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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) G06F
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録(定型) G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録(定型) G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録(定型) G06F
管理番号 1253385
審判番号 不服2010-3175  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-15 
確定日 2012-03-27 
事件の表示 特願2007- 50740「複数ロケール混在環境におけるプロビジョニング用の管理サーバ、コンピュータプロブラム、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-217167、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年 2月28日の出願であって、
平成21年5月19日付けで審査請求がなされるとともに早期審査に関する事情説明書が提出され、同年6月5日付けで審査官により拒絶理由が通知され、同年9月9日付けで意見書が提出されたが、同年10月6日付けで審査官により拒絶査定がなされ、これに対して平成22年2月15日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年3月4日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ、平成23年1月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ、同年4月25日付けで回答書が提出され、同年11月10日付けで当審により拒絶理由が通知され、平成24年2月14日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたものであって、
その請求項に係る発明は、平成24年2月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至請求項11に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

2.当審の拒絶理由
当審の拒絶理由は次のとおりである。
「 理 由
その1.手続の経緯
本願は、平成19年2月28日の出願であって、
平成21年5月19日付けで審査請求がなされるとともに早期審査に関する事情説明書が提出され、同年6月5日付けで審査官により拒絶理由が通知され、同年9月9日付けで意見書が提出されたが、同年10月6日付けで審査官により拒絶査定がなされ、これに対して平成22年2月15日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年3月4日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ、平成23年1月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ、同年4月25日付けで回答書の提出があったものである。

その2.本願発明について
本願に係る発明は、平成22年2月15日付けの手続補正により補正された、特許請求の範囲、請求項1?18に記載された事項により特定されるものである。

その3.拒絶理由
1)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2) この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
3)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



理由1.36条6項2号について
1.平成22年2月15日付けの手続補正により補正された請求項(以下、「本願の請求項」という)1に、
「論理デバイス操作である処理とロケールと前記処理及び前記ロケールに対応し、ワークフローと呼ばれる処理プログラムコードである命令とを記憶した」と記載されているが、該引用の日本語表現では、何と何を記憶しているのか明確でない。
(“論理デバイス操作である処理と、ロケールと、前記処理及び前記ロケールに対応したワークフローと呼ばれる処理プログラムコードである命令、とを記憶した”が正しい表現ではないか?)

2.本願の請求項1に、
「前記記憶手段を参照して、必要とされる処理及びロケールに応じた命令を選択する選択手段」と記載されているが、
該「選択手段」が行う「選択」は、何からの要求に応じて、或いは、何時の時点で行うものであるか、また、本願の請求項2に記載の「プロビジョニング」とは、どのような関係にあるのか、本願の請求項1に記載の内容、及び、他の請求項に記載の内容を加味しても不明である。

3.本願の請求項2乃至請求項11は、本願の請求項1を引用するものであるから、上記項目1及び項目2で指摘の明確でない構成を内包し、かつ、本願の請求項2乃至請求項11に記載の内容を加味しても、上記項目1及び項目2で指摘の本願の請求項1記載の発明における明確でない構成が明確になるものでもない。
加えて、
(あ)本願の請求項2に、
「前記記憶手段は前記複数の処理資源と各ロケールとを記憶する」と記載されているが、本願の請求項1においては、「処理資源」について、
「複数の処理資源とネットワークを介して接続される管理サーバ」(下線は当審にて説明の都合上附加したものである。以下、同じ)と記載されていて、前記引用の本願の請求項1に記載の内容に従えば、本願の請求項1に記載の「処理資源」は、「管理サーバ」と「ネットワークを介して接続される」ような“ハードウェア”であるものと解されるが、
前記引用の本願の請求項2に記載の内容に従えば、「処理資源」は、「記憶手段」に「記憶」される“情報”であると解されるので、本願の請求項2に記載の「処理資源」がどのようなもので、本願の請求項1に記載の「処理資源」とどのような関係にあるのか不明である。
(い)本願の請求項3に記載の「処理資源の状況」とは、どのようなものを想定しているのか、不明である。

4.本願の請求項12、及び、請求項13に、
「論理デバイス操作である処理とロケールと前記処理及び前記ロケールに対応し、ワークフローと呼ばれる処理プログラムコードである命令」と記載されているが、
上記項目1で指摘の理由により、その意味するところが明確でない。

5.本願の請求項14乃至請求項16は、本願の請求項13を直接・間接に引用するものであるから、上記項目4で指摘の明確でない構成を内包し、かつ、本願の請求項14乃至16に記載の内容を加味しても、上記項目4で指摘の、本願の請求項13に記載の発明における明確でない構成が明確になるものでもない。
加えて、
(う)本願の請求項14に、
「管理サーバには前記複数の処理資源と各ロケールが記憶され」と記載されているが、
該記載中の「処理資源」がどのようなもので、本願の請求項13に記載の「処理資源」との関係がどのようなものであるか、上記項目3(あ)で指摘の理由と同様に不明である。

理由2.36条4項1号について
1.本願の請求項1に記載された、
「ワークフローと呼ばれる処理プログラムコードである命令」 について、
本願明細書の発明の詳細な説明には、その段落【0016】に、
「ここで、ロケールとワークフロー(命令)は一対に構成され」、
との記載がある反面、同段落【0017】には、
「選択されたワークフローを使用し、対応する命令を対応するリソースサーバへ送信する」、
との記載があり、段落【0016】の記載に従えば、“「ワークフロー」=「命令」”との解釈も可能であるが、一方、段落【0017】の記載に従えば、“「命令」は、「ワークフロー」を用いて、「対応するリソースサーバへ送信」されるもの”、即ち、“「ワークフロー」≠「命令」”とも解釈可能であるから、発明の詳細な説明に記載された内容からでは、「ワークフロー」と「命令」との関係が不明瞭である。
(原審の審査官が、特許法第164条第3項の規定に基づく報告において引用した、審判請求人に関連する文献である。「Tivoli Intelligent Orchestrator ワークフロー開発者のガイド バージョン3.1」に、
「ワークフローの概要
ワークフローとは、複数の構成からなる簡単なプログラムで、データ・センタ?の管理に使用します。ワークフローは、特定のタスクを実行するいくつかの基本ステップで構成することも、ターゲット・マシン上で実行する他のワークフロー、Tivoli Intelligent Orchestratorデータ・センター・モデル照会、Javaプラグイン、スクリプトなどを含む多くのステップで構成することもできます。」(第2頁第1?2行)
との記載があるとように、本願における「ワークフロー」とは、「プログラム」であって、「命令」ではないものと解されるが如何?)

2.本願の請求項4、及び、請求項15に記載された、
「選択された命令を前記必要とされるロケールに対応する処理資源へ送信する」について、
本願明細書の発明の詳細な説明では、
「【0016】
図3に示すとおり、この管理サーバ100は、記憶テーブル(記憶手段)10と、プロビジョニング部(決定手段)11と、呼び出し部(選択手段)12と、送信部(送信手段)13とを備えている。この記憶テーブル10は、処理OP欄、ロケールL欄、ワークフローWF欄を備えている。ここで、ロケールとワークフロー(命令)は一対に構成され、単一の処理に対して複数のロケールに対応した複数のワークフローが存在する。例えば、処理aに対してロケールl1に対応するワークフローwfa1と、ロケールl2に対応するワークフローwfb2がそれぞれ対応している。また、各ワークフローにはロケールによる条件分岐のハードコードが存在しない。
【0017】
プロビジョニング部11は、予め記憶しているポリシーと、管理ユーザからの要望、ネットワーク300を介して受信するシステムの障害発生通知、ワークロード通知などに基づいて、どのリソースサーバをどの処理に割り当てるかを決定する。なお、このようなプロビジョニングの方法は周知技術を適用することができる。呼び出し部12は、プロビジョニング部11が決定した割り当て対象のリソースサーバとその処理とに基づいて記憶テーブル10を参照し、対応するワークフローを動的に選択する(後述する)。送信部13は、選択されたワークフローを使用し、対応する命令を対応するリソースサーバへ送信する。その後、その命令を受信したリソースサーバは命令を解釈、実行し、対応する処理を実行する。なお、上述の通り、当該命令を解釈する際に、ロケール毎の条件分岐は発生しない。
【0018】
図4に本実施例における呼び出し部12の動作を概念的に示した。つまり、ある処理とその処理を行うリソースサーバ(オブジェクト)が決定されると、そのリソースサーバがその属性として有するロケールを使用し、記憶テーブル10を検索し、該当するワークフローを選択する。例えば、ある処理とその処理を行うリソースサーバ202が決定されたとすると、リソースサーバ202がその属性として有するロケール=en_USを使用し、記憶テーブル10を検索し、該当するen_US用のワークフローを選択する。一方、ある処理とその処理を行うリソースサーバ201が決定されたとすると、リソースサーバ201がその属性として有するロケール=ja_JPを使用し、記憶テーブル10を検索し、該当するja_JP用のワークフローを選択する。」
との記載があり、上記引用の段落【0016】の記載に従えば、「記憶テーブル10」には、「処理」と「ロケール」と「ワークフロー」との対応を示す情報が記憶されていることが読み取れ、同段落【0017】から、「決定した割り当て対象のリソースサーバとその処理とに基づいて記憶テーブル10を参照し、対応するワークフローを動的に選択」することが読み取れ、同段落【0018】からは、「記憶テーブル10」の検索に「リソースサーバ」の「ロケール」に関する情報を用いていることは読み取れるが、該「記憶テーブル10」の検索に用いる「リソースサーバ」の「ロケール」に関する情報は、どの時点で取得し、検索に用いているのか、発明の詳細な説明に記載された内容からは不明である。(少なくとも、「管理サーバ100」が有する「記憶テーブル10」に記憶される情報には、「リソースサーバ」と、該「リソースサーバ」の属性である「ロケール」とを対応付ける情報が含まれているとは読み取れず、また、該情報を「プロビジョニング」の際に取得している点も読み取れない。また、発明の詳細な説明に記載された内容からは、プロビジョニングの際、「管理サーバ」が、「リソースサーバ」の「ロケール」情報を取得することが、当業者にとって自明の事項とも認められない。)

3.本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】に、本願において解決すべき課題として、
「すなわち、第一の対応策では、ロケールの数だけワークフローを用意する必要がある。特に、ロケールの数が増加すると、増加したロケールに対応するワークフローを新たに用意する必要がある。」
と記載されているが、上記で引用した段落【0016】?【0018】、及び、これらの段落に関連する【図4】の記載、並びに、【図5】の記載内容から、本願の請求項1乃至請求項18に係る発明においても、「ロケールとワークフロー(命令)は一対に構成され」ているので、この条件のもとでどのようにして、段落【0005】に記載の課題を解決しているか不明である。
以上のとおりであるから、本願明細書の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術分野に属する通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

理由3.37条について、
本願の請求項1乃至16に係る発明は、
“「管理サーバ」に、「処理」と、該「処理」を実行する「処理資源」の「ロケール」情報と、該「処理」の実行に用いる「ワークフロー」との対応関係を、「管理サーバ」の「記憶手段」に記憶する”ことに関連するものであるのに対して、
本願の請求項17、及び、請求項18に係る発明は、
“ある「ロケール」に対応する「ワークフロー」を、他の「ロケール」に対応する「ワークフロー」に変換する”ことに関連するものであるから、
本願の請求項1乃至16に係る発明と、本願の請求項17、及び、請求項18に係る発明とでは、「発明特定事項」が明らかに異なっている。
よって、本願の請求項1乃至16に係る発明と、本願の請求項17、及び、請求項18に係る発明とは、特許法第37条に規定する関係を満たしていない。

理由4.29条2項について、
1.請求項17、及び、請求項18について、
本願の出願前に既に公知である、“「Tivoli Intelligent Orchestrator ワークフロー開発者のガイド バージョン3.1」,第1刷,日本アイ・ビー・エム株式会社,2005年6月,pp.1-4, 11-31”(以下、「引用刊行物」という)の特に第25頁に、
「異なるロケールでのワークフローの作成
プロダクトに含まれているTivoli Intelligent Orchestratorワークフローはロケールに依存しており、en_USロケールでのみ稼働するよう設計されています。en_US以外のロケールでワークフローの機能を利用するには、ワークフローをコピーし、該当のロケールで使用するために変更する必要があります。ワークフローでロケール依存の外部シェル・スクリプトを使用する場合、スクリプト・ファイルにもそれに応じた変更が必要です。例えば、スクリプトでターゲット・アプリケーションからのメッセージを予期している場合、対象ロケールのメッセージを受け取るよう変更します。」
との記載があるように、「ロケール」に応じて「ワークフロー」を変更することは、当業者に既に知られた事項である。
よって、本願の請求項17、及び、請求項18に係る発明は、引用刊行物に記載の発明から、当業者が容易になし得たものである。」

そして、本願については、当審の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-03-14 
出願番号 特願2007-50740(P2007-50740)
審決分類 P 1 8・ 65- WYF (G06F)
P 1 8・ 536- WYF (G06F)
P 1 8・ 121- WYF (G06F)
P 1 8・ 536- WYF (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北元 健太大塚 良平  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 田中 秀人
石井 茂和
発明の名称 複数ロケール混在環境におけるプロビジョニング用の管理サーバ、コンピュータプロブラム、及び方法  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 上野 剛史  
代理人 太佐 種一  

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