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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 E06B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B |
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管理番号 | 1253835 |
審判番号 | 不服2010-23169 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-13 |
確定日 | 2012-03-15 |
事件の表示 | 特願2000-274976「配光制御装置、ブラインド、パーティション、カーテン、テント及び照明器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002- 81275〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.経緯 本願は、平成12年9月11日の出願であって、平成22年2月19日付けで拒絶理由が通知され、それに対して、同年4月26日意見書および手続補正書が提出され、その後、同年6月21日付けで拒絶査定がなされ、それに対して平成22年10月13日付けで審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出され、平成23年5月19日付けで審尋がなされたものである。 第2.平成22年10月13日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成22年10月13日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容及び補正後の本願発明 平成22年10月13日付けでなされた補正(以下「本件補正」という。)には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする事項が含まれている。 (補正前) 「【請求項1】 光透過性または光反射性を有する板またはフィルム状の構造体であり、少なくともその一面に互いに平行に接して並ぶ多数の突条を有し、その突条の長手方向に直交する断面が円の一部を形成し、各突条の表面を大幅な光の乱拡散を起こさない程度に平滑とし、突条の並列な接触により起きる回折格子効果において入射光量に対する回折光量が利用目的に十分な割合があるようにかかる突条の断面の円周角と最大径を選択することにより、構造体に入射する光線を拡散させ、突条と構造体の面の双方に直交する面への拡散分布の投影がその入射角にかかわらず入射点での法線を軸として概ね対称となるようにすることを特徴とする配光制御装置。」 (補正後) 「【請求項1】 光透過性または光反射性を有する板またはフィルム状の構造体であり、少なくともその一面に互いに平行に接して並ぶ多数の突条を有し、その突条の長手方向に直交する断面が円の一部を形成し、各突条の表面を平滑とし、各突条の断面の円周角を160度以上とし、各突条の最大径を3mm以下とし、各突条の断面の円の一部の真円度を80%以上とすることにより、構造体に入射する光線を拡散させ、突条と構造体の面の双方に直交する面への拡散分布の投影がその入射角にかかわらず入射点での法線を軸として概ね対称となるようにすることを特徴とする配光制御装置。」 2.補正事項について 上記補正事項は、 補正前の請求項1に記載されていた各突条の表面を「大幅な光の乱拡散を起こさない程度に平滑」とする記載から「大幅な光の乱拡散を起こさない程度に」との記載を削除して「平滑」に変更し(以下、「補正事項1」という。)、 補正前の請求項1に記載されていた「突条の並列な接触により起きる回折格子効果において入射光量に対する回折光量が利用目的に十分な割合があるようにかかる突条の断面の円周角と最大径を選択すること」を「各突条の断面の円周角を160度以上とし、各突条の最大径を3mm以下とし、各突条の断面の円の一部の真円度を80%以上とすること」に変更する(以下、「補正事項2」という。」)、ものである。 ア.補正事項1について 補正事項1は、平成22年2月19日付けで通知された拒絶理由および平成23年6月21日付け拒絶査定において、不明りょうであるとされた記載を削除するものであり、不明りょうな記載の釈明にあたる。 イ.補正事項2について 補正事項2の根拠について、請求人は、審判請求書において、つぎの主張をしている。なお、下線は当審において付したものであり、以下同様である。 「3.本願発明が特許されるべき理由 本審判請求書と同時に提出した手続補正書における補正の根拠は以下のとおりである。 (1)補正の根拠の明示 ア 本願請求項1について … 中略 … (イ)「突条の並列な接触により起きる回折格子効果において入射光量に対する回折光量が利用目的に十分な割合があるようにかかる突条の断面の円周角と最大径を選択することにより」を「各突条の断面の円周角を160度以上とし、各突条の最大径を3mm以下とし、各突条の断面の円の一部の真円度を80%以上とすることにより」に変更する補正において、まず、「各突条の断面の円周角を160度以上とし」については、本願出願当初明細書の段落0012の記載中の「実際の商業生産の技術上の制約により図3に示す如く円弧の円周角は160度で…」および図3を根拠とする。もっとも、本願出願当初明細書の段落0012および図3には「160度」と記載され、「160度以上」とは記載されていない。しかしながら、本願出願当初明細書の段落0009には、突条の「断面の曲縁が円弧であり、その円弧の径が同じである場合には、曲縁が大きな円周角を持つほど、対称性が高くなる」と記載されている。したがって、本願出願当初明細書の段落0009、0012および図3の記載を総合すると、「160度以上」の根拠が本願出願当初明細書に明示されているといえる。したがって、この補正は新規事項の追加に該当しない。 次に、「各突条の最大径を3mm以下とし」については、本願出願当初明細書の段落0008の記載中の「この現象の目視的観察から本願発明の各種応用目的に適する拡散分布における対称性は径が3mm程度以下のファイバにより得られると言うことができる」を根拠とする。したがって、この補正は新規事項の追加に該当しない。 次に、「各突条の断面の円の一部の真円度を80%以上とする」については、本願出願当初明細書の段落0013の記載中の「応用の対象によってはかかる真円度の崩れが20%程度までは本発明の機能を発揮することができよう」を根拠にする。したがって、この補正は新規事項の追加に該当しない。 また、「突条の並列な接触により起きる回折格子効果において入射光量に対する回折光量が利用目的に十分な割合があるようにかかる突条の断面の円周角と最大径を選択することにより」を「各突条の断面の円周角を160度以上とし、各突条の最大径を3mm以下とし、各突条の断面の円の一部の真円度を80%以上とすることにより」に変更する補正は、次の理由により、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当する。すなわち、各突条の断面の円周角を160度以上とし、各突条の最大径を3mm以下とすることは、突条の並列な接触により起きる回折格子効果において入射光量に対する回折光量が利用目的に十分な割合があるようにかかる突条の断面の円周角と最大径を選択することに該当し、しかも、それらの選択の範囲をそれぞれ限定するものである。また、各突条の断面の円の一部の真円度を80%以上とすることは、各突条の断面形状の範囲を限定するものである。したがって、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当する。 」 上記主張において補正の根拠とされた本願明細書の【0012】には、つぎのことが記載されている。 「【0012】 実施の形態3.アクリル樹脂材料を用いて透明で厚さが約2.8mmの薄板の両面に半径が約0.15mmの円弧状の曲縁を持つ多数の突条を互いに接触させて形成した。実際の商業生産の技術上の制約により図3に示す如く円弧の円周角は160度で円弧の終点からその接線方向に直線部を突条の頂点より深さ約0.15mmに達するまで設け、この点で隣の突条と接するようにしたことで押し出し成形による商業生産を可能にした。両面の突条は同じ位相のものと位相を0.15mmずらしたものを両面の突条の平行性を保ったまま作成した。これらを用いて実施の形態1と同様の実験を行ったところ、同位相のものと位相をずらしたものの双方とも実施の形態1と同様の結果を得た。」 上記【0012】は、樹脂材料を用い、押し出し成形によって「円弧状の曲縁を持つ多数の突条を互いに接触させて形成」する際に、「実際の商業生産の技術上の制約」により160度とすると説明している。当該記載における「実際の商業生産の技術上の制約」は160度を超える円周角で曲縁を形成することが商業生産の技術上から困難であることを意味していると解するほかないので、「実際の商業生産の技術上の制約により図3に示す如く円弧の円周角は160度」は円周角の下限というよりも、むしろ、上限を規定した記載と認められる。 したがって、上記【0012】には、円周角を160度よりも大きくすることは記載されておらず、かつ、円周角を160度よりも大きくすることが【0012】の記載から自明な事項とも認められない。 また、確かに上記主張のとおり【0009】には、「曲縁が大きな円周角を持つほど、対称性が高くなる」ことは記載されているが、当該記載を参酌しても、上記【0012】に記載された「実際の商業生産の技術上の制約」を克服して円周角を160度よりも大きくすることが出願当初の明細書等に記載された事項であるとは認められない。 よって、上記補正事項2は、出願当初の明細書等に記載されたものではなく、かつ、出願当初の明細書等の記載から自明な事項でもないので、新規事項を追加するものである。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 ウ.予備的判断:独立特許要件について 仮に、上記補正事項2が新規事項の追加に当たらないとした際に、本件補正後の請求項1に記載された発明(前記「第2.[理由]1.(補正後)」参照。以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (1)刊行物1 本願の出願日前に頒布された特開平6-33671号公報(平成22年6月21日付け拒絶査定における引用文献1。以下、「刊行物1」という。)には以下の事項が記載されている。 (1a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透光性材料で作られたカーテンの少なくとも片面に、レンチキュラー,リニアプリズム,ピラミッド型プリズム等の光屈折性を有するパターンが設けられて成ることを特徴とする配光制御カーテン。」 (1b) 「【産業上の利用分野】本発明は配光制御カーテンに関する。詳しくは住宅,事務所等の窓部に取り付けて直射日光または散乱光等の外光を効率よく室内にとり込むと共に室内にやわらかい光を広くゆきわたらせる効果をもつ配光制御カーテンに関する。」 (1c) 「【発明が解決しようとする課題】紙障子やレースカーテンは、たしかに室内にやわらかい光をゆきわたらせる効果が高く、そのため広く普及してきたが、外光の室内へのとり入れ効率は低い水準(例えば25?30%)にあった。また、これらは光の方向性や拡散の度合いを必ずしも自由に制御できるものとは云い難かった。 【0006】本発明は、上記従来の問題点に鑑み、光の方向性や拡散の度合を自由に制御できる配光制御カーテンを実現しようとする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明の配光制御カーテンに於いては、透光性材料で作られたカーテンの少なくとも片面に、レンチキュラー,リニアプリズム,ピラミッド型プリズム等の光屈折性を有するパターンが設けられて成ることを特徴とする。」 (1d) 「【0012】 【実施例】図1は本発明の第1の実施例を示す図であり、(a)は全体斜視図、(b)は(a)図のb-b線における一部断面図である。本実施例は横幅1m,上下方向長さ2mのロールカーテンをたて長の窓に取り付けた例であり、(a)図は室内側より見た図で、符号1は窓枠、2は窓ガラス、3はカーテン生地、4はカーテン支持部材、5は操作紐である。 【0013】カーテン生地は、透明のポリカーボネート樹脂に平均粒径5μm のスチレンビーズ球体を重量比で5%含有させた光拡散性樹脂を溶融紡糸し、ノズル出口でベイラス効果で糸間溶着させたもので、図1(b)の如く直径0.5mmの略丸型断面の糸が2000本並んだファイバーシート式の両面レンチキュラーである。このカーテン生地は図1(a)の如く図示なき軸に巻き取られ、カーテン支持部材4により窓枠1の上部に取り付けられる。カーテンの操作機構は従来のものと同様であり、その開閉は操作紐5によって行なうことができるようになっている。 【0014】このように構成された本実施例はカーテン生地3の全光線透過率が82%と高く、横方向(水平方向)への光拡散性が高いので、例えば窓が1個所しかない5m四方の部屋でも、室内全体をやわらかい光で室内いっぱいに効率よく照明することができた。 【0015】図2は本発明の第2の実施例を示す図である。本実施例は、前実施例と同様なロールカーテンにおいて、カーテン生地を、その一方の面にレンチキュラー6を形成し、他方の面にリニアプリズム7を形成したものに置き換えたものである。このカーテン生地3の材料は、ゴム系成分含有のメタクリル樹脂であるアクリペットIR(三菱レイヨン株式会社製)を押し出し賦型した厚さ0.6mmのシートであり、その室外側表面にはピッチ0.4mmのカマボコ型レンチキュラー6が縦(垂直)方向に並列して形成され、室内側表面には、ピッチ0.3mm、傾斜角20度のリニアプリズム7が横(水平)方向に並列して設けられている。 【0016】このように構成された本実施例は、初冬の頃、日光8が水平に近く且つ横方向に拡散して暖かくやわらかな光となり室内の奥深く入り照明することができる。」 (1e) 「【図1】 【図2】 【図3】 」 (当審注:上記図1(b)、図2、図3には、光透過材料を用いた板またはフィルム状であり少なくとも片面にレンチキュラーを形成した構造体が記載されている。) これらの記載事項、特に第2の実施例によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「光透過性材料で作られた板またはフィルム状の構造体であり、 少なくともその片面にピッチ0.4mmで並列して形成されたカマボコ型レンチキュラーを有し、構造体に入射する光線を拡散させる配向制御カーテン。」 (5)対比 本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較する。 刊行物1記載の発明の「光透過性材料で作られた板またはフィルム状の構造体」および「配向制御カーテン」は、本願補正発明の「光透過性を有する板またはフィルム状の構造体」および「配向制御装置」に相当する。 刊行物1記載の「片面にピッチ0.4mmで並列して形成」された「カマボコ型レンチキュラー」の径が3mm以下で有ることは明らかだから、当該「カマボコ型レンチキュラー」は各突状の最大経を3mm以下とした「一面に互いに平行に接して並ぶ多数の突条」に該当する。 したがって、両者は、 「光透過性を有する板またはフィルム状の構造体であり、少なくともその一面に互いに平行に接して並ぶ多数の突条を有し、各突状の最大経を3mm以下とし、構造体に入射する光線を拡散させる配光制御装置。」 で、一致し、つぎの点で相違する。 (相違点1) 本願補正発明が、各突状の表面を「平滑」とするのに対して、刊行物1記載の発明では各突条の表面の状態が不明である点。 (相違点2) 本願補正発明が、「突条の長手方向に直交する断面が円の一部を形成し、」「各突条の断面の円周角を160度以上とし、各突条の最大径を3mm以下とし、各突条の断面の円の一部の真円度を80%以上とする」のに対して、刊行物1記載の発明では当該突条の断面形状がカマボコ型である点。 (相違点3) 本願補正発明が「突条と構造体の面の双方に直交する面への拡散分布の投影がその入射角にかかわらず入射点での法線を軸として概ね対称となるようにする」のに対して、刊行物1記載の発明では「光を拡散させる」ことは記載されているが、どのように拡散するかは不明である点。 (6)判断 (6-1)相違点1について 刊行物1には、構造体を「ゴム系成分含有のメタクリル樹脂であるアクリペットIR(三菱レイヨン株式会社製)を押し出し賦型」により形成することが記載されている。(上記(1d)【0015】参照) 上記の方法で形成された際に、表面形状を変化させる特段の工程がなされていないことから、形成された構造体の表面は「平滑」な面となっていることは当業者には明らかである。 よって、当該相違点1は、刊行物1に実質的に記載された事項である。 (6-2)相違点2について 刊行物1には、突条を有する構造体を形成する際に、「略丸型断面の糸」を用いることが記載されており(上記(1d)【0013】参照)、当該記載は該突条の長手方向に直交する断面を「円の一部」とすることに相当する。 そして、刊行物1記載の発明において、突条をカマボコ型レンチキュラーに代えて、突条の長手方向に直交する断面が円の一部である形状を採用することに格別の困難性はない。 該突条の長手方向に直交する断面を円の一部とする際に、その円周角および真円度は所望の拡散光を得るために当業者が適宜調整することにすぎず、本願補正発明1の各数値範囲に臨界的意義は見出せない。 したがって、上記相違点2は、刊行物1の記載に基づいて当業者が容易に想到しうるものである。 (6-3)相違点3について 相違点3に係る構成は、本願補正1に記載された形状の突条を用いた構造体により拡散される光の状態を規定したものである。 そして、上記「(6-2)相違点2について」で判断したとおり、本願補正1に記載された形状の突条は刊行物1に係る発明から当業者が容易に想到しうるものであるから、そのような突条から得られる拡散される光についても進歩性は認められない。 (7)独立特許要件についてのむすび 以上のとおり本願補正発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.補正の却下の決定についてのむすび したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 なお、本件補正が上記平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反してないとしても、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成22年10月13日付けの手続補正は上述のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の平成22年4月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記「第2.[理由]1.(補正前)」参照) 2.記載不備について 本願発明には「大幅な光の乱拡散を起こさない程度に平滑」と記載されているが、どの程度の乱拡散を起こすものが、上記記載に含まれるのかが発明の詳細な説明を参酌しても不明である。 さらに、本願発明には「利用目的に十分な割合があるように」と記載されているが、どの程度のものが、上記記載に含まれるかも、発明の詳細な説明を参酌しても不明である。 したがって、本願発明は明確ではなく、特許法第36条第6項第2項の規定を満たしていない。 3.新規性、進歩性について (1)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記「第2.[理由]2.ウ.(1)」に記載した刊行物1のとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、本願補正発明における「平滑」を「大幅な光の乱拡散を起こさない程度」とし、かつ、本願補正発明において突条の形状を「円周角」、「最大径」および「真円度」の数値で規定していたことを、定性的に「突条の並列な接触により起きる回折格子効果において入射光量に対する回折光量が利用目的に十分な割合があるようにかかる突条の断面の円周角と最大径を選択すること」と規定するものである。 上記本願発明の記載は、上記「2.記載不備について」で判断したとおり不明りょうな記載であるが、本件補正後の請求項1に記載されていた事項を含んでいることは明らかである。 してみると、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、前記「第2.[理由]2.ウ.(1)-(7)」に記載したとおり、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明しうるものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1記載の発明から当業者が容易に発明しうるものである。 4.本願発明についてのむすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 また、本願の請求項1には係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-11 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-01-30 |
出願番号 | 特願2000-274976(P2000-274976) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E06B)
P 1 8・ 537- Z (E06B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 荒井 良子 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
金高 敏康 清水 康司 |
発明の名称 | 配光制御装置、ブラインド、パーティション、カーテン、テント及び照明器 |
代理人 | 北村 周彦 |