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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1252169
審判番号 不服2011-9428  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-02 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 特願2007-286762「主制御基板、および、これを備えた遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月28日出願公開、特開2009-112418〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年11月2日の出願であって、平成23年2月1日付け(発送:2月8日)で拒絶査定され、これに対し、同年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これと同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成23年7月13日付けで審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ、平成23年9月20日付けで回答書が提出された。

2.補正の内容
平成23年5月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
始動口の入賞ごとに取得される大当たり判定用の数値と、あらかじめ定められた数値とが一致する場合に大当たり遊技をおこなう遊技機が備える主制御基板であって、
前記主制御基板に対する電源の供給をおこなう電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンが操作されたか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンの操作が検出された場合に、遊技の開始を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電源スイッチの電源投入操作により、前記遊技機が備える表示部に対して前記入力ボタンの操作を促す表示出力を行い、前記表示出力の後に前記検出手段によって前記入力ボタンの操作が再び検出された場合に、遊技を開始することを特徴とする主制御基板。
【請求項2】
前記検出手段は、前記入力ボタンの押下操作および解除操作をそれぞれ検出し、
前記制御手段は、前記検出手段によって入力ボタンの押下操作、および当該押下操作後の解除操作が検出された場合に、遊技を開始することを特徴とする請求項1に記載の主制御基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の主制御基板を備えた遊技機であり、
前記遊技機には、前記電源スイッチが設けられ、
前記主制御基板には、前記入力ボタンが設けられたことを特徴とする遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成22年11月11日付け手続補正、以下同じ。)の請求項1、請求項2を削除し、補正前の請求項3を請求項1に、同請求項4を請求項2に、同請求項5を請求項3としたものであって、この補正は請求項の削除を目的としたものと認められる。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反しないので補正は認められる。

3.引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由(平成22年9月9日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2006-612号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0144】
本実施形態では、前記主基板の基板ボックス263に対応して、クリヤ手段としてのRAM消去スイッチ323が設けられている。RAM消去スイッチ323は、押圧操作式のスイッチにより構成されており、押圧操作することにより、オン状態とされ、押圧解除操作つまり指を離すことで元の状態に復帰しオフ状態とされる。本パチンコ機10においてはバックアップ機能を有しており、万一停電が発生した際でも停電時の状態を保持し、停電からの復帰(復電)の際には停電時の状態に復帰できるようになっている。従って、通常手順で(例えばホールの営業終了時に)電源遮断すると電源遮断前の状態が記憶保持されることから、電源投入時に初期状態に戻したい場合には、RAM消去スイッチ323を押しながら電源を立ち上げる(投入する)こととしている。但し、本実施形態では、RAM消去スイッチ323を押しながら電源を立ち上げるだけでは、初期化(クリヤ)されるわけではなく、その後、押圧解除つまりオフ操作をすることによりはじめて初期化(クリヤ)が許容されるようになっている。」

(イ)「【0159】
図18,19の説明に戻り、払出機構部352には、払出制御装置311から払出装置358への払出指令の信号を中継する払出中継基板381が設置されると共に、外部より主電源を取り込むための電源スイッチ基板382が設置されている。電源スイッチ基板382には、電圧変換器を介して例えば交流24Vの主電源が供給され、電源スイッチ382aの切替操作により電源ON又は電源OFFとされるようになっている。」

(ウ)「【0165】
記憶手段としてのRAM503は、パチンコ機10の電源のオフ後においても後述するコンデンサ402からバックアップ電圧(電源)が供給されてデータが保持(バックアップ)できる構成となっており、RAM503には、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリやエリアの他に、バックアップエリア503aが設けられている。
【0166】
バックアップエリア503aは、停電などの発生により電源が切断された場合において、電源の再入時にパチンコ機10の状態を電源切断前の状態に復帰させるべく、電源切断時(停電発生時を含む。以下同様)のスタックポインタや、各レジスタ、I/O等の値を記憶しておくためのエリアである。バックアップエリア503aへの書き込みは、NMI割込み処理(図32参照)によって電源切断時に実行され、逆にバックアップエリア503aに書き込まれた各値の復帰は、電源入時(停電解消による電源入を含む。以下同様)の復電処理(図25参照)において実行される。なお、CPU501の図示しないNMI端子(ノンマスカブル割込端子)には、停電等の発生による電源断時に、後述する停電監視回路542から出力される停電信号が入力されるように構成されており、停電の発生により、図32の停電処理(NMI割込み処理)が即座に実行される。」

(エ)「【0183】
さて、RAM消去スイッチ323が、前記主制御装置(主基板)261の基板ボックス263に設けられている点については既に述べた。本実施形態では、該スイッチ323に対応するRAM消去スイッチ回路543が、前記バックアップ基板402上に設けられている。RAM消去スイッチ回路543は、RAM消去スイッチ323のスイッチ信号を取り込み、そのスイッチ323の状態に応じて主制御装置261のRAM503及び払出制御装置311のRAM513のバックアップデータをクリヤするための回路である。RAM消去スイッチ323が押下(押圧)された際、RAM消去スイッチ回路543は、RAM消去信号SK2を主制御装置261及び払出制御装置311に出力する。RAM消去スイッチ323が押下された状態でパチンコ機10の電源が投入され(停電解消による電源入を含む)、その後RAM消去スイッチ323の押圧操作が解除される(オフ操作)されると、主制御装置261及び払出制御装置311においてそれぞれのRAM503,513のデータ(後述する大当たり乱数カウンタC1のカウント値を含む)がクリヤされる。」

(オ)「【0192】
本実施形態では、主制御装置261内のCPU501は、遊技に際し各種カウンタ情報を用いて第1図柄表示装置42の抽選(大当たり抽選)や図柄表示の設定などを行うこととしており、具体的には、図24に示すように、第1図柄表示装置42の大当たりの抽選に使用する大当たり乱数カウンタC1と、第1図柄表示装置42の大当たり図柄の選択に使用する大当たり図柄カウンタC2と、第1図柄表示装置42が外れ変動する際のリーチ抽選に使用するリーチ乱数カウンタC3と、大当たり乱数カウンタC1の初期値設定に使用する乱数初期値カウンタCINIと、第1図柄表示装置42の変動パターン選択に使用する変動種別カウンタCS1,CS2と、左列、中列及び右列の各外れ図柄の設定に使用する左・中・右の各外れ図柄カウンタCL,CM,CRとを用いることとしている。
【0193】
このうち、カウンタC1?C3,CINI,CS1,CS2は、その更新の都度前回値に1が加算され、最大値に達した後0に戻るループカウンタとなっている。また、外れ図柄カウンタCL,CM,CRは、CPU501内のRレジスタ(リフレッシュレジスタ)を用いてレジスタ値が加算され、結果的に数値がランダムに変化する構成となっている。各カウンタは定期的に更新され、その更新値がRAM503の所定領域に設定されたカウンタ用バッファに適宜格納される。また、RAM503には、1つの実行エリアと4つの保留エリア(保留第1?保留第4エリア)とからなる記憶エリアとしての保留球格納エリアが設けられており、これらの各エリアには、第1契機対応口33への遊技球の入賞履歴に合わせて、大当たり乱数カウンタC1、大当たり図柄カウンタC2及びリーチ乱数カウンタC3の各値が時系列的に格納されるようになっている。
【0194】
各カウンタについて詳しく説明すると、大当たり乱数カウンタC1は、例えば0?676の範囲内で順に1ずつ加算され、最大値(つまり676)に達した後0に戻る構成となっている。特に大当たり乱数カウンタC1が1周した場合、その時点の乱数初期値カウンタCINIの値が当該大当たり乱数カウンタC1の初期値として読み込まれる。なお、乱数初期値カウンタCINIは、大当たり乱数カウンタC1と同様のループカウンタであり(値=0?676)、タイマ割込み毎に1回更新されると共に通常処理の残余時間内で繰り返し更新される。大当たり乱数カウンタC1は定期的に(本実施形態ではタイマ割込み毎に1回)更新され、遊技球が第1契機対応口33に入賞したタイミングでRAM503の保留球格納エリアに格納される。大当たりとなる乱数の値の数は、低確率時と高確率時とで2種類設定されており、本実施形態では、低確率時に大当たりとなる乱数の値の数は2で、その値は「337,673」であり、高確率時に大当たりとなる乱数の値の数は10で、その値は「67,131,199,269,337,401,463,523,601,661」である。なお、高確率時とは、予め定められた確率変動図柄によって大当たりになり付加価値としてその後の大当たり確率がアップした状態、いわゆる確変状態のときをいい、通常時(低確率時)とはそのような確変状態でないときをいう。」

(カ)「【0214】
また、図25は、主制御装置261内のCPU501により実行されるメイン処理の一例を示すフローチャートであり、このメイン処理は電源投入時のリセットに伴い起動される。
【0215】
先ずはじめに、ステップS101では、電源投入に伴う初期設定処理を実行する。具体的には、スタックポインタに予め決められた所定値を設定すると共に、サブ側の制御装置(音声ランプ制御装置262,払出制御装置311等)が動作可能な状態になるのを待つために例えば1秒程度(それ以下でもよい)、ウェイト処理を実行する(かかるウェイト処理は省略することもできる)。また、ステップS102では、払出制御装置311に対して払出許可コマンドを送信し、続くステップS103では、RAMアクセスを許可する。
【0216】
その後、CPU501内のRAM503に関してデータバックアップの処理を実行する。つまり、ステップS104では、主制御装置(主基板261)の基板ボックス263に設けられたRAM消去スイッチ323が押下(オン)されているか否かを判別し(第1判定手段による判定に相当)、オン状態となっていなければ、続くステップS105において、RAM503のバックアップエリア503aに電源断の発生情報が設定されているか否かを判別する。RAM503のバックアップエリア503aに電源断の発生情報が設定されている場合には、ステップS106においてRAM判定値を算出し、続くステップS107では、そのRAM判定値が電源断時に保存したRAM判定値と一致するか否か、すなわちバックアップの有効性を判別する。RAM判定値は、例えばRAM503の作業領域アドレスにおけるチェックサム値である。なお、RAM503の所定のエリアに書き込まれたキーワードが正しく保存されているか否かによりバックアップの有効性を判断することも可能である。
【0217】
上述したように、本パチンコ機10では、例えばホールの営業開始時など、電源投入時に初期化状態に戻したい場合にはRAM消去スイッチ323を押圧操作しながら電源が投入され、その後RAM消去スイッチ323の押圧解除操作が行われる(オフ状態とされる)。つまり、かかる特定条件が成立した場合に限り、RAMの初期化処理(ステップS114等)に移行するようになっている。より詳しくは、前記ステップS104において、電源投入時RAM消去スイッチ323が押下(オン)されていると判定された場合には、ステップS1041において、その後RAM消去スイッチ323がオフ操作(押圧解除操作)されたか否かを判定する(第2判定手段による判定に相当)。そして、ステップS1041で肯定判定された場合に限り、RAMの初期化処理(クリヤ処理)が実行される。これに対し、ステップS1041で肯定判定されない場合、つまり、RAM消去スイッチ323がオフ操作されたと判定されない限りは、オフ操作されたと判定されるまでは、ステップS1041の判定処理が繰り返し実行されることとなる。従って、この場合には、第1図柄表示装置42(液晶表示装置)での図柄の変動表示なども行われず、遊技上実質的に必要な動作が行われない(禁止される)こととなる。尚、本実施形態では、上記ステップS104の時点においても電源投入時に相当するものである。つまり、ウェイト処理が完了する前(例えばステップS101と同時期)に、ステップS104の判定を行ってもよい。いずれにせよ、電源投入時とあるのは、必ずしも投入した瞬間に限定されるものではないという趣旨である。
【0218】
また、電源断の発生情報が設定されていない場合や、RAM判定値(チェックサム値等)によりバックアップの異常が確認された場合も同様にRAM503の初期化処理(ステップS114等)に移行する。つまり、ステップS114ではRAM503の使用領域を「0」にクリヤし、続くステップS115ではRAM503の初期化処理を実行する。また、ステップS116では割込み許可を設定し、後述する通常処理に移行する。
【0219】
一方、RAM消去スイッチ323が押されていない場合(ステップS104で否定判定された場合)には、電源断の発生情報が設定されていること、及びRAM判定値(チェックサム値等)が正常であることを条件に、復電時の処理(電源断復旧時の処理)を実行する。つまり、ステップS108では、電源断前のスタックポインタを復帰させ、ステップS109では、電源断の発生情報をクリヤする。ステップS110では、サブ側の制御装置を電源断時の遊技状態に復帰させるためのコマンドを送信し、ステップS111では、使用レジスタをRAM503のバックアップエリア503aから復帰させる。さらに、ステップS112,S113では、割込み許可/不許可を電源断前の状態に復帰させた後、電源断前の番地へ戻る。
【0220】
次に、通常処理の流れを図26のフローチャートを参照しながら説明する。この通常処理では遊技の主要な処理が実行される。その概要として、ステップS201?S207の処理が4msec周期の定期処理として実行され、その残余時間でステップS209,S210のカウンタ更新処理が実行される構成となっている。」

(キ)「【0228】
その後、ステップS206では、大当たり状態となる場合において可変入賞装置32の大入賞口を開放又は閉鎖するための大入賞口開閉処理を実行する。すなわち、大当たり状態のラウンド毎に大入賞口を開放し、大入賞口の最大開放時間が経過したか、又は大入賞口に遊技球が規定数だけ入賞したかを判定する。そして、これら何れかの条件が成立すると大入賞口を閉鎖する。このとき、遊技球が特定領域を通過したことを条件に大入賞口の連続開放を許容し、これを所定ラウンド数繰り返し実行する。」

(ク)「【0236】
その後、ステップS406では、変動開始処理を実行する。ここで、図29のフローチャートを用いて変動開始処理の詳細を説明すると、ステップS501では、保留球格納エリアの実行エリアに格納されている大当たり乱数カウンタC1の値に基づいて大当たりか否かを判別する。具体的には、大当たりか否かは大当たり乱数カウンタ値とその時々のモードとの関係に基づいて判別され、前述した通り通常の低確率時には大当たり乱数カウンタC1の数値0?676のうち「337,673」が当たり値であり、高確率時には「67,131,199,269,337,401,463,523,601,661」が当たり値である。」

(ケ)「【0292】
(b)また、RAM消去スイッチ323がオン操作された状態で、電源が立ち上げられてから、その後RAM消去スイッチ323がオフ操作されるまでの間、当該オフ操作を促す旨を教示する教示手段を設けてもよい。具体的には、図41に示すように、ステップS1041においてRAM消去スイッチ323がオフ状態とされたと判定されない場合、ステップS1402へ移行し、そこで、報知信号を出力することとしてもよい。また、当該報知信号によって、音声、ランプ、表示装置等で、その旨を報知することとしてもよい。この場合、正当に操作する者(例えば遊技場関係者)が、RAM消去スイッチ323をオフ操作し忘れることによる不具合を抑制できる。
【0293】
(c)さらに、ステップS1041で否定判定されてから規定時間以内にRAM消去スイッチ323がオフ操作されなかった場合、外部に異常を教示する異常教示手段を設けてもよい。この場合、不正にRAM消去スイッチ323をオン状態に固定したような場合に、電源立上後、規定時間が経過すると異常が教示されることとなる。結果として、そのような不正行為を早期に発見でき、不正行為を効果的に防止できる。
【0294】
(d)上記実施形態では、RAM消去スイッチ323として、押圧操作式のスイッチを採用しているが、他のスイッチでもよい。例えば、第1の方向へ切換操作(第1の操作に相当)することでオン状態となり、第2の方向へ切換操作(第2の操作に相当)することでオフ状態となる切換操作式のスイッチを採用することとしてもよい。この場合、オフ状態とするためには、それぞれ意図的に操作を行う必要が生じる。そのため、遊技場関係者にしてみれば、クリヤ操作を行う都度、クリヤ操作を行うことに関し自覚することができ、同時にまた不正行為に関する意識を抱くことができる。結果として、不正防止に関する意識を高めることができ、かかる意味で間接的ではあるが不正防止に貢献することができる。」

以上、(ア)乃至(ケ)の記載、及び図面を総合すると、引用例1には、
「遊技球が第1契機対応口33に入賞したタイミングで定期的に更新されている大当たり乱数カウンタC1がRAM503の保留球格納エリアに格納され、大当たり乱数カウンタC1の数値0?676のうち「337,673」が当たり値であり、高確率時には「67,131,199,269,337,401,463,523,601,661」が当たり値であって、大当たり状態となる場合において可変入賞装置32の大入賞口を開放又は閉鎖するための大入賞口開閉処理を実行するパチンコ機10であって、
電源スイッチ382aの切替操作により電源ON又は電源OFFとされるようになっており、基板ボックス263に設けられたRAM消去スイッチ323がオン操作された状態でパチンコ機10の電源が投入され(停電解消による電源入を含む)、その後RAM消去スイッチ323がオフ操作されると、主制御装置(主基板)261及び払出制御装置311においてそれぞれのRAM503,513のバックアップされたデータがクリヤされ、遊技の主要な処理が実行される通常処理に移行し、
RAM消去スイッチ323は切換操作式のスイッチで構成され、
RAM消去スイッチ323がオン操作された状態で、電源が立ち上げられてから、その後RAM消去スイッチ323がオフ操作されるまでの間、当該オフ操作を促す旨を表示装置に教示する教示手段を設けたパチンコ機10」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
引用発明と本願補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)とを対比する。
引用発明の「第1契機対応口33」は、本願補正発明の「始動口」に相当する。以下同様に、
「大当たり乱数カウンタC1の数値」は「大当たり判定用の数値」に、
「当たり値」は「あらかじめ定められた数値」に、
「パチンコ機10」は「遊技機」に、
「主制御装置(主基板)261」は「主制御基板」に、それぞれ相当する。
引用発明は、遊技球が第1契機対応口33に入賞したタイミングで定期的に更新されている大当たり乱数カウンタC1をRAM503の保留球格納エリアに格納していることから、遊技球が第1契機対応口33に「入賞ごと」に大当たり乱数カウンタC1を「取得」しているといえる。

引用発明は、大当たり乱数カウンタC1の数値が当たり値であれば大当たり状態となり大入賞口開閉処理を実行することから、「大当たり判定用の数値と、あらかじめ定められた数値とが一致する場合に大当たり遊技をおこなう」ことに相当する機能を備えているといえる。

上記(カ)には、電源投入に伴って主制御装置(主基板)261内のCPU501により実行される処理が記載されており、電源投入は上記(イ)の記載より、電源スイッチ382aにより行われることから、引用発明の「電源スイッチ382a」は、本願補正発明の「前記主制御基板に対する電源の供給をおこなう電源スイッチ」に相当する。

本願補正発明の「遊技情報」で特定する事項が必ずしも明確ではないのでここで検討すると、明細書の段落【0090】には「遊技中の遊技情報は、たとえば、払い出し予定の賞球個数、大当たり中であればラウンド数などである。また、遊技中の遊技情報は、たとえば大当たり判定用乱数、大当たり判定用乱数の取得にかかるカウント値、初期値乱数、初期値乱数の取得にかかるカウント値、初期値データである。・・・」と記載されている。
ここで、上記(ア)には、「パチンコ機10においてはバックアップ機能を有しており、万一停電が発生した際でも停電時の状態を保持し、停電からの復帰(復電)の際には停電時の状態に復帰できるようになっている。」と記載されていることから、引用発明の「RAM503,513のバックアップされたデータ」とは、停電時の状態に復帰するためのデータであって、それは、払い出し予定の賞球個数や大当たり中であればラウンド数等を含むデータであることは明らかである。
そうすると、引用発明の「RAM503,513のデータ」は本願補正発明の「遊技情報」に相当するといえる。

引用発明は、電源スイッチ382aの切替操作により電源ON又は電源OFFとされるようになっており、RAM消去スイッチ323がオン操作された状態でパチンコ機10の電源が投入され(停電解消による電源入を含む)、その後RAM消去スイッチ323がオフ操作されると、主制御装置261及び払出制御装置311においてそれぞれのRAM503,513のデータがクリヤされ、遊技の主要な処理が実行される通常処理に移行していることから、電源スイッチ382aとRAM消去スイッチ323が操作されたか否かを検出する「検出手段」に相当する構成を備えることは明らかである。

本願補正発明の「前記検出手段によって前記電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンの操作が検出された場合に、遊技の開始を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電源スイッチの電源投入操作により、前記遊技機が備える表示部に対して前記入力ボタンの操作を促す表示出力を行い、前記表示出力の後に前記検出手段によって前記入力ボタンの操作が再び検出された場合に、遊技を開始する」において、「遊技の開始」や「遊技を開始」で特定する事項が、遊技者における「遊技の開始」や「遊技を開始」であるとすると、電源スイッチや入力ボタンの配置上、枠部材が開いた状態であるため想定し得ないことから、「遊技の開始が可能な状態」や「遊技を開始することが可能な状態」であると解釈して以下検討をする(この解釈は、明細書の実施の形態とも整合する。)。
また、「・・・遊技の開始を制御する制御手段」と「・・・遊技を開始する」との関係が、同じ遊技の開始をする条件が異なっているため、必ずしも明確ではないが、「電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンの操作が検出された場合」に遊技を開始してしまうと、「前記電源スイッチの電源投入操作により、前記遊技機が備える表示部に対して前記入力ボタンの操作を促す表示出力を行い、前記表示出力の後に前記検出手段によって前記入力ボタンの操作が再び検出」することの技術的意義がなくなること、及び、いずれの機能も同じ「制御手段」によって実現していることから、「遊技の開始が可能な状態」や「遊技を開始することが可能な状態」となるのは、「前記検出手段によって前記電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンの操作が検出された場合に、前記遊技機が備える表示部に対して前記入力ボタンの操作を促す表示出力を行い、前記表示出力の後に前記検出手段によって前記入力ボタンの操作が再び検出された場合」であると認められ、これは、明細書の実施の形態とも整合する。
引用発明は、電源スイッチ382aの切替操作により電源ON又は電源OFFとされるようになっており、RAM消去スイッチ323がオン操作された状態でパチンコ機10の電源が投入され(停電解消による電源入を含む)(本願補正発明の「電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンの操作が検出された場合」に相当)、その後RAM消去スイッチ323がオフ操作されると(本願補正発明の「前記入力ボタンの操作が再び検出」に相当)、主制御装置261及び払出制御装置311においてそれぞれのRAM503,513のデータがクリヤされ、遊技の主要な処理が実行される通常処理に移行し(本願補正発明の「遊技を開始する」に相当)、RAM消去スイッチ323がオン操作された状態で、電源が立ち上げられてから、その後RAM消去スイッチ323がオフ操作されるまでの間、当該オフ操作を促す旨(本願補正発明の「入力ボタンの操作を促す」に相当)を表示装置に教示する(本願補正発明の「表示出力」に相当)教示手段を設けており、表示装置をパチンコ機10が備えるものであるかはともかく、引用例1では、主制御装置(主基板)261内のCPU501が各種処理を行うことにより所定の機能を実現していることから、引用発明の「CPU501」が本願補正発明の「制御手段」に相当するといえる。

以上を総合すると両者は、
「始動口の入賞ごとに取得される大当たり判定用の数値と、あらかじめ定められた数値とが一致する場合に大当たり遊技をおこなう遊技機が備える主制御基板であって、
前記主制御基板に対する電源の供給をおこなう電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンが操作されたか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記電源スイッチの電源投入操作と同時に、遊技情報を初期化する入力ボタンの操作が検出された場合に、遊技の開始を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電源スイッチの電源投入操作により、表示部に対して前記入力ボタンの操作を促す表示出力を行い、前記表示出力の後に前記検出手段によって前記入力ボタンの操作が再び検出された場合に、遊技を開始する主制御基板。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
入力ボタンの操作を促す表示出力を行う表示部を、本願補正発明では、遊技機が備えているのに対して、引用発明では、オフ操作を促す旨を教示する表示装置が遊技機に備えられているかどうかが不明である点。

5.判断
<相違点について>
引用例1の段落【0292】には「また、当該報知信号によって、音声、ランプ、表示装置等で、その旨を報知することとしてもよい。」と記載されるのみで、その設置場所について記載されていないものの、報知信号は各パチンコ機10が出力するものであること、各パチンコ機10ごとに表示する必要があること、各パチンコ機10には遊技に用いる表示装置を備えていることから、オフ操作を促す教示を行う表示装置をパチンコ機10が備える表示装置とすることは当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、本願補正発明の「前記検出手段によって前記入力ボタンの操作が再び検出された場合」との特定事項について、複数の解釈があり得るので念のため検討すると、明細書の実施の形態1および2では、ラムクリアスイッチ217のエッジオフかを判断しているS808及びS1311に対応する構成であり、段落【0187】?【0190】には、
「【0187】
そして、ラムクリアスイッチ217が出力する信号がオン状態を示す信号からオフ状態を示す信号に切り替わったか、すなわち、ラムクリアスイッチ217が出力する信号のエッジがオフ状態となったか否かを判断する(ステップS1311)。・・・
【0188】
ステップS1311において、ラムクリアスイッチ217が出力する信号のエッジがオン状態からオフ状態となった場合(ステップS1311:Yes)は、RAM213に記憶されている初期値乱数を、大当たり判定用乱数としてセットして、大当たり判定用乱数を更新する(ステップS1312)。これにより、RAM213に記憶されている大当たり判定用乱数と初期値乱数とが同じ数値となる。
・・・
【0190】
これによって、電源投入時のラムクリアスイッチ217の操作の後に、再度ラムクリアスイッチ217が操作された時点における初期値乱数が、大当たり判定用乱数の取得にかかるカウンタ値の初期値として設定される。すなわち、遊技機は、大当たり判定用乱数の取得にかかるカウンタ値のカウントを、再度ラムクリアスイッチ217が操作された時点における初期値乱数から開始する。
【0191】
具体的には、たとえば再度ラムクリアスイッチ217が操作された時点における初期値乱数が41であれば、41、42、・・・、306、0、1、・・・、305というカウントをおこなう。また、具体的には、たとえば再度ラムクリアスイッチ217が操作された時点における初期値乱数が304であれば、304、305、306、0、1、・・・、303というカウントをおこなう。」
と記載されている。そして、「前記検出手段によって前記入力ボタンの操作が再び検出された場合」が、ラムクリアスイッチ217のエッジをオフを判断していることに対応する特定事項であると解釈した場合の検討は上記4.のとおりである。
次に、段落【0146】?【0148】には、
「【0146】
なお、ステップS808において、ラムクリアスイッチ217が出力する信号のエッジがオン状態からオフ状態となったか否かを判断するようにした
が、これに限らず、たとえば、ラムクリアスイッチ217が押圧操作されたか否かを判断するようにしてもよい。具体的には、エッジがオン状態になったか否かを判断するようにし、つまり、ラムクリアスイッチ217から出力される信号がオフからオン状態になったことをもって、エッジがオン状態となったか否かを判断するようにしてもよい。
【0147】
この場合の構成について、補足しておく。上述した図3に示した検出部302は、主制御部210に対する電源の供給があった場合に、当該電源供給後にラムクリアスイッチ217が押下されたことを示す操作信号を検出するようにした構成とすればよい。検出部302は、具体的には、電源供給後に出力されたラムクリア信号を検出する。たとえば、検出部302は、電源スイッチとともにラムクリアスイッチ217が1回押圧操作されたことを検出する。
【0148】
また、検出部302は、電源供給後に、所定回数出力されたラムクリア信号を検出してもよい。すなわち、検出部302は、電源スイッチとともにラムクリアスイッチ217が所定回数押圧操作されたことを検出してもよい。ここで、所定回数は、2回あるいは3回以上の任意の回数に設定することが可能である。」
と記載されており、この場合、電源供給後に、所定回数ラムクリアスイッチ217が押圧操作されたことを検出することにより遊技を開始するという解釈となるものの、このように解釈した場合にも、平成22年9月9日付け拒絶理由通知で引用文献2として引用された特開2005-342290号公報の段落【0272】、【0273】には、所定回数遊技開始スイッチ414を押下することにより遊技を開始することが記載されているので、当該技術事項を引用発明のRAM消去スイッチ323に適用して本願補正発明の上記構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである点に留意されたい。

6.まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-05 
結審通知日 2011-12-06 
審決日 2011-12-19 
出願番号 特願2007-286762(P2007-286762)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 澤田 真治
吉村 尚
発明の名称 主制御基板、および、これを備えた遊技機  
代理人 酒井 昭徳  

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