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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61M
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61M
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61M
管理番号 1251819
審判番号 無効2009-800210  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-10-06 
確定日 2011-10-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3894224号発明「吸引カテーテル」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
(1)本件特許第3894224号に係る発明についての出願は、平成16年10月26日に特許出願され、平成18年12月22日にその発明について特許の設定登録がなされた。
(2)これに対し、請求人は、平成21年10月6日に本件特許無効審判を請求し、被請求人は、平成21年12月28日付けで訂正請求書及び答弁書を提出した。
(3)その後、請求人は平成22年3月8日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、被請求人は、平成22年3月23日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、平成22年3月29日に口頭審理が実施された。
(4)さらに、被請求人は平成22年4月13日付けで、また、請求人は平成22年4月26日付けで、それぞれ上申書を提出した。

II.訂正の可否
1.訂正の内容
平成21年12月28日付け訂正請求は、本件特許第3894224号に係る特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、訂正の内容は以下の訂正事項(1)?(8)のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項a
請求項1の「生体内から物質を」との記載を、「血管内から物質を」と訂正する。
(2)訂正事項b-1
請求項1の「脱着可能なコアワイヤ」との記載を、「脱着可能なストレート形状のコアワイヤ」と訂正する。併せて、請求項6を削除する訂正をする。
(3)訂正事項b-2
請求項6を削除したことに伴い、請求項7?16の項番号を繰り上げ、それぞれ請求項6?15とし、従属関係を整理する訂正をする。
(4)訂正事項c
請求項1の「0.45≦R1/R2≦0.65であること」との記載を、「0.45≦R1/R2≦0.65であり、前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであること」と訂正する。併せて、請求項17を削除する訂正をする。
(5)訂正事項d
明細書の段落【0014】の「生体内から物質を」との記載を、「血管内から物質を」と訂正する。
(6)訂正事項e
明細書の段落【0014】の「脱着可能なコアワイヤ」との記載を、「脱着可能なストレート形状のコアワイヤ」と訂正する。また、明細書の段落【0019】の記載の全てを削除する。
(7)訂正事項f
明細書の段落【0014】の「0.45≦R1/R2≦0.65であること」との記載を、「0.45≦R1/R2≦0.65であり、前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであること」と訂正する。また、明細書の段落【0030】の記載の全てを削除する。
(8)訂正事項g
明細書の段落【0066】、【0067】、【0068】、【0071】及び【0072】の「(実施例」との記載を「(参考例」と訂正する。
また、当該訂正に併せて、明細書の段落【0076】の【表1】の「実施例4」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例9」、「実施例10」との記載を、それぞれ「参考例4」、「参考例5」、「参考例6」、「参考例9」、「参考例10」と、また、明細書の段落【0074】、【0077】及び【0078】の「実施例」との記載を「実施例(参考例)」と訂正する。
さらに、明細書の段落【0081】の「図7は、本発明にかかる吸引カテーテルにおけるコアワイヤの実施形態のさらに別な一例を示す断面図である。」との記載を、「図7は、参考例にかかる吸引カテーテルにおけるコアワイヤの実施形態の一例を示す断面図である。」と訂正する。

2.訂正の可否に対する判断
これらの訂正事項について検討する。
上記訂正事項aは、請求項1の「生体内から物質を」との記載を「血管内から物質を」と、上位概念から下位概念へと変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項b-1は、請求項1に「ストレート形状の」との限定を付加し、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項b-2は、請求項6を削除する訂正に伴い整合性を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
上記訂正事項cは、請求項1に「前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであること」との限定を付加し、請求項17を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記訂正事項dは、訂正事項aに伴い特許請求の範囲と整合しなくなった発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
上記訂正事項eは、訂正事項b-1に伴い特許請求の範囲と整合しなくなった発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
上記訂正事項fは、訂正事項cに伴い特許請求の範囲と整合しなくなった発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。
上記訂正事項gは、特許請求の範囲と整合しない発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。

そして、いずれの訂正事項も、訂正後の技術事項が願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、平成21年12月28日付けの訂正は、特許法第134条の2第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第134条の2第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件発明
本件特許の請求項1?15に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明15」という。)は、訂正特許請求の範囲、訂正明細書及び図面の記載からみて、その訂正特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(下線部は訂正箇所を示す。)

「 【請求項1】
血管内から物質を吸引除去するための吸引カテーテルであって、前記カテーテルは先端側シャフトおよび基端側シャフトから構成されるメインシャフトを有し、前記メインシャフトの内部に物質を吸引除去するための吸引ルーメンを、前記先端側シャフトの最先端部にガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを内部に持つガイドワイヤシャフトをそれぞれ備え、前記吸引ルーメンは前記基端側シャフトの基端側に設けられたハブに連通し、前記吸引ルーメンの内部に脱着可能なストレート形状のコアワイヤを有し、前記コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であり、前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであることを特徴とする吸引カテーテル。
【請求項2】
前記ガイドワイヤの基端側にコネクタが固定され、前記コネクタが前記ハブの基端側に脱着可能に取り付けられたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項3】
前記コネクタが前記ハブの基端側の脱着可能に取り付けられた状態で、前記コネクタを介して前記吸引ルーメン内をフラッシュ可能であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の吸引カテーテル。
【請求項4】
前記コアワイヤ先端が前記吸引ルーメンの先端よりも基端側に位置することを特徴とする請求の範囲第1項から第3項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項5】
前記コアワイヤが金属素線を巻回したスプリングワイヤであることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項6】
前記コアワイヤの少なくとも一部が先端側ほど柔軟であることを特徴とする請求の範囲第1項から第5項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項7】
前記コアワイヤの材質がステンレス、Co-Cr合金、Ni-Ti合金、Ni-Ti-Fe合金、Ni-Ti-Cu合金、Ni-Ti-Cr合金、Ni-Ti-V合金、Ni-Ti-Co合金、Ni-Ti-Nb合金、Ni-Ti-Pd合金、Ni-Ti-Cu-Cr合金またはこれらの複合体からなることを特徴とする請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項8】
前記先端側シャフトの先端が斜め方向にカットされており、前記ガイドワイヤシャフトの先端部が該斜めカットされた前記先端側シャフトの最先端部に位置するか、もしくは該最先端部よりも先端側に突出して位置しており、前記先端側シャフトが斜めカットされている部分のカテーテル長手軸方向の長さをL1とし、前記ガイドワイヤシャフトの基端から前記先端側シャフトの最先端部までの長さをL2とした場合に、0.5≦L2/L1であることを特徴とする請求の範囲第1項から第7項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項9】
前記L1が、2mm≦L1≦10mmであることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の吸引カテーテル。
【請求項10】
前記ガイドワイヤシャフトに、X線不透過マーカーを有することを特徴とする請求の範囲第1項から第9項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項11】
前記基端側シャフトがポリイミドから構成されることを特徴とする請求の範囲第1項から第10項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項12】
前記基端側シャフトが金属編組と高分子材料を組み合わせた編組チューブから構成されることを特徴とする請求の範囲第1項から第10項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項13】
前記編組チューブが吸引ルーメンを確定する内層、内層の外面に設けられた金属編組、金属編組の外面に設けられた外層を有することを特徴とする請求の範囲第12項に記載の吸引カテーテル。
【請求項14】
前記基端側シャフトの少なくとも基端側の部分の曲げ弾性率が1GPa以上であることを特徴とする請求の範囲第1項から第13項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項15】
前記先端側シャフトの少なくとも一部に湿潤環境下で潤滑性を示す親水性コーティングが付与されていることを特徴とする請求の範囲第1項から第14項のいずれかに記載の吸引カテーテル。」

IV.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、「特許第3894224号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」(請求の趣旨)との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第20号証を提出し、無効とすべき理由を次のように主張している。

(1)無効理由1
本件特許の請求項1及び請求項8の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとは言えず、さらに発明の詳細な説明の記載は経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されていないため、請求項1?請求項15に記載の発明は、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第4号により、無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件特許の請求項1,請求項8及び請求項14に記載の発明は、明確でないため、請求項1?請求項15に記載の発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第4号により、無効とすべきである。

(3)無効理由3
本件特許の請求項1に記載された「ストレート形状」は明確でないため、請求項1、請求項5及び請求項6に記載の発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第4号により、無効とすべきである。

(4)無効理由4
本件特許の請求項1?請求項15に記載の発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第13号証及び甲第15号証に記載された発明と周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号により、無効とすべきである。

[証拠方法]
(1)甲第1号証:米国特許第6152909号明細書
(2)甲第2号証:特表平7-505559号公報
(3)甲第3号証:特開平9-10182号公報
(4)甲第4号証:米国特許第4068659号明細書
(5)甲第5号証:特開昭59-151969号公報
(6)甲第6号証:特開昭62-243566号公報
(7)甲第7号証:実願平4-49557号(実開平6-3353号)のCD-ROM
(8)甲第8号証:「クリニー 医用シリコーン製品 総合カタログ ’87」、クリエートメディック株式会社、1987年、p.15
(9)甲第9号証:特開2001-29449号公報
(10)甲第10号証:特開2002-102359号公報
(11)甲第11号証:特開2002-291900号公報
(12)甲第12号証:特開平7-24060号公報
(13)甲第13号証:特開2003-284780号公報
(14)甲第14号証:特許第3318921号公報
(15)甲第15号証:特開平5-253304号公報
(16)甲第16号証:国際公開第94/18886号
(17)甲第17号証:特開2003-102841号公報
(18)甲第18号証:特表平9-511159号公報
(19)甲第19号証:特開平10-127790号公報
(20)甲第20号証:特開平10-85339号公報

2.被請求人の主張
被請求人は、請求人が主張する無効理由1乃至無効理由4によっては、本件特許を無効にすることはできず、本件審判請求は成り立たない旨を主張し、証拠方法として以下の乙第1号証?乙第5号証を提出している。

[証拠方法]
(1)乙第1号証 光藤和明、「インターベンション治療の意義と歴史」、Clinical Engineering、株式会社秀潤社、1999年8月1日、第10巻、第8号、p.733-739
(2)乙第2号証 特公平5-28634号公報
(3)乙第3号証 特開平6-218060号公報
(4)乙第4号証 特許第3180073号公報
(5)乙第5号証 特開2001-70252号公報

V.甲号証記載事項
(1)甲第1号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(米国特許第6152909号明細書)には図面と共に次の事項が記載されている(訳文は、当審による仮訳。)。

a.「1. Field of the Invention
The present invention relates to aspiration catheters for aspirating emboli, thrombi, and other types of particles from the vasculature of a patient, the apparatus being particularly well suited for aspiration within saphenous vein grafts, coronary arteries, and similar vessels.」(1欄15行?20行)
「1. 発明の分野
本発明は、患者の血管系から塞栓、血栓及びその他のタイプの砕片を吸入するための吸引カテーテルに関するもので、器具は特に伏在静脈移植片、冠状動脈、及び類似の血管内部での吸引に最適なものである。」
b.「The catheters are provided with varying flexibility along the length of the shaft, such that they are soft and flexible enough to be navigated through the vasculature of a patient without causing damage, but are stiff enough to sustain the axial push required to position the catheter properly and to sustain the aspiration pressures.」(2欄57行?62行)
「カテーテルにはシャフトの長さ方向に変動する柔軟性が備わっており、損傷を起こすことなく患者の血管系内を通過できるよう十分に滑らかで柔軟であるが、カテーテルを適切な位置に据えるために必要な軸方向の押し出しに耐え、吸引圧力にも耐え得るだけの十分な剛性を備えている。」
c.「The present invention provides novel aspiration catheters for aspirating emboli, plaque, thrombi or other occlusions from a blood vessel and methods of using same. 」(5欄21行?23行)
「本発明は、血管から塞栓、プラーク、血栓又は他の閉塞物を吸引するために利用される吸引カテーテル及びその使用方法を提供する。」
d.「Alternatively, the aspiration catheter 30 can be of a single operator design, as illustrated in FIGS. 5-7. The catheter 30 has an adaptor 32 and an aspiration port 34 at its proximal end. Like the over-the-wire aspiration catheter 10, the single operator aspiration catheter 30 further comprises a long tubular body 36 having a distal end 38. 」(8欄47行?52行)
「他に、単独の施術者で利用することができる吸引カテーテル30がFIG.5?FIG.7に示されている。カテーテル30はその基端にアダプタ32及び吸引ポート34を有している。オーバー・ザ・ワイヤータイプの吸引カテーテル10のように、単独の施術者により利用されるタイプの吸引カテーテル30は、先端38を有する長い管状ボディ36から構成されている。」
e.「 At the distal end of the shaft 38, a guidewire lumen 40 is attached. This lumen 40 provides a separate lumen, apart from the main aspiration lumen 42 of the catheter 30, for the insertion of the guidewire 26. 」(8欄55行?59行)
「シャフトの先端38には、ガイドワイヤルーメン40が設けられている。このルーメン40は、ガイドワイヤ26を挿入するために、カテーテル30のメイン吸引ルーメン42から離れた位置に分離したルーメンとして作られている。」
f.「In both the over-the-wire and single operator type aspiration catheters, the elongate catheter shaft must have sufficient structural integrity, or stiffness, to permit the catheter to be pushed through the vasculature to distal arterial locations without buckling or undesirable bending of the body. ……(中略)……Thus, in one preferred embodiment, the tubular body of the aspiration catheter is formed from a polymer such as polyethylene or PEBAX (Atochem, France) made to have variable stiffness along its length, with the proximal portion of the tubular body being less flexible than the distal portion of the body.」(9欄25行?38行)
「オーバーザワイヤー、シングルオペレーターの両形式の吸引カテーテルにおいて、カテーテルの細長いシャフトは、ボディーが座屈或いは好ましくない屈曲を起こすことなく血管系を通って動脈の先端箇所にカテーテルを押し込めるだけの十分な構造的完全さ、つまり「剛性」を持っていなくてはならない。……(中略)……故に、一の好ましい形態として、吸引カテーテルの管状のボディは、管状ボディの基端側部分が管状ボディの先端側部分よりも低い柔軟性となるといった、その長さ方向に種々の剛性が付与されるように、ポリエチレンやペバックスといった合成樹脂により形成されている。」
g.「A further embodiment of the aspiration catheter includes at least one support mandrel incorporated in to the catheter body to further strengthen the catheter.」(10欄60行?62行)
「吸引カテーテルの他の形態では、カテーテルの剛性を強化するためにカテーテルボディに少なくとも1つのサポートマンドレルを組み込む構成が含まれる。」
h.「Two support mandrels 216a, 216b are positioned alongside the lumens 212, 214 to provide added stiffness to the length of the catheter body 210.」(11欄10行?13行)
「2つのサポートマンドレル216a,216bが、カテーテルボディ210の長さ方向における剛性を与えるために、ルーメン212,214に沿って配置されている。」
i.「The aspiration catheter of the present invention may be used as part of an aspiration system, as illustrated in FIG. 17. FIG. 17 illustrates a single operator type aspiration catheter 150; over-the-wire type aspiration catheters may, of course, also be used. The aspiration catheter 150 is connected at its proximal end 152 to an extension line 154, through use of an adaptor 153. Aspiration pressure is provided through the extension line 154 to the aspiration catheter 150.」(14欄7行?10行)
「本発明の吸引カテーテルは、図17に描かれているように吸引システムの一部として使用される。図17に描かれているのは単独の施術者により利用されるタイプの吸引カテーテル150であるが、もちろん、オーバー・ザ・ワイヤータイプの吸引カテーテルも使用される。吸引カテーテル150は、その基部端152で延長管154とアダプタ153の使用を通じて結合されている。吸入圧は延長管154を通って吸引カテーテル150に供給される。」
j.FIG.5、FIG.6、FIG.7A及びFIG.7Bからみて、吸引カテーテルは、長い管状ボディ36の内部に塞栓、プラーク、血栓又は他の閉塞物を吸引するための吸引ルーメン42を備えているといえる。
k.FIG.5からみて、吸引カテーテルは、長い管状ボディ36の最先端部に先端38を備えているといえる。
l.FIG.5、FIG.7A及びFIG.7Bからみて、先端38は、ガイドワイヤルーメン40を内部に持つといえる。
m.摘記事項i.からみて、吸入圧はアダプタを通じて吸引カテーテルに供給されるから、吸引ルーメン42は長い管状ボディ36の基端に設けられたアダプタ32に連通しているといえる。

長い管状ボディ36について、請求人は、本件発明1の「前記カテーテルは先端側シャフトおよび基端側シャフトから構成されるメインシャフトを有」すること(審判請求書において、構成Bとしている。)について、構成Bは甲第1号証に記載されていると主張する。
そこで、請求人の上記主張について検討すると、請求人が指摘する甲第1号証第8欄第50行?第52行、第9欄第32行?第38行の記載事項を検討しても、長い管状ボディ36を2つのシャフトから構成することは記載されておらず、むしろ、甲第1号証FIG.5、FIG.6及びFIG.7Aからみて、長い管状ボディ36は1つのシャフトから構成されているといえる。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「血管から塞栓、プラーク、血栓又は他の閉塞物を吸引するための吸引カテーテルであって、前記カテーテルは長い管状ボディ36を有し、前記長い管状ボディ36の内部に塞栓、プラーク、血栓又は他の閉塞物を吸引するための吸引ルーメン42を、前記長い管状ボディ36の最先端部にガイドワイヤ26を挿入するためのガイドワイヤルーメン40を内部に持つ先端38をそれぞれ備え、前記吸引ルーメン42は前記長い管状ボディ36の基端に設けられたアダプタ32に連通している吸引カテーテル。」

(2)甲第2号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特表平7-505559号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

n.「本発明は、一般的な外科用器具の分野に属するもので、特に心臓血管の及び血管内の処置に於て、診断用、治療用、もしくは血管閉塞性の作用物質を(脈管構造を通過する曲がりくねった経路を経てアクセス可能な)目標部位に送達するために使用される注入カテーテルに関する。」(3頁左上欄4行?8行)
o.「そして、注入カテーテルを誘導カテーテル内に挿入する。注入カテーテルの柔軟な遠端部をまっすぐに保ち、誘導カテーテル内に挿入しやすくするため、任意にスタイレットを使用してもよい。スタイレットを使用する場合、注入カテーテルが誘導カテーテル内に入った後で、スタイレットを取り除く。」(3頁右下欄1行?6行)
p.「まず、バルブ204内での注入カテーテル100の捻れを防ぐため、テフロンで被覆されたステンレススチール製スタイレット208を注入カテーテル100内に挿入する。そして、注入カテーテル100の遠端106を誘導カテーテル202の先端に接近するように進ませる。次に、スタイレット208を注入カテーテル100から取り除く。」(5頁左上欄20行?右上欄2行)

(3)甲第3号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平9-10182号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

q.「【請求項1】 血管内の圧力を測定するための医療機器であって、基端領域(2)及び先端領域(3)を有する長い可撓性のあるシャフト(1)と、前記基端領域から先端領域までシャフトを介して伸長する管腔(4)と、前記管腔内に圧力媒体を導入するためのシャフトの先端領域の孔手段(5)と、前記管腔に設けられていてシャフト部分に十分に利用可能な剛性を付与する剛性付与手段とを備えた血管内圧力測定用の医療機器において、前記剛性付与手段が、前記管腔(4)の少なくとも一部分の中に着脱可能に伸長していてかつシャフト(1)の基端領域(2)に近接して設けられた独立したワイヤ(13、30、60、70)からなることを特徴とする医療機器。」(3頁8行?10行)
r.「管状のシャフトには剛性があり、管状の伸長部はキンクを防止するべく直径方向には比較的剛性を有するが、長手方向にはシャフトよりも可撓性を有する。これは、この装置の先端をガイドカテーテルから患者の曲がりくねった血管内に挿入することが必要だからである。」(特許請求の範囲)
s.「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、剛性付与手段が管腔の少なくとも一部分内に取外し可能に伸長し、かつシャフトの基端領域に近接する独立したワイヤから構成されることを特徴とし、それにより、シャフトの基本的な剛性及び柔軟性を選択でき、更に独立したワイヤをシャフトの管腔から引出して別の特性を持つ別の独立ワイヤと交換すること、又はシャフトの管腔に沿って独立ワイヤを取外すことができる。シャフトの剛性及び可撓性、同様にキンクに対する抵抗性並びに柔軟性は十分に選択可能かつ確実に取得でき、そして、それらの特性は選択されたシャフトの形状、若しくは本質的な品質を損なうことなく、外形寸法を増大させることなく、独立ワイヤにより変更することができる。従って、このシャフトは非常に薄い壁を有する単なる管として考えてもよく、この管は曲がりくねった狭い血管を通りかつ鋭角の狭窄部を通り安全に効率よく進めることができる。圧力測定の場合は、完全に障害のない管腔を利用するために独立ワイヤを引出すだけで十分であり、それにより、液体媒体のための良好な周波数特性が得られる。」(4欄30行?49行)
t.「独立のワイヤ13で形成された剛性を付与する装置が管腔4を介して伸長し、テーパ状の端部14がシャフト1の先端領域3に長孔5に近接して配置されている。独立のワイヤ13は15の部分がシャフト1の基端領域2に近接して伸長しており、基端領域で直径が大きい部分151を有している。かかる独立のワイヤ13は例えばステンレススチールで造ることができる。図示の通り、独立ワイヤ13は管腔4内に摩擦により装着されており、それにより、管腔を介して配置されると共に管腔から除去することができる。」(6欄24行?33行)

(4)甲第4号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(米国特許第4068659号明細書)には、図面とともに、次の事項が記載されている(訳文は、当審による仮訳。)。

u.「the stylet yieldable stiffener 36 extends through almost the entire length of the silicone rubber catheter tube 24,」(第5欄第11行?第13行)
「可撓性の補強材36がシリコーンゴム製のカテーテルチューブ24の全長に亘って延びている。」
v.「While the stylet stiffener 36 may be any suitable flexible structure which will accommodate curvilinear flexing while preventing kinking, buckling and folding during insertion,」(第5欄第15行?第18行)
「補強材36は、挿入時におけるキンク、座屈及び折れを防ぎながら曲線の曲げに適応するような適切な可撓性の構造を有しているとよい。」
w.「It is to be appreciated that the telescopic relation between the stiffener 36 and the catheter tube is an unattached relationship whereby the catheter tube does not follow the stiffener when the stiffener is retracted, for reasons hereinafter explained.」(第5欄第29行?第34行)
「当然のことながら、後に説明する理由で補強材が退避される際にカテーテルチューブが追従しないように、補強材36とカテーテルチューブとの伸縮自在の関係は非結合の関係となっている。」
x.「the leading end 46 of the stylet stiffener 36 terminating a short distance rearward of the distal end 25 of the catheter tube 24.」(第5欄第13行?第15行)
「補強材36の誘導先の端部は、カテーテルチューブ24の先端25よりも僅かに基端側の位置にある。」
y.「Once venipuncture has occurred and the catheter tube 24 together with the stylet 36 and inserter 27 have been suitably advanced by manual manipulation of the handle 28 to place the catheter tube or plastic cannula 24 in a desired location within the vein(or other body cavity) of the patient, the entirety of the catheter placement assembly 10(exclusive of the catheter tube 24) is removed from the catheter tube 24 and discarded.」(第6欄第51行?第58行)
「静脈穿刺が行われ、さらにカテーテルチューブ又はプラスチックカニューラ24が患者の血管(又は他の体腔)における所望の位置に配置される状態となるまでハンドル28の手動操作によって、スタイレット36及びインサーター27とともにカテーテルチューブ24が適切に進められたら、カテーテル導入用のアセンブリ10(カテーテルチューブ24を除く)がカテーテルチューブ24から取り除かれて廃棄される。」

(5)甲第5号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開昭59-151969号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

z.「第4図に示すように、カテーテル11のメインルーメン14内にスタイレット22を挿入することにより該カテーテル11の先端湾曲部12をほぼ真直ぐないしはゆるやかな湾曲度に伸ばし、前記孔21より該カテーテル11を挿入する。先端が湾曲部12を構成する部分よりやや長めにカテーテルを挿入したのち、スタイレット22を引抜くと、カテーテル11の先端部12は、第5図に示すように原状に復して再び湾曲部12を形成する。」(4頁左下欄6行?15行)
A.「つぎに、カテーテル11にチューブ(図示せず)を連結してメインルーメン14と連通させ、このチューブに図示しない吸引手段、例えばロータリーポンプを取付け、該吸引手段を作動させることにより心室内の血液は、側孔13およびメインルーメン14を通じて体外に排出させるとともに、サイドルーメンチューブ19より吸入される空気がサイドルーメンを通じて心室内に供給されて血液と置換される。」(4頁右下欄1行?9行)

(6)甲第6号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開昭62-243566号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

B.「使用に際しては、第1図に示すように、カテーテル12の中にスタイレット組立て体14を配置することにより、医者は、カテーテルおよびスタイレット組立て体10のまずチップを患者に挿入して、カテーテルの遠位端を左心室のごとき患者の所望の部位に位置させるために、カテーテル12およびスタイレット31を所望の外形または形状に手で湾曲させまたは曲げることができる。カテーテル12が所望の位置に配置されたら、カテーテルチップ24および開口26を患者の所望の部位に保持しながら、スタイレット組立て体14をコネクター22からはずし、カテーテル12およびチューブコネクター22から引き出す。」(5頁右上欄19行?左下欄11行)

(7)甲第7号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(実願平4-49557号(実開平6-3353号)のCD-ROM)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

C.「【産業上の利用分野】 本考案は、食道、胃並びに食道及び胃静脈瘤等を圧迫止血に主として用いるバルーンカテーテルの改良に関するものである。」(段落【0001】)
D.「【課題を解決するための技術手段】 前記課題を解決するため、本考案においては、カテーテルチューブの先端部に食道内容物吸引孔、胃内容物吸引孔、止血圧迫用(単数又は複数の)バルーンを備え、食道、胃内容物の吸引及び単数又は複数の患部止血圧迫を可能とするとともに、カテーテルチューブに滑性材コーティング層を設けてスムースにスタイレットを挿着してカテーテルの人体内挿入を容易にできるようにし、併せてスタイレット抜去後は前記吸引に用いる医療機器をその都度脱着を繰り返す手間を省き、該医療機器装着のまま体内に生理食塩水や薬剤を注入可能とするため、分岐管状にしたコネクターを付設したカテーテルに構成した。
【実施例】 本考案の実施例を図面により説明する。図1は実施例の概要を示す側面図、図2は図1のA-A線断面における端面図、図3は図1のB-B線断面における端面図、図4は図1のC-C線断面における端面図、図5は図1のD-D線断面における端面図、図6はコネクターとスタイレットの概要を示す一部切欠説明図である。カテーテルチューブ(1)は、軸方向にメインルーメン(2)、サブルーメン(3)及び単数又は(例えば胃及び食道等複数患部を圧迫止血するに用いる場合)複数のバルーンルーメン(4)を設けた管状に形成して先端部を先端部材(18)を固着して封止し、前記メインルーメン(2)に例えばシリコーンコーティング剤100重量部、ベントナイト0、5乃至1、0重量部及びキシレン20乃至30重量部の混合液等から成る滑性材コーティング層(5)を形成するとともに、基端部にメインルーメン(2)に連通する内腔を設けた分岐管(6)、サブルーメン(3)に連通する内腔を設けた分岐管(7)及びバルーンルーメン(4)に連通する内腔を設けた分岐管(8)を形成し、かつカテーテルチューブ(1)先端部近傍の管壁にメインルーメン(2)に連通する孔(9)、サブルーメン(3)に連通する孔(10)及びバルーンルーメン(4)に連通する孔(11)を穿設してあり、孔(11)を僅かな間隙を存して筒状の弾性素材から成るバルーン部(12)で被覆し、該バルーン部(12)の前端及び後端をカテーテルチューブ(1)に固着したカテーテルに形成し、先端部が分岐管(6)に嵌合可能であり、分岐管部(17)を設けるとともに、蓋部(16)を別体に形成し、該蓋部(16)及び分岐管部(17)が螺着可能に形成されたコネクター管(13)と前記蓋部(16)に固着され、複数の金属線を撚り線状にし、その先端に球状物(15)を固着したスタイレット(14)とから止血用カテーテルを構成した。」(段落【0004】、【0005】)

(8)甲第8号証
甲第8号証には、次の事項が記載されている。
E.「スタイレットが装着されていますので意識喪失時や挿入の困難な症例でも、短時間で挿入できます。」(15頁シリコーンEDチューブの特徴と利点の欄)
F.「滑剤を注入して胃内でスタイレットを抜去します。」(15頁シリコーンEDチューブの特徴と利点の欄)
G.シリコーンEDチューブの規格の表には、製品番号02-3206として、スタイレットの外径が0.5mmであるとともに、チューブの内径が1.1mmであることが記載されている。

(9)甲第9号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証(特開2001-29449号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

H.「【発明の属する技術分野】本発明は、肉薄かつ高強度なバルーンを有するバルーンカテーテルに関し、詳しくは、経皮的血管内冠状動脈形成術(Percutaneoμs Transluminal Coronary Angioplasty、以下、「PTCA」と記す。)用途に好適なバルーンカテーテルに関する。」(段落【0001】)
I.「第3ルーメン24の半円形の横断面積は、バルーン拡張用圧力流体が流通するために十分な横断面積であれば良く、特に限定されないが、好ましくは0.08?0.20mm^(2)である。また、第4ルーメン26の円形の横断面積は、内部に補強ロッド28が挿入されるために十分な面積であれば良く、特に限定されないが、好ましくは0.05?0.5mm^(2)、さらに好ましくは0.1?0.2mm^(2)である。」(段落【0044】)
J.「図1(B)、(C)および(F)に示す補強ロッド28は、第2外チューブ部材6bの第4ルーメン26の内部に、全長に亘り挿入され、その遠位端部は、第1外チューブ部材6aとの接合部9を乗り越えて、第1外チューブ部材6aの第1ルーメン10内に飛び出している。補強ロッド28の近位端部は、断面円形であり、途中から遠位端側に向けてテーパ状に細くなり、さらに遠位端部では、断面平板形状に成るように、その断面形状が徐々に変化している。断面平板状の補強ロッド28の遠位端部は、図1(D)および図2に示すように、内チューブ12の近位端開口部22をも僅かに(好ましくは1?10cm程度)乗り越えた位置で、第1外チューブ部材6aの内壁に対して熱融着または接着などの手段で接合してある。
なお、補強ロッド28の最大外径は、第2外チューブ部材6bの第4ルーメン26の内部に挿入可能に決定され、特に限定されないが、好ましくは0.3?0.6mmである。」(段落【0047】、【0048】)
K.「なお、補強ロッド28は、ステンレス鋼、銅、銅合金、チタン、チタン合金などの金属材料、あるいはポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂で構成してある。補強ロッド28の最大外径は、第1外チューブ部材6aのルーメン10を塞がないように決定され、特に限定されないが、好ましくは0.3?0.6mmである。
第1外チューブ部材6aは、例えばバルーン部4と同様な材料で構成されて良いが、可撓性を有する材料で構成されることが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリイミドエラストマー、ポリ四フツ化エチレン樹脂、四フツ化エチレン-六フツ化プロピレン共重合樹脂、四フツ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、三フツ化塩化エチレン樹脂、四フツ化エチレン-エチレン共重合樹脂、ポリフツ化ビニリデン樹脂、ポリフツ化ビニル樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム等が挙げられる。なかでも、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミドが好ましい。また、当該第1外チューブ部材6aの硬さは、JIS硬度が50A?90A程度のものを用いることができる。
第2外チューブ部材6bは、前記第1外チューブ部材と同様な材料で構成される。当該第2外チューブ部材6bの硬さは、JIS硬度が50D?75D程度のものを用いることができる。」(段落【0057】?【0059】)

(10)甲第10号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証(特開2002-102359号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

L.「【請求項1】チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の該バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張されるステントと、前記シャフト本体部の先端にて一端が開口し、他端が前記シャフト本体部の中間部にて開口するガイドワイヤールーメンとを備える拡張用カテーテルと、前記拡張用カテーテルを摺動可能に収納するカテーテルルーメンを有するシースとを備える生体器官拡張用器具であって、前記シースは、前記拡張用カテーテルの前記ガイドワイヤールーメンの他端側開口部付近となる位置に設けられた前記ガイドワイヤールーメンにガイドワイヤーを挿通するための軸方向に延びる側孔を備え、さらに、該シースの側孔形成部位は、剛性が前記シースの先端部より高い高剛性部となっていることを特徴とする生体器官拡張用器具。」(【特許請求の範囲】)
M.「剛性付与体33は、シャフトチューブ32の基端より、その内部を先端側に延びている。また、剛性付与体33は、シャフト本体部21の湾曲の障害とならないように、基端部のみシャフトチューブ32もしくはハブ8に固定されており、その他の部分、具体的には、シャフトチューブ32の基端部を除く内部、接合コネクター7部分、先端側シャフト部(内管12および外管13)のいずれにも固定されていない。剛性付与体33は、シャフトチューブ32の可撓性をあまり低下させることなく、屈曲部位でのシャフトチューブ32の極度の折れ曲がり、シャフトチューブ32の血管内での蛇行を防止する。剛性付与体33は、線状体により形成されていることが好ましい。線状体としては、金属線であることが好ましく、線径0.05?1.5mm、好ましくは0.1?1.0mmのステンレス鋼等の弾性金属、超弾性合金などであり、特に好ましくは、ばね用高張力ステンレス鋼、超弾性合金線である。」(段落【0020】)
N.「シャフトチューブ32は、基端において剛性付与体33を固定しており、さらに、このシャフトチューブ32の後端は、ハブ8の先端部に固定されている。ハブ8とシャフトチューブ32の境界部の外面には、両者を被覆するように、キンク防止用のチューブ35が取り付けられている。また、ハブ8の後端部は、バルーン拡張用流体注入器具(例えば、シリンジ)の接続部34となっている。シャフトチューブ32としては、外径が0.5?1.5mm、好ましくは0.6?1.3mmであり、内径が0.3?1.4mm、好ましくは0.5?1.2mmである。シャフトチューブ32の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフイン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂である。また、シャフトチューブ32の形成材料としては、剛性付与体33を用いずに、ステンレス管を用いてもよい。」(段落【0022】)

(11)甲第11号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証(特開2002-291900号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

O.「【発明の属する技術分野】本発明は、バルーンカテーテルなどの医療器具とその製造方法に係り、さらに詳しくは、電極やセンサなどとして用いられる金属リングが取り付けられる医療器具、またはX線造影のための造影リングが取り付けられる医療器具と、その製造方法に関する。」(段落【0001】)
P.「第2外チューブ部材6bは、第1外チューブ部材6aと同じ材質で構成しても良いが、他の材質で構成することが好ましい。たとえば第1外チューブ部材6aを、第2外チューブ部材6bよりも軟質の合成樹脂で構成することが好ましい。
第1外チューブ部材6aを構成する軟質の合成樹脂としては、好ましくはポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンなどのJIS硬度が50A?90A程度のものを用いることができ、第2外チューブ部材6bを構成する硬質の合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンなどのJIS硬度が50D?75Dのものを用いることができる。」(段落【0048】【0049】)
Q.「第3ルーメン24の半円形の横断面積は、バルーン拡張用圧力流体が流通するために十分な横断面積であれば良く、特に限定されないが、好ましくは0.08?0.20mm^(2)である。また、第4ルーメン26の円形の横断面積は、内部に補強ロッド28が挿入されるために十分な面積であれば良く、特に限定されないが、好ましくは0.05?0.5mm^(2)、さらに好ましくは0.1?0.2mm^(2)である。」(段落【0051】)
R.「図1、図2(A)?図2(C)および図3に示す補強ロッド28は、第2外チューブ部材6bの第4ルーメン26の内部に、全長に亘り挿入され、その遠位端部は、第1外チューブ部材6aとの接合部9を乗り越えて、第1外チューブ部材6aの第1ルーメン10内に飛び出している。補強ロッド28の近位端部は、断面円形であり、途中から遠位端側に向けてテーパ状に細くなり、さらに遠位端部では、断面平板形状に成るように、その断面形状が徐々に変化している。断面平板状の補強ロッド28の遠位端部28aは、図1および図4に示すように、内チューブ12の近位端開口部22をも僅かに(好ましくはL3=1?10cm程度)乗り越えた位置まで延在し、その遠位端部2aは、第1外チューブ部材6aの内壁に対して固定されていない。」(段落【0054】)
S.「なお、補強ロッド28の最大外径は、第2外チューブ部材6bの第4ルーメン26の内部に挿入可能に決定され、特に限定されないが、好ましくは0.3?0.6mmである。補強ロッド28は、ステンレス鋼、銅、銅合金、チタン、チタン合金などの金属材料、あるいはポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂で構成してある。」(段落【0056】)

(12)甲第18号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第18号証(特表平9-511159号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

T.「1.技術分野
本発明は、バルーン拡張カテーテルに関し、より詳細には、改善された押圧性、軌道追従性、および膨張時間を有するカテーテルに関する。」(6頁4行?6行)
U.「案内管62は、拡張バルーンの近位端並びに遠位本体管40を通ってスリット60まで近位に延長する。このスリットは、遠位管部分と近位管部分との間の溶着域の壁にガイドワイヤ口を規定する。案内管の近位開放端は、ガイドワイヤ口60に封止される。」(11頁12行?15行)
V.「近位本体管42内に取り付けられ、その近位端近くの点から遠位に溶着域44に向かって延長するのが、薄い壁で形成される、中空でステンレス・スチール製の比較的剛性の管から形成されるハイポチューブ76である。ハイポチューブは、遠位開口部80で形成され、それに固定される遠位補強部分84を有する遠位端78(図3)を有する。ハイポチューブの遠位端は傾斜して切断され、遠位先端部で高さ約0.016インチ(0.41mm)のハイポチューブの端の一部と遠位開口部80とをその遠位端に残す。約0.003インチ(0.076mm)の細い方の遠位端および約0.016インチ(0.41mm)の太い方の近位端を持つ中実な先細ステンレス・スチール製ワイヤ84は、その近位端をハイポチューブの遠位端78の中に配置され、その遠位端78に溶接され(図4および図5を参照)、ハイポチューブに中実な先細カテーテル補強拡張部を提供する。」(11頁24行?12頁6行)
W.「補強探り針ワイヤ116(図2および図3、ただし図6および図7には図示されない)は、近位端が端部キャップ118に固定取付され、軸方向開口部104を通って、取付具90を通って、さらにハイポチューブ76を長手方向に通って、その遠位端まで延長する。キャップ118は、ルアー管継ぎ手102と着脱可能に係合するので、補強探り針は取付具およびハイポチューブ内部に着脱可能に挿入できる。探り針ワイヤが取り外された状態で、軸方向開口部104は、膨張および収縮に使用できる。」(13頁13行?20行)
X.「処置のこの部分の間、ハイポチューブの存在により、治療用カテーテルの押圧性が大きく強化される。押圧性は、探り針ワイヤ116を溶着域44まで延長するようにハイポチューブ内部に挿入することにより、さらに強化される。……(中略)……処置のこの時点において、バルーンは膨張される。探り針が挿入されている場合は、これを除去する。」(14頁15行?24行)
Y.「ただし、図9の装置においては、ハイポチューブは、近位接続取付具に、その内部で固定されるよりは、着脱可能とされる。」(15頁15行?17行)
Z.「図9の実施態様では、ハイポチューブは完全に取り外され、ハイポチューブおよび探り針による極僅かな断面妨害までが取り除かれた場合に、さらに高い膨張・収縮率が達成できるように、ルアー継ぎ手202は、第2キャップ(図示せず)によって封止される。……(中略)……ハイポチューブおよび探り針ワイヤが本体管内にあると、カテーテルの挿入のための押圧性が改善され、迅速な膨張・収縮が達成できる。挿入後、ハイポチューブおよび探り針は、さらに迅速な膨張・収縮のために取り外すことができる。」(16頁13行?21行)

VI.無効理由に対する当審の判断
1.無効理由1について
1-1.本件発明1について
(1)請求人は、本件発明1の「前記コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であ」ること(審判請求書において、構成Fとしている。)が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、さらに発明の詳細な説明の記載は経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されておらず、本件発明1が特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第4項第1号の規定に違反する理由として以下の点を主張する。

ア:訂正明細書に、構成Fに付随した効果を奏することを示す具体例として複数記載されているのは、基端側シャフトの材質がポリイミドであって、コアワイヤ形状がストレートのものだけである。これ以外の具体例は、基端側シャフトの材質が編組チューブであってコアワイヤ形状がストレートである場合の1点と、基端側シャフトの材質がポリイミドであってコアワイヤ形状がスプリングワイヤである場合の1点のみである。構成Fに係る「R1/R2」というパラメータが耐キンク性及び通過性に影響するとした場合、その影響力は基端側シャフトの柔軟性やコアワイヤ形状に大きく依存することは明らかであるため、上記1点のみ示された各条件の場合に、構成Fに係る数値範囲の全ての範囲において訂正明細書に記載された所望の効果が得られるか否かは明らかに不明であり、当該効果が得られることを推認させるような論理的な記載も訂正明細書において一切示されていない。

イ:訂正明細書には、基端側シャフトの材質が編組チューブであってコアワイヤ形状がスプリングワイヤである場合については、具体例が一切示されておらず、このような条件の場合に、構成Fに係る数値範囲の全ての範囲において訂正明細書に記載された所望の効果が得られるか否かは明らかに不明であり、当該効果が得られることを推認させるような論理的な記載も訂正明細書において一切示されていない。

ウ:訂正明細書には、基端側シャフトの材質及びコアワイヤの形状以外の条件を変更した場合の具体例も一切示されておらず、基端側シャフトの材質及びコアワイヤの形状以外の条件を変更した構成に対して構成Fに記載された数値範囲を適用した場合にも、当該構成Fに付随した効果を奏するか否かは不明である。

エ:訂正明細書の実施例1では、「?外径1.30mm、内径1.10mm、長さ1100mmのポリイミドチューブを作製し、基端側シャフトとした。」と記載されているとともに、「基端側シャフトの一端を加熱延伸して減径し、該減径部分を先端側シャフト内に挿入し、?を用いて接着固定し、メインシャフトを得た。」(【0060】)と記載されており、先端側シャフトの内径が1.00mmであると記載されていることを鑑みると、実施例1のカテーテルの最小内径は具体的には不明であるが1.00mmを大きく下回る数値となるはずである。これに対して、上記構成を前提とした実施例1?実施例3,実施例7では、R2として、減径されていない箇所の内径である「1.1mm」を採用している。つまり、訂正明細書には「吸引ルーメンの最小内径」を「R2」とした場合における「0.45≦R1/R2≦0.65」としたことの実験例は一切示されておらず、構成Fに付随した効果を奏するとする根拠、理由は記載されていない。

(2)そこで、請求人の上記主張について検討する。
(アについて)
本件発明1の基端側シャフト及びコアワイヤは、吸引ルーメンの内部にコアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、コアワイヤが取り出され、血管内から物質が吸引除去されるという本件発明1の吸引カテーテルの機能の一部を担うとともに、本件発明1の基端側シャフト、コアワイヤ及び吸引カテーテルには、それぞれ、例えば基端側シャフトには「術者が加えた吸引カテーテルを操作する力を先端に十分に伝える」(【0053】)という機能が求められ、コアワイヤは「コアワイヤ・・・吸引カテーテルのキンクを防止する」(【0045】)という機能が求められ、吸引カテーテルには、「屈曲した血管にも十分追随していけるだけの柔軟性を実現させる」(【0080】)という機能が求められていることを考慮すれば、本件発明1の基端側シャフト及びコアワイヤとしては上記各機能を担保するために類似の特性を有するものが用いられると解されるから、基端側シャフトの材質が編組チューブであってコアワイヤ形状がストレートである場合(実施例8)や、基端側シャフトの材質がポリイミドであってコアワイヤ形状がスプリングワイヤである場合(実施例7)における基端側シャフト及びコアワイヤは、基端側シャフトの材質がポリイミドであって、コアワイヤ形状がストレートのものと類似の特性を示すものが用いられているといえる。
そして、実施例7,8の構成Fに係る「R1/R2」の値の変化に応じて耐キンク性及び通過性が不連続に大きく変化すると解すべき理由はなく、しかも、実施例7,8の「R1/R2」の値は、構成Fに規定する「0.45≦R1/R2≦0.65」の中央値の0.55であって、良好な耐キンク性及び通過性を示すものである。
してみると、当業者であれば、訂正明細書及び図面の記載から、基端側シャフトの材質が編組チューブであってコアワイヤ形状がストレートである場合(実施例8)や、基端側シャフトの材質がポリイミドであってコアワイヤ形状がスプリングワイヤである場合(実施例7)にも、構成Fに係る数値範囲の全ての範囲において訂正明細書に記載された所望の効果が得られることを理解するといえる。

(イについて)
アについて検討したのと同様の理由で、本件発明1の吸引カテーテルにおいて基端側シャフト、コアワイヤ及び吸引カテーテルに求められる機能を担保するために、本件発明1の基端側シャフト及びコアワイヤとしては類似の特性を有するものが用いられると解されるから、当業者であれば、訂正明細書及び図面の記載から、基端側シャフトの材質が編組チューブであってコアワイヤ形状がスプリングワイヤである場合も、構成Fに係る数値範囲の全ての範囲において訂正明細書に記載された所望の効果が得られることを理解するといえる。

(ウについて)
本件発明1の吸引カテーテルにおける基端側シャフトの材質及びコアワイヤの形状以外の条件の変更は、吸引ルーメンの内部にコアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、コアワイヤが取り出され、血管内から物質が吸引除去されるという本件発明1の吸引カテーテル機能を担うために、変更事項は類似の特性を担保できる範囲内で行われるものであるから、この範囲内で基端側シャフトの材質及びコアワイヤの形状以外の条件の変更を行う限りは、吸引カテーテルは訂正明細書に記載されたものとほぼ類似の特性を示すといえる。
してみると、当業者であれば、訂正明細書及び図面の記載から、基端側シャフトの材質及びコアワイヤの形状以外の条件を変更した場合も、訂正明細書に記載された実施例とほぼ同様に構成Fに係る数値範囲の全ての範囲において訂正明細書に記載された所望の効果が得られることを理解するといえる。

(エについて)
i.訂正明細書には「SUS304合金から作製した外径1.05mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした以外は実施例1と同様に作製した」(【0072】)参考例10が記載されている。
本件発明1のコアワイヤは吸引ルーメンの内部に挿入されるとともに、取り出されるものであるから、コアワイヤの挿入、取り出しの容易性を考慮すると、吸引ルーメンの最小内径R2はコアワイヤの最大外径R1(1.05mm)より大きく設定することが通常であるといえる。
さらに、訂正明細書の表1から把握される各実施例、参考例におけるR2の値は、すべてほぼ1.1mmとなる。
してみると、訂正明細書の実施例、参考例、表1の記載を総合すると、先端側シャフトの内径に関する訂正明細書【0060】の「1.00mm」という記載は、「1.10mm」の誤記と解される。

ii.上記の点につき請求人は、例えばメインシャフトにおいて基端側シャフトと先端側シャフトとの接合部分における内径を0.95mmとし、その部分を放射方向に弾性変形させながら外径1.05mmのコアワイヤを押し込む構成も考えられ、実施例10では、このような構成であることを原因として、通過性の評価が「△」であると見なすこともできると主張する。
そこで、請求人の上記主張について検討する。
基端側シャフトと先端側シャフトとの接合部分を放射方向に弾性変形させながらコアワイヤを押し込む構成では、コアワイヤの挿入、取り出しに困難が生じると解されるから、コアワイヤが吸引ルーメンの内部に挿入されるとともに、取り出される本件発明1の吸引カテーテルにおいて、あえて上記構成を採用すると解すべき根拠は見出せない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

iii.以上によれば、先端側シャフトの内径に関する訂正明細書段落【0060】の「1.00mm」という記載は、「1.10mm」の誤記と解されるから、訂正明細書には、ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径R2が1.10mmである実施例が記載されているといえ、訂正明細書の記載から0.45≦R1/R2≦0.65とした場合の効果を把握することができる。

(3)以上のとおり、請求人が、本件発明1が特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第4項第1号の規定に違反する理由として主張する点は、いずれも理由がない。

1-2.本件発明8について
(1)請求人は、本件発明8の「前記先端側シャフトが斜めカットされている部分のカテーテル長手軸方向の長さをL1とし、前記ガイドワイヤシャフトの基端から前記先端側シャフトの最先端部までの長さをL2とした場合に、0.5≦L2/L1であること」が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、さらに発明の詳細な説明の記載は経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されておらず、本件発明8が特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第4項第1号の規定に違反する理由として、以下の点を主張する。

カ:本件発明8に係る「L2/L1」の数値範囲についての具体例は、L1が2mmであってL2が1mmである場合(L2/L1=0.5)の1点のみであり、「0.5」未満の場合や「0.5」よりも大きい場合の具体例は何ら示されておらず、発明の詳細な説明に開示された内容からは、本件発明8の範囲まで、拡張ないし一般化することはできない。

(2)そこで、請求人の上記主張について検討する。
(カについて)
L2/L1の技術的意義について訂正明細書の記載を確認すると、「L2/L1は0.5以上であることが好ましい。L2/L1が0.5よりも小さい場合、ガイドワイヤシャフト112と先端側シャフト103の接合部の面積が小さくなり、ガイドワイヤシャフト112が先端側シャフト103から剥離する危険性が高くなる。」(【0046】)と記載されており、訂正明細書の上記記載の妥当性を否定する根拠も見当たらない。
してみると、実施例による評価によりL2/L1の値が0.5であるときに、ガイドワイヤシャフト112が先端側シャフト103から剥離しなかったと解されるから、当業者であれば、訂正明細書及び図面の記載から、本件発明8に規定される「0.5≦L2/L1」である場合に、訂正明細書に記載された所望の効果が得られることを理解するといえる。
したがって、当業者であれば、訂正明細書及び図面の記載に開示された内容から、本件発明8の範囲まで拡張ないし一般化したものを理解できる。

(3)以上のとおり、請求人が、本件発明8が特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第4項第1号の規定に違反する理由として主張する点は、理由がない。

1-3.まとめ
以上のように、本件発明1および本件発明8は、特許法第36条第6項第1号および同条第4項第1号の規定に違反するものではない。
したがって、本件発明1?本件発明15は、特許法第36条第6項第1号および同条第4項第1号の規定に違反するものではない。

2.無効理由2について
2-1.本件発明1について
(1)請求人は、本件発明1の「前記コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であ」ることが明確ではなく、本件発明1が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する理由として、以下の点を主張する。

サ:「0.45≦R1/R2≦0.65」という記載では、R1,R2の各々の値の下限あるいは上限が不明瞭であり、発明の範囲が明確でない。
血管の大きさから自明なのは吸引カテーテルの外径であって、コアワイヤの外径ではない。また、血管の大きさからは吸引カテーテルの外径の下限値が自明となることはなく、当然のことながら、コアワイヤの外径の下限値が自明となることはない。さらにまた、本件発明1では、血管がどのような血管なのか、人の血管か、どこの血管かなど、全く限定されていない。したがって、血管の大きさ自体明らかではないので、R1の範囲も自明ではない。

シ:構成Fでは、吸引カテーテルの材質、形状及び寸法や、コアワイヤの材質、形状及び寸法等を何ら限定していないのに対して、訂正明細書における発明の詳細な説明には、構成Fに含まれる広範囲の構成のうち僅かなパターンの構成に対応した実験例しか示されておらず、吸引カテーテルやコアワイヤの任意の構成に対して構成Fを適用した場合にどのような効果を奏するのか不明であり、さらにはそもそも「吸引ルーメンの最小内径」を「R2」とした場合における実験例は一切示されていないため、技術的意義を理解することができない。

ス:訂正明細書には、【0075】?【0077】に、実験結果が示されているが、耐キンク性の評価や通過性の評価が「○」、「△」、「×」という実施者の主観による評価のみとなっており、「○」と「△」との境界や、「△」と「×」との境界が不明である。そうすると、構成Fに記載された数値範囲の下限値及び上限値は実施者の主観により決定されたものとなり、実施者が変われば、その下限値及び上限値も相違することとなる。したがって、構成Fを備えることの技術的意義を理解することができない。

セ:訂正明細書の【0041】には、「R1/R2は0.3以上、0.9以下であることが好ましい。……(中略)……R1/R2は0.4以上、0.7以下であることがより好ましい。」と記載されており、かかる数値範囲の下限値及び上限値は構成Fに記載された数値範囲の下限値及び上限値と異なっている。そうすると、一体どの数値範囲が技術的意義を有するものであるか訂正明細書では不明である。

ソ:構成Fでは「コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に」と記載されているが、コアワイヤにおいて最大外径となっている箇所と吸引ルーメンにおいて最小内径となっている箇所との位置関係は何ら限定されていない。そうすると、コアワイヤにおいて最大外径となっている箇所と吸引ルーメンにおいて最小内径となっている箇所とがカテーテルの長手軸方向に相当離れた位置関係であっても構成Fに含まれることとなる。さらには最大外径となっている箇所が最小内径となっている箇所の先端側に存在する構成及びその逆の基端側に存在する構成のいずれもが構成Fに含まれることとなる。そのような構成において「0.45≦R1/R2≦0.65」という数値範囲を採用することにどのような技術的意義を有しているのか全く理解することができない。

(2)そこで、請求人の上記主張について検討する。
(サについて)
本件発明1の吸引カテーテルが挿入される血管がどのような血管であるにしても、本件発明1の吸引カテーテルが挿入される血管の大きさは所定の範囲内にとどまると解されるから、コアワイヤの最大外径R1、吸引ルーメンの最小内径R2の値には血管に挿入できる上限値が存在するといえる。さらに、例えば訂正明細書に、吸引ルーメンについて「吸引するための吸引ルーメンの断面積を十分確保できず、吸引能力の低いものしか得られていない。」(【0008】)と記載され、コアワイヤについて「吸引ルーメン100に対してコアワイヤ101が細すぎるため、コアワイヤ101による挿入時の折れ防止効果は十分発揮されない。」(【0041】)と記載されているように、物質を吸引除去する吸引ルーメンの機能及びキンクの可能性を低減させるコアワイヤの機能を考慮すると、R1,R2の値には、吸引ルーメン及びコアワイヤの機能を確保するための下限値が存在するといえる。
したがって、当業者であれば、訂正明細書及び図面の記載に開示された内容から、R1,R2の各々の値の下限及び上限を理解することができる。

(シについて)
構成Fに記載された数値範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者が認識できる程度に発明の詳細な説明は記載されており、また、先端側シャフトの内径に関する訂正明細書【0060】の「1.00mm」という記載は、「1.10mm」の誤記と解されるから、訂正明細書には、ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径R2が1.10mmである実施例が記載されており、技術上の意義を理解することができることは、上記1-1.で検討したとおりである。

(スについて)
訂正明細書に記載された表1の実験結果は、耐キンク性及び通過性について当業者によりなされた技術的評価であって一応の妥当性を有するといえる。
そして、耐キンク性の評価や通過性の評価が「○」、「△」、「×」という実施者の主観による評価のみで、「○」と「△」との境界や、「△」と「×」との境界が不明であるとしても、それらは、訂正明細書に記載された表1の実験結果の精密さを否定するものとはいえても、実験結果の妥当性自体を否定するものとまではいえない。

(セについて)
構成Fに記載の範囲、すなわち0.45≦R1/R2≦0.65は、訂正明細書の【0041】に記載されたR1/R2の好ましい範囲に含まれており、この範囲は、訂正明細書の表1に示された実験結果から把握することができるものであるから、【0041】に記載された数値範囲の下限値及び上限値が構成Fに記載された数値範囲の下限値及び上限値と異なっているとしても、当業者であれば、構成Fを備えることの技術上の意義を理解することができるといえる。

(ソについて)
当業者であれば、訂正明細書及び図面の記載から、基端側シャフトの材質及びコアワイヤの形状以外の条件を変更した場合も、訂正明細書に記載された実施例とほぼ同様に構成Fに係る数値範囲の全ての範囲において訂正明細書に記載された所望の効果が得られることを理解するといえることは、上記1-1.で検討したとおりであるから、コアワイヤにおいて最大外径となっている箇所と吸引ルーメンにおいて最小内径となっている箇所との位置関係を限定していないとしても、当業者であれば、「0.45≦R1/R2≦0.65」という数値範囲を採用することの技術上の意義を理解することができるといえる。

(3)以上のとおり、請求人が、本件発明1が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する理由として主張する点は、いずれも理由がない。

2-2.本件発明8について
(1)請求人は、本件発明8の「0.5≦L2/L1」という記載では、L1,L2の各々の値の下限あるいは上限が不明瞭であり、発明の範囲が明確でなく、本件発明8が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する旨主張する。

(2)そこで、請求人の上記主張について検討する。
訂正明細書には、L1について「また、L1は2mm以上、10mm以下であることが好ましい。L1が2mmよりも小さい場合は、効率よく異物を吸引除去することが困難である。また、L1が10mmより大きい場合は生体内、特に屈曲した血管内を吸引カテーテルを進める場合に斜めカットした部分によって血管内壁を傷つけてしまう危険性が高くなる。」(【0047】)と記載されている。
上記記載からして、本件発明8の吸引カテーテルにおけるL1には、上限値及び下限値が存在するといえる。
そして、L1に下限値が存在すれば、0.5≦L2/L1という関係から、L2にも下限値が存在することは明らかである。
さらに、先端側シャフトの最先端部に備えられたガイドワイヤシャフトの長さには上限値が存在するから、ガイドワイヤシャフトの基端から先端側シャフトの最先端部までの長さであるL2にも上限値が存在するといえる。

(3)以上のとおり、請求人が、本件発明8が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する理由として主張する点は、理由がない。

2-3.本件発明14について
(1)請求人は、訂正後の請求項14の「曲げ弾性率が1GPa以上」という記載は、「以上」という下限のみを示す数値限定があることから、発明の範囲が明確でなく、本件発明14が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する旨主張する。

(2)そこで、請求人の上記主張について検討する。
本件発明14の吸引カテーテルは、血管内から物質を吸引除去するための吸引カテーテルであって、吸引ルーメンの内部にコアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入されるものであるから、本件発明14の吸引カテーテルの「基端側シャフトの少なくとも基端側の部分」の「曲げ弾性率」には、本件発明14の吸引カテーテルが前記機能を奏するために上限値が存在することは明らかであり、発明の範囲が明確でないとはいえない。

(3)以上のとおり、請求人が、本件発明14が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する理由として主張する点は、理由がない。

2-4.
以上のように、本件発明1、本件発明8及び本件発明14は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
したがって、本件発明1?本件発明15は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。

3.無効理由3について
(1)請求人は、訂正後の請求項1に記載された「ストレート形状」は明確でなく、本件発明1、本件発明5及び本件発明6が、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する理由として、以下の点を主張する。

ナ:訂正明細書の【0042】の記載では、コアワイヤの形状として「ストレート形状」と「スプリングワイヤ」とを区別し、【0043】の記載では、コアワイヤの形状として「ストレート形状」と「テーパー形状」とを区別し、表1においても「コアワイヤ形状」として、「ストレート」、「スプリングワイヤ」、及び「テーパー形状」で区別している。
そうすると、訂正明細書において「ストレート形状」とは、「軸線方向の全体に亘って曲がりがない形状」であって、「軸線方向の全体に亘って外径が一定の形状」であるものとしか解釈できず、「スプリングワイヤ」や「テーパ形状」が含まれるとしたら、訂正明細書における「ストレート形状」という用語は意味不明である。
これに対して、訂正後の請求項1の従属項である訂正後の請求項5には「ストレート形状」の一部として「スプリングワイヤ」が含まれるかのように記載されており、これは、「ストレート形状」とは「軸線方向の全体に亘って曲がりがない形状」であって「軸線方向の全体に亘って外径が一定の形状」であるとする解釈と明らかに矛盾する。
したがって、「ストレート形状」という記載は不明である。

ニ:訂正明細書の【0044】の記載によれば、「コアワイヤの少なくとも一部が先端側ほど柔軟である」形状には、スプリングワイヤやテーパー形状が含まれ、スプリングワイヤとテーパー形状の組み合わせも含まれ、さらにはワイヤ表面に各種の切り込みを付加する形状も含まれる。つまり、本件発明の「ストレート形状」には「コアワイヤの少なくとも一部が先端側ほど柔軟である」形状が含まれないことが明らかであり、含まれるとしたら訂正明細書において「ストレート形状」という用語は意味不明である。
これに対して、訂正後の請求項1の従属項である訂正後の請求項6には「ストレート形状」の一部として「前記コアワイヤの少なくとも一部が先端側ほど柔軟である」形状が含まれるかのように記載されており、これは、本件発明の「ストレート形状」とは「軸線方向の全体に亘って曲がりがない形状」であって「軸線方向の全体に亘って外径が一定の形状」であるとする解釈と明らかに矛盾する。
したがって、「ストレート形状」という記載は不明である。

(2)そこで、請求人の上記主張について検討する。
(ナについて)
まず、一般的語義の観点から「ストレート形状」の意味を確認すると、「ストレート」は「まっすぐなこと」を意味する(広辞苑第6版)から、「ストレート形状」は日本語として「まっすぐな形状」を意味すると解される。
また、乙第3号証?乙第5号証の記載からして、カテーテルのガイドワイヤにおいてストレートタイプのものは本件特許の出願前に周知であったといえるとともに、「ストレート形状」が「まっすぐな形状」を意味するという上記理解は、乙第3号証?乙第5号証に示される周知のまっすぐな「ストレート」タイプのものの形状と整合する。
次に、訂正明細書及び図面において、ストレート形状のコアワイヤがどのような技術的意味を有するものとして記載されているか確認する。
訂正明細書の【0042】には、「コアワイヤ101の構造、形状は本発明の効果を何ら制限しない。典型例は図5に示すストレート形状である。屈曲した部位への通過性をより向上させる観点からは、図6に示すように金属素線を巻回したスプリングワイヤであることが好ましい。この場合、スプリングワイヤを構成する素線の外径、ピッチ等は制限されない。コアワイヤ101の柔軟性を先端側ほど高めるために、スプリングワイヤのピッチを連続的あるいは段階的に変化させてもよい。また、図6には示していないがスプリングの内部にコア線を有してもよい。」と記載されている。
訂正明細書の【0042】においてストレート形状のコアワイヤの典型例を示すとされている図5には、まっすぐな形状のコアワイヤが図示されている。
してみると、訂正明細書に記載されたストレート形状のコアワイヤの典型的なものは、まっすぐな形状のコアワイヤであると解される。
そして、訂正明細書の【0042】には、図5の典型例についての記載に引き続いて「図6に示すように金属素線を巻回したスプリングワイヤであることが好ましい。この場合、スプリングワイヤを構成する素線の外径、ピッチ等は制限されない。・・・また、図6には示していないがスプリングの内部にコア線を有してもよい。」と記載され、図6にはまっすぐな形状のスプリングワイヤが図示されていることからして、訂正明細書に記載されたストレート形状のコアワイヤは、まっすぐな形状のスプリングワイヤや、まっすぐな形状のスプリングワイヤの内部にコア線を有するものを含むと解される。
ただし、訂正明細書の【0043】の記載では、コアワイヤの形状として「ストレート形状」と「テーパー形状」とが区別されているから、テーパー形状のコアワイヤは訂正明細書に記載されたストレート形状のコアワイヤには含まれないと解される。
さらに、訂正明細書の【0044】に「コアワイヤ101は先端側ほど柔軟であることが好ましい。・・・このような柔軟性を付与する手段としては、上述したようにコアワイヤ101をスプリングワイヤやテーパー形状を呈するワイヤとすることが挙げられる。他の手段としてはスプリングワイヤとテーパー形状の組み合わせやワイヤ表面に各種の切り込みを付与する等の加工が挙げられる。」と記載されていることからして、訂正明細書に記載されたストレート形状のコアワイヤは、まっすぐな形状のコアワイヤの表面に各種の切り込みを付与する等の加工を施したものも含むと解される。
してみると、「ストレート」の一般的語義、カテーテルのガイドワイヤの周知技術及び訂正明細書並びに図面の記載を総合すると、本件発明のストレート形状のコアワイヤは、まっすぐな形状のコアワイヤであって、まっすぐな形状のスプリングワイヤや、まっすぐな形状のスプリングワイヤの内部にコア線を有するもの、まっすぐな形状のコアワイヤの表面に各種の切り込みを付与する等の加工を施したものを含み、テーパー形状のコアワイヤは含まないといえる。
なお、訂正明細書の表1において「コアワイヤ形状」として、「ストレート」、「スプリングワイヤ」及び「テーパー形状」で区別されていることは、実験結果をより精密に表すためとも解されるから、このことだけでは、本件発明のストレート形状のコアワイヤについての上記理解を否定するほどの根拠とはいえない。
以上によれば、訂正明細書において「ストレート形状」とは、「軸線方向の全体に亘って曲がりがない形状」であって、「軸線方向の全体に亘って外径が一定の形状」であるものとしか解釈できないという請求人の主張は理由がなく、この理解を前提とした請求人の主張(ナ)は前提において理由を欠くものであって、採用できない。

(ニについて)
本件発明のストレート形状のコアワイヤは、まっすぐな形状のコアワイヤであって、まっすぐな形状のスプリングワイヤや、まっすぐな形状のスプリングワイヤの内部にコア線を有するもの、まっすぐな形状のコアワイヤの表面に各種の切り込みを付与する等の加工を施したものを含むことは、上記(ナについて)で検討したとおりである。
してみると、本件発明の「ストレート形状」には「コアワイヤの少なくとも一部が先端側ほど柔軟である」形状が含まれないことや、本件発明の「ストレート形状」とは「軸線方向の全体に亘って曲がりがない形状」であって「軸線方向の全体に亘って外径が一定の形状」であるとする解釈を前提とした請求人の主張(ニ)は、前提において理由を欠くものであって、採用できない。

(3)以上のとおり、本件発明1、本件発明5及び本件発明6は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
したがって、本件発明1、本件発明5及び本件発明6は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。

4.無効理由4について
4-1.本件発明1について
4-1-1.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「血管」は、各文言の意味、機能又は構成等からみて本件発明1の「血管内」に相当し、以下同様に、「塞栓、プラーク、血栓又は他の閉塞物」は「物質」に、「吸引」は「吸引除去」に、「長い管状ボディ36」は「メインシャフト」に、「吸引ルーメン42」は「吸引ルーメン」に、「ガイドワイヤ26」は「ガイドワイヤ」に、「挿入するための」は「挿通可能な」に、「ガイドワイヤルーメン40」は「ガイドワイヤルーメン」に、「基端」は「基端側」に、「アダプタ32」は「ハブ」に、それぞれ相当する。
FIG.5からみて、甲1発明の「先端38」は、棒状の形状をしているから、本件発明1の「ガイドワイヤシャフト」に相当する。
甲1発明の「前記長い管状ボディ36の最先端部にガイドワイヤ26を挿入するためのガイドワイヤルーメン40を内部に持つ先端38をそれぞれ備え」と、本件発明1の「前記先端側シャフトの最先端部にガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを内部に持つガイドワイヤシャフトをそれぞれ備え」とは、どちらも「前記メインシャフトの最先端部にガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを内部に持つガイドワイヤシャフトをそれぞれ備え」である点で共通する。
甲1発明の「前記長い管状ボディ36の基端に設けられたアダプタ32」と、本件発明1の「前記基端側シャフトの基端側に設けられたハブ」とは、どちらも「前記メインシャフトの基端側に設けられたハブ」である点で共通する。

してみると、本件発明1と甲1発明とは、本件発明1の用語を用いて表現すると、
「血管内から物質を吸引除去するための吸引カテーテルであって、前記カテーテルはメインシャフトを有し、前記メインシャフトの内部に物質を吸引除去するための吸引ルーメンを、前記メインシャフトの最先端部にガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを内部に持つガイドワイヤシャフトをそれぞれ備え、前記吸引ルーメンは前記メインシャフトの基端側に設けられたハブに連通している吸引カテーテル。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)(かっこ内は対応する甲第1号証の用語を示す。)
相違点1:本件発明1では、メインシャフトが先端側シャフトおよび基端側シャフトから構成されているのに対して、甲1発明では、メインシャフト(長い管状ボディ36)が1つのシャフトから構成されている点。

相違点2:本件発明1では、吸引ルーメンの内部に脱着可能なストレート形状のコアワイヤを有し、コアワイヤの最大外径をR1、ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であり、吸引ルーメンの内部にコアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、コアワイヤが取り出され、吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであるのに対して、甲1発明では、そのようにはなっていない点。

4-1-2.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
i.メインシャフトを先端側シャフト及び基端側シャフトから構成することに関し、訂正明細書には、「基端側シャフト104の少なくとも基端側は曲げ弾性率が1GPa以上の高弾性材料からなることが好ましい。このような高弾性材料からなるシャフトを用いることで、術者が加えた吸引カテーテルを操作する力を先端に十分に伝えることが可能である。つまり、押す力、引く力に加えて、回転させる力を充分に先端に伝達させることが容易に実現できる。・・・先端側シャフト103は吸引カテーテルの長さ方向における剛性の変化を連続的にするため、基端側シャフト104よりも低弾性材料で構成されることが好ましい。」(【0053】?【0054】)と記載されている。
訂正明細書の上記記載のように、吸引ルーメンの内部にコアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、コアワイヤが取り出され、血管内から物質が吸引除去される本件発明1の吸引カテーテルにおいて、基端側シャフト及び先端側シャフトに求められる機能は、それぞれ異なるものであるから、メインシャフトを先端側シャフト及び基端側シャフトから構成することにより、それぞれが求められる訂正明細書に記載の上記機能に応じた材料や形状とすることができるといえる。

ii.そして、甲第1号証?甲第20号証の記載事項を検討しても、吸引ルーメンの内部にコアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、コアワイヤが取り出され、血管内から物質が吸引除去される吸引カテーテルにおいて、基端側シャフト及び先端側シャフトをそれぞれが求められる訂正明細書に記載の上記機能に応じた材料や形状とするために、メインシャフトを先端側シャフト及び基端側シャフトから構成することは記載されておらず、このことを甲第1号証?甲第20号証の記載事項に基いて当業者が容易に想到することができたと解すべき根拠も見出せない。

iii.以上によれば、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

(2)相違点2について
i.審判請求書において、請求人は、以下のように主張する。
甲第1号証?甲第3号証に記載されているとおり、カテーテルの分野で耐キンク性を向上させる必要があることは本件特許の出願時において当業者にとって周知の課題(以下、第1の周知の課題ともいう)であり、当該耐キンク性を向上させる目的で、流体が流通することとなるルーメン内にコアワイヤに相当する部材を設けることは甲第2号証?甲第4号証に記載されているとおり周知技術(以下、第1の周知技術ともいう)である。
また、吸引用のカテーテルにおいて吸引効率を向上させる必要があることは一義的に導き出すことができる課題(以下、当然の課題ともいう)であり、物質を吸引して排出させるカテーテルの分野において、生体内への挿入を容易にしながら当該吸引効率を向上させる目的で、ルーメン内にコアワイヤに相当する部材を設けるとともに、挿入後に当該コアワイヤに相当する部材を取り外せるように着脱式とすることは甲第5号証?甲第8号証に記載されているとおり周知技術(以下、第2の周知技術ともいう)である。
屈曲した血管内に挿入して使用されるカテーテルの分野で通過性及び耐キンク性を向上させる必要があることは、甲第1号証?甲第3号証に記載されているとおり、本件特許の出願時において当業者にとって周知の課題(以下、第2の周知の課題ともいう)である。そして、当該通過性及び耐キンク性を向上させる目的で、コアワイヤの最大外径R1と吸引ルーメンの最小内径R2との関係を0.45≦R1/R2≦0.65の範囲のいずれかの値に設定することは甲第9号証?甲第11号証に記載されているとおり周知技術(以下、第3の周知技術ともいう)である。
以上より、甲第1号証に記載された発明において、上記第1の周知の課題を前提として上記第1の周知技術を適用することでマンドレルを吸引用のルーメンに配置するとともに、上記当然の課題を前提として上記第1の周知技術及び上記第2の周知技術を適用してそのマンドレルを着脱式とし、さらに上記第2の周知の課題を前提として上記第3の周知技術を適用することでマンドレルの最大外径R1と吸引ルーメンの最小内径R2との関係が0.45≦R1/R2≦0.65に含まれるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、本件発明1に付随した効果は、甲第1号証に記載された発明に対して、上記各周知技術を適用することに従い自ずともたらされる程度のものに過ぎない。

ii.まず、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項の一部である「前記コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であり、前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであること」の容易想到性について以下検討する。

iii.甲第2号証?甲第4号証には、その記載事項(記載事項n?y)からして、「注入カテーテル」、「血管内圧力測定用の医療機器」、「CATHETER PLACEMENT ASSEMBLY」において、流体が流通することとなるルーメン(注入カテーテル100、シャフト1、カテーテルチューブ24)内にコアワイヤに対応する部材(スタレット208、ワイヤ13、補強材36)を設けることについて記載されているものの、吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去される吸引カテーテルについては記載されていない。
甲第5号証、甲第6号証には、その記載事項(記載事項z?B)からして、「カテーテル」、「予備成形可能なカテーテル」において、コアワイヤに対応するスタイレットによりカテーテルに形状を付与することは記載されているものの、カテーテルの耐キンク性を向上させることについては記載されていない。
甲第7号証には、その記載事項(記載事項C、D)からして、食道内容物吸引孔、胃内容物吸引孔、止血圧迫用のバルーンを備えた「止血用カテーテル」においてカテーテルチューブにスタイレットを装着、抜去することについて記載されており、甲第8号証には、その記載事項(記載事項E?G)からして、胃・腸の中への薬液・栄養剤等を注入する際、又は胃液を吸引する際に使用する「カテーテル」においてカテーテルチューブにスタイレットを挿入、抜去することについて記載されているものの、甲第7号証及び甲第8号証には、吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去される吸引カテーテルについては記載されていない。
してみると、甲第1号証?甲第8号証には、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を構成する「吸引ルーメンの内部にコアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、コアワイヤが取り出され、吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去される」構成について部分的に対応する記載は存在するものの、それらを結合して上記構成とすることを示唆する記載は存在せず、甲第1号証?甲第8号証の記載及び請求人の上記主張を検討しても、甲1発明及び甲第2号証?甲第8号証に記載された技術事項並びにこれらから導出される周知技術に基いて上記構成を当業者が容易に想到することができたと解すべき根拠は見出せない。

iv.また、甲第9号証には、その記載事項(記載事項H?K)からして、「バルーンカテーテル」の第4ルーメン26とそれに挿入される補強ロッド28について記載されており、甲第10号証には、その記載事項(記載事項L?N)からして、「バルーンカテーテルを用いた生体器官拡張用器具」のシャフトチューブ32とそれに挿入される剛性付与体33について記載されており、甲第11号には、その記載事項(記載事項O?S)からして、「バルーンカテーテル」の第4ルーメン26とそれに挿入される補強ロッド28について記載されているものの、甲第1号証?甲第11号証の記載及び請求人の上記主張を検討しても、吸引ルーメン内にコアワイヤを有していない甲1発明の「吸引カテーテル」に上記第1の周知技術(流体が流通することとなるルーメン内にコアワイヤに相当する部材を設けること)を適用した上に、甲第9号証?甲第11号証に記載の「バルーンカテーテル」及び「バルーンカテーテルを用いた生体器官拡張用器具」に係る前提構成を抜きにしてルーメン(第4ルーメン26、シャフトチューブ32)とそれに挿入される部材(補強ロッド28、剛性付与体33)との径の比に係る数値のみを、さらに適用することを当業者が容易に想到することができたと解すべき根拠は見出せない。

v.以上によれば、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項の一部である「前記コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であり、前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであること」は、甲1発明及び甲第2号証?甲第11号証に記載された技術事項並びにこれらから導出される周知技術に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
したがって、仮に、請求人が主張するように、甲第1号証に記載された発明において、上記第1の周知の課題を前提として上記第1の周知技術を適用することでマンドレルを吸引用のルーメンに配置するとともに、上記当然の課題を前提として上記第1の周知技術及び上記第2の周知技術を適用してそのマンドレルを着脱式とすることが、当業者であれば容易に想到し得ることであるとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は当業者が容易に想到することができたものではない。
なお、甲第12号証?甲第20号証は、本件発明2?本件発明15に係る技術事項や吸引カテーテルについての技術常識を立証するためのものであって、その記載事項を検討しても、相違点2の容易想到性についての上記判断を覆すに足りる根拠は見出せない。

(3)以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4-2.本件発明2?本件発明15について
本件発明2?本件発明15は、本件発明1を引用し、さらにその発明特定事項を限定したものである。本件発明1が甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項を全て具備した本件発明2?本件発明15も、甲1発明、甲第3号証、甲第13号証及び甲第15号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4-3.むすび
以上のとおり、本件発明1?本件発明15は、甲1発明、甲第3号証、甲第13号証及び甲第15号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

VII.むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件発明1?本件発明15の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
吸引カテーテル
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮経管的に体内に導入され、体内に存在する物質を体外へ吸引除去するカテーテルに関し、特に体内の血管に生成した血栓や血管内に遊離したアテローマなどのデブリス(異物)を、カテーテル基端側から加える陰圧により体外に吸引除去する吸引カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管などの脈管において狭窄あるいは閉塞が生じた場合、および血栓により血管が閉塞してしまった場合は、血管の狭窄部位あるいは閉塞部位を拡張して、血管末梢側の血流を改善するために行う血管形成術(PTA:Percutaneous Transluminal Angioplasty、PTCA:Percutaneous Transluminal Coronary Angioplastyなど)は、多くの医療機関において多数の術例があり、この種の症例における手術としては一般的になっている。さらに、拡張した狭窄部の状態を保持するためのステント等も、近年多く用いられるようになってきた。
【0003】
PTA、PTCAに用いられるバルーンカテーテルは、主に血管の狭窄部位あるいは閉塞部位を拡張するために、ガイディングカテーテルとガイドワイヤとのセットで使用される。このバルーンカテーテルを用いた心臓冠状動脈における血管形成術は以下のように行われる。まずガイディングカテーテルを大腿動脈から挿入して大動脈を経て冠状動脈の入口に位置させた後、バルーンカテーテルを貫通させたガイドワイヤを血管の狭窄部位あるいは閉塞部位を越えて前進させる。続いてバルーンを狭窄部位あるいは閉塞部位に位置させた状態で膨張させて、狭窄部位あるいは閉塞部位を拡張した後、バルーンを収縮させて体外に除去する。このバルーンカテーテルは、血管の狭窄部位あるいは閉塞部位の治療に限定されず、血管内への挿入、ならびに種々の体腔、管状組織への挿入を含む多くの医療的用途に有用である。
【0004】
しかしながら、血管内の閉塞が血栓による場合、閉塞部位をバルーンカテーテルで拡張すると、血栓が血管内壁より遊離して下流側の末梢血管を閉塞させてしまう場合がある。また、血管内の狭窄部位を拡張する場合も病変部が粥状のプラークを多く含む場合などでは、バルーンカテーテルによる拡張で病変部より粥状のプラーク(アテローマ)が飛散してしまい、末梢血管を閉塞させてしまう場合がある。このように末梢血管を閉塞させてしまう場合は、閉塞部や狭窄部を拡張しても、末梢に血液が流れなくなってしまい、スローフローやノーリフローの状況に陥ってしまう。
【0005】
このような状況に陥った場合、冠状動脈などでは血流が回復するまで様子を見るのが一般的であるが、回復までに時間がかかってしまうという問題がある。また、状況に応じてニトログリセリンなどの血管拡張剤を投与して血流の回復を図ったり、ウロキナーゼなどの血栓溶解剤を局所投与して閉塞物を溶解させる血栓溶解療法が試みられることがあるが、血流が回復するまでにはやはり時間がかかるという問題がある。末梢閉塞がひどく血行動態が悪い場合は大動脈バルーンポンピング(IABP)などの補助手段も用いられる。
【0006】
また、血栓溶解療法のほかにも機械的に血栓を破砕すると同時に、カテーテルの基端側から陰圧を加えることで、血栓を体外に除去する方法が試みられてきた。
【0007】
しかしながら、カテーテル先端部で血栓を破砕するためには、カテーテル基端側から加える機械的な力を効率よくカテーテル先端側に伝える必要があることは言うまでもない。従って、カテーテルシャフトにおける力の伝達性を高めるために、カテーテルシャフトの全体は比較的硬い材料で構成され、目的とする血管内の部位までカテーテルを搬送することが困難となることが多かった。さらには、機械的な力を加えると同時に、カテーテル基端側から陰圧を加える必要があるために装置が大掛かりになるという問題があり、普及するには至らなかった。
【0008】
一方で、手元側から陰圧を加えることによって血栓を体外に吸引除去する簡単な構造のカテーテルも、現在臨床でその効果が確認されつつある。しかしながら、吸引するための吸引ルーメンの断面積を十分確保できず、吸引能力の低いものしか得られていない。この理由は、カテーテルが血管内の目的とする部位までガイドワイヤに沿って搬送される構造であることに起因する。すなわち、ガイドワイヤに追随するガイドワイヤルーメンを吸引ルーメンの内部に設けているために十分な吸引ルーメンを確保できないのである。
【0009】
また、ガイドワイヤルーメンを吸引ルーメンの外側に有する構造の場合、必然的に吸引カテーテルの外径は大きくなる。従って、併用するガイディングカテーテルは内径を確保するために外径が大きなものとなり、患者の負担が格段に大きくなってしまうという問題が生じる。
【0010】
加えて、これらのガイドワイヤルーメンは通常吸引カテーテルの最先端から30cm程度の長さを有しているためカテーテルシャフト全体が硬くなってしまい、屈曲した血管内への挿入性が悪いという問題点も生じている。
【0011】
特許文献1にはガイドワイヤなしで血管内に導入可能なカテーテルが開示されている。該カテーテルは、薬液、造影剤等の注入路を有するカテーテルの基端にハブと着脱自在なハブを固着してなる超弾性線とを具備していることを特徴とする。ハブからの薬液、造影剤等の注入速度を増大させるため、超弾性線をカテーテルから抜去して内部注入路の有効内腔を大きくすることができる。しかしながら、このような構成のカテーテルを吸引カテーテルとして通常のPTCA手技において使用する場合、ガイドワイヤに追随して患部に到達させることは不可能であり、術者による操作性が低いことが問題として指摘されている。
【特許文献1】特公平3-74590号公報
【発明の開示】
【0012】
これらの状況を鑑み、本発明が解決しようとするところは、吸引ルーメンを最大限確保し、かつガイドワイヤに追随して目的部位まで搬送でき、屈曲した血管にも十分追随していけるだけの柔軟性を実現させると同時に、体外からガイディングカテーテルに挿入させる際のカテーテルシャフトのキンクの可能性を低減させ、良好な操作性を実現可能な吸引カテーテルを提供することにある。
【0013】
発明者らが鋭意検討した結果、以下の吸引カテーテルを構成することで問題点を解決可能なことを見出し、当該発明を完成させるに至った。
【0014】
つまり、血管内から物質を吸引除去するための吸引カテーテルであって、前記カテーテルは先端側シャフトおよび基端側シャフトから構成されるメインシャフトを有し、前記メインシャフトの内部に物質を吸引除去するための吸引ルーメンを、前記先端側シャフトの最先端部にガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを内部に持つガイドワイヤシャフトをそれぞれ備え、前記吸引ルーメンは前記基端側シャフトの基端側に設けられたハブに連通し、前記吸引ルーメンの内部に脱着可能なストレート形状のコアワイヤを有し、前記コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であり、前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであることを特徴とする吸引カテーテルを構成した。
【0015】
また、本発明は、前記コアワイヤの基端側にコネクタが固定され、前記コネクタが前記ハブの基端側に脱着可能に取り付けられている吸引カテーテルに関する。
【0016】
また、本発明は、前記コネクタが脱着可能に取り付けられた状態で、前記コネクタを介して前記吸引ルーメン内をフラッシュ可能である吸引カテーテルに関する。
【0017】
また、本発明は、前記コアワイヤ先端が前記吸引ルーメンの先端よりも基端側に位置する吸引カテーテルに関する。
【0018】
また、本発明は、前記コアワイヤが金属素線を巻回したスプリングワイヤである吸引カテーテルに関する。
【0019】
【0020】
また、本発明は、前記コアワイヤの少なくとも一部が先端側ほど柔軟なワイヤである吸引カテーテルに関する。
【0021】
また、本発明は、前記コアワイヤの材質がステンレス、Co-Cr合金、Ni-Ti合金、Ni-Ti-Fe合金、Ni-Ti-Cu合金、Ni-Ti-Cr合金、Ni-Ti-V合金、Ni-Ti-Co合金、Ni-Ti-Nb合金、Ni-Ti-Pd合金、Ni-Ti-Cu-Cr合金またはこれらの複合体からなる吸引カテーテルに関する。
【0022】
また、本発明は、前記先端側シャフトの先端が斜め方向にカットされており、前記ガイドワイヤシャフトの先端部が該斜めカットされた前記先端側シャフトの最先端部に位置するか、もしくは該最先端部よりも先端側に突出して位置しており、前記先端側シャフトが斜めカットされている部分のカテーテル長手軸方向の長さをL1とし、前記ガイドワイヤシャフトの基端から前記先端側シャフトの最先端部までの長さをL2とした場合に、0.5≦L2/L1である吸引カテーテルに関する。
【0023】
また、本発明は、前記L1が、2mm≦L1≦10mmである吸引カテーテルに関する。
【0024】
また、本発明は、前記ガイドワイヤシャフトに、X線不透過マーカーを有する吸引カテーテルに関する。
【0025】
また、本発明は、前記基端側シャフトがポリイミドから構成される吸引カテーテルに関する。
【0026】
また、本発明は、前記基端側シャフトが金属編組と高分子材料を組み合わせた編組チューブから構成される吸引カテーテルに関する。
【0027】
また、本発明は、前記編組チューブが吸引ルーメンを確定する内層、内層の外面に設けられた金属編組、金属編組の外面に設けられた外層を有する吸引カテーテルに関する。
【0028】
また、本発明は、前記基端側シャフトの少なくとも基端側の部分の曲げ弾性率が1GPa以上である吸引カテーテルに関する。
【0029】
また、本発明は、前記先端側シャフトの少なくとも一部に湿潤環境下で潤滑性を示す親水性コーティングが付与されている吸引カテーテルに関する。
【0030】
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明にかかる吸引カテーテルの実施形態について図を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
本発明による吸引カテーテルは、図1から図2に典型例を示したように先端側シャフト103および基端側シャフト104から構成されるメインシャフト102を有し、メインシャフト102の内部に物質を吸引除去するための吸引ルーメン100を、先端側シャフト103の最先端部にガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメン110を内部に持つガイドワイヤシャフト112をそれぞれ備え、吸引ルーメン100は基端側シャフト104の基端側に設けられたハブ106に連通し、吸引ルーメン100の内部に脱着可能なコアワイヤ101を有することを特徴とする。コアワイヤ101を吸引ルーメン100の内部に設けることで、吸引カテーテルを体外からガイディングカテーテルに挿入させる際のカテーテルシャフトのキンクの可能性を効果的に低減させ、良好な操作性を実現することができる。また、ガイドワイヤルーメン110を有するため、ガイドワイヤに沿って屈曲した部位へも容易に吸引カテーテルを位置させることができる。
【0033】
吸引ルーメン100の内部にコアワイヤ101を設けると、吸引ルーメン100の断面積が小さくなるため十分な吸引量を実現することはできない。しかしながら、本発明においてはコアワイヤ101を脱着可能に設けているため、吸引時には図3から図4に典型例を示したようにコアワイヤ101を取り外すことが可能であり、従って十分な吸引量が容易に実現される。コアワイヤ101が固定された構造の吸引カテーテルの場合、本発明の吸引カテーテルと同様の吸引量を実現させようとすると吸引ルーメン100の断面積を大きくすることで補うほかになく、結果としてカテーテルシャフト外径の増大がもたらされる。カテーテルシャフト外径の増大により吸引カテーテル挿入時に使用するガイディングカテーテルやシースのサイズが大きくなるため、吸引治療を受ける患者の負担が増加し好ましくない。
【0034】
本発明による吸引カテーテルは脱着可能なコアワイヤ101を有することを特徴とするのは上述の通りであるが、コアワイヤ101を脱着可能とする機構は特に制限されない。しかし、コアワイヤ101脱着時の操作性を考慮に入れると、前記コアワイヤ101の基端側にコネクタ107が固定され、前記コネクタ107が前記ハブ106の基端側に脱着可能に取り付けられていることが好ましい。前記コアワイヤ101の基端側とコネクタ107の固定方法は本発明の効果を何ら制限するものではなく、接着等の方法を使用可能であり、使用する接着剤の種類等も制限されない。また、前記コネクタ107と前記ハブ106の基端側の接続方法も脱着可能であれば制限されないが、ひとつの好適な実施形態として、ハブ106の基端側をメス型のルアー形状とし、コネクタ107をオス型のルアー形状とすることで、コアワイヤ101の脱着を確実かつ容易に実現できる。さらに、ハブ106の基端側をメス型のルアー形状とすることで、シリンジなどを用いて吸引ルーメン100に簡便に陰圧を付与することも可能になる。
【0035】
上記のようにコアワイヤ101の基端側にコネクタ107が固定され、前記コネクタ107が前記ハブ106の基端側に脱着可能に取り付けられている場合、前記コネクタ107を介して前記吸引ルーメン100内をフラッシュすることが可能な構造とすることができる。本発明にかかる吸引カテーテルを使用する場合、体内に挿入する前の状態において吸引ルーメン100内部をヘパリン加生理食塩水等の適当な溶液でフラッシュする必要がある。フラッシュすることで体内、特に血管内に挿入した場合の血栓形成を予防できる。通常、フラッシュはシリンジを用いて行われる。従って、コネクタ107の基端側をメス型のルアー形状とすることで、コアワイヤ101を取り付けた状態でフラッシュが可能となり、フラッシュ後速やかに体内へ挿入し治療を開始できる。
【0036】
ガイドワイヤルーメン110と吸引ルーメン100の位置関係は本発明の効果を制限するものではない。図1に示すようにガイドワイヤルーメン110と吸引ルーメン100は互いに独立に存在していてもよく、図2に示すようにガイドワイヤルーメン110の一部が吸引ルーメン100の内部に位置してもよい。また、ガイドワイヤルーメン110のすべてが吸引ルーメン100の内部に位置してもかまわない。ただし、ガイドワイヤルーメン110の一部またはすべてが吸引ルーメン100の内部に位置する場合、互いに独立に存在する場合と比較して吸引ルーメン100の断面積は小さくなる。特に吸引ルーメン100の内部に存在するガイドワイヤルーメン110の吸引カテーテルの軸方向長さが長くなる場合は吸引量の減少につながるため、吸引ルーメン100の内部に位置するガイドワイヤルーメン110の長さは短いほうが好ましい。一方で、ガイドワイヤルーメン110と吸引ルーメン100が独立で存在する場合、ガイドワイヤに沿って吸引カテーテルを挿入あるいは抜去する際にガイドワイヤシャフト112が先端側シャフト103から剥離する危険性が高くなる。ガイドワイヤシャフト112と先端側シャフト103の接合部分を他の部材を用いて補強することも可能であるが、その場合、該接合部分の外径が著しく増加することになる。このように、ガイドワイヤルーメン110と吸引ルーメン100の位置関係により、吸引性能やカテーテルの安全性が大きく変化するため、吸引カテーテルが目的とする治療部位、使用方法、要求される吸引量、吸引対象となる物質等を考慮に入れ適宜設計可能であることは当業者には自明である。
【0037】
ガイドワイヤシャフト112の材質はガイドワイヤとの良好な摺動性を確保するため、少なくとも内面はポリオレフィン、特にポリエチレンから構成されることが好ましい。
【0038】
先端側シャフト103とガイドワイヤシャフト112の接合方法は本発明の効果を何ら制限しない。すなわち、先端側シャフト103とガイドワイヤシャフト112が溶着可能な材料種の組み合わせである場合は、溶着によって接合することが可能である。また、溶着によって十分な接合強度が発現されない材料種の組み合わせである場合は、接着剤を用いて接着してもよい。この場合、使用する接着剤の化学種は特に限定されず、シアノアクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の接着剤が好適に使用できる。また、接着剤の硬化形式も何ら制限されず、吸水硬化型、2液混合硬化型、光硬化型等の接着剤が好適に使用できる。難接着性の材料から構成される場合には、酸素プラズマやコロナ放電、シランカップリング剤等により表面改質を行った上で接着してもよい。
【0039】
コアワイヤ101の先端は吸引ルーメン100の先端よりも基端側に位置することが好ましい。吸引ルーメン100の先端よりもコアワイヤ101の先端が飛び出していると、挿入時に生体内を損傷させる可能性が高く危険である。また、コアワイヤ101を一度取り外して吸引治療を行った後、別な部位を治療するために吸引カテーテルを移動させる必要性が生じ、コアワイヤ101を吸引ルーメン100の内部に取り付ける場合にもコアワイヤ101による生体内損傷の可能性が極めて高い。
【0040】
コアワイヤ101の先端の位置は吸引ルーメン100の先端よりも基端側であれば、本発明の効果を一切制限しない。挿入時のカテーテルシャフトのキンクの有無、ガイドワイヤに沿って吸引カテーテルを挿入あるいは移動させるときの操作性、吸引カテーテル全体の硬さのバランス等を考慮に入れてコアワイヤ101の先端の位置を決定できる。
【0041】
コアワイヤ101の最大外径109をR1、吸引ルーメン100の最小直径108をR2とする場合、R1/R2は0.3以上、0.9以下であることが好ましい。R1/R2が0.3よりも小さい場合、吸引ルーメン100に対してコアワイヤ101が細すぎるため、コアワイヤ101による挿入時の折れ防止効果は十分発揮されない。R1/R2が0.9よりも大きい場合は吸引カテーテル全体が硬くなり、屈曲した部位を通過させることが極めて困難となる。R1/R2は0.4以上、0.7以下であることがより好ましい。
【0042】
コアワイヤ101の構造、形状は本発明の効果を何ら制限しない。典型例は図5に示すストレート形状である。屈曲した部位への通過性をより向上させる観点からは、図6に示すように金属素線を巻回したスプリングワイヤであることが好ましい。この場合、スプリングワイヤを構成する素線の外径、ピッチ等は制限されない。コアワイヤ101の柔軟性を先端側ほど高めるために、スプリングワイヤのピッチを連続的あるいは段階的に変化させてもよい。また、図6には示していないがスプリングの内部にコア線を有してもよい。
【0043】
図5には典型例としてストレート形状を示したが、図7に示すようなテーパー形状も好適に使用できる。このようなテーパー形状を呈するワイヤを使用する場合、テーパー形状を制御することで吸引カテーテルの柔軟性を制御可能である。
【0044】
コアワイヤ101は先端側ほど柔軟であることが好ましい。コアワイヤ101の柔軟性を高めることで、治療部位が屈曲している場合や屈曲している部位を越えなければ治療部位に到達できない場合等における吸引カテーテルの通過性を高めることが可能である。このような柔軟性を付与する手段としては、上述したようにコアワイヤ101をスプリングワイヤやテーパー形状を呈するワイヤとすることが挙げられる。他の手段としてはスプリングワイヤとテーパー形状の組み合わせやワイヤ表面に各種の切り込みを付与する等の加工が挙げられる。
【0045】
コアワイヤ101の材質は吸引カテーテルのキンクを防止するという目的を考慮すると金属であることが好ましい。耐腐食性、抗血栓性等の観点からステンレス、Co-Cr合金であることが好ましい。また、超弾性合金を使用してコアワイヤ101そのもののキンクを防止してもよい。このような超弾性合金として、Ni-Ti合金、Ni-Ti-Fe合金、Ni-Ti-Cu合金、Ni-Ti-Cr合金、Ni-Ti-V合金、Ni-Ti-Co合金、Ni-Ti-Nb合金、Ni-Ti-Pd合金、Ni-Ti-Cu-Cr合金が好適に使用できる。
【0046】
先端側シャフト103の先端は斜め方向にカットされていることが好ましい。斜め方向にカットすることで吸引ルーメン100の入り口を広く確保し、吸引効率を上げることが可能となる。先端側シャフトが斜めカットされている部分のカテーテル軸方向の長さをL1、ガイドワイヤシャフト112の基端から先端側シャフト103の最先端部までの長さをL2とする場合に、L2/L1は0.5以上であることが好ましい。L2/L1が0.5よりも小さい場合、ガイドワイヤシャフト112と先端側シャフト103の接合部の面積が小さくなり、ガイドワイヤシャフト112が先端側シャフト103から剥離する危険性が高くなる。
【0047】
また、L1は2mm以上、10mm以下であることが好ましい。L1が2mmよりも小さい場合は、効率よく異物を吸引除去することが困難である。また、L1が10mmより大きい場合は生体内、特に屈曲した血管内を吸引カテーテルを進める場合に斜めカットした部分によって血管内壁を傷つけてしまう危険性が高くなる。斜めカットした部分は、生体内挿入時や吸引治療時の生体内の損傷を抑えるため、面取りを行い端面を滑らかに加工してもよい。面取りの方法は、加熱により端面を溶融させる方法や機械的に研磨する方法が使用可能であり、これらの方法に限定されるものではない。
【0048】
本発明にかかる吸引カテーテルはガイドワイヤシャフト112にX線不透過マーカー111を有することが好ましい。この場合、X線不透過マーカー111は吸引ルーメン100の先端の位置が確認できる部位に位置することがより好ましい。X線不透過マーカー111により、吸引カテーテル挿入時や吸引治療時に吸引ルーメン100の先端の位置を確認可能であり、先端側シャフト103の先端斜めカット部位による生体内の損傷のリスクが低減される。
【0049】
X線不透過マーカー111は十分なX線不透過性を有する材料であれば材料種は問わない。好ましくは金属材料であり、金、銀、白金、タンタル、イリジウム、タングステン、それらの合金等が使用可能である。また、X線不透過マーカー111の構造も本発明の効果を制限するものではなく、リング形状でも編組形状でもよく、それ以外の構造でもよい。X線不透過マーカー111の固定方法も限定されるものではない。
【0050】
基端側シャフト104はポリイミドあるいは金属素線と高分子材料を組み合わせた編組チューブから構成されることが好ましい。ポリイミドは引張強度、引張降伏強度、圧縮強度に優れるため、シャフトを薄肉化可能である。また、編組チューブは金属素線の形状、素線の数量、ピッチ、使用する高分子材料の種類を選定することで、ポリイミドの場合と同様にシャフトを薄肉化可能である。シャフトの薄肉化により吸引ルーメン100の大径化が可能となり、吸引能力を大幅に向上させることができる。
【0051】
ここで、前記編組チューブは吸引ルーメン100を確定する内層、内層の外面に設けられた金属編組、金属編組の外面に設けられた外層を有することが好ましい。このような二層構造にすることにより、編組チューブの物性をより細かく制御可能になる。一例を挙げると内層にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂、高密度ポリエチレンなどを使用することで、吸引ルーメン100内部に血栓やアテローマの付着を抑制し、効率よく吸引することが可能となる。また、外層にポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマーなどのエラストマーを使用することで、編組チューブの強度や柔軟性を制御できる。
【0052】
編組チューブを構成する金属編組の材質や構造は本発明の効果を制限するものではなく、様々な材質や構造が利用可能である。すなわち、SUS304、SUS316などのステンレス鋼、バネ鋼、ピアノ線、オイルテンパー線、Co-Cr合金、Ni-Ti合金等を円、楕円、四角形等各種の断面形状に加工した金属素線を1本持あるいは複数本持で編組に加工したものを使用することができる。また、ひとつの編組を構成する金属素線の本数も何ら制限を受けない。
【0053】
また、基端側シャフト104の少なくとも基端側は曲げ弾性率が1GPa以上の高弾性材料からなることが好ましい。このような高弾性材料からなるシャフトを用いることで、術者が加えた吸引カテーテルを操作する力を先端に十分に伝えることが可能である。つまり、押す力、引く力に加えて、回転させる力を充分に先端に伝達させることが容易に実現できる。ステンレス鋼、Co-Cr合金、Ni-Ti合金等の金属材料、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等の樹脂材料が好適に使用され、これらの複合材料であってもかまわない。
【0054】
先端側シャフト103は吸引カテーテルの長さ方向における剛性の変化を連続的にするため、基端側シャフト104よりも低弾性材料で構成されることが好ましい。好適な材料構成として、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。先端側シャフト103と基端側シャフト104の接合方法は特に制限されず、溶着、接着等の方法が使用可能である。
【0055】
基端側シャフト104とハブ106の剛性の差を緩和することを目的とした部材であるストレインリリーフ105やハブ106の材質は本発明の効果を何ら制限するものではないが、成型加工性の観点から樹脂材料であることが好ましい。
【0056】
先端側シャフト103の少なくとも一部には湿潤環境下で潤滑性を示す親水性コーティングが付与されていることが好ましい。特に、ガイドワイヤシャフト112を備えた構造の吸引カテーテルの場合、吸引ルーメン100をできるだけ大きくすると先端側シャフト103の外径は大きくなる。従って、先端側シャフト103が原因となって、吸引カテーテルを特に血管内に挿入する場合に血管内壁との摺動抵抗が大きくなる可能性がある。従って、先端側シャフト103の少なくとも一部には親水性コーティングが付与され、摺動抵抗を軽減させることが好ましい。もちろん、先端側シャフト103の全体、あるいは基端側シャフト104の一部あるいは全体にも親水性コーティングを施してもよい。
【0057】
親水性コーティングの方法、材質は特に本発明の効果を制限するものではなく、使用する先端側シャフト103、基端側シャフト104やガイドワイヤシャフト112の材質に合わせて適宜選択可能である。例を挙げると、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性のポリマーが使用できる。また、各シャフトの長さ方向で親水性コーティングの厚さ、材質を調整することで摺動抵抗を漸次増減するように調整してもよい。
【0058】
本発明にかかる吸引カテーテルの使用方法は、吸引ルーメン100の内部にコアワイヤ101が存在する状態で生体内に挿入した後、コアワイヤ101を取り外し、吸引ルーメン100に陰圧を付与することで生体内から物質を吸引除去する方法である。この方法において、吸引ルーメン100に陰圧を付与する手段は制限されない。ロックつきシリンジ等を用い手動で陰圧を付与してもよく、ポンプ等を用いて自動で陰圧を付与してもよい。
【0059】
〔実施例〕
以下に本発明の実施例及び比較例について詳細に説明する。
【0060】
(実施例1)
ポリアミド酸のワニスを用いたディッピング成形により外径1.30mm、内径1.10mm、長さ1100mmのポリイミドチューブを作製し、基端側シャフトとした。低密度ポリエチレン(LF480M、日本ポリケム株式会社)を用いて押出成形により外径1.30mm、内径1.00mm、長さ300mmのチューブを作製し、先端側シャフトとした。基端側シャフトの一端を加熱延伸して減径し、該減径部分を先端側シャフト内に挿入し、2液混合型ウレタン接着剤(ニッポラン4235、コロネート4403、日本ポリウレタン工業株式会社)を用いて接着固定し、メインシャフトを得た。先端側シャフトは難接着性の材料であるため、接着前に酸素プラズマ処理を行った。
【0061】
該先端側シャフトの最先端部分は、カテーテル軸方向の長さL1が2mmになるように斜めにカットした。基端側シャフトの基端にポリカーボネート(Makrolon2658、Bayer株式会社)を用いて射出成形により作製したハブおよびポリアミドエラストマー(PEBAX5533SA01、elf atochem社)を用いて射出成形により作製したストレインリリーフを2液混合型ウレタン系接着剤(ニッポラン4235、コロネート4403、日本ポリウレタン工業株式会社)により接着固定した。
【0062】
高密度ポリエチレン(HY540、日本ポリケム株式会社)を用いて押出成形により外径0.60mm、内径0.42mm、長さ10mmのチューブを作製し、中央に白金-タングステン合金(タングステン含量8wt%)からなる外径0.72mm、内径0.65mm、長さ1mmのX線不透過マーカーをかしめにより付与し、ガイドワイヤシャフトとした。このガイドワイヤシャフトと先端側シャフトをL2が1mm、かつガイドワイヤシャフトが先端側シャフトの外側に位置するように配置し、熱溶着により接合した。接合時には、ガイドワイヤルーメンと吸引ルーメンを確保するために両方のシャフト内部にマンドレルを挿入した。
【0063】
SUS304合金により作製した外径0.605mm、長さ1300mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした。コアワイヤの一端にポリカーボネート(Makrolon2658、Bayer株式会社)を用いて射出成形により作製したコネクタを2液混合型ウレタン接着剤(ニッポラン4235、コロネート4403、日本ポリウレタン工業株式会社)を用いて接着した。コネクタが接着されていない側からハブを通してコアワイヤを挿入し、ハブとコネクタを締め込んで固定したものを吸引カテーテルとした。
【0064】
(実施例2)
SUS304合金により作製した外径0.715mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした以外は実施例1と同様に作製した。
【0065】
(実施例3)
ガイドワイヤシャフトが先端側シャフトの内部に位置するように配置したこと、Ni-Ti合金により作製した外径0.495mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした以外は実施例1と同様に作製した。
【0066】
(参考例4)
SUS304合金から作製した外径0.385mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした以外は実施例3と同様に作製した。
【0067】
(参考例5)
Ni-Ti合金から作製した外径0.880mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした以外は実施例3と同様に作製した。
【0068】
(参考例6)
SUS304合金から作製した基端側外径0.605mm、先端側外径0.385mm、テーパー部長さ600mmの形状を有するワイヤをコアワイヤとした以外は実施例1と同様に作製した。
【0069】
(実施例7)
SUS304合金から作製した外径0.605mmのスプリングワイヤ(0.300mmのコア線の周囲に0.150mmの素線を密巻)をコアワイヤとした以外は実施例1と同様に作製した。
【0070】
(実施例8)
SUS304合金から作製した0.10mm×0.03mmの金属素線を1本持・16打で加工した金属編組を用い、外径1.30mm、内径1.10mm、長さ1100mmの編組チューブを作製した。内層はポリテトラフルオロエチレン(ポリフロンF-207、ダイキン工業株式会社)、外層はポリアミドエラストマー(PEBAX7233SA01、elf atochem社)を使用した。作製した編組チューブを基端側シャフトとした。ポリアミドエラストマー(PEBAX7233SA01、elf atochem社)を用いて押出成形により外径0.60mm、内径0.42mm、長さ10mmのチューブを作製し、中央に白金-タングステン合金(タングステン含量8wt%)からなる外径0.72mm、内径0.65mm、長さ1mmのX線不透過マーカーをかしめにより付与し、ガイドワイヤシャフトとした以外は実施例1と同様に作製した。
【0071】
(参考例9)
SUS304合金から作製した外径0.275mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした以外は実施例1と同様に作製した。
【0072】
(参考例10)
SUS304合金から作製した外径1.05mmのストレート形状のワイヤをコアワイヤとした以外は実施例1と同様に作製した。
【0073】
(比較例1)
コアワイヤを使用しない以外は実施例1と同様に作製した。
【0074】
(挿入時の耐キンク性、屈曲部の通過性評価)
図8に示すように、37℃の生理食塩水を満たした水槽113中に模擬大動脈115およびガイディングカテーテル116を配置し、ヘモスタックバルブ117をガイディングカテーテル116に固定した。ガイディングカテーテル116の先端は心臓冠動脈を模擬した屈曲プレート114に接続し、ガイディングカテーテルの内部には外径0.014インチのガイドワイヤ123をあらかじめ挿通しておいた。図9に示すように屈曲プレート114にはポリエチレン管118が模擬冠動脈として配置され、ポリエチレン管118は屈曲部119と直線部120を有する。屈曲部119の曲率半径は15mm、直線部120の長さは80mmとした。また、ポリエチレン管118の外径121は5mm、内径122は3mmとした。実施例(参考例)および比較例の吸引カテーテルをヘモスタックバルブ117を通じてガイディングカテーテル116内のガイドワイヤ123に沿って挿入する際のキンクの発生の有無並びに屈曲部119の通過性を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
表1中、耐キンク性の結果において、○は耐キンク性が良好なことを、△は耐キンク性があまり良くないことを、×は耐キンク性が悪いことを示す。また表1中、通過性の結果において、○は通過性が良好なことを、△は通過性があまり良くないことを、×は通過性が悪いことを示す。
【0076】
【表1】

【0077】
本発明にかかる実施例(参考例)1から8では、吸引カテーテルのキンクの発生はほとんど認められず、屈曲部に対しても比較的良好な通過性を示した。
【0078】
また、実施例(参考例)1から3および6から8においては、吸引カテーテルのキンク発生が全く認められないばかりか、屈曲部に対する通過性が極めて良好であることが明らかになった。
【0079】
一方、比較例1については、吸引カテーテルとして十分な性能を発揮しているとは言い難い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のごとく、本発明によれば、生体内から物質を吸引除去するための吸引カテーテルであって、前記カテーテルは物質を吸引除去するための吸引ルーメンを備え、前記吸引ルーメンは前記カテーテルの基端側に設けられたハブに連通し、前記吸引ルーメンの内部に脱着可能なコアワイヤを有することを特徴とする吸引カテーテルを容易に提供することが可能であり、屈曲した血管にも十分追随していけるだけの柔軟性を実現させると同時に、体外からガイディングカテーテルに挿入させる際のカテーテルシャフトのキンクの可能性を低減させ、良好な操作性をもたらす点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明にかかる吸引カテーテルの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる吸引カテーテルの実施形態の別な一例を示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示した吸引カテーテルからコアワイヤを取り外した際の断面図である。
【図4】図4は、図2に示した吸引カテーテルからコアワイヤを取り外した際の断面図である。
【図5】図5は、本発明にかかる吸引カテーテルにおけるコアワイヤの実施形態の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明にかかる吸引カテーテルにおけるコアワイヤの実施形態の別な一例を示す断面図である。
【図7】図7は、参考例にかかる吸引カテーテルにおけるコアワイヤの実施形態の一例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明にかかる吸引カテーテルの耐キンク性および屈曲部通過性評価方法を示す模式図である。
【図9】図9は、図8における屈曲プレートの拡大図である。
【図10】図10は、本発明におけるL1とL2の一例である。
【符号の説明】
【0082】
図中、100は吸引ルーメンを、101はコアワイヤを、102はメインシャフトを、103は先端側シャフトを、104は基端側シャフトを、105はストレインリリーフを、106はハブを、107はコネクタを、108は吸引ルーメン最小内径を、109はコアワイヤ最大外径を、110はガイドワイヤルーメンを、111はX線不透過マーカーを、そして112はガイドワイヤシャフトを表す。
【0083】
また図中、113は水槽を、114は屈曲プレートを、115は模擬大動脈を、116はガイディングカテーテルを、そして117はヘモスタックバルブを表す。さらに図中、118はポリエチレン管を、119は屈曲部を、120は直線部を、121はポリエチレン管の外径を、122はポリエチレン管の内径を、そして123はガイドワイヤを表す。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内から物質を吸引除去するための吸引カテーテルであって、前記カテーテルは先端側シャフトおよび基端側シャフトから構成されるメインシャフトを有し、前記メインシャフトの内部に物質を吸引除去するための吸引ルーメンを、前記先端側シャフトの最先端部にガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを内部に持つガイドワイヤシャフトをそれぞれ備え、前記吸引ルーメンは前記基端側シャフトの基端側に設けられたハブに連通し、前記吸引ルーメンの内部に脱着可能なストレート形状のコアワイヤを有し、前記コアワイヤの最大外径をR1、前記ハブより先端側の吸引ルーメンの最小内径をR2とする場合に、0.45≦R1/R2≦0.65であり、前記吸引ルーメンの内部に前記コアワイヤが存在する状態でガイディングカテーテルを介して血管内に挿入された後、前記コアワイヤが取り出され、前記吸引ルーメンに陰圧を付与することで血管内から物質が吸引除去されるものであることを特徴とする吸引カテーテル。
【請求項2】
前記ガイドワイヤの基端側にコネクタが固定され、前記コネクタが前記ハブの基端側に脱着可能に取り付けられたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項3】
前記コネクタが前記ハブの基端側の脱着可能に取り付けられた状態で、前記コネクタを介して前記吸引ルーメン内をフラッシュ可能であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の吸引カテーテル。
【請求項4】
前記コアワイヤ先端が前記吸引ルーメンの先端よりも基端側に位置することを特徴とする請求の範囲第1項から第3項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項5】
前記コアワイヤが金属素線を巻回したスプリングワイヤであることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項6】
前記コアワイヤの少なくとも一部が先端側ほど柔軟であることを特徴とする請求の範囲第1項から第5項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項7】
前記コアワイヤの材質がステンレス、Co-Cr合金、Ni-Ti合金、Ni-Ti-Fe合金、Ni-Ti-Cu合金、Ni-Ti-Cr合金、Ni-Ti-V合金、Ni-Ti-Co合金、Ni-Ti-Nb合金、Ni-Ti-Pd合金、Ni-Ti-Cu-Cr合金またはこれらの複合体からなることを特徴とする請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項8】
前記先端側シャフトの先端が斜め方向にカットされており、前記ガイドワイヤシャフトの先端部が該斜めカットされた前記先端側シャフトの最先端部に位置するか、もしくは該最先端部よりも先端側に突出して位置しており、前記先端側シャフトが斜めカットされている部分のカテーテル長手軸方向の長さをL1とし、前記ガイドワイヤシャフトの基端から前記先端側シャフトの最先端部までの長さをL2とした場合に、0.5≦L2/L1であることを特徴とする請求の範囲第1項から第7項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項9】
前記L1が、2mm≦L1≦10mmであることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の吸引カテーテル。
【請求項10】
前記ガイドワイヤシャフトに、X線不透過マーカーを有することを特徴とする請求の範囲第1項から第9項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項11】
前記基端側シャフトがポリイミドから構成されることを特徴とする請求の範囲第1項から第10項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項12】
前記基端側シャフトが金属編組と高分子材料を組み合わせた編組チューブから構成されることを特徴とする請求の範囲第1項から第10項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項13】
前記編組チューブが吸引ルーメンを確定する内層、内層の外面に設けられた金属編組、金属編組の外面に設けられた外層を有することを特徴とする請求の範囲第12項に記載の吸引カテーテル。
【請求項14】
前記基端側シャフトの少なくとも基端側の部分の曲げ弾性率が1GPa以上であることを特徴とする請求の範囲第1項から第13項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
【請求項15】
前記先端側シャフトの少なくとも一部に湿潤環境下で潤滑性を示す親水性コーティングが付与されていることを特徴とする請求の範囲第1項から第14項のいずれかに記載の吸引カテーテル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-07-26 
結審通知日 2010-07-28 
審決日 2010-08-10 
出願番号 特願2005-515281(P2005-515281)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A61M)
P 1 113・ 537- YA (A61M)
P 1 113・ 536- YA (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門前 浩一  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 吉澤 秀明
蓮井 雅之
登録日 2006-12-22 
登録番号 特許第3894224号(P3894224)
発明の名称 吸引カテーテル  
代理人 柳野 隆生  
代理人 関口 久由  
代理人 山田 強  
代理人 柳野 隆生  
代理人 中川 正人  
代理人 関口 久由  
代理人 森岡 則夫  
代理人 安藤 悟  
代理人 森岡 則夫  
代理人 中川 正人  

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