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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1252619 |
審判番号 | 不服2009-20629 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-10-26 |
確定日 | 2012-02-23 |
事件の表示 | 平成11年特許願第228623号「電流センサ用磁気コアおよび電流センサ用磁気コアを用いた電流センサ、ならびに電流センサ用磁気コアの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月23日出願公開、特開2001- 52933〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成11年8月12日の出願であって、平成21年4月23日付けの拒絶理由通知に対して、同年6月26日付けで手続補正がなされたとともに意見書が提出されたが、同年7月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月26日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 そして、平成23年7月26日付けで当審よりなされた審尋に対して、同年9月28日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成21年10月26日付けでなされた手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明を補正するものであり、このうち、特許請求の範囲については、以下のとおりである。 〈補正事項a〉 ・補正前の請求項1及び6の 「磁路となる方向に対し垂直な方向に500Oe以上」の「磁界」を、それぞれ、 補正後の請求項1及び4の 「磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上」の「磁界」と、 補正する。 〈補正事項b〉 ・補正前の請求項1及び6の 「透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.4倍以上0.6倍以下である」を、それぞれ、 補正後の請求項1及び4の 「透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である」と、 補正する。 〈補正事項c〉 ・補正前の請求項2、4、7及び9を削除し、これに伴い、補正前の請求項3、5、6及び8を繰り上げて、補正後の請求項2、3、4及び5とする。 2.新規事項の有無及び補正目的の適否 前記補正事項a?cの本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 そして、前記補正事項aの補正は、「磁路となる方向に対し垂直な方向」の「磁界」を「500Oe以上」から「1000Oe以上」に限定するものであり、前記補正事項bの補正は、「初透磁率μ_(i)の0.4倍以上0.6倍以下」という範囲を「初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下」に限定するものである。したがって、補正事項a及びbについての補正は、特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とする補正であると認められる。 また、前記補正事項cの補正は、請求項の削除を目的とする補正である。 よって、補正事項a?cについての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合している。 3.独立特許要件を満たすかどうかの検討 以上のように、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含んでいる。 そこで、以下、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかを、本件補正後の請求項4に係る発明(以下「本件補正発明」という。)について検討する。 (1)本件補正発明 本件補正後の請求項4に係る発明(本件補正発明)は、次のとおりである。 【請求項4】 「Co系アモルファス合金を有する電流センサ用磁気コアの製造方法であって、 前記電流センサ用磁気コアとなるCo系アモルファス合金に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の磁界を印加して1時間以上磁界中熱処理を行い、初透磁率μ_(i)が50,000以上100,000以下であり、且つ4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である電流センサ用磁気コアを得ることを特徴とする電流センサ用磁気コアの製造方法。」 (2)引用文献の表示 引用文献:特開平11-186020号公報 (3)引用文献の記載及び引用発明 (3-1)引用文献の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平11-186020号公報(以下「引用文献」という。)には、「零相変流器」(発明の名称)に関して、図1、図2とともに、次の記載がある(下線は、参考のため、当審において付した。以下、他の刊行物についても同様である。)。 ア.従来の技術 A.「【0002】 【従来の技術】零相変流器は、建築物から家電製品といった一般電気機器等の漏洩遮断器の電流センサーとして幅広く用いられている。零相変流器を用いた漏洩遮断器の基本構成回路を図1に示す。零相変流器を貫通する2つの導線には相反する方向に電流が流れており、零相変流器の1次側電流としてみた場合、電流I1とI2 は相殺されてI1-I2 =0となるため2次側の誘起電圧はゼロである。 【0003】導線の一部に漏電が生じると、 I1-I2 ≠0となり結果として1次側電流が存在し、2次側に誘起電圧が生じる。これによって導線に接続しているリレー回路が作動し、電流が遮断される。このように、零相変流器は微小な漏洩電流を検知する必要があるため、零相変流器用コアに用いる磁性材料は透磁率、特に感度を上げるため初透磁率が高いことが重要な条件となる。また、零相変流器の使用される環境を考慮すると温度特性の安定化も重要な条件となる。 【0004】さらに、零相変流器に要求される特性として、過漏電特性が挙げられる。零相変流器は常に所定の電流値で再現性良く動作信号を出すことが要求されるが、通常数10mAといった微小な電流を検出しているため接地地絡のような過大な電流(過電流)が通過すると、通過前と比較して感度電流値が大きくなり、零相電流に対する感度が悪くなる。この感度の低下の度合いを「過漏電特性」と呼び、[(過電流通過後の2次側出力電圧-過電流通過前の2次側出力)/過電流通過前の2次側出力電圧]×100で示す値のことで、パーセントで表わす。この過漏電特性が0に近いものほど接地地絡のような過大な電流が流れた後も劣化が少なく、感度の良い零相変流器となる。」 イ.発明の実施の形態 B.「【0016】 【発明の実施の形態】本発明を実施するための形態について説明する。本発明では、直流角形比を0.1?20%とした磁性合金薄帯を用いている。直流角形比とは、直流ヒステリシス曲線におけるBr(残留磁束密度)/Bs(飽和磁束密度)の比であり、その比が0.1?20%のものがよく、好ましくは0.1?10%である。この直流角形比が、小さいと零相変流器における過漏電特性が向上する。その理由として、直流角形比が小さいと交流での透磁率が上がり、交流特性が向上するためであり、接地地絡のような大電流が流れた後でも微小電流を感度良く検出することが可能となる。 【0017】直流角形比を0.1?20%にする方法としては、コアを構成する薄帯の幅方向に磁場を印加して熱処理を施すことが効果的である。例えば図2に示す通り、非晶質合金薄帯を巻回したコアの幅方向に磁場を印加することになり、この方向に有効に磁場が印加されるのであれば幅方向からの多少の傾きは許容される。なお、磁場中熱処理は非晶質薄帯を製造、巻回しコアを形成した後の歪取り熱処理の次の処理として連続して行ってもよいし、歪取り熱処理後一旦冷却した後、改めて磁場中熱処理を行ってもよい。磁場の印加も、磁場中熱処理時に始めて印加してもよいし、歪取り熱処理時から印加してもよい。 【0018】熱処理温度は、キュリー温度以下であればよく、100℃以上が実用的であり、好ましくは180℃以上であるとより効果的である。雰囲気については、窒素、アルゴン等の不活性ガス中、真空中や水素ガス等の還元雰囲気中、大気中等のいずれでもよい。熱処理時間は、10分?3時間程度が好ましく、特に好ましくは1時間?2時間である。 【0019】なお、磁場中熱処理時に印加する磁場の強さは1Oe以上、好ましくは10Oe以上である。パーマロイについても、溶解、圧延処理により製造されたパーマロイ薄帯を巻回又は積層することによってコアを形成し、非晶質合金の場合と同様に幅方向に磁場を印加しながら熱処理を行うことにより直流角形比を所定の数値に調整することが可能となる。」 C.「【0022】次に、Co系非晶質合金又はFe系非晶質合金について説明すると、一般式:(M_(1-a) M’_(a))_(100-b) X_(b)、(式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))、M元素はCo又は/及びFeとなり磁束密度や鉄損、微小電流に対する感度等要求される磁気特性に応じて組成比率を調整していく、M’元素は、熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素であり、好ましくはCr、Mn、Zr、Nb、Moを用いるのがよく、X元素は非晶質合金を得るのに必要な元素であり、特にBは非晶質化するのに有効な元素であり、Siは非晶質形成を助成すること及び結晶化温度の上昇に有効な元素である。」 D.「【0024】非晶質合金薄帯の製造方法としては、液体急冷法が好ましく、具体的には、所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から10^(5) ℃/秒以上の冷却速度で急冷することによって得られる。このような液体急冷法により製造された非晶質合金薄帯の厚みは、20μm以下が好ましく、さらに好ましくは8?15μmであり、薄帯の厚さを制御することにより低損失のコアを得ることが可能となる。」 ウ.実施例 E.「【0029】 【実施例】(実施例1?8)所定の直流角形比をもつCo系非晶質合金又は微細結晶を有する磁性合金からなるコアに関する過漏電特性を測定した。」 F.表1には、実施例1?6は、「磁性材料」が「Co系非晶質」であり、「直流角形比」は「0.1」%?「20」%の範囲にあることが記載されている。 エ.発明の効果 G.「【0039】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の直流角形比を0.1?20%にしたコアを用いた零相変流器は、高出力かつ過漏電特性に優れることから接地地絡のような大電流が流れた後でも良好な特性を示すことが分かり、建築物から家電製品までさまざまな分野の漏電遮断器に長期にわたり安定した性能を発揮することが可能となる。」 オ.図面 H.図1及び図2から、図2に示される「磁場印加方向」は、図1の「ZCT」に巻回された巻線に電流が流れた際に発生する磁束の磁路に対して垂直な方向であることが見て取れる。 (3-2)引用発明 前記ア?オによれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「組成が(M_(1-a) M’_(a))_(100-b) X_(b)、(式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))で表されるCo系アモルファス合金の薄帯を有する、漏洩遮断器の電流センサーとして用いられる零相変流器用磁気コアの製造方法であって、 前記電流センサーとして用いられる磁気コアとなる前記Co系アモルファス合金の薄帯に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の印加磁界にて1時間?2時間、180℃以上の熱処理温度で磁界中熱処理を行い、直流角形比が0.1?20%である電流センサーとして用いられる磁気コアを得ることを特徴とする零相変流器用磁気コアの製造方法。」 (4)対比 (4-1)本件補正発明と引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明が「組成が(M_(1-a) M’_(a))_(100-b) X_(b)、(式中、MはCo、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))で表されるCo系アモルファス合金」の「薄帯」を有することは、本件補正発明が「Co系アモルファス合金」を有することに相当する。 イ.引用発明の「零相変流器」は「漏洩遮断器の電流センサー」として、すなわち、「電流センサー」として用いられるものである。 したがって、引用発明の「漏洩遮断器の電流センサー」として用いられる「零相変流器」用の「磁気コア」は、本件補正発明の「電流センサ用磁気コア」に相当する。 ウ.前記ア、イから、引用発明が「前記電流センサーとして用いられる磁気コアとなる前記Co系アモルファス合金の薄帯に対し」て「磁界中熱処理」を行うことは、本件補正発明が「前記電流センサ用磁気コアとなるCo系アモルファス合金」に対して「磁界中熱処理を行」うことに相当する。 エ.引用発明の「磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の印加磁界にて1時間?2時間」行う「磁界中熱処理」と、本件補正発明の「磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の磁界を印加して1時間以上」行う「磁界中熱処理」とは、いずれも、磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の磁界を印加して1時間以上行う磁界中熱処理である点で共通する。 オ. 本件補正発明の「磁気コア」の「初透磁率」とは、印加磁界の強さを限りなくゼロに近づけた時の前記「磁気コア」の透磁率、すなわち、前記「磁気コア」の磁化曲線の座標原点における接線の傾きをいうものと認められる。 そうすると、前記イから、引用発明の「直流角形比が0.1?20%である電流センサーとして用いられる磁気コアを得る」ことと、本件補正発明の「初透磁率μ_(i)が50,000以上100,000以下であり、且つ4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である電流センサ用磁気コアを得る」こととは、いずれも、所定の磁気特性を有する電流センサ用磁気コアを得る点で共通する。 (4-2)一致点及び相違点 そうすると、本件補正発明と引用発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。 《一致点》 「Co系アモルファス合金を有する電流センサ用磁気コアの製造方法であって、 前記電流センサ用磁気コアとなるCo系アモルファス合金に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の磁界を印加して1時間以上磁界中熱処理を行い、所定の磁気特性を有する電流センサ用磁気コアを得ることを特徴とする電流センサ用磁気コアの製造方法。」 《相違点》 《相違点1》 本件補正発明は、電流センサ用磁気コアに「磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の印加磁界」にて磁界中熱処理を行うのに対して、引用発明は、漏洩遮断器の電流センサーとして用いられる零相変流器用磁気コアに「磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の印加磁界」にて磁界中熱処理を行う点。 《相違点2》 本件補正発明は、所定の磁気特性が「初透磁率μ_(i)が50,000以上100,000以下であり、且つ4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である」のに対して、引用発明の相変流器用磁気コアは、所定の磁気特性が「直流角形比が0.1?20%である」点。 (5)判断 (5-1)本件補正発明について ア.本願明細書の段落【0021】には、「この磁界中熱処理によって、初透磁率が少し低下するが磁路に沿ったバイアス磁界の下での透磁率の低下が少ない磁気コア、即ち、μ_(i)が50,000以上100,000 以下、磁路に沿って加えられた4 A/mのバイアス磁界の下での透磁率μ_(4A)が初透磁率μ_(i)の0.4 倍以上0.6 倍以下の磁気コアを得ることができる。」と記載されている。 したがって、本件補正発明は、「初透磁率μ_(i)が50,000以上100,000以下であり、且つ4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である電流センサ用磁気コアを得る」ために、「電流センサ用磁気コアとなるCo系アモルファス合金に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の磁界を印加して1時間以上磁界中熱処理を行」うものであると認められる。 イ.この点について、本願の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明には、「【発明の実施の形態】」に、 「【0018】本発明において磁気コアとして用いるアモルファス合金薄帯としては、Co系、Fe系、Fe-Ni系などを用いることができ、Co系のアモルファス合金が特に好ましく用いられる。Co系合金は、一般式: (M1_(1-a) M2_(a))_(100-b) X_(b)、 (式中、M1 はCoを主成分とし、これにFeおよびNiを少量成分として含有させることができる。XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))であって、M2元素は、熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素であり、好ましくはCr.Mn.Zr.Nb、Moを用いるのがよく、X元素はアモルファス合金を得るのに必要な元素であり、特にBはアモルファス化するのに有効な元素であり、Siはアモルファス形成を助成すること及び結晶化温度の上昇に有効な元素である。 【0019】アモルファス合金薄帯の製造方法としては液体急冷法が好ましく.具体的には所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から105 ℃/秒以上の冷却速度で急冷することによって得られる。このような液体急冷法により製造されたアモルファス合金薄帯の厚みは、20μm 以下が好ましく、さらに好ましくは8?15μm であり、薄帯の厚さを制御することにより低損失のコアを得ることが可能となる。 【0020】本発明の磁気コアに用いるアモルファス合金薄帯は、磁界中熱処理を行ったものであることが好ましい。磁界中熱処理の条件としては、170 ℃ないし230 ℃において、磁路となる方向に対し垂直な方向に10 Oe 以上、好ましくは100 Oe以上、さらに好ましくは1,000 Oe以上の印加磁界にて、1時間以上、好ましくは3時間以上の熱処理を行うことができる。熱処理時間は長時間処理することも可能であるが、長時間の熱処理は生産性の観点からあまり好ましいものではないため、3?5時間を望ましい範囲とする。このように本発明の磁気コアは、磁界中熱処理条件が、印加磁界10 Oe 以上にて熱処理時間1時間以上、好ましくは印加磁界100 Oe以上にて3時間以上、さらに好ましくは1,000 Oe以上にて3?5時間とするものである。 【0021】この磁界中熱処理によって、初透磁率が少し低下するが磁路に沿ったバイアス磁界の下での透磁率の低下が少ない磁気コア、即ち、μ_(i)が50,000以上100,000以下、磁路に沿って加えられた4 A/mのバイアス磁界の下での透磁率μ_(4A)が初透磁率μ_(i)の0.4 倍以上0.6 倍以下の磁気コアを得ることができる。あるいは磁路に沿って加えられる飽和磁界の0.8 倍のバイアス磁界の下での透磁率μ_(0.8)が、初透磁率μ_(i)の0.3 倍以上0.8 倍以下の磁気コアを得ることができる。」、 「【0026】(実施例および比較例)Co系アモルファス合金薄帯( 板厚18μm)を巻回して、外径12 mm 内径8 mm厚さ4.5mm の環状の磁気コアを作製した。磁気コアは、組成、製造条件および表1に示したように垂直磁界中処理の条件を異ならせることにより、表2に示したように初透磁率およびバイアス下の透磁率の異なるものを得ることができた。なお、比較例3の従来コアは磁界中熱処理を施さないものである。」、 と記載されている。 ウ.なお、本件補正により明細書の発明の詳細な説明の記載も補正されており、 段落【0018】の前記「本発明において磁気コアとして用いるアモルファス合金薄帯としては、Co系、Fe系、Fe-Ni系などを用いることができ、Co系のアモルファス合金が特に好ましく用いられる。」の記載は、「アモルファス合金薄帯としては、Co系、Fe系、Fe-Ni系などが挙げられるが、本発明ではCo系のアモルファス合金を用いる。」と、 段落【0020】の前記「磁界中熱処理の条件としては、170 ℃ないし230 ℃において、磁路となる方向に対し垂直な方向に10 Oe 以上、好ましくは100 Oe以上、さらに好ましくは1,000 Oe以上の印加磁界にて、1時間以上、好ましくは3時間以上の熱処理を行うことができる。」及び前記「このように本発明の磁気コアは、磁界中熱処理条件が、印加磁界10 Oe 以上にて熱処理時間1時間以上、好ましくは印加磁界100 Oe以上にて3時間以上、さらに好ましくは1,000 Oe以上にて3?5時間とするものである。」の記載は、それぞれ、「磁界中熱処理の条件としては、170 ℃ないし230 ℃において、磁路となる方向に対し垂直な方向に1,000Oe以上の印加磁界にて、1時間以上、好ましくは3時間以上の熱処理を行う。」及び「このように本発明の磁気コアは、磁界中熱処理条件が、印加磁界1,000Oe以上にて熱処理時間1時間以上、好ましくは印加磁界1,000Oe以上にて3時間以上、さらに好ましくは1,000Oe以上にて3?5時間とするものである。」と、 補正されている。 エ.そして、本願の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】における表1及び表2には、段落【0026】に記載されるように、「Co系アモルファス合金薄帯」を用いた「実施例」及び「比較例」の「磁気コア」において、本件補正発明のように「初透磁率μ_(i)が50,000以上100,000以下であり、且つ4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である」ものは、「実施例1」(本件補正により補正された表1の「実施例1」)、「実施例3」(本件補正により補正された表1の「実施例3」)及び「実施例5」(本件補正により補正された表1の「実施例5」)であることが記載されている。 オ.なお、前記イで挙げたように、本願の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明の段落【0020】には、「1時間以上、好ましくは3時間以上の熱処理を行うことができる。熱処理時間は長時間処理することも可能であるが、長時間の熱処理は生産性の観点からあまり好ましいものではないため、3?5時間を望ましい範囲とする。」と記載されていた。この記載から、「5時間」を超える「長時間」の「熱処理」が可能であると解されるから、本願明細書に記載された「熱処理時間」の前記「望ましい範囲」の上限が「5時間」であるのは、もっぱら、「生産性の観点」からであることは明らかである。 カ.よって、前記イ?オによれば、 「一般式: (M1_(1-a) M2_(a))_(100-b) X_(b)、 (式中、M1 はCoを主成分とし、これにFeおよびNiを少量成分として含有させることができる。XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))であって、M2元素は、熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素であり、好ましくはCr.Mn.Zr.Nb、Moを用いるのがよく、X元素はアモルファス合金を得るのに必要な元素であり、特にBはアモルファス化するのに有効な元素であり、Siはアモルファス形成を助成すること及び結晶化温度の上昇に有効な元素である。」で表される組成を有するCo系アモルファス合金の薄帯を用いる磁気コアに対して、「磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の磁界を印加して1時間以上」、170 ℃ないし230 ℃において、「磁界中熱処理」を行うと、「初透磁率μ_(i)が50,000以上100,000以下であり、且つ4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である電流センサ用磁気コア」が得られることが、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていると認められる。 キ.そして、本件補正発明の「Co系アモルファス合金」として、本願明細書に具体的に開示されている「Co系アモルファス合金」は、前記イ及びウの通り、引用発明の「Co系アモルファス合金」と重複する組成を有している。 (5-2)相違点1及び相違点2について ア.引用文献には、前記「(3-1)引用文献の記載」の項の「B」に、「【0017】直流角形比を0.1?20%にする方法としては、コアを構成する薄帯の幅方向に磁場を印加して熱処理を施すことが効果的である。」と記載されている。 したがって、引用発明は、「直流角形比が0.1?20%である電流センサーとして用いられる磁気コアを得る」ために「Co系アモルファス合金の薄帯に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の印加磁界にて1時間?2時間、180℃以上の熱処理温度で磁界中熱処理を行」うものと認められる。 そして、引用文献には、前記「(3-1)引用文献の記載」の項の「A」に「零相変流器は微小な漏洩電流を検知する必要があるため、零相変流器用コアに用いる磁性材料は透磁率、特に感度を上げるため初透磁率が高いことが重要な条件となる。」と、前記「(3-1)引用文献の記載」の項の「B」に「直流角形比が小さいと交流での透磁率が上がり、交流特性が向上するためであり、接地地絡のような大電流が流れた後でも微小電流を感度良く検出することが可能となる。」と記載されていることから、引用発明が「Co系アモルファス合金の薄帯に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の印加磁界にて1時間?2時間、180℃以上の熱処理温度で磁界中熱処理を行」うのは、前記大きな「透磁率」の「磁気コア」を得るためであると認められる。 また、前記「(3-1)引用文献の記載」の項の「B」に「なお、磁場中熱処理時に印加する磁場の強さは1Oe以上、好ましくは10Oe以上である。」と記載されていることから、引用文献には、「Co系アモルファス合金の薄帯に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向」に「印加」する「磁界」の強さは、より大きいことが好ましい旨が記載されていると解される。 イ.ところで、コアとして用いる「Co系アモルファス合金」の透磁率をより高めるために、本件補正後の請求項4に記載される「磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の磁界を印加して1時間以上磁界中熱処理」を行うことは、以下の周知例1?周知例3に記載されるように、本願出願時には既に常套手段であった。 そして、引用発明の「組成が(M_(1-a) M’_(a))_(100-b) X_(b)、(式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))であるCo系アモルファス合金」と重複する組成を有するCo系アモルファス合金を用いる磁気コアに対して、磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の磁界を印加して1時間以上、170 ℃ないし230 ℃において、磁界中熱処理を行うことで、所定の強さの磁界が印加されたときの実効パルス透磁率が優れているCo系アモルファス合金が得られることも、前記周知例2?周知例3に記載されるように、本願出願時には既に周知技術であった。 ウ.周知例1:特開平11-186021号公報 a.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、Co基アモルファス合金薄帯を用いた高透磁率コアとその製造方法に係り、より詳しくは高透磁率を有すると共にその経時安定性に優れる高透磁率コアとその製造方法に関する。」 b.「【0014】本発明の高透磁率コアは、基本的にはCo基アモルファス合金薄帯を所望のコア形状に巻回して作製した磁性コアからなるものである。ここで、Co基アモルファス合金薄帯としては、例えば 一般式:(Co_(1-a) M_(a) )_(100-x) X_(x) ……(1)(式中、MはFe、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wおよび白金族元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を、XはSi、B、CおよびPから選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 aおよび xは0≦ a≦ 0.5、10≦ x≦35at% をそれぞれ満足する数を示す)で実質的に表される組成を有するものが用いられる。 【0015】特に、Co基アモルファス合金薄帯は、 一般式:(Co_(1-b-c) Fe_(b) M′_(c) )_(100-y) (Si_(1-d) B_(d) )_(y) …(2) (式中、M′はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wおよび白金族元素から選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 b、 c、dおよび yは0.02≦ b≦0.08、 0≦ c≦0.07、 0.3≦ d≦ 0.9、15≦ y≦30at%をそれぞれ満足する数を示す)で実質的に表される組成を有することが好ましい。」 c.「【0031】実施例1 まず、Co_(67.6)Fe_(4) Nb_(1.5) Cr_(1.9) Si_(14)B_(11)で組成が表されるCo基アモルファス合金薄帯(厚さ:20μm )を単ロール法により作製し、これを外径12mm×内径 8mm×高さ 4.5mmのコア形状に巻回した。このような巻回体を複数作製し、それぞれ 440℃×30分の条件で歪取り熱処理を施した後、表1に示す条件でそれぞれ磁場中熱処理を行った。磁場中熱処理は、Co基アモルファス合金薄帯の幅方向に 100kA/mの磁場を印加しながら実施した。 【0032】このようにして得た各アモルファスコアの飽和磁束密度Bs 、磁気異方性エネルギーEおよび直流角形比(Br /Bs )は、表1に示す通りである。また、得られた各アモルファスコアの初透磁率(10kHz,0.1V)と393K×24h の条件下での透磁率の経時変化率を測定、評価した。その結果を併せて表1に示す。」 (なお、1 Oe = 1000/(4π) A/m = 約79.577 A/m であるので、上記記載において、「100kA/mの磁場」の記載は、「約1,257 Oeの磁場」を意味している。) d.表1には、磁場中熱処理を、423?483℃の範囲で、2時間以上行うことが記載されている。 周知例2:特開昭63-096904号公報 e.「組成式(Co_(1-a-b) Fe_(a) Mn_(b))_(100-x-c-y-z) M_(x) M’_(c) Si_(y) B_(z)(原子%)で表わされ、ここでMはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、W、Ni、Moから選ばれる少なくとも1種の元素、M’はCu、Ag、Auから選ばれる少なくとも1種の元素であり、0≦a≦0.05、0.01≦b≦0.08、0.1≦x≦5、0.1≦c≦2、7≦y≦18、7≦z≦16、22≦y+z≦28の関係を有するアモルファス合金からなり、角形比20%以下、応力緩和度90%以上であることを特徴とする実効パルス透磁率に優れたアモルファス磁心。」(第1頁下左欄第6?16行) f.「実施例1 単ロール法により第1表に示す組成の幅5mm,厚さ18μmのアモルファス合金リボンを作製した。 次にこのアモルファスリボンを内径15mm,外径19mmに巻回し、410℃に1時間保持後約3000℃/mmの冷却速度で室温まで冷却し、次に磁路と直角方向に3000Oeの磁場を印加し200℃に12h保持した後室温まで冷却し、動作磁束密度△B0.2T,パルス幅td10μs,30μsにおける実効パルス透磁率μp,1KHzにおける実効透磁率μe角形比Br/Bs,応力緩和度γ0/γを測定した。」(第3頁下左欄第3?13行) 周知例3:特許第2513645号公報 g.「【請求項2】組成式(Co_(1-a-b)Fe_(a)Mn_(b))_(100-x-c-y-z)M_(x)Cu_(c)Si_(y)B_(z)(原子%)で表わされ、ここでMはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,W,Ni,Moから選ばれる少なくとも1種の元素であり、0≦a≦0.05,0.01≦b≦0.08,0.1≦x≦5,0.1≦c≦2,7≦y≦18,7≦z≦16,22≦y+z≦28の関係を有するアモルファス合金薄帯をトロイダル状に巻き回した後結晶化温度以下でかつ最低350℃の温度で少なくとも20分の熱処理を実施し応力緩和度を90%以上とした後、交流あるいは直流の磁場を使用する際の磁心の磁路方向と直角方向に加えながら50℃/min以下の平均冷却速度で200℃以下の温度まで冷却することを特徴とする実効パルス透磁率に優れたアモルファス磁心の製造方法。」 h.「実施例1. 単ロール法により第1表に示す組成の幅5mm,厚さ18μmのアモルファス合金リボンを作製した。 次にこのアモルファスリボンを内径15mm,外径19mmに巻回し、410℃に1時間保持後約3000℃/mmの冷却速度で室温まで冷却し、次に磁路と直角方向に3000Oeの磁場を印加し200℃に12h保持した後室温まで冷却し、動作磁束密度△B0.2T,パルス幅td10μs,30μsにおける実効パルス透磁率μp,1KHzにおける実効透磁率μe角形比Br/Bs,応力緩和度γ0/γを測定した。」(第3頁第6欄第8?17行) エ.前記アで述べたとおり、引用発明は、大きな「透磁率」の「磁気コア」を得るために、「Co系アモルファス合金の薄帯に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に10Oe以上の印加磁界にて1時間?2時間、180℃以上の熱処理温度で磁界中熱処理を行」うものである。してみれば、引用発明において、より大きな「透磁率」の「磁気コア」を得るために、「磁路となる方向に対し垂直な方向」に「印加」する「10Oe以上の印加磁界」として、前記イ、ウで述べた常套手段のように、1000Oe以上の磁界を採用することは、当業者が適宜なし得たものと認められる。 ここで、引用発明の「組成が(M_(1-a) M’_(a))_(100-b) X_(b)、(式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))であるCo系アモルファス合金」と重複する組成を有するCo系アモルファス合金を用いる磁気コアに対して、「磁路となる方向に対し垂直な方向に1000Oe以上の磁界を印加して1時間以上」、170 ℃ないし230 ℃において、「磁界中熱処理」を行うことで、所定の強さの磁界に対する透磁率が優れているCo系アモルファス合金が得られることが、前記イ、ウで述べたように、本願出願時には既に周知技術であった。 したがって、前記「組成が(M_(1-a) M’_(a))_(100-b) X_(b)、(式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))であるCo系アモルファス合金の薄帯」に対して行う、「磁路となる方向に対し垂直な方向」に1000Oe以上の磁界を印加する「磁界中熱処理」を、具体的には、「磁路となる方向に対し垂直な方向」に1000Oe以上の磁界を「印加」して、170 ℃ないし230 ℃において「1時間以上」、「磁界中熱処理」を行うことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 オ.そして、前記「(5-1)本件補正発明について」の項の「カ」及び「キ」で指摘した通り、上記のように、「組成が(M_(1-a) M’_(a))_(100-b) X_(b)、(式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))であるCo系アモルファス合金の薄帯」に対して、「磁路となる方向に対し垂直な方向」に1000Oe以上の磁界を「印加」して行う「磁界中熱処理」を170 ℃ないし230 ℃において「1時間以上」行えば、印加磁界の強さを限りなくゼロに近づけた時の透磁率である「初透磁率μ_(i)」が「50,000以上100,000以下」であり、且つ「4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)」が、「初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である電流センサ用磁気コア」が得られると認められる。 カ.したがって、相違点1及び相違点2は格別のものではない。 (6)検討のまとめ 以上のとおり、引用発明に、本件補正発明の前記相違点1、2に係る構成を具備させることは、引用発明、前記常套手段及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものであり、相違点1、2は、いずれも格別のものではない。 したがって、本件補正発明は、引用発明、前記常套手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.小括 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 以上のとおり、本件補正(平成21年10月26日付けでなされた手続補正)は却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成21年6月26日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載されたとおりのものである。 そして、そのうち、本件補正後の請求項4に対応する請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項6】 Co系アモルファス合金を有する電流センサ用磁気コアの製造方法であって、 前記電流センサ用磁気コアとなるCo系アモルファス合金に対し、磁路となる方向に対し垂直な方向に500Oe以上の磁界を印加して1時間以上磁界中熱処理を行い、初透磁率μ_(i)が50,000以上100,000以下であり、且つ4A/mの磁界に対する透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.4倍以上0.6倍以下である電流センサ用磁気コアを得ることを特徴とする電流センサ用磁気コアの製造方法。」 2.引用文献の記載と引用発明、及び、常套手段と周知技術 引用文献1の記載と引用発明については、前記「第2.平成21年10月26日付けでなされた手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件を満たすかどうかの検討」の「(3)引用文献の記載及び引用発明」において、「(3-1)引用文献の記載」の項で列挙し、「(3-2)引用発明」の項で認定したとおりである。 そして、常套手段と周知技術については、前記「3.独立特許要件を満たすかどうかの検討」の「(5)相違点1、2についての判断」おいて、「(5-2)相違点1及び相違点2について」の項の「イ」及び「ウ」で指摘したとおりである。 3.対比 ・判断 本願発明は、本件補正発明が有する「1000Oe以上の磁界を印加して」との発明特定事項を、「500Oe以上の磁界を印加して」に拡張し、本件補正発明が有する「透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.45倍以上0.56倍以下である」との発明特定事項を、「透磁率μ_(4A)が、初透磁率μ_(i)の0.4倍以上0.6倍以下である」に拡張したものである。 したがって、前記「第2.平成21年10月26日付けでなされた手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件を満たすかどうかの検討」の項で検討したように、本願発明をより限定した本件補正発明が、引用発明、前記常套手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明から前記限定を除いて、本件補正発明をより拡張した本願発明は、同じ理由によって、引用発明、常套手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.結言 以上のとおり、本願発明は、引用発明、常套手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-21 |
結審通知日 | 2011-12-27 |
審決日 | 2012-01-11 |
出願番号 | 特願平11-228623 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01F)
P 1 8・ 121- Z (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 正文 |
特許庁審判長 |
鈴木 匡明 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 小野田 誠 |
発明の名称 | 電流センサ用磁気コアおよび電流センサ用磁気コアを用いた電流センサ、ならびに電流センサ用磁気コアの製造方法 |
代理人 | 特許業務法人サクラ国際特許事務所 |
代理人 | 須山 佐一 |