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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1253173
審判番号 不服2009-7998  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-13 
確定日 2012-03-08 
事件の表示 特願2002-531932号「電子ペンに電気エネルギーを供給するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年4月11日国際公開、WO02/28301、平成16年4月2日国内公表、特表2004-509726号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年10月4日(外国庁受理 2000年10月4日 (CH)スイス連邦)を国際出願日とする出願であって、平成21年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年4月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成21年4月13日付けの手続補正は、平成23年3月31日付けで補正却下の決定もって却下されるとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成23年8月11日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年8月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。
「【請求項1】 工具駆動用電気駆動ユニットを有する電子ペン(2)に電気エネルギーを供給するための装置であって、装置が、電子ペン(2)の電気駆動ユニットに電気エネルギーを供給するエネルギー供給ユニットを有するコンソール(1)を含むものにおいて、
A)エネルギー供給ユニットを有するコンソール(1)が蓄電池(4)を備えており、
B)エネルギー供給ユニットを有するコンソール(1)から電子ペン(2)への電気エネルギーの供給が滅菌可能なケーブルを介して行われるかまたは電気接続なしに誘導式に行われるかのいずれかであり、
C)エネルギー供給ユニットを有するコンソール(1)が、蒸気滅菌可能であるように構成され、
D)装置の電気部品および/または電子部品が液密に構成され、
E)コンソールおよびエネルギー供給ユニット(1)が受容部(10)を有し、この受容部で充電のために電子ペン(2)を受容することができ、またそこで局所的にエネルギー供給ユニット(1)を有するコンソールと電子ペン(2)との間に誘導結合または電気結合が実現可能であり、
F)前記装置と共に使用するための電子ペン(2)において、装置のエネルギー供給ユニットを有するコンソール(1)の相応する装置との電気結合または誘導結合を介してその蓄電池(4)から充電可能な電気エネルギー蓄積装置が電子ペン(2)内に取付けられていることを特徴とする電子ペンを含む装置。」

III.当審の拒絶理由
当審において平成23年3月31日付けで通知した進歩性についての拒絶理由の概要は、本願発明は、本件の国際出願日前に頒布された刊行物である特開2000-262533号公報に記載された発明、同じく特開2000-271143号公報に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

IV.引用文献
1.特開2000-262533号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
文献1ア:「【発明の属する技術分野】本願発明は患部にエネルギーを付与して処置することが可能な手術具であり、手術用ピンセット等に好適に使用できる手術具に関するものである。」(【0001】)

文献1イ:「【従来の技術】例えば、この種の手術具として、特公平2-43501号に体腔内の軟骨などを切除するためのドリル式切除装置が記載されている。この装置は、先端に切削刃を取り付けたドリルシャフトの手元側後端部に駆動軸が設けられ、この駆動軸に、駆動用モータが接続されている。また、駆動用モータはバッテリーで駆動され、この駆動用モータとバッテリーは、ドリル式切除装置の保持部に収容される構成になっている。
さらに、PCT WO 96/13889号には、モータ駆動される手術用ハンドピースのための携帯可能な、電源システムが記載されている。この携帯可能な電源システムは、AC/DCアダプターまたは充電可能なバッテリーとフットコントローラおよびハンドピースとからなり、このフットコントローラはAC/DCアダプターまたは充電可能なバッテリーから電力を供給され、ハンドピースをコントロールしている。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の技術に記載されている手術具は、共に、外科用のメス、ピンセットといった災害地や商用電源のない場所等での緊急の手術に必須な基本器具ではなく、またPCT WO 96/13889号のハンドピース用携帯電源は、バッテリーを使用しながらもコードレスでないので、操作性の向上が図られず、実際の場面において使い勝手がよくなかった。
本願発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、緊急性の高い手術において使用できるとともに、操作性を大幅に向上することができる手術具を提供することを目的とする。」(【0002】?【0005】)

文献1ウ:「【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)本願発明の第1の実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、バイボーラタイプのバッテリー式手術用ピンセット1の全体を示しており、矩形の柄部2cに一体に形成されたU字形の操作部2は、先端部で皮膚、組織及び臓器等を把持するために、所定間隔を有する2枚の弾性力を有する材質からなる、板状部材2a、2bから構成されている。この板状部材2a、2bは、全面が絶縁され、先端部に一対の電極3a、3bが固定されており、一方の板状部材2aの表面には、高周波出力をコントロールするためのCUTスイッチ(切開用)4a及びCOAGスイッチ(凝固用)4bの各スイッチが配設されている。さらに、柄部2cには、薄型のバッテリー5aと駆動部6からなる電気回路が内蔵されている。」(【0008】)

文献1エ:「第1の実施の形態の作用を説明する。術者は、バッテリー式手術用ピンセット1の板状部材2a、2bを保持し、切開または凝固したい組織を先端部の電極3a、3bで挟んだ状態で、CUTスイッチ4aまたはCOAGスイッチ4bを操作して通電させることにより、電極3a、3bが接触している患部組織を切開または凝固することができる。
本実施の形態のバッテリー式手術用ピンセットは、電源(バッテリー)と高周波発生回路と切開または凝固のための高周波電流を通電するための操作スイッチを備えている。先端部の電極で患部を挟んで高周波電流を通電することにより、商用電源などの外部からの電源の供給なしで、患部の切開、凝固などの処置を施すことができるので、電源設備のない場所での緊急の手術ができる。さらに、邪魔になる電源ケーブルがないので、操作性がよい、という効果を有する。
また、昨今感染症の問題などにより、医療器械の再使用時の洗浄・滅菌が問題になっているが、ピンセットのような基本的器具は、生産上の数量効果もあるのでかなり低コストでの生産が可能である。したがって、滅菌済みのディスポ品として販売しても、再滅菌費用や感染症のリスクを考えるとむしろトー夕ルでは経済性の高い物となる。実際、緊急時の手術具としては、現地での洗浄や滅菌は不可能な場合も多く、ディスポ品の特徴が活かせる。もちろん使い捨てでなく、再使用することも可能である。」(【0011】?【0013】)

文献1オ:「・・・(第4の実施の形態)本願発明の第4の実施の形態について、図7及び図8を参照して説明する。
図7は、充電可能タイプのバッテリーを使用したバッテリー式手術用ピンセット40の全体図である。なお、第1の実施の形態と同じ部分については同一の符号をつけ、説明を省略する。
基本的構成は、第3の実施の形態とほぼ同じであるが、柄部2c内に組み込まれたバッテリー5bは充電可能タイプであり、充電用の電極15a、15bが、柄部2cより突出して設けられている。図8は、バッテリー5bを充電するための充電器16の全体図である。充電器16は、上面に、同時に複数のバッテリー式手術用ピンセットが接続可能な接続ボート17a、17b、17cおよび17dを有しており、常時予備のバッテリー式手術用ピンセットも充電可能になっている。また、充電器16には、接続されているバッテリー式手術用ピンセット40のバッテリー容量が表示される充電メー夕18a、18b、18cおよび18dが設けられている。術者は充電中のバッテリー式手術用ピンセット40の残量メータを見なくとも、バッテリーの充電状態(残量)を容易に確認できる。
なお、充電用の電極15a、15bを通常は柄部2cの内部に収納し、充電時のみ突出させる構造としておき、接続ポート17a、17b、17cおよび17dの上部周辺に滅菌処理された滅菌シート19を載せる、または貼り付けることにより、術中にバッテリー式手術用ピンセット40を充電して再使用することが可能となる。この場合、充電用の電極15a、15bの代わりに高周波コイルと整流回路を柄部2cの内部に備え、接続ポート17a、17b、17cおよび17dの代わりに高周波電力供給用の高周波出力コイルを充電器16に備え、電磁誘導により給電するようにすると、滅菌シート19の上にバッテリー式手術用ピンセットを置くだけで充電することができる。」(【0024】?【0027】)

文献1カ:図8には、図7に示されているバッテリー式手術用ピンセット40の充電可能タイプのバッテリー5bに接続ポート17a?17dを介して充電するための充電器16が、上部に滅菌シート19を載せた充電器筐体を備えている態様が示されている。

文献1キ:文献1オの「充電用の電極15a、15bの代わりに高周波コイルと整流回路を柄部2cの内部に備え、接続ポート17a、17b、17cおよび17dの代わりに高周波電力供給用の高周波出力コイルを充電器16に備え、電磁誘導により給電するようにすると、滅菌シート19の上にバッテリー式手術用ピンセットを置くだけで充電することができる。」との記載からして、バッテリー式手術用ピンセット40を電磁誘導により給電する態様において、文献1カの充電器16の充電器筐体は、その内部に高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有するといえる。

文献1ク:文献1カ、文献1キ及び文献1オの「充電用の電極15a、15bを通常は柄部2cの内部に収納し、充電時のみ突出させる構造としておき、接続ポート17a、17b、17cおよび17dの上部周辺に滅菌処理された滅菌シート19を載せる、または貼り付けることにより、術中にバッテリー式手術用ピンセット40を充電して再使用することが可能となる。この場合、充電用の電極15a、15bの代わりに高周波コイルと整流回路を柄部2cの内部に備え、接続ポート17a、17b、17cおよび17dの代わりに高周波電力供給用の高周波出力コイルを充電器16に備え、電磁誘導により給電するようにすると、滅菌シート19の上にバッテリー式手術用ピンセットを置くだけで充電することができる。」との記載からして、
ク-1.高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体からバッテリー式手術用ピンセット40への給電が電磁誘導により行われ、
ク-2.充電のためにバッテリー式手術用ピンセット40を高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の上部の滅菌シート19の上に置くことができ、またそこで充電器筐体の充電用の電気部品に含まれる高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとの間に誘導結合が実現可能であり、
ク-3.充電器16と共に使用するためのバッテリー式手術用ピンセット40において、充電器16の高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の高周波出力コイルとの誘導結合を介して充電可能な充電可能タイプのバッテリー5bがバッテリー式手術用ピンセット40内に取付けられている、
といえる。

これらの記載事項からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「患部の切開、凝固などの処置を施す一対の電極3a、3bに通電するための駆動部6、充電可能タイプのバッテリー5b、整流回路及び高周波コイルを有するバッテリー式手術用ピンセット40に給電するための充電器16であって、充電器16が、バッテリー式手術用ピンセット40の駆動部6、充電可能タイプのバッテリー5b、整流回路及び高周波コイルに給電する高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体を含むものにおいて、
高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体からバッテリー式手術用ピンセット40への給電が電磁誘導により行われ、
充電のためにバッテリー式手術用ピンセット40を高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の上部の滅菌シート19の上に置くことができ、またそこで充電器筐体の充電用の電気部品に含まれる高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとの間に誘導結合が実現可能であり、
充電器16と共に使用するためのバッテリー式手術用ピンセット40において、充電器16の高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の高周波出力コイルとの誘導結合を介して充電可能な充電可能タイプのバッテリー5bがバッテリー式手術用ピンセット40内に取付けられているバッテリー式手術用ピンセット40を含む充電器16。」

2.特開2000-271143号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
文献2ア:「【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は本発明のバッテリ式手術装置の第1の実施の形態の超音波切開凝固装置の外観を示し、図2はハンドル部の内部にシート状バッテリが収納されることをハンドルケースを外して示し、図3は超音波切開凝固装置の内部構成を示し、図4はシート状バッテリの構成を示し、図5は他のシート状バッテリの構成を示し、図6はシート状バッテリの容量検出表示手段の構成を示す。」(【0009】)

文献2イ:「次に本実施の形態の作用を説明する。図1に示す超音波切開凝固装置1は水密構造であり、手術に使用する場合には消毒液等で消毒されたものを使用する。また、手術に使用する前には、図示しない充電器により、充電用端子31a,31bからシート状バッテリ13を充電しておく。」(【0031】)

文献2ウ:「(第2の実施の形態)次に本発明の第2の実施の形態を図7を参照して説明する。本実施の形態は第1の実施の形態をより軽量化するものであり、例えば把持操作部の外装ケースをシート状バッテリで形成するようにしたものである。図7に示す第2の実施の形態の超音波切開凝固装置61は、第1の実施の形態と同様に挿入部62と把持操作部63とからなり、把持操作部63はハンドル部64と操作レバー65とを有する。」(【0037】)

文献2エ:「そして、洗浄はもとより消毒液による消毒、或いは高温高圧の蒸気滅菌、滅菌用ガスでの滅菌等を行えるようにしている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。」(【0043】)

文献2オ:超音波切開凝固装置1が電気部品を有していることは明らかである。

文献2カ:文献2エの記載、文献2ウの「超音波切開凝固装置1は水密構造であり」との記載及び文献2オからして、超音波切開凝固装置1の電気部品は液密に構成されているといえる。

これらの記載事項からみて、引用文献2には、次の発明が記載されている。
「手術で使用し、電気部品を有する超音波切開凝固装置1において、超音波切開凝固装置1を蒸気滅菌可能であるように構成し、電気部品を液密に構成すること。」

3.本件の国際出願日前に頒布された刊行物である特開昭59-155247号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
刊1ア:「第1図は本発明に係る外科用手術具を示す要部断面図、第2図は斜視図である。
まず、回転刃1は、直流モータ2に連結される結合杆3の先端に支承されて固定4され外筒5の先端5aから突出し、またストロークノブ6が直流モータ2と結合する結合杆の下方の嵌合部7の孔7aに嵌入駐止せしめられることにより回転刃の長さ及び結合杆の長さに対応して回転刃の刃先が一定距離だけ前進後退せしめられるようになっている。回転刃として第3図(i)?(X)に示す如き各種態様のものが使用される。」(2頁左上欄4?14行)

刊1イ:刊1アの記載及び第1,2図の図示内容からして、第1,2図には、回転刃1を駆動する直流モータ2を有する細長い形状の把持部を有する外科用手術具が示されているといえる。

4.本件の国際出願日前に頒布された刊行物である特表平11-511037号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
刊2ア:「第4図に示すように、DCモータ46は実質的に第3図のモータアセンブリ26と同じケーシング内に収納されている。ここで、同じ番号は同じ部品を表す。ハウジング90はハウジング38よりも幾分大きな外径を有する本体92を含んでいる。この大きな外径により、ピン70は本体92の内周に形成された凹み93内に収納することができる。したがって、ピン70はハウジング90の外部へ突出することがない。
第4図のモータアセンブリでは、遠端はツール86を取り付けるための軸94およびナット96を含むようにされている。ナット96は軸94の遠端に配置され、ツール86を単純に挿入してナットが解除可能に締め付けられる。したがって、ツールの交換は簡単かつ迅速に行われる。」(9頁23?10頁4行)

刊2イ:刊2アの記載及び第4図の図示内容からして、第4図には、ツール86を駆動するDCモータ46を有する細長い形状の把持部を有するハンドピースが示されているといえる。

5.本件の国際出願日前に頒布された刊行物である特開平6-333677号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
刊3ア:「また第1の器具本体1と第2の器具本体2が分離しているとき、第2の二次電池6bからの電力供給で、第1の器具本体1と第2の器具本体を分離したときのみ働くスイッチ11をオンにすることにより、点灯回路5bによりランプ4を点灯させる。この実施例によれば、商用電源を接続している場合の照明器具としての機能はもちろん、商用電源のない環境での二次電池により照明器具としての機能を満足し、さらには第1の器具本体1から第2の器具本体2を外した場合でも第2の二次電池6aを第2の器具本体2に設けることにより携帯用照明器具として機能する。」(【0023】)

刊3イ:「したがって、商用電源が接続されていない状態において、第2の器具本体2と第1の器具本体1が接続されているときは第1の二次電池6aにおいて、第2の二次電池6bを充電する。これにより、第2の器具本体2が第1の器具本体1に取付けられていれば、商用電源の接続時はもちろん、第1の二次電池6aが充電されている状態であれば常に充電されることとなり、携帯用や補助用としての使用能力をより一層高めることができる。」(【0031】)

刊3ウ:刊3イの記載からして、第2の二次電池6bは、第1の二次電池6aから充電可能なものといえる。

6.本件の国際出願日前に頒布された刊行物である特開2000-216859号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
刊4ア:「【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、この発明の携帯電話用ホルダは、外部電源から入力された電気を充電し、この充電した電気を携帯電話に出力して充電させるバッテリを内蔵している。
【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図2には、この発明の携帯電話用ホルダ1の一実施形態と、携帯電話2及び電気供給用のケーブル3とが示されている。
ここで、携帯電話用ホルダ1には、携帯電話2を出し入れ自在に収容する凹状の収容部4が設けられている。この収容部4には、携帯電話2に電気を供給するための金具(図示省略)が設けられている。」(【0008】?【0011】)

刊4イ:「これに対して、長時間、コンセント9が近くにないような状況下の場合、携帯電話用ホルダ1と携帯電話2とが組み合されただけとなる。この場合、入出力選択回路12は、入力側としてバッテリ10、出力側として携帯電話2を選択する。すると、バッテリ10(携帯電話用ホルダ1)から携帯電話2へ、図5の矢印Cで示すように、電気が供給され、携帯電話2が充電される。」(【0025】)

刊4ウ:刊4イの「バッテリ10(携帯電話用ホルダ1)から携帯電話2へ、図5の矢印Cで示すように、電気が供給され、携帯電話2が充電される。」との記載からして、携帯電話2がバッテリ10から充電可能な電池を有することは明らかである。

7.本件の国際出願日前に頒布された刊行物である特開平1-138929号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
刊5ア:「(発明の構成)
本発明は、充電回路と、この充電回路でもって充電される第1の充電電池とを内蔵した充電アダプタからなる充電器において、前記充電アダプタは第2の充電電池を内蔵した電気機器に着脱自在とし、前記第2の充電電池と第1の充電電池とを接続し、前記第1の充電電池から第2の充電電池へ充電し得る構成としたものである。
上記構成によれば、充電アダプタを電気機器に接続して第1の充電電池から第2の充電電池を充電することにより、超急速充電を行うことができる。」(2頁左下欄19行?2頁右下欄10行)

刊5イ:第4図には充電アダプタ10の上部に凹部が形成されているといえる。

8.本件の国際出願日前に頒布された刊行物である特開平11-120460号公報(以下、「刊行物6」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
刊6ア:「【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。
本発明による地震感知警報装置は、図1及び図2に示すように、筐体1の外面左右に、肩掛けベルト2を着脱自在に掛けることができる掛け金具3を設けており、肩掛けベルト2にて肩に掛けて携行できるようになっている。 筐体1の正面の中央には、スピーカ作動用とテスト用とテレビジョン用とセット用の押ボタンスイッチ4・5・6・7、警報ランプ(常用ランプでもよい)8、及び音量調整ダイヤル9が配設されているとともに、スピーカのための多数の通音孔10が設けられている。また、正面の一側の上角部には凹部11が設けられ、この凹部11の前面の一部と側面の一部とをL形板12で囲むことにより、有底のトランシーバーホルダ13が形成されている。また、正面の他側には、筐体1内に着脱可能に組み込まれた既製の携帯型テレビジョン受信機14の液晶ディスプレイが露出している。
トランシーバーホルダ13を形成するL形板12の内側面には、図3に示すように、既製のスピーカ内蔵型充電式トランシーバー15を上側から抜き差し自在に支持できるように、コ字形板16が固着されている。また、凹部11の底面には、トランシーバー15の蓄電池を充電するための一対のトランシーバー充電用端子17が突設されている。」(【0014】?【0017】)

刊6イ:「ラジオ本体28には、ラジオ及び電灯部29の電源となる蓄電池が内蔵されており、ラジオ本体28の背面に装着されたプラグ19をコンセント20に差し込んで電灯付き携帯ラジオ18を筐体1の一側面に垂直に保持しておくことにより、この蓄電池を充電できるようになっている。」(【0021】)

刊6ウ:「図7に電気的な構成を示す。筐体1内には、蓄電池31、商用交流電源に接続する電源入力部(蓄電池31のための充電安定器を含む)32、地震を感知する振動センサ33、商用交流電源の停電を検出する停電検出回路34、電源入力部32及び蓄電池31からの電源供給を安定化する電源安定回路35、回路相互の組み合わせを選択するセレクトスイッチ36、警報音を発生させる警報音回路37、その警報音及びハンディマイクロフォン21からの音声を知らせるスピーカ38、そのアンプ回路39等が内蔵されている。」(【0022】)

V.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明の「工具」は患部に処置を施すための部材といえるから、本願発明の「工具」と引用発明の「患部の切開、凝固などの処置を施す一対の電極3a、3b」とは、「患部に処置を施す部材」という概念で共通する。

本願発明の「工具駆動用電気駆動ユニット」は、「工具」を電気的に駆動するユニットといえるから、本願発明の「工具駆動用電気駆動ユニット」及び「電子ペン(2)の電気駆動ユニット」と引用発明の「患部の切開、凝固などの処置を施す一対の電極3a、3bに通電するための駆動部6、充電可能タイプのバッテリー5b、整流回路及び高周波コイル」とは、「患部に処置を施す部材を電気的に駆動するユニット」という概念で共通する。

本願発明の「電子ペン」は患部に処置を施すための把持可能な装置といえるから、本願発明の「電子ペン」と引用発明の「バッテリー式手術用ピンセット40」とは、「患部に処置を施すための把持可能な装置」という概念で共通する。

引用発明の「充電器16」は本願補正発明の「装置」に相当し、以下同様に、「通電」、「給電」、「充電」は、「電気エネルギーを供給」及び「電気エネルギーの供給」に、「高周波出力コイルを含む充電用の電気部品」は、「エネルギー供給ユニット」、「装置の電気部品」及び「装置の電子部品」に、「充電器筐体」は「コンソール」に、「電磁誘導により」は「電気接続なしに誘導式に」にそれぞれ相当する。

本願発明の「エネルギー供給ユニットを有するコンソールから電子ペンへの電気エネルギーの供給が滅菌可能なケーブルを介して行われるかまたは電気接続なしに誘導式に行われるかのいずれかであり」は、「エネルギー供給ユニットを有するコンソールから電子ペンへの電気エネルギーの供給が」「電気接続なしに誘導式に行われる」ことを択一的な態様として含むから、本願発明の「エネルギー供給ユニットを有するコンソールから電子ペンへの電気エネルギーの供給が滅菌可能なケーブルを介して行われるかまたは電気接続なしに誘導式に行われるかのいずれかであり」と引用発明の「高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体からバッテリー式手術用ピンセット40への給電が電磁誘導により行われ」とは、「エネルギー供給ユニットを有するコンソールから患部に処置を施すための把持可能な装置への電気エネルギーの供給が滅菌可能なケーブルを介して行われるかまたは電気接続なしに誘導式に行われるかのいずれかであり」という点で一致する。

引用発明では、「高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の上部の滅菌シート19の上に」置かれた「バッテリー式手術用ピンセット40」の「高周波コイル」に対応した位置、つまり局所的な位置において、「充電器筐体の充電用の電気部品に含まれる高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとの間に誘導結合が実現可能」といえる。
そして、本願発明の「局所的にエネルギー供給ユニットを有するコンソールと電子ペンとの間に誘導結合または電気結合が実現可能であり」は、「局所的にエネルギー供給ユニットを有するコンソールと電子ペンとの間に」「誘導結合が実現可能であ」ることを択一的な態様として含むから、本願発明の「この受容部で充電のために電子ペンを受容することができ、またそこで局所的にエネルギー供給ユニットを有するコンソールと電子ペンとの間に誘導結合または電気結合が実現可能であり」と引用発明の「充電のためにバッテリー式手術用ピンセット40を高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の上部の滅菌シート19の上に置くことができ、またそこで充電器筐体の充電用の電気部品に含まれる高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとの間に誘導結合が実現可能であり」とは、「充電のために患部に処置を施すための把持可能な装置を配置することができ、またそこで局所的にエネルギー供給ユニットを有するコンソールと患部に処置を施すための把持可能な装置との間に誘導結合または電気結合が実現可能であり」という点で一致する。

引用発明の「高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の高周波出力コイル」、「充電可能な充電可能タイプのバッテリー5b」は、本願発明の「エネルギー供給ユニットを有するコンソールの相応する装置」、「充電可能な電気エネルギー蓄積装置」にそれぞれ相当する。
そして、本願発明の「装置のエネルギー供給ユニットを有するコンソールの相応する装置との電気結合または誘導結合を介してその蓄電池から充電可能な電気エネルギー蓄積装置」は、「装置のエネルギー供給ユニットを有するコンソールの相応する装置との誘導結合を介してその蓄電池から充電可能な電気エネルギー蓄積装置」を択一的な態様として含むから、本願発明の「装置のエネルギー供給ユニットを有するコンソールの相応する装置との誘導結合を介してその蓄電池から充電可能な電気エネルギー蓄積装置」と引用発明の「充電器16の高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の高周波出力コイルとの誘導結合を介して充電可能な充電可能タイプのバッテリー5b」とは、「装置のエネルギー供給ユニットを有するコンソールの相応する装置との電気結合または誘導結合を介して充電可能な電気エネルギー蓄積装置」という点で一致する。

そこで、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
(一致点)
「患部に処置を施す部材を電気的に駆動するユニットを有する患部に処置を施すための把持可能な装置に電気エネルギーを供給するための装置であって、装置が、患部に処置を施すための把持可能な装置の患部に処置を施す部材を電気的に駆動するユニットに電気エネルギーを供給するエネルギー供給ユニットを有するコンソールを含むものにおいて、
エネルギー供給ユニットを有するコンソールから患部に処置を施すための把持可能な装置への電気エネルギーの供給が滅菌可能なケーブルを介して行われるかまたは電気接続なしに誘導式に行われるかのいずれかであり、
装置が電気部品および/または電子部品を有し、
充電のために患部に処置を施すための把持可能な装置を配置することができ、またそこで局所的にエネルギー供給ユニットを有するコンソールと患部に処置を施すための把持可能な装置との間に誘導結合または電気結合が実現可能であり、
前記装置と共に使用するための患部に処置を施すための把持可能な装置において、装置のエネルギー供給ユニットを有するコンソールの相応する装置との電気結合または誘導結合を介して充電可能な電気エネルギー蓄積装置が患部に処置を施すための把持可能な装置内に取付けられている患部に処置を施すための把持可能な装置を含む装置。」

そして、両者は次の各点で相違する。
(相違点1)
患部に処置を施す部材を電気的に駆動するユニットを有する患部に処置を施すための把持可能な電子装置が、
本願発明では、「工具駆動用電気駆動ユニットを有する電子ペン」であるのに対して、
引用発明では、「患部の切開、凝固などの処置を施す一対の電極3a、3bに通電するための駆動部6、充電可能タイプのバッテリー5b、整流回路及び高周波コイルを有するバッテリー式手術用ピンセット40」
である点。

(相違点2)
患部に処置を施すための把持可能な装置内に取付けられている電気エネルギー蓄積装置が、装置のエネルギー供給ユニットを有するコンソールの相応する装置との電気結合または誘導結合を介して充電可能な点につき、
本願発明では、「エネルギー供給ユニットを有するコンソールが蓄電池を備えており」、「その蓄電池から充電可能」であるのに対して、
引用発明では、「高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体」(エネルギー供給ユニットを有するコンソール)が「蓄電池」を備えていない点。

(相違点3)
本願発明では、「エネルギー供給ユニットを有するコンソールが、蒸気滅菌可能であるように構成され」るとともに、「装置の電気部品および/または電子部品が液密に構成され」ているのに対して、
引用発明では、「高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体」(エネルギー供給ユニットを有するコンソール)が、「蒸気滅菌可能であるように構成され」ておらず、「充電器16の充電用の電気部品」(装置の電気部品および/または電子部品)が「液密に構成され」ていない点。

(相違点4)
充電のために患部に処置を施すための把持可能な装置を配置することができ、またそこで局所的にエネギー供給ユニットを有するコンソールと患部に処置を施すための把持可能な装置との間に誘導結合または電気結合が実現可能である点につき、
本願発明では、「コンソールおよびエネルギー供給ユニットが受容部を有し、この受容部で充電のために電子ペンを受容することができ」るのに対して、
引用発明では、「充電器筐体」(コンソール)及び「高周波出力コイルを含む充電用の電気部品」(エネルギー供給ユニット)が「受容部」を有していない点。

VI.相違点の判断
1.相違点1について検討する。
刊行物1(刊1ア、イ)の「回転刃1」は「工具」といえ、「回転刃1を駆動する直流モータ2」は「工具駆動用電気駆動ユニット」といえ、「回転刃1を駆動する直流モータ2を有する細長い形状の把持部を有する外科用手術具」は「患部に処置を施すための把持可能なペン形状の電子装置」といえる。
同様に、刊行物2(刊2ア、イ)の「ツール86」は「工具」といえ、「ツール86を駆動するDCモータ46」は「工具駆動用電気駆動ユニット」といえ、「ツール86を駆動するDCモータ46を有する細長い形状の把持部を有するハンドピース」は「患部に処置を施すための把持可能なペン形状の電子装置」といえる。
してみると、刊行物1,2の記載事項からして、「工具駆動用電気駆動ユニットを有するペン形状の患部に処置を施すための把持可能な電子装置」は、本件の国際出願日前に周知であったといえる。
そして、引用発明のバッテリー式手術用ピンセット40(患部に処置を施すための把持可能な電子装置)にかえて上記周知の「ペン形状の電子装置」を採用し、「電子ペン」とすることに格別の困難性は見出せない。
以上によれば、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

2.相違点2について検討する。
刊行物3(刊3ア?ウ)の「第1の器具本体1」は「充電器」といえ、「第1の二次電池6a」は「蓄電池」といえ、「第2の器具本体2」は「電気機器」といえ、「第1の二次電池6aから充電可能な第2の二次電池6b」は「蓄電池から充電可能な電気エネルギー蓄積装置」といえる。
同様に、刊行物4(刊4ア?ウ)の「携帯電話用ホルダ1」は「充電器」といえ、「バッテリ10」は「蓄電池」といえ、「携帯電話2」は「電気機器」といえ、「バッテリ10から充電可能な電池」は「蓄電池から充電可能な電気エネルギー蓄積装置」といえる。
同様に、刊行物5(刊5ア、イ)の「充電アダプタ」は「充電器」といえ、「第1の充電電池」は「蓄電池」といえ、「第1の充電電池から充電し得る第2の充電電池」は「蓄電池から充電可能な電気エネルギー蓄積装置」といえる。
してみると、刊行物3?5の記載事項からして、充電器と共に使用する電気機器において、充電器に蓄電池を設けるとともに、充電器に設けた蓄電池から充電可能な電気エネルギー蓄積装置を電気機器内に取付けることは、本件の国際出願日前に周知であったといえる。
そして、充電器16でバッテリー式手術用ピンセット40(電気機器)内に取付けられた充電可能タイプのバッテリー5b(充電可能な電気エネルギー蓄積装置)を充電する引用発明に上記周知技術を適用し、充電器16に蓄電池を設けるとともに、充電器に設けた蓄電池から充電可能タイプのバッテリー5b(充電可能な電気エネルギー蓄積装置)を充電できるようすることに格別の困難性は見出せない。
以上によれば、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

3.相違点3について検討する。
文献1アの「本願発明は患部にエネルギーを付与して処置することが可能な手術具であり、手術用ピンセット等に好適に使用できる手術具に関するものである。」との記載、文献1イの「本願発明は、・・・緊急性の高い手術において使用できるとともに、操作性を大幅に向上することができる手術具を提供することを目的とする。」との記載、文献1エの「昨今感染症の問題などにより、医療器械の再使用時の洗浄・滅菌が問題になっている」との記載及び文献1オの「接続ポート17a、17b、17cおよび17dの上部周辺に滅菌処理された滅菌シート19を載せる、または貼り付けることにより、術中にバッテリー式手術用ピンセット40を充電して再使用することが可能となる。この場合、・・・電磁誘導により給電するようにすると、滅菌シート19の上にバッテリー式手術用ピンセットを置くだけで充電することができる。」との記載からして、引用発明の「充電器16」は、手術に用いるものであって、滅菌を課題とするものといえる。
そして、引用文献2に記載された発明は、「手術で使用し、電気部品を有する超音波切開凝固装置1において、超音波切開凝固装置1を蒸気滅菌可能であるように構成し、電気部品を液密に構成すること。」であって、手術に用いるものであって、滅菌を課題とするものといえる(文献2イ、文献2エ)。
してみると、引用発明の「充電器16」と引用文献2に記載された発明の「超音波切開凝固装置1」とは「手術で使用し、電気部品及び/または電子部品を有する装置」という共通の技術分野に属するとともに、滅菌という共通の課題を有するから、引用発明の「充電器16」に引用文献2に記載された上記発明を適用し、充電器16の高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体(エネルギー供給ユニットを有するコンソール)を「蒸気滅菌可能であるように構成」するとともに、充電器16の充電用の電気部品(装置の電気部品及び/または電子部品)を「液密に構成」することに格別の困難性は見出せない。
以上によれば、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

4.相違点4について検討する。
引用発明は、「充電のためにバッテリー式手術用ピンセット40を高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の上部の滅菌シート19の上に置くことができ、またそこで充電器筐体の充電用の電気部品に含まれる高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとの間に誘導結合が実現可能」なものである。
他方、引用発明において、充電器筐体の高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとの間の誘導結合を実現するためには、充電器筐体の高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとが近接した位置を保つことが望ましいことは明らかである。
してみると、引用発明において、「充電のためにバッテリー式手術用ピンセット40を高周波出力コイルを含む充電用の電気部品を有する充電器筐体の上部の滅菌シート19の上に置く」に当たり、充電器筐体の高周波出力コイルとバッテリー式手術用ピンセット40の高周波コイルとが近接した位置を保つことができるように、充電器筐体(コンソール)及び高周波出力コイルを含む充電用の電気部品(エネルギー供給ユニット)がバッテリー式手術用ピンセット40(患部に処置を施すための把持可能な装置)を受容することができる受容部を有するようにすることに格別の困難性は見出せない。

加えて、刊行物4(刊4ア、イ)の「携帯電話用ホルダ1」は「充電器」といえ、「携帯電話2」は「電気機器」といえ、「凹状の収容部4」「充電器のコンソールに設けられた受容部」といえる。
同様に、刊行物5(刊5ア、イ)の「充電アダプタ」は「充電器」といえ、「充電アダプタ10の上部の凹部」は「充電器のコンソールに設けられた受容部」といえる。
同様に、刊行物6(刊6ア、イ)の「地震感知警報装置」は「充電器」といえ、「充電式トランシーバ15」は「電気機器」といえ、「トランシーバホルダ13」は「充電器のコンソールに設けられた受容部」といえる。
刊行物4?6の記載事項からして、充電器において、充電のために電気機器を受容することができる受容部を充電器のコンソールに設けることは本件の国際出願日前に周知であったといえる。
してみると、引用発明の充電器16(装置)に上記周知技術を適用し、充電器筐体(コンソール)及び高周波出力コイルを含む充電用の電気部品(エネルギー供給ユニット)が充電のためにバッテリー式手術用ピンセット40(患部に処置を施すための把持可能な装置)を受容することができる受容部を有するようにすることに格別の困難性は見出せないともいえる。

そして、引用発明の「バッテリー式手術用ピンセット40」を「電子ペン」とすることを当業者が容易に想到し得ることは、上記相違点1について検討したとおりである。

以上によれば、相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得るものである、又は引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

なお、引用文献1には、従来の技術として、電気エネルギーの供給をケーブルを介して行うものが記載されており(文献1イの【従来の技術】の欄)、本願発明のように「電気エネルギーの供給が滅菌可能なケーブルを介して行われる」ことや「電気結合を介して充電可能」とすることは、当業者が容易に想到し得る程度の事項であるともいえる。

5.そして、本願発明の効果は引用発明、引用文献2に記載された発明及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものである。

6.したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

VI.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-12 
結審通知日 2011-10-14 
審決日 2011-10-26 
出願番号 特願2002-531932(P2002-531932)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 蓮井 雅之
田合 弘幸
発明の名称 電子ペンに電気エネルギーを供給するための装置  
代理人 浜田 治雄  

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