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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A42B
管理番号 1252558
審判番号 不服2010-29683  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-14 
確定日 2012-02-14 
事件の表示 特願2006-357146「赤い可視光線と不可視光線の近赤外線を透過する帽子」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月26日出願公開、特開2008-144334〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年12月8日の出願であって、平成22年9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月15日に拒絶査定を不服として審判請求がなされたものである。


2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりものであると認められる。

「赤い可視光線と不可視光線の近赤外線を透過する帽子」


3 引用発明
これに対して、当審における、平成23年4月27日付けで通知した拒絶の理由の理由2に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-37318号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2002-129424号公報(以下、「引用例2」という。)、及び実願平5-66709号(実開平7-31060号)のCD-ROM(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

[引用例1について]
(1)「【特許請求の範囲】
赤い光のみを透過する帽子、」

(2)「【発明の詳細な説明】
(中略)
まず頭毛が薄くなってきたならばそれは毛根が弱くなってきているのであるから毛根に赤色光の光線を照射すれば赤色光の光線は頭皮に浸透する性質があるから頭皮内部の毛根に刺激を与えるので毛根は刺激を受け活性化して頭の毛が生えると言うことになる。
すなわち赤色光の光線のみを頭皮に到達するには、赤い色で光が透過する帽子にすれば、赤色光のみの光線が頭皮に到達するので赤色光は頭皮に浸透し毛根に刺激が与えられ活性化して頭の毛が生えることになる。
このような構造にできている本発明の帽子を被っていれば、知らず知らずのうちに頭の毛が生えてきて禿げ頭にはならないと言う帽子の出現により今までのように炎天下の中外でヘルメットを毎日被り貴重な頭毛を暗く蒸らして禿げ頭を助長するような帽子から、本発明の赤光色の光線のみが頭皮に到達するようにするには帽子を赤くして赤い光が透過する構造にすれば赤色光は頭皮に到達して浸透して毛根が活性化して毛が生えてくるというという構造の発明なのである。
帽子というものは頭の上の毛を被せる道具であるからヘルメット、ばかりではなく他の帽子も指しことは云うまでもない。」

以上の記載事項によると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「赤い光が透過する構造とした帽子。」

[引用例2について]
(1)「【特許請求の範囲】
赤外線の光のみを透過する帽子.」

(2)「【発明の詳細な説明】(中略)赤外線と云うものは明るいところであればどこにでも発生しているので、本発明の赤外線のみを透過する帽子を着用しておれば頭肌は常に赤く内部まで浸透されているので、病院で赤外線ランプ治療をしていると同じことであるから、毛根はいつも活達であるから禿げ頭になる等と云うことはないのである.又赤外線治療は温度が高ければ高いほど治療効果も上昇するのであるから、お天気のよい真夏の暑い日等はなるべく屋外にでて頭肌に養毛剤あるいはオリーブ油等をタップリとすり込んで赤外線のみを透過する赤い帽子を着用すれば帽子内の温度は上昇するので毛根細胞の働きはより活達となる.(中略)以上のような構造にできている本発明の禿げ頭を直す帽子の出現により、頭毛が薄くなって心配な人は赤外線のみを透過する帽子を常に着用していれば頭肌は赤く頭の内部へ浸透しているので睡眠時間を除いて着用していれば常時毛根生還治療に専念できるので安心である.又従来のように頭肌を暗く蒸らして貴重な毛根を退化させ、禿げ頭にしてしまう鬼ののような帽子を着用しなければならない職業の人達は、本発明の赤外線のみを透過する帽子を着用することにより頭肌は常に赤く内部まで浸透するので毛根細胞が活達となり毛が生えてくると云う、今までとはまったく逆な安心感が心の底から沸いて来るので仕事も楽しくなると云うありがたい帽子なのである。」

[引用例3について]
(1)「【請求項1】 赤外光を含む光を発光するハロゲンランプと、
前記ハロゲンランプからの光のうち、0.6?1.6μmの波長の光を透過するフィルタと、
前記フィルタを透過した光を集光してスポット光を脱毛部位に照射するためのレンズを備えたプローベとを有し、
前記プローベの発光面を脱毛部位に密着させ、所定時間毎に脱毛部位上を移動させながら照射を行うことを特徴とする脱毛症治療装置。」

(2)「【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記目的を達成するために、赤外光を含む光を発光するハロゲンランプと、前記ハロゲンランプからの光のうち、0.6?1.6μmの波長の光を透過するフィルタと、前記フィルタを透過した光を集光してスポット光を脱毛部位に照射するためのレンズを備えたプローベとを有し、前記プローベの発光面を脱毛部位に密着させ、所定時間毎、好ましくは約1秒毎に脱毛部位上を移動させながら約5分間照射を行うことを特徴とする。
【0006】
【作用】
本考案では、0.6?1.6μmの波長の近赤外線がスポット光として脱毛部位に照射され、近赤外線のスポット光による局所血流増加作用により発毛が促進される。また、ハロゲンランプの光量を比較的高くすることにより近赤外線のスポット光の頭皮内への深達性を高くでき、刺激感がソフトであって照射後長時間温感が継続し、頭皮全体の血行を良くすることができる。更に、近赤外線のスポット光を脱毛部位上で移動させるので、低温やけどを防止することができる。したがって、特に難治性円形脱毛症に有効な脱毛症治療装置を実現することができる。」

(3)「【0026】
【考案の効果】
以上説明したように本考案は、赤外光を含む光を発光するハロゲンランプと、前記ハロゲンランプからの光の内、0.6?1.6μmの波長の光を透過するフィルタと、前記フィルタを透過した光を集光してスポット光を脱毛部位に照射するためのレンズを備えたプローブとを有し、前記プローブの発光面を脱毛部位に密着させ、約1秒毎に脱毛部位上を移動させながら約5分間照射を行うようにしたので、近赤外線のスポット光による局所血流増加作用により発毛が促進され、また、ハロゲンランプの光量を比較的高くすることにより近赤外線のスポット光の頭皮内への深達性を高くして毛根まで到達させることができ、また、刺激感がソフトであって照射後長時間温感が継続し、頭皮全体の血行を良くすることができ、更に、近赤外線のスポット光を脱毛部位上で移動させるので、低温やけどを防止することができる。したがって、特に難治性円形脱毛症に有効な脱毛症治療装置を実現することができる。」


4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「帽子」は、本願発明の「帽子」に相当する。
また、引用発明における「赤い光」は、少なくとも「赤い可視光線」を含む限りにおいて、本願発明の「赤い可視光線」と一致する。
したがって、両者は

「赤い可視光線を透過する帽子。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、不可視光線の近赤外線が透過するのに対し、引用発明では、「赤い光」に不可視光線の近赤外線が含まれるとの特定がない点。


5 判断
上記相違点について検討する。
引用例1には、頭皮内部の毛根に刺激を与えて活性化させて頭の毛を生やすという課題を解決するために、帽子を「赤く」して「赤い光」が透過する構造にしたことが記載されている。
一方、引用例2には、赤外線が毛根細胞を活性化することが記載され、また、引用例3には、近赤外線が発毛を促進することが記載されている。
そして、出願時に提出された「新潟大学記録報告書」及び審判請求時に提出された「資料1」でも例示された、赤い可視光線を透過する材料としてよく知られている赤色プラスチックフィルム及び赤色布が、不可視光線の近赤外線を透過することも、ごく普通に知られていたことである。
したがって、引用発明において、引用例2?3に記載された技術的事項を参酌し、また、適宜材料を選択し、「赤い光」と「近赤外線」が透過するように帽子を構成することは、当業者であれば容易になし得たものであり、格別の効果を奏するものでもない。


6 むすび
したがって、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-30 
結審通知日 2011-07-05 
審決日 2011-07-20 
出願番号 特願2006-357146(P2006-357146)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A42B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 一ノ瀬 薫
熊倉 強
発明の名称 赤い可視光線と不可視光線の近赤外線を透過する帽子  

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