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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1252947
審判番号 不服2009-24551  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-11 
確定日 2012-03-01 
事件の表示 特願2004-519786「ホームフォンラインネットワーク中のネットワークコントローラの設計を最適化する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日国際公開、WO2004/006500、平成17年10月27日国内公表、特表2005-532738〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、2003年 7月 2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年 7月 2日、(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年 8月 7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年12月11日付けで審判請求がなされたものである。
特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成21年 5月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
電話線と接続されるように構成される物理層(PHY)(110)と、
このPHY(110)と接続されるように構成される媒体アクセス制御(MAC)(108)と、を含んでおり、
前記MAC(108)は前記PHY(110)とパーテイションによって分離されており、
前記PHY(110)をそのままにしておく一方で前記MAC(108)を設計過程の間およびその後に修正できるように、このパーテイションによって、前記MAC(108)を前記PHY(110)と別の回路として実装することができる、
コントローラ(100)。」

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開2002-84340号公報(以下、「引用例」という。)には、「プログラマブルのマルチ・スタンダードMACアーキテクチャ」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0002】本発明は、一般的には、通信ネットワークの分野に関し、詳細には、プログラマブルのメディア・アクセス制御(programmable Media Access Control)実現の方法およびアーキテクチャに関するものである。」(5頁7欄)

ロ.「【0003】
【従来の技術】図1は、通信ネットワーク内の各主レイヤ間の情報交換を記述するため・・・最も低いレイヤにおいては、OSIモデル10は、物理レイヤまたはPHYレイヤ12を有し、・・・。」(5頁7?8欄)

ハ.「【0007】
【発明が解決しようとする課題】各種のスタンダードに対する異なったMACアーキテクチャおよびMAC実現法の現在の要求に加えて、例えばこの新たなホームLAN技術の進展が、既存のMACスタンダードを発展させ、あるいは新たなMACスタンダードを出現させつつある。したがって、新たなソフトウェア・ベースのあるいはプログラマブルのMAC実現アーキテクチャを提供して、これでMAC実現法の発展、MAC/PHYおよびMAC/ホスト統合をスピードアップさせ、多数のMAC実現法を可能にし、そして異なったアプリケーションおよびプラットフォームに対するMACのポータビリティを増大させることが有利となる。」(5頁9欄)

ニ.「【0047】次に図6を参照すると、HomePNAデジタル・チップセット600を示しており、これは、MAC動作機能とPHYレイヤ・デジタル信号処理機能を単一のプロセッサに実装する実施形態に対しては、本発明に従いエンハンストMIIを利用する。チップセット600は、DSPコア610と物理レイヤ送受信器ASIC620とを含む。DSPコア610は、MACモジュール630とDSPモジュール640とを含む。MACモジュール630およびDSPモジュール640は、2つの個々のインターフェース、すなわちMAC/PHYインターフェース650およびDSP/PHYインターフェース660を介してASIC620と通信状態にある。これら2つのインターフェースは、論理的には分離しているが、実装では必要な場合に同じハードウェア・コンポーネントを共有することができる。
【0048】MAC/PHYインターフェース650の目的は、MACモジュール630とPHYレイヤとの間のメディア独立インターフェース(MII)タイプ相互接続を提供することであり、DSP/PHYインターフェースの目的は、DSPモジュール640とPHYレイヤ(PHYレイヤ・デジタル信号処理のこの部分はDSPモジュール内に実装する)との間の通信チャンネルを提供する。以下に説明するMAC/PHY MIIタイプ相互接続もまた、MACおよびPHYをハードウェア回路で実装した実現例に対し使用することができる。」(10頁17欄)

ホ.「【0050】次に図7を参照すると、これには、本発明の例示的実施形態による、HomePNAチップセット600のMAC705部分とPHY710部分との間でのインターフェース信号交換を示している。・・・。
【0051】・・・HomePNAシステムに関しては、PHY710は、PREAMBLE64を先頭に付したフレームをワイヤに送信する。PREAMBLE64は、当該分野において知られたHomePNA PHYレイヤ・フレーム化ヘッダである。・・・。」(10頁17?18欄)

ヘ.「【0093】次に図23を参照すると、これには、本発明によるモジュール化ソフトMACを実装した4つの例示のタイプのMACアーキテクチャ・コンフィギュレーションを示している。第1の実現例では、ソフトMACは、単一の専用の縮小命令セット・コントローラ(RISC)マシン2602で実現し、これではPHYレイヤは、ハードウェア2604およびデジタル信号処理(DSP)2606の両方において実装している。
【0094】ソフトMACモジュールは、RISC2602内に実装し、これはまた、ホスト・インターフェース・ソフトウェア・モジュール2608とRISC/DSPインターフェース・ソフトウェア・モジュール2610も含む。さらに、PHYインターフェース・ソフトウェア・モジュール2612は、DSP2606内に実装する。したがって、PHYレイヤのソフトMACモジュールとプログラマブル部分とは、別個のプロセッサに実装している。」(14頁26欄)

ト.「【0098】本発明の別の実現例は、ホーム・ネットワーク・タイプのアプリケーションに対する単一デバイスにおいて、マルチ・スタンダード定義MACの共存を可能にする。1つの例は、802.11ワイヤレスLANであり、これは、関連する分配システムがそのバックボーンとしてイーサネットあるいはHomePNAから構成されそしてポータル/ゲートウェイ・デバイスを使用して802.11ワイヤレスLANをこのバックボーンに接続するときである。このポータル・デバイスは、多数のPHYにアクセスするために、多数のMAC(802.11を備えたHomePNAまたは802.11を備えたイーサネット)を含まなければならない。ある多数MACデバイスにおいては、プログラマブルMACアーキテクチャにより、多数MACを単一のデバイス中に容易に実装しかつそれに集積することができるようになり、しかも各々が単一のMACタイプ・スタンダードにのみ専用の多数MACコンポーネントを有さずに行え、これによって、開発の時間とコストを節約できる。」(14頁26欄?15頁27欄)

上記引用例の記載及び図面を参照すると、上記ロ.から、引用例の「PHYレイヤ」は「物理レイヤ」のことであって、上記ニ.【0047】の「・・・HomePNAデジタル・チップセット600・・・」、同ホ.【0050】の「・・・本発明の例示的実施形態による、HomePNAチップセット600・・・」、【0051】の「・・・HomePNAシステムに関しては、PHY710は、PREAMBLE64を先頭に付したフレームをワイヤに送信する。・・・」という記載及び「HomePNA」が家庭内の電話線を利用したネットワークに関するものであることから、「PHYレイヤ」は「HomePNA」の電話線と接続されるものである。
そして、上記ヘ.【0093】の記載及び図23から、「メディア・アクセス制御(MAC)」は「縮小命令セット・コントローラ(RISC)」で実現され、「PHYレイヤ」は「DSP」と「ハードウェア2604」に実装され、「RISC」と「DSP」は「インターフェース・ソフトウェア・モジュール」を介して接続されるので、「メディア・アクセス制御(MAC)」と「PHYレイヤ」は別のハードウェアに実装され、「インタフェース・ソフトウェア・モジュール」を介してに接続されているといえる。
さらに、上記イ.ハ.ト.の記載から、「メディア・アクセス制御(MAC)」は「プログラマブル」なのものであって、「多数のMAC」を実現するものである。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「電話線と接続される物理レイヤ(PHY)と、
前記物理レイヤ(PHY)と接続されるメディア・アクセス制御(MAC)とを備え、
前記メディア・アクセス制御(MAC)と前記物理レイヤ(PHY)は別のハードウェアに実装され、インターフェース・ソフトウェア・モジュールを介して接続されており、
前記メディア・アクセス制御(MAC)はプログラマブルに構成される、
装置」

3.対比
本願発明と引用発明を比較すると、引用発明の「物理レイヤ(PHY)」、「メディア・アクセス制御(MAC)」は、本願発明の「物理層(PHY)」、「媒体アクセス制御(MAC)」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「前記メディア・アクセス制御(MAC)と前記物理レイヤ(PHY)は別のハードウェアに実装され、インターフェース・ソフトウェア・モジュールを介して接続されて」いることと本願発明の「前記MAC(108)は前記PHY(110)とパーテイションによって分離され」ていることは、いずれも「前記MACは前記PHYと分離され」ていることで一致する。
さらに、引用発明の「メディア・アクセス制御(MAC)はプログラマブルに構成される」と本願発明の「前記PHY(110)をそのままにしておく一方で前記MAC(108)を設計過程の間およびその後に修正できる」は、いずれも「MACを修正できる」という点で一致する。
また、本願発明の「接続されるように構成される」、「含んでおり」と引用発明の「接続される」、「備え」は実質的な差違はなく、引用発明の「装置」は「メディア・アクセス制御(MAC))」等を行うものであるから、本願発明の「コントローラ」と実質的な差違はない。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「電話線と接続されるように構成される物理層(PHY)と、
このPHYと接続されるように構成される媒体アクセス制御(MAC)と、を含んでおり、
前記MACは前記PHYと分離されており、
前記MACを修正できる、
コントローラ。」

<相違点>
(1)本願発明は「MAC」と「PHY」が「パーテイション」によって「分離されている」のに対し、引用発明は当該「パーテイション」がない点。
(2)「MACを修正」することに関し、本願発明は「PHYをそのままにしておく一方でMACを設計過程の間およびその後に修正できるように、このパーテイションによって、MACをPHYと別の回路として実装することができる」のに対し、引用発明は「メディア・アクセス制御(MAC)と物理レイヤ(PHY)は別のハードウェアに実装され」、「メディア・アクセス制御(MAC)はプログラマブルに構成される」という点。

4.検討
まず、上記相違点(1)について検討すると、本願発明の「パーテイション」に関しては、本願明細書【0007】に「・・・MACはPHYとパーテイション(partition)によって分離される。PHYをそのままにしておき、MACを設計過程の間およびその後に修正できるように、このパーテイションは、MACをPHYと別の回路として実装することができる。」、同【0013】に「 本発明によれば、MACとPHYの間にパーテイションが存在する。このパーテイションを横切って、情報は、MACとPHYとの間を前後する。このパーテイションは、MACを、PHYと別の回路として実装することができ、PHYをそのままにしておく一方で、設計過程の間およびその後にMACを修正することができる。」、同【0018】に「・・・パーテイションは、MAC120を、PHY122と別の回路として実装することができる。これにより、PHY122をそのままにしておく一方で、MAC120を設計過程の間およびその後に修正することができる。・・・」と記載されるのみで、「パーテイション」は、「MAC」と「PHY」を分離し、「MAC」と「PHY」が「別の回路として実装される」ようにするもの、さらに、「MACとPHYとの間」を伝送される「情報」が「横切る」ものという構成に過ぎない。
また、本願図2及び明細書【0017】に「図2は、本発明によるMAC120とPHY122のブロック図である。・・・さらに図2には、インターフェース124が示される。本実施形態においては、このインターフェースは、ISIS PHYインターフェースである。・・・」、同図3及び明細書【0021】に「 図3は、本発明によるISIS PHYインターフェースのI/Oピンの説明を示した表である。このI/Oピンの説明は、図2のインターフェース124を実装するのに使用できる。・・・」と記載されることから、「パーテイション」と関連する構成として「MAC」と「PHY」は「ISIS PHYインターフェース」で接続されていることが認められる。
すると、引用発明の「MAC」と「PHY」も別のハードウェアに実装され、分離しており、「MAC」と「PHY」は「インターフェース・ソフトウェア・モジュールを介して接続されて」いることから、「MAC」と「PHY」を分離する(あるいは、接続する)構成において、本願発明と引用発明との間に実質的な差異はなく、「パーテイション」と呼ぶ構成を設けることは適宜なし得ることである。
次に、上記相違点(2)について検討すると、引用発明の「MAC」は「プログラマブルに構成される」ものであるから、必要に応じて機能を修正できることは明らかであり、本願発明の「PHYをそのままにしておく一方でMACを設計過程の間およびその後に修正できるように」することは容易になし得ることである。
さらに、上記相違点(1)に記載したように、引用発明に「パーテイション」を設けることは適宜なし得ることであり、引用発明の「MAC」と「PHY」は「別のハードウェアに実装され」ることと本願発明の「MACをPHYと別の回路として実装すること」との間に差違はない。
よって、上記相違点(2)に係る差違は格別なものではない。
そして、本願発明の作用効果も引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-30 
結審通知日 2011-10-05 
審決日 2011-10-18 
出願番号 特願2004-519786(P2004-519786)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田畑 利幸  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 宮田 繁仁
石井 研一
発明の名称 ホームフォンラインネットワーク中のネットワークコントローラの設計を最適化する方法およびシステム  
代理人 佐野 良太  
代理人 早川 裕司  
代理人 太田 昌孝  
代理人 村雨 圭介  

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