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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1252060
審判番号 不服2011-1949  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-27 
確定日 2012-02-10 
事件の表示 特願2007-242029「眼鏡型画像表示装置及び画像表示装置付き眼鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 9日出願公開、特開2009- 75195〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年 9月19日の出願であって、平成22年 6月29日付けで拒絶理由が通知され、同年 8月25日付けで手続補正書が提出されたが、同年10月20日付けで拒絶査定され、これに対し、平成23年 1月27日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正書が提出され、その後、当審の審尋に付されたが、これに対する回答はなかったものである。

第2 平成23年 1月27日付け手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年 1月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正による請求項1についての補正は以下のとおりのものである。

本件補正前に、
「【請求項1】
少なくとも一方の眼鏡レンズの一部に溝が形成されており、前記溝中に使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下である表示バーが挿入されており、前記表示バーは、中空の筒部材あるいはロッド状の透明部材を備え、前期筒部材あるいは透明部材はその後端から入射した表示光を長手方向に導いてその先端に導く光路を形成するものであり、前記筒部材あるいは透明部材の先端近傍には反射部材が配置され、かつ、前記筒部材あるいは透明部材の先端には前記反射部材で光路が曲げられた表示光を観察者眼球に投影する接眼窓を備えており、前記接眼窓近傍又は前記筒部材あるいは透明部材の後端から先端に至る光路中に接眼光学系を備えていることを特徴とする眼鏡型画像表示装置。」(平成22年 8月25日付けの手続補正書参照。)
とあったものを、
本件補正後に、
「【請求項1】
少なくとも一方の眼鏡レンズの一部に溝が形成されており、前記溝中に使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下である表示バーが挿入されており、前記表示バーは、中空の筒部材あるいはロッド状の透明部材を備え、前記筒部材あるいは透明部材はその後端から入射した表示光を長手方向に導いてその先端に導く光路を形成するものであり、前記筒部材あるいは透明部材の先端近傍には反射部材が配置され、かつ、前記筒部材あるいは透明部材の先端には前記反射部材で光路が曲げられた表示光を観察者眼球に投影する接眼窓を備えており、前記接眼窓近傍又は前記筒部材あるいは透明部材の後端から先端に至る光路中に接眼光学系を備え、前記溝の投影断面の幅が4mm以下であることを特徴とする眼鏡型画像表示装置。」
とする。
該補正は、発明を特定するために必要な事項である「一方の眼鏡レンズの一部に」「形成されて」いる「溝」について、「溝の投影断面の幅が4mm以下である」と限定する補正事項を含む。
よって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲における請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

2 引用刊行物
(1)引用刊行物1
本願出願前に頒布された特開2006-3879号公報(原査定における引用文献1)には以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、表示素子と、接眼光学系と、接眼窓と、接眼窓保持部と、筐体と、これら全体を使用者の頭部に固定するための支持部とからなる頭部装着型画像表示装置であって、筐体は表示素子を覆い、接眼窓保持部は接眼窓を使用者の視界内に保持し、接眼光学系は表示素子が表示する表示画像の虚像を作り、接眼窓はその虚像を形成する光束が使用者の眼に向かい射出する窓であり、接眼窓保持部を構成する部材は、前記接眼窓から根元に向かって10mm以上の範囲にて、一部の突起を除き、使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下であり、シーアラウンド機能を有することを特徴とする頭部装着型画像表示装置。

【0016】
本発明においては、接眼窓保持部を構成する部材の使用者の視軸方向への投影断面の幅を4mm以下として、その接眼窓保持部材を人間の平均的な瞳孔径(4mm)よりも細くすることで、装置を視野内に配置しても外界を完全に遮ることがなく、シースルー効果が得られる。しかも、ハーフミラーを使用しておらず、光量のロスがないため、明るい電子画像を観察できる。また、電子画像が表示されている部位は外界からの光束が一部接眼窓構成部材でブロックされるために薄暗くなり、電子画像の視認性を良くする働きがある。さらに、電子画像の表示されている部位を除き、その他の外界視野は一切遮るものがないため、本発明の装置を使用していないのと同じく明瞭で明るい視界を得ることができる。また、瞳孔径よりも細い装置であることから、外部から見て装着者の目を完全に覆うことなく、より自然な表情を伝えることができる。

【0020】
本発明の第2の形態の頭部装着型画像表示装置は、第1、第2の形態において、接眼窓を構成する部材は、その使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下であり、シースルー機能を有することを特徴とするものである。
【0021】
この場合も、同様に、接眼窓を構成する部材を人間の平均的な瞳孔径4mmよりも小さくすることで、図6に示すように、接眼窓構成部材の向こうにある外界像も、あたかも接眼窓構成部材を透けて見え、視認できる。接眼窓からは、電子映像の光束が射出されているため、外界像と電子映像がオーバーラップして視認できる。すなわち、シースルー効果が得られる。しかも、ハーフミラーもHOEも使用しておらず、シースルー効果を実現しながらも、
『電子映像に光量のロスが生じない』
『しかも、カラーの電子映像を表示することもできる』
という特徴を併せ持つ。

【0079】
本発明の頭部装着型画像表示装置は小型化、軽量化が可能なため、眼鏡と一体にしてその主要部を眼鏡に内蔵させることができる。

【0089】
図6は、本発明の表示装置による外界の遮蔽の様子を模式図で説明するための図である。図6では、遮蔽物(ここでは、表示装置の筐体。図1?図4の接眼窓保持部2が主として対応する。)が眼球E正面にあった場合でも、遮蔽物が瞳孔径よりも細い場合には、遠方の外界像は完全に遮蔽されることがない原理を示している。ここでは、遠方のある点からの光を入射光とすると、略平行な光として眼球Eに入射する。このとき、遮蔽物が瞳孔径よりも小さければ、平行光の一部は瞳孔を通り、網膜上の対応点に結像する。したがって、眼球正面に遮蔽物(表示装置の筐体)等があっても、瞳孔径よりも小さい太さのものであれば、外界の情報は失われることなく観察することが可能である(シースルーとなる)。
【0090】
図6において、外界が明るくなり使用者の瞳孔が縮瞳した場合には、眼球正面方向の外界視野が絶たれ、外界視野が視認できなくなるという現象が起こる。そこで、ここでは、図7(a)のように、眼球正面(視軸)方向から遮蔽物(表示装置の筐体)をずらすことで、より外界像も自然に見ることができる。さらに、その際、表示装置による空中像(虚像)は、遮蔽物を瞳孔の端に配置しているにもかかわらず、眼球正面方向に見ることができ、完全なシースルー効果が得られる。すなわち、例えば図7(b)に光路図を示すように、外界を観察する使用者の眼球光軸(視軸)と本発明の表示装置の光軸とが互いに平行になるようにすることで、外界像に本発明の表示装置が映し出す像が重なり合って見えるようになる(シースルーとなる)。
【0091】
以上のように、眼球Eの前方に位置する遮蔽物である接眼窓保持部2を10mm以上の長さにし、かつ、人間の平均的な瞳孔径4mmよりも細くすることで、図6に示すように、外界からの光束を完全に遮ることがなく、接眼窓保持部2の眼球Eと反対の向こうにある外界像があたかも接眼保持部2を透けて見え、視認できる。接眼窓保持部2の内部を外界光が通過することもないため、従来技術で問題となった不要反射も発生しない。すなわち、
『軽量かつ小型』
『ゴーストがない』
『大きな外界視野』
といった特徴を持つシーアラウンド効果を得ることができる。
【図6】は次のとおり。
【図6】

【0120】
図19に蛍光樹脂ロッド30を用いた他の構成例を示す。図19おいて、表示素子として透過型液晶表示素子31を使用し、その表示素子31の照明に上記の蛍光樹脂ロッド30を用いており、蛍光樹脂ロッド30は外光に照らされて自家蛍光により発光し、その発光した光は蛍光樹脂ロッド30内部を全反射しながらその端面より射出し、反射プリズム33と照明用レンズ32を経てその自家蛍光による照明光で表示素子31が照明される。蛍光樹脂ロッド30の透過型液晶表示素子31側でない端面は、全反射プリズム(コーナーキューブ)34の形状とされており、表示素子31と反対に進行する蛍光光を折り返して再利用している。そして、この例では、表示素子31と接眼窓4の間に一端が90°全反射型の透明ロッド9が配置され、透明ロッド9の光路が90°曲がった射出端の接眼窓4位置に接眼レンズを構成する凸レンズ15が貼り付けられており、その全体が接眼窓保持部2で覆われて構成されている。したがって、接眼レンズの凸レンズ15と接眼窓4が一体化されている。この例では、蛍光樹脂ロッド30を表示素子31を照らす照明光源として利用することで、頭部装着型画像表示装置の消費電力を小さくでき、さらに、外界が明るい場合は、光源輝度も上がるので、電子映像が外界の明るさに負けて視認視認し難くなるという不具合が回避できる。なお、図19の例では、蛍光樹脂ロッド30は未使用時に、図20に示すように、ヒンジ回転軸35を中心に矢印方向へ畳んで収納できるようになっている。このように構成することにより、眼鏡に搭載したままの状態でも、眼鏡と一緒に折り畳み収納することができる。
【図19】は次のとおり。
【図19】


【0121】
図21は、通常用いる眼鏡に本発明による頭部装着型画像表示装置を取り付けた例を示す図である。眼鏡フレーム50に沿って蛍光樹脂ロッド30が配置され、その端面からの光を一度反射部材にて90°折り曲げ、表示パネル31に入射させ、表示パネル31からの映像光を接眼窓保持部2内を導光して、接眼窓4より射出させる。このとき、蛍光樹脂ロッド30の他の端面は光の利用効率を高めるためミラー44が設けられていてもよく、また、外光42が当たらない眼鏡フレーム50と蛍光樹脂ロッド30との境界はミラー45が設けられていてもよい。さらに、補助光源37を利用することで、全くの暗闇でも利用することが可能となる。ここでは、蛍光樹脂ロッド30の他端に補助光源37を配置してあり、ミラー44と補助光源37を切り換えて使用することができる。
【図21】は次のとおり。
【図21】


これらの記載から、引用刊行物1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
引用発明1:
「表示素子と、接眼光学系と、接眼窓4と、接眼窓保持部2と、筐体と、これら全体を使用者の頭部に固定するための支持部からなる頭部装着型画像表示装置を取り付けた眼鏡であって、接眼保持部2は、接眼窓4を使用者の視界内に保持する機能を有し、接眼窓4と表示素子31との間に配置された一端が90°全反射型の透明ロッド9により構成されて、光路を形成するものであり、接眼光学系は表示素子31が表示する表示画像の虚像を作る機能を有し、接眼窓4に貼り付けられた接眼レンズの凸レンズ15からなり、接眼窓4はその虚像を形成する光束が使用者の眼に向かい射出する窓であり、接眼窓保持部2を構成する部材は使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下であり、シーアラウンド機能を有する頭部装着型画像表示装置を取り付けた眼鏡。」

(2)引用刊行物2
本願出願前に頒布された特開2006-276182号公報(原査定における引用文献2)には以下の事項が記載されている。
【請求項1】
ホログラム素子が形成された板状の第1光学基材と、この第1光学基材が嵌合可能な凹欠部が形成された板状の第2光学基材と、を含むホログラム素子内蔵レンズにおいて、
前記第2光学基材における前記凹欠部の内底面の稜角部に対応する前記第1光学基材の角部が当該第1光学基材の厚み方向において一方から他方に向かって徐々に拡開するテーパー面で形成されていることを特徴とするホログラム素子内蔵レンズ。

【0002】
近年、ハンドフリーによる作業性向上や、弱視者に対して補助等を目的とした眼鏡型ウエラブルディスプレイ(以下、WDとする。)やヘッドマウント型ディスプレイ(以下、HMDとする。)等の開発が行われている。
【0003】
WDやHMDには、煩雑な機器を用いずプリズムを利用するシースルー型がある。シースルー型WDやHMDに用いられるレンズとして、ホログラム素子を設けたプリズムである光学基材(以下、ホログラム素子を設ける光学基材を第1光学基材とする。ホログラム素子を設けた光学基材をホログラム光学基材とする。)と他方の光学基材(以下、第2光学基材とする。)とを一体化したホログラム素子内蔵レンズが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。これら光学基材の一体化は、少なくとも一方の光学基材の接合面に接着剤20を塗布し、これらの光学基材を嵌合し、嵌合時に接合面からはみ出した接着剤20を拭き取り、接着剤20を硬化することによって行う。
【0004】
図1及び図2に従来技術を示す。
図1は、従来技術である複数の光学基材を一体化することによりホログラム素子内蔵レンズ200を形成するホログラム光学基材L100及び光学基材L2の一例を示す。
図2は、従来技術であるホログラム光学基材L100と光学基材L2とを一体化することにより形成したホログラム素子内蔵レンズ200を示す。

【0006】
光学基材L1及び光学基材L2は、射出成形工程等により形成される。
光学基材L1の外周形状には、外周面2a,2b,2cが形成されている。 外周面2aには、ホログラム素子100を形成するホログラム素子面101が形成されている。このホログラム素子面101にホログラム素子100が形成されることによりホログラム光学基材L100が形成される。外周面2b,2cは、下記に記載する光学基材L2の内周面5b,5cに対応して形成されている。
光学基材L2には、中央付近に凹欠部が形成されている。この凹欠部には、光学基材L1の外周形状の外周面2a,2b,2cのそれぞれに対応する内周面5a,5b,5cが形成されている。このとき、厚み方向においてそれぞれの内周面5b及び内周面5cとウラ面(レンズ表面3a)との傾斜角θ0は、略直角である。
【図1】及び【図2】は次のとおり。
【図1】

【図2】


【0053】
さらに、ホログラム映像の精度やホログラム生産性の向上したホログラム素子内蔵レンズ200aを、眼鏡フレーム、LCD表示部、コントローラ部を備えることによってWDやHMDとして使用する。精度の高いWDやHMDの生産性も向上することができる。

(3)引用刊行物3
本願出願前に頒布された特開2007-524871号公報(原査定において言及された周知技術文献3)には以下の事項が記載されている。
【請求項1】
情報の内容を見ることができるように光ビームを形成し、装着者の眼の方向へ当該光ビームを向けるための光学映像装置(5)に関連した眼科ディスプレイを構成するための眼科レンズ(10)であって、前記光学映像装置(5)は当該眼科レンズ(10)に固定され、当該眼科レンズには当該レンズを矯正するパラメータが、前記光学映像装置の当該レンズに対する位置付けを含むマーキングと関連付けられていることを特徴とする眼科レンズ。

【0002】
米国特許第5,886,822号公報には、投射挿入字幕を表示する眼科レンズが開示されている。このような投射挿入字幕は、電子信号から光ビームを発生する電子及び光学システムにより発せられる光ビームを形成するための光学映像装置により構成される。
当該システムは、小型スクリーン、レーザ・ダイオード、又は光発光ダイオード(LED)タイプにより構成される。当該光学映像装置は、情報内容を使用できるように装着者の眼に向かって光ビームを発する。

【0029】
本発明において、上述された光学映像装置5は図2に示されるようにレンズ10に固定される。
フレーム12が2つの眼科レンズ10及び11を支持し、その内の1つの眼科レンズ10が本発明による眼科装置を形成するための光学映像装置5を支持している。接続ケーブル7が電子情報読取器13に接続されている。
【0030】
電子情報読取器13は、特に、小型スクリーンのスイッチを入れることを可能にし、そしてバッテリによる小型スクリーンへの電力供給、スクリーンの色、明るさを調整する制御ユニット、管理制御を含んでもよい。
このユニットは、情報内容源から来る電子信号を小型スクリーンに適した信号へ変換する機能を果たす電子チップ又はカードを含んでもよい。
例えば、映像情報はパーソナル・コンピュータ、DVDリーダー、システム手帳、電話、又は、ゲームコンソールからのものであってもよい。
【0031】
本発明の好適な実施の形態においては、光学映像装置5はレンズ10の前面に直接固着することにより固定される。
その他の例としては、光学映像装置5はレンズの後面に固着されてもよい。さらに、光学映像装置5はレンズと接触してもよいし接触しなくてもよい。そして、光学映像装置からの光はレンズを部分的に通過又は完全に通過してもよい。
【0032】
また、光学映像装置5は、中間部品、光学映像装置の延長部、レンズの延長部、又は、機械的インターフェイス3が介在されることにより、レンズに間接的な方法で固着されてもよい。
光学映像装置は、取外しできないように接着剤によりレンズ上に固着されてもよい。本発明では、また、例えばねじ固定又はインターフイッテイング形状により、取外し可能な方法で固定してもよい。
【図2】は次のとおり。
【図2】


【0033】
図3及び図4に、本発明を実施するための、好適な実施形態を示す。
レンズ10には、図4に示すように光学映像装置5配置するための溝10Aが、形成されている。溝10Aは、光学映像装置5の形状と組合うように設計され、この例では、概ね矩形状の平行六面体となっている。

【0038】
光学映像装置5は、溝10Aに接着剤又は、互いに相補う形状により保持されており、上記光学機械的フレームとして位置づけされる基準点は、光学映像装置5からの出力光軸が眼科レンズの光学中心を通過し、光学レンズの光軸A-A’と一致するように調整されている。なお、溝10Aの底面は光軸A-A’に対して垂直である。
【図3】及び【図4】は次のとおり。
【図3】

【図4】


(4)引用刊行物4
本願出願前に頒布された特表2003-505718号公報(原査定において言及された周知技術文献4)には以下の事項が記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】使用者頭部着用可視表示装置において、この装置が、 アイウェアと、 前記アイウェアに連結されたマイクロ光学ディスプレイとを具備しており、 前記マイクロ光学ディスプレイは使用者の視野範囲内に配置され、前記マイクロ光学ディスプレイは使用者の屈折誤差の一部を補正するように構成される、使用者用頭部着用可視表示装置。

【請求項11】 前記マイクロ光学ディスプレイが、前記レンズのノッチ内に配置されている請求項10のアイウェア。

【0011】
詳細な説明
図1は、本発明の実施例によるアイウェア11を着用したユーザ10の頭部を示している。アイウェア11は外見上は従来型であってよく、リム(eyewire)14と、レンズ18と、テンプル15とを有している。図面から明らかなように、この実施例のアイウェア11は、アイウェア11のレンズ18に配置されたマイクロ光学ディスプレイ12を有している。この実施例におけるマイクロ光学ディスプレイ12は、ユーザの眼17の視野内にあるように位置決めされているので、ユーザ10の都合が良いときに、ユーザ10はマイクロ光学ディスプレイを覗き、ディスプレイに表示された情報13を見ることができる。ユーザ10の視野内にマイクロ光学ディスプレイを位置決めすることにより、ユーザ10は他の活動に関与している間に、ディスプレイからの情報にアクセスすることができる。
【図1】は次のとおり。


【0016】
図面から明らかなように、図2.0のアイウェア11は、マイクロフォン20と、マイクロ光学ディスプレイ12と、太陽電池22と、アンテナ23と、スピーカ24と、トランシーバ25と、マイクロプロセッサ26と、レンズ29と、ブリッジ28と、バッテリ27とを有している。アイウェア11のテンプル15に配置されたこれらの太陽電池22は、バッテリ27を充電するのに利用されてよく、また、アイウェア11の構成部分に直接的に給電するのに利用されてもよい。マイクロプロセッサ26はアイウェア11のイヤーレストの一方に設けられている。マイクロプロセッサ26は構成部分のそれぞれと通信してよく、トランシーバ25の情報を受け取り、次いで情報をマイクロ光学ディスプレイ12上に表示するのに利用されてよい。トランシーバ25は、アイウェア11のための機能を送受するのに用いられてよい。トランシーバ25は、PCCSUと通信するのに利用されてよく、また、無線網を介して直接通信するのに利用されてもよい。この実施例のレンズ29は、開口またはノッチを有しており、この開口またはノッチは、ディスプレイ12がレンズを貫通して、外面と内面とを超えて延びるのを可能にする。
【図2.0】は次のとおり。


【0068】
図19の別の実施例である図20において、マイクロ光学ディスプレイ2022は、図19においてレンズの中に懸架されるのとは反対にリム2023に連結している。光源2020はリム2023に連結し、マイクロ光学ディスプレ2022の中にあるマイクロ文字ディスプレイを照明するための光を光ファイバライン2021に沿って送っている。この好適な実施例において、レンズはマイクロ光学ディスプレイを受け入れる開口を作るためにノッチを作られ又は溝が掘られている。
【0070】
図20.2は、マイクロ光学ディスプレイ(図示しない)の周囲に嵌るようにノッチが形成された眼鏡レンズ2024の正面図である。
【図20】、【図20.1】及び【図20.2】は次のとおり。



3 対比・判断
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の
「接眼保持部2」、
「透明ロッド9」、
「接眼窓4と表示素子31との間に配置された一端が90°全反射型の透明ロッド9により構成されて光路を形成する」構成、
「透明ロッド9」の「一端が90°全反射型」である部分、
「接眼保持部2」により「使用者の視界内に保持」された「接眼窓」、
「接眼窓4に貼り付けられた接眼レンズの凸レンズ15からな」る「接眼光学系」、
「頭部装着型画像表示装置を取り付けた眼鏡」は、それぞれ、
本願補正発明における
「表示バー」、
「ロッド状の透明部材」、
「透明部材はその後端から入射した表示光を長手方向に導いてその先端に導く光路を形成する」構成、
「透明部材の先端近傍に」「反射部材」を配置する構成、
「透明部材の先端に」備えられた「反射部材で光路が曲げられた表示光を観察者眼球に投影する接眼窓」、
「透明部材の後端から先端に至る光路中」であり、かつ、「接眼窓近傍」に配置された「接眼光学系」、
「眼鏡型画像表示装置」に相当する。

してみると、両者は
「使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下である表示バーが、中空の筒部材あるいはロッド状の透明部材を備え、前記筒部材あるいは透明部材はその後端から入射した表示光を長手方向に導いてその先端に導く光路を形成するものであり、前記筒部材あるいは透明部材の先端近傍には反射部材が配置され、かつ、前記筒部材あるいは透明部材の先端には前記反射部材で光路が曲げられた表示光を観察者眼球に投影する接眼窓を備えており、前記接眼窓近傍又は前記筒部材あるいは透明部材の後端から先端に至る光路中に接眼光学系を備えてなる眼鏡型画像表示装置」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は、「少なくとも一方の眼鏡レンズの一部に溝が形成されてなり、溝中に」表示バーが「挿入されており」、「前記溝の投影断面の幅が4mm以下である」構成を有しているのに対して、引用発明1においては、眼鏡型画像表示装置の眼鏡レンズに溝は形成されておらず、表示バーは眼鏡型画像表示装置の眼鏡レンズの溝に挿入されたものではない点。

上記相違点について検討する。
引用刊行物2には、眼鏡型ウエアラブルディスプレイにおいて、ホログラムからなる光学素子が形成された板状の第1光学基材に対し、第2光学基材である眼鏡レンズの一部に凹欠部を設けて、第1光学基材を嵌合させる構成が記載されており、
引用刊行物3には、装着者の目の方向へ光ビームを向ける光学映像装置を、眼鏡レンズに、光学映像装置の形状と組み合うように設計された矩形状の平行六面体よりなる溝10Aを形成することにより配置する技術が記載されており、
また、引用刊行物4には、使用者頭部着用可視表示装置において、マイクロ光学ディスプレイを、アイウェアのレンズのノッチ内、或いは開口や溝、に配置させる技術が記載されている。

引用刊行物2ないし4に記載されている技術は全て、眼鏡型画像表示装置に係るものであり、引用刊行物2記載のホログラムからなる光学素子が形成された第1光学基材、引用刊行物3記載の光学映像装置、引用刊行物4記載のマイクロ光学ディスプレイは、使用者・装用者の眼球に表示画像を与えるという部材という点で、本願補正発明における表示バーと共通している。
そして、引用刊行物2記載の第2光学基材であるレンズの一部に形成された第1光学基材と嵌合可能な凹欠部、引用刊行物3に記載の溝10A、引用刊行物4に記載のアイウェアのレンズのノッチ・開口・溝は、本願補正発明における、「眼鏡レンズの一部に」「形成」された「溝」に相当する。

引用刊行物2ないし4に記載されているように、眼鏡型画像表示装置において、眼鏡レンズの一部に種々の形状の切り欠き・開口部や溝を形成し、そこに表示バーを挿入させて配置することは本願出願前において既に周知の技術であるから、引用発明1において、表示バーを眼鏡レンズの一部に形成された溝内に挿入するよう構成することは当業者であれば当業者が容易に想到し得たことである。

更に、引用刊行物3【0038】には「光学映像装置5は、溝10Aに・・・(中略)・・・互いに相補う形状により保持」されることが明記されており、また、引用刊行物2【請求項1】及び【0003】(上記「2 (2)参照。)にも表示バーに相当する第1光学基材と第2光学基材に形成された凹欠部が「嵌合可能な相互形状」であることが記載されているように、表示バーを挿入する溝を表示バーの形状に合わせて設計することは当業者であれば通常考慮すべき事項であるから、表示バーの寸法に合わせて溝の投影断面も4mm以下とすることは、当業者であれば適宜なし得る設計的事項に過ぎない。

そして、本願補正発明の効果についてみても、引用発明1及び上記周知技術から予測される範囲のものであって、格別顕著なものではない。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は引用発明1及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に反するので、同法第159条において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願の請求項1に係る発明

平成23年 1月27日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年 8月25日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりものである。

【請求項1】
少なくとも一方の眼鏡レンズの一部に溝が形成されており、前記溝中に使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下である表示バーが挿入されており、前記表示バーは、中空の筒部材あるいはロッド状の透明部材を備え、前期筒部材あるいは透明部材はその後端から入射した表示光を長手方向に導いてその先端に導く光路を形成するものであり、前記筒部材あるいは透明部材の先端近傍には反射部材が配置され、かつ、前記筒部材あるいは透明部材の先端には前記反射部材で光路が曲げられた表示光を観察者眼球に投影する接眼窓を備えており、前記接眼窓近傍又は前記筒部材あるいは透明部材の後端から先端に至る光路中に接眼光学系を備えていることを特徴とする眼鏡型画像表示装置。

2 引用刊行物
引用刊行物1ないし4及びその記載事項は、前記「第2 2」にて記載したとおりである。

3 対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、本願補正発明から「溝の投影断面の幅が4mm以下である」とする限定を省いたものに相当する。

そうすると、本願の請求項1に係る発明の構成要件を全て包含し、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」で検討したとおり、引用発明1及び引用刊行物2ないし4に開示される上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明も同様の理由により、引用発明1及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-06 
結審通知日 2011-12-07 
審決日 2011-12-20 
出願番号 特願2007-242029(P2007-242029)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 572- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河原 正  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 磯貝 香苗
稲積 義登
発明の名称 眼鏡型画像表示装置及び画像表示装置付き眼鏡  
代理人 菅井 英雄  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 米澤 明  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 青木 健二  
代理人 内田 亘彦  
代理人 韮澤 弘  

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