTと称す)の回路不良を系統事故と識別して検出する機能を有する保護継電装置に関する。」

・「【0007】
本発明は,平常運用時にCT回路不良が発生した場合,高速に不良検出を行って保護装置の動作出力を制御することにより,差動保護リレーの不要動作を防止することができる保護継電装置を提供することを目的とする。」

・「【0008】
第1の発明は,電力系統の変圧器,送電線あるいは母線などの保護対象を各端子に設置された電流変成器(以下CTと称する)の二次電流情報を入力して電流差動方式により保護する保護継電装置において,端子毎に三相電流の平衡を検出する第1の手段と,端子毎に三相電流の不平衡を検出する第2の手段と,系統の平常運用以外の事象を検出する第3の手段と,相ごとの各端子電流のベクトル和(Id)が所定値(Ikd)以上になったことを検出する第4の手段と,前記第1の手段により各端子のうち少なくとも1端子の三相電流の平衡が検出され,前記第2の手段により各端子のうち少なくとも1端子の三相電流の不平衡が検出され,且つ前記第3の手段により各端子とも系統の平常運用以外の事象が検出されず,前記第4の手段により各端子電流のベクトル和(Id)が所定値(Ikd)以上であることが検出されたことを条件にCT二次回路の不良と判定する第5の手段とを備える。」

・「【0015】
本発明は,平常運用時にCT回路不良が発生した場合,高速に不良検出を行って保護装置の動作出力を制御することで,差動保護リレーの不要動作を防止できる保護継電装置が提供できる。」

・「【0016】
図1及び図2は,本発明による保護継電装置の第1の実施形態をそれぞれ説明するための図で,図1は3巻線変圧器の保護装置に適用する場合の系統図,図2は変圧器保護装置とその入力電流とを示すブロック図である。
【0017】
図1において,1は3巻線変圧器で,高圧側巻線1pは図示しないしゃ断器を介して電源側に接続され,中圧側巻線1s及び低圧側巻線1tは図示しないしゃ断器を介して送電線に接続されている。
【0018】
このような変圧器設置系統において,高圧側巻線1pに接続される送電線に高圧側電流を検出するCT11,中圧側巻線1s及び低圧側巻線1tに繋がる送電線に中圧側電流を検出するCT12及び低圧側電流を検出するCT13がそれぞれ設けられるとともに,高圧側巻線1p及び中圧側巻線1sの中性点接地回路に高圧側中性点電流を検出するCT14,中圧側中性点電流を検出するCT15がそれぞれ設けられる。」

・図1には,高圧側,中圧側及び低圧側毎に配置されている複数の電流変成器CTが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「高圧側,中圧側及び低圧側毎に配置されていて,かつ,三相の電力系統のための保護継電装置に二次電流情報が入力されている,複数の電流変成器CTの二次回路不良を判定する方法。」

(3)対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。

まず,後者の「高圧側,中圧側及び低圧側」はそれぞれが前者の「グループ」に相当するから,後者の「高圧側,中圧側及び低圧側毎に配置されて」いる態様は前者の「グループ内に配置されて」いる態様に相当している。

次に,後者の「三相の電力系統のための保護継電装置」は前者の「三相電源システムの一部を形成する保護リレー」に,後者の「二次電流情報が入力されている」態様は前者の「接続されている」態様に,それぞれ相当するから,結局,後者の「三相の電力系統のための保護継電装置に二次電流情報が入力されている」態様は前者の「三相電源システムの一部を形成する保護リレーに接続されている」態様に相当している。

また,後者の「電流変成器CT」は前者の「変流器」に,後者の「二次回路不良」は前者の「動作」に,後者の「判定する」態様は前者の「管理する」態様に,それぞれ相当するから,結局,後者の「複数の電流変成器CTの二次回路不良を判定する方法」は前者の「複数の変流器の動作を管理する方法」に相当している。

したがって,両者は,
「グループ内に配置されていて,かつ,三相電源システムの一部を形成する保護リレーに接続されている,複数の変流器の動作を管理する方法。」
である点で一致し,両者の間に構成上の差異は存在しない。

そうすると,進歩性について判断するまでもなく,本願発明は引用例に記載された発明であるといわざるをえない。

4.むすび
以上のとおり,本願は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため,同法第49条第4号の規定に該当し,また,本願発明(請求項8に係る発明)は引用例に記載された発明であるから同法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないため,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-02 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-21 
出願番号 特願2006-45841(P2006-45841)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H02H)
P 1 8・ 113- Z (H02H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 仁木 浩
冨江 耕太郎
発明の名称 変流器の動作を管理するための方法および装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  

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