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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1252578
審判番号 不服2010-19945  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-03 
確定日 2012-02-20 
事件の表示 特願2004-179659「印刷装置、及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月 5日出願公開、特開2006- 1127〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年6月17日の特許出願であって、原審において平成22年1月4日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月8日付けで手続補正がなされ、同年6月1日付けで拒絶査定がなされ、同年9月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正がなされたものである。
その後当審において、平成23年9月9日付けで平成22年9月3日付けの手続補正を却下すると同時に拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成23年11月11日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年11月11日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの次のものであると認める。
「【請求項1】
印刷のために認証処理が必要な印刷ジョブに対する認証データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された認証データが認証されることにより印刷が許可される第1のタイプの印刷ジョブ、印刷のために前記認証処理を必要としない第2のタイプの印刷ジョブ、のそれぞれに基づいた印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第1のタイプの印刷ジョブであるのか、前記第2のタイプの印刷ジョブであるのかを判断する判断手段と、
印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第2のタイプの印刷ジョブであると前記判断手段が判断したことに応じて、前記印刷中の第2のタイプの印刷ジョブに基づく印刷を中断させ、前記割り込みジョブに基づく印刷を行うように前記印刷手段を制御し、
印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第1のタイプの印刷ジョブであると前記判断手段が判断したことに応じて、前記第1のタイプの印刷ジョブに基づく印刷の終了後であって、印刷待ちの印刷ジョブに基づく印刷より先に前記割り込みジョブに基づく印刷を行うように前記印刷手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする印刷装置。」

第3 引用刊行物
1 本願出願前に頒布され、当審拒絶理由において引用された刊行物である、特開平9-263023号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の記載がある。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1a)「【請求項1】 多数のユーザーに使用されるプリンタにおいて、インタフェースで受信した文書情報と付加された暗証番号をそれぞれ記憶する文書情報記憶部及び暗証情報記憶部と、それらの関係を管理する記憶情報管理部を有し、暗証番号入力部から秘文書に付加された暗証番号をユーザーが入力すると、記憶情報管理部が暗証情報記憶部を検索し、該当する暗証番号があった場合、その暗証番号に対応する秘文書情報の印刷を印刷制御部に要求し、印刷制御部は、印刷部が印刷状態でない場合、印刷を速やかに開始させ、印刷部が印刷状態である場合、印刷を中断させ、改頁情報を送信すると共に印刷中断位置を印刷情報記憶部に記憶し、秘文書を優先して印刷する秘文書優先出力プリンタ。
【請求項2】 印刷部が印刷中の文書が秘文書である場合、印刷制御部は、印刷を中断させない請求項1記載の秘文書優先出力プリンタ。
【請求項3】 印刷が中断された文書は、秘文書の印刷終了後に印刷を続行される請求項1記載の秘文書優先出力プリンタ。」
(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有線又は無線のLAN(LOCAL AREA NETWORK)等に接続され、多数のユーザーに使用されるプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】特開平5-221089号公報には、外部装置から受信した印字データ及び、暗証番号を保持する記憶部をそれぞれ有し、暗証番号を入力する手段と、入力された暗証番号と記憶している暗証番号とを比較する手段を有し、前記比較の結果が一致していた場合、前記受信したデータの印刷開始を指示する手段を有している印刷装置が、記載されている。
【0003】この印刷装置では、外部装置は、印刷データを印刷装置の入力バッファに入力すると共に、暗証データを暗証データ設定部に送りつける。この後、オペレーターにパネル部から適当な暗証番号を入力させ、暗証番号判定部でその番号と暗証番号設定部から取り込んだ暗証番号とを比較する。もし両者が一致したならば、入力バッファ部に記憶している印刷データを印刷すべく、印刷部に印刷開始を指示する。なお、暗証番号の判定が、所定回数に達しても一致を見ない場合には、入力バッファに格納されている印刷データは消去される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術では、印刷させようとした印刷装置が、既に他の文書を印刷中であった場合、送信した秘文書の暗証番号を入力しても既に印刷中の文書の出力が終わらない限り、秘文書の印刷を行うことが出来ない。このため、印刷中の文書が大量であった場合には、ユーザーはその間、印刷装置の所で待ち続ける必要がある。(待ち続けていないと、印刷された秘文書が第三者に読まれてしまう可能性がある。)また、印刷中の文書出力が終わってから、暗証番号を入力することも可能であるが、この場合、印刷装置の状態をいちいち確認しに来なくてはならず、手間がかかるという問題がある。
【0005】そこで、本発明は、前記従来の技術の欠点を改良し、他の文書が印刷中であっても、その文書の印刷を中断して、秘文書の印刷を優先的に行うプリンタを提供しようとするものである。」
(1c)「【0010】
【発明の実施の形態】図1において、プリンタ100は、有線又は無線のLANとLANインタフェース101を有している。端末からのデータは、このLANインタフェース101を介し、記憶情報管理部104で分析され、文書情報と暗証情報に分けられる。そして、それぞれの情報は管理テーブルの内容に従って、文書情報記憶部102、暗証情報記憶部103に記憶(暗証情報がある場合のみ)され、同時にそれらの情報の関係及び印刷状況が管理テーブル109に記憶される。
【0011】秘文書を送信したユーザーは、送信した秘文書を印刷させるため、プリンタ100の暗証番号入力部105から送信した秘文書に付加した暗証番号を入力する。記憶情報管理部104は、入力された暗証番号が暗証情報記憶部103に記憶されているか否か検索し、記憶されている場合、その暗証番号に対応する文書情報記憶部102における文書情報の記憶位置を管理テーブル109から割り出し、印刷制御部106へ印刷開始を要求する。
【0012】印刷制御部106は、その時他の文書を印刷していない場合は、要求された秘文書の印刷を開始するために印刷部108に情報を送る。また、他の文書を印刷していた場合には、印刷中の文書で改ページ情報を印刷部108に送るタイミングで、一時的にこの文書の印刷を中断すると共に、印刷中断位置を印刷情報記憶部107に記憶し、要求された秘文書の情報を印刷部108に送り印刷を開始する。ただし、印刷していた他の文書が、同様に秘文書である場合は、この限りでない。そして、この秘文書の印刷が終了した時点で、再び中断していた文書の印刷を開始するため、印刷情報記憶部107から、印刷を再開する文書情報が入っている記憶位置を読み出し印刷を再開する。」

上記記載事項(1a)ないし(1c)及び図面の記載からみて、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「有線又は無線のLAN(LOCAL AREA NETWORK)等に接続され、多数のユーザーに使用されるプリンタに関し、外部装置から受信した印字データ及び、暗証番号を保持する記憶部をそれぞれ有し、暗証番号を入力する手段と、入力された暗証番号と記憶している暗証番号とを比較する手段を有し、前記比較の結果が一致していた場合、前記受信したデータの印刷開始を指示する手段を有している印刷装置においては、
印刷させようとした印刷装置が、既に他の文書を印刷中であった場合、送信した秘文書の暗証番号を入力しても既に印刷中の文書の出力が終わらない限り、秘文書の印刷を行うことが出来ないため、印刷中の文書が大量であった場合には、ユーザーはその間、印刷装置の所で待ち続ける必要があり、待ち続けていないと、印刷された秘文書が第三者に読まれてしまう可能性があること、また、印刷中の文書出力が終わってから、暗証番号を入力することも可能であるが、この場合、印刷装置の状態をいちいち確認しに来なくてはならず、手間がかかるという問題があるという従来の技術の欠点を改良し、他の文書が印刷中であっても、その文書の印刷を中断して、秘文書の印刷を優先的に行うプリンタを提供しようとするものであって、
有線又は無線のLANとLANインタフェースを有しているプリンタであって、端末からのデータは、このLANインタフェースを介し、記憶情報管理部で分析され、文書情報と暗証情報に分けられ、そして、それぞれの情報は管理テーブルの内容に従って、文書情報は文書情報記憶部に記憶され、暗証情報はある場合のみ暗証情報記憶部に記憶され、同時にそれらの情報の関係及び印刷状況が管理テーブルに記憶されるものであり、
秘文書を送信したユーザーは、送信した秘文書を印刷させるため、プリンタの暗証番号入力部から送信した秘文書に付加した暗証番号を入力して、記憶情報管理部は、入力された暗証番号が暗証情報記憶部に記憶されているか否か検索し、記憶されている場合、その暗証番号に対応する文書情報記憶部における文書情報の記憶位置を管理テーブルから割り出し、印刷制御部へ印刷開始を要求し、
印刷制御部は、その時他の文書を印刷していない場合は、要求された秘文書の印刷を開始するために印刷部に情報を送り、
他の文書を印刷していた場合であって、印刷していた他の文書が秘文書でない場合には、印刷中の文書で改ページ情報を印刷部に送るタイミングで、一時的にこの文書の印刷を中断すると共に、印刷中断位置を印刷情報記憶部に記憶し、要求された秘文書の情報を印刷部に送り印刷を開始し、この秘文書の印刷が終了した時点で、再び中断していた文書の印刷を開始するため、印刷情報記憶部から、印刷を再開する文書情報が入っている記憶位置を読み出し印刷を再開し、
他の文書を印刷していた場合であって、印刷していた他の文書が同様に秘文書である場合には、印刷を中断させないものである、
プリンタ。」(以下「引用発明1」という。)

2 本願出願前に頒布され、当審拒絶理由において引用された刊行物である、特開2003-330650号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像処理装置に関し、特に、機密印刷を行う画像処理装置に関する。」
(2b)「【0018】図2は機密印刷ジョブの処理を示すフローチャートである。機密印刷文書が蓄積されていて、ユーザによってオペレーションパネルからパスワード入力と共に印刷開始指示が行われると、現在実行中のジョブの有無及び既に印刷開始指示が行われて機密印刷ジョブの有無が調べられる(ステップS201)。既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブがある場合は、図示しないが既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブの終了を待って、今回印刷開始指示が行われた機密印刷ジョブの印刷が開始されるものとする。」

上記記載事項(2a)ないし(2b)及び図面の記載からみて、引用例2には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「機密印刷を行う画像処理装置であって、
機密印刷文書が蓄積されていて、ユーザによってオペレーションパネルからパスワード入力と共に印刷開始指示が行われると、現在実行中のジョブの有無及び既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブの有無が調べられ、既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブがある場合は、既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブの終了を待って、今回印刷開始指示が行われた機密印刷ジョブの印刷が開始されるものとする
画像処理装置。」(以下「引用発明2」という。)

第4 対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「プリンタ」が本願発明の「印刷装置」に、以下同様に「暗証情報」及び「暗証番号」が「認証データ」に、「暗証番号入力部」が「入力手段」に、「印刷部」が「印刷手段」に、「印刷制御部」が「制御手段」に、「印刷中」が「印刷中」に、それぞれ相当している。
(2)引用発明1の「端末からのデータ」及び「秘文書」は、文書情報と暗証情報に分けられ、文書情報は文書情報記憶部に記憶され、暗証情報はある場合のみ暗証情報記憶部に記憶され、同時にそれらの情報の関係及び印刷状況が管理テーブルに記憶されるものであるから、ともに、「印刷ジョブ」ということができる。
(3)引用発明1の「『暗証番号(認証データ)』がある場合の『端末からのデータ(印刷ジョブ)』」は「秘文書」であって、引用発明1において、「秘文書を送信したユーザーは、送信した秘文書を印刷させるため、プリンタの暗証番号入力部から送信した秘文書に付加した暗証番号を入力して、記憶情報管理部は、入力された暗証番号が暗証情報記憶部に記憶されているか否か検索し、記憶されている場合、その暗証番号に対応する文書情報記憶部における文書情報の記憶位置を管理テーブルから割り出し、印刷制御部へ印刷開始を要求」しているから、引用発明1の「秘文書(印刷ジョブ)」は、本願発明の「印刷ジョブ」のうちの、「入力手段により入力された認証データが認証されることにより印刷が許可される第1のタイプの印刷ジョブ」に相当するということができる。
また、引用発明1において、「『暗証番号(認証データ)』がない場合の『端末からのデータ(印刷ジョブ)』」は「『秘文書』でない文書」であるから、「ある場合のみ暗証情報記憶部に記憶され」る「暗証番号(認証データ)」が存在せず、認証処理を必要としないことは当業者に自明であり、引用発明1の「『秘文書』でない文書」は、本願発明の「印刷ジョブ」のうちの、「印刷のために認証処理を必要としない第2のタイプの印刷ジョブ」に相当するということができる。
そして、引用発明1において、「『暗証番号(認証データ)』がある場合の『端末からのデータ(印刷ジョブ)』」である「秘文書」を「プリンタ(印刷装置)」に送信したとき、引用発明1の「プリンタ(印刷装置)」の「印刷制御部(制御手段)」は、「他の文書を印刷していた場合であって、印刷していた他の文書が『秘文書』でない場合には、印刷中の文書で改ページ情報を印刷部に送るタイミングで、一時的にこの文書の印刷を中断すると共に、印刷中断位置を印刷情報記憶部に記憶し、要求された『秘文書』の情報を印刷部に送り印刷を開始する」ことから、引用発明1の「秘文書」は、印刷中の「『秘文書』でない文書(印刷のために認証処理を必要としない第2のタイプの印刷ジョブ)」より優先して印刷されるものということができる。
すなわち、引用発明1の「秘文書」は、本願発明の「入力手段により入力された認証データが認証されることにより印刷が許可される第1のタイプの印刷ジョブ」及び「印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う」「割り込みジョブ」に相当するということができる。
(4)引用発明1の「プリンタ(印刷装置)」は、「秘文書を送信したユーザーは、送信した秘文書を印刷させるため、プリンタの暗証番号入力部から送信した秘文書に付加した暗証番号を入力して、記憶情報管理部は、入力された暗証番号が暗証情報記憶部に記憶されているか否か検索し、記憶されている場合、その暗証番号に対応する文書情報記憶部における文書情報の記憶位置を管理テーブルから割り出し、印刷制御部へ印刷開始を要求し」、「印刷制御部は、その時他の文書を印刷していない場合は、要求された秘文書の印刷を開始するために印刷部に情報を送り」、「他の文書を印刷していた場合であって、印刷していた他の文書が秘文書でない場合には、印刷中の文書で改ページ情報を印刷部に送るタイミングで、一時的にこの文書の印刷を中断すると共に、印刷中断位置を印刷情報記憶部に記憶し、要求された秘文書の情報を印刷部に送り印刷を開始し、この秘文書の印刷が終了した時点で、再び中断していた文書の印刷を開始するため、印刷情報記憶部から、印刷を再開する文書情報が入っている記憶位置を読み出し印刷を再開し」、「他の文書を印刷していた場合であって、印刷していた他の文書が同様に秘文書である場合には、印刷を中断させないものである」から、引用発明1の「印刷制御部」は、「印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが第1のタイプの印刷ジョブであるのか、第2のタイプの印刷ジョブであるのかを判断する」「判断手段」に相当するということができる。
(5)(3)及び(4)から、引用発明1の「印刷制御部(制御手段)」は、「印刷部(印刷手段)」が印刷中の文書がない場合には、「秘文書(入力手段により入力された認証データが認証されることにより印刷が許可される第1のタイプの印刷ジョブ)」及び「『秘文書』ではない他の文書(印刷のために認証処理を必要としない第2のタイプの印刷ジョブ)」の印刷を開始するよう「印刷部(印刷手段)」を制御することができ、かつ、「印刷部(印刷手段)」が印刷中の文書がある場合には、「印刷部(印刷手段)」が印刷中の文書が「秘文書(入力手段により入力された認証データが認証されることにより印刷が許可される第1のタイプの印刷ジョブ)」であるのか「『秘文書』ではない他の文書(印刷のために認証処理を必要としない第2のタイプの印刷ジョブ)」であるのかを判断して、「秘文書(割り込みジョブ)」を「割り込みジョブ」として処理できるものということができる。
してみると、引用発明1の「印刷制御部(制御手段)」と本願発明の「制御手段」は、「印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが第2のタイプの印刷ジョブであると判断手段が判断したことに応じて、前記印刷中の第2のタイプの印刷ジョブに基づく印刷を中断させ、前記割り込みジョブに基づく印刷を行うように前記印刷手段を制御」する点、及び、「印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが第1のタイプの印刷ジョブであると判断手段が判断したことに応じて、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブを中断しないように前記印刷手段を制御する」点で一致する。

上記(1)ないし(5)から、本願発明と、引用発明1は、以下の点で一致している。
「印刷のために認証処理が必要な印刷ジョブに対する認証データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された認証データが認証されることにより印刷が許可される第1のタイプの印刷ジョブ、印刷のために前記認証処理を必要としない第2のタイプの印刷ジョブ、のそれぞれに基づいた印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第1のタイプの印刷ジョブであるのか、前記第2のタイプの印刷ジョブであるのかを判断する判断手段と、
印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第2のタイプの印刷ジョブであると前記判断手段が判断したことに応じて、前記印刷中の第2のタイプの印刷ジョブに基づく印刷を中断させ、前記割り込みジョブに基づく印刷を行うように前記印刷手段を制御し、
印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第1のタイプの印刷ジョブであると前記判断手段が判断したことに応じて、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブを中断しないように前記印刷手段を制御する制御手段と
を備える印刷装置。」

そして、以下の点で相違している。
(相違点)
「印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第1のタイプの印刷ジョブであると前記判断手段が判断したことに応じて」「制御手段」が「前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブを中断しないように前記印刷手段を制御する」ことについて、本願発明では「前記第1のタイプの印刷ジョブに基づく印刷の終了後であって、印刷待ちの印刷ジョブに基づく印刷より先に前記割り込みジョブに基づく印刷を行うように前記印刷手段を制御する」のに対し、引用発明1の「制御手段」が行う制御が、明確でない点。

上記相違点について検討する。
(相違点について)
引用例2には、
「機密印刷を行う画像処理装置であって、
機密印刷文書が蓄積されていて、ユーザによってオペレーションパネルからパスワード入力と共に印刷開始指示が行われると、現在実行中のジョブの有無及び既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブの有無が調べられ、既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブがある場合は、既に印刷開始指示が行われている機密印刷ジョブの終了を待って、今回印刷開始指示が行われた機密印刷ジョブの印刷が開始されるものとする
画像処理装置。」
が引用発明2として記載されている。(上記「第3 2」参照。)
引用発明1は、「印刷させようとした印刷装置が、既に他の文書を印刷中であった場合、送信した秘文書の暗証番号を入力しても既に印刷中の文書の出力が終わらない限り、秘文書の印刷を行うことが出来ないため、印刷中の文書が大量であった場合には、ユーザーはその間、印刷装置の所で待ち続ける必要があり、待ち続けていないと、印刷された秘文書が第三者に読まれてしまう可能性があること、また、印刷中の文書出力が終わってから、暗証番号を入力することも可能であるが、この場合、印刷装置の状態をいちいち確認しに来なくてはならず、手間がかかるという問題があるという従来の技術の欠点を改良し、他の文書が印刷中であっても、その文書の印刷を中断して、秘文書の印刷を優先的に行うプリンタを提供しようとするもの」であるから、引用発明1において、「秘文書(割り込みジョブ)」に基づく印刷は、なるべく早く行いたいという認識を有していることは明らかである。
そして、そのような認識のもとに、引用発明1の「印刷中の印刷ジョブよりも優先して印刷を行う割り込みジョブが入力された場合に、前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブが前記第1のタイプの印刷ジョブであると前記判断手段が判断したことに応じて」「制御手段」が「前記印刷手段によって印刷中の印刷ジョブを中断しないように前記印刷手段を制御する」場合、前記第1のタイプの印刷ジョブに基づく印刷の終了後であって、印刷待ちの印刷ジョブに基づく印刷より先に前記割り込みジョブに基づく印刷を行うように前記印刷手段を制御するようになすことは、引用発明2に基づき、当業者が適宜なし得たことである。

そして、本願発明の効果も引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。
すなわち、本願発明は、当審拒絶理由に記載された引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当審拒絶理由に記載された引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-15 
結審通知日 2011-12-19 
審決日 2012-01-06 
出願番号 特願2004-179659(P2004-179659)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 東 治企
鈴木 秀幹
発明の名称 印刷装置、及びその制御方法  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  

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