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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1253977
審判番号 不服2009-8456  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-20 
確定日 2012-03-14 
事件の表示 特願2005-175993「使い捨て一体型フィルタユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月 5日出願公開、特開2006- 848〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成17年6月16日(パリ条約による優先権主張2004年6月17日、アメリカ合衆国)の出願であって,平成21年1月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年4月20日に拒絶査定不服審判が請求され,同日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成21年4月20日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】 入口および出口を有し,一対の端板の間に挿入された複数のフィルタ板を備える使い捨て一体型フィルタユニットであって,
前記フィルタ板の各々が,少なくとも3つの重ならないゾーン,すなわち,入口ゾーンからろ過ゾーンへの流体のアクセスを可能にするために,入口ゾーンをろ過ゾーンに接続する供給チャネルへ接続する開口を備える入口ゾーン,ろ過ゾーン,およびろ過ゾーンから出口ゾーンへの流体のアクセスを可能にするろ過ゾーンを出口ゾーンに接続するろ過チャネルへ接続する開口を備える出口ゾーンを有するポリマーフレーム構造と,互いの積層によって形成される複合パッドに似た構造を形成するろ過材の厚い層状配置構成で形成される深い勾配フィルタパケットとを備え,該深い勾配フィルタパケットが,ろ過ゾーンで前記ポリマーフレームに埋め込まれ,
フィルタ板および端板が実質的に固定された一体型積層体を形成し,フィルタ板の全ての入口ゾーンおよび全ての出口ゾーンを位置合わせすることによって,前記入口を通して使い捨て一体型フィルタユニットに入る流体は,前記出口を通して前記一体型フィルタユニットを出る前に,実質的に同時に,各フィルタ板の入口ゾーン,深い勾配フィルタパケット,および出口ゾーンを通る,前記使い捨て一体型フィルタユニット。」
と補正された。

上記補正のうち,補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「熱可塑性フレーム」について,「ポリマーフレーム」とすることは,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
さらに,上記補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である,「入口ゾーン」,「出口ゾーン」,「複合パッド」,「流体は・・・実質的に同時に,各フィルタ板の入口ゾーン,深い勾配フィルタパケット,および出口ゾーンを通る」について,それぞれ「入口ゾーンからろ過ゾーンへの流体のアクセスを可能にするために,入口ゾーンをろ過ゾーンに接続する供給チャネルへ接続する開口を備える」,「ろ過ゾーンから出口ゾーンへの流体のアクセスを可能にするろ過ゾーンを出口ゾーンに接続するろ過チャネルへ接続する開口を備える」,「互いの積層によって形成される」,「フィルタ板の全ての入口ゾーンおよび全ての出口ゾーンを位置合わせすることによって,」と限定するものである。また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって,上記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
(2-1)引用例1
ア.原査定における拒絶の理由に引用された特開平5-96108号公報 (以下,「引用例1」という。)には,以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「【0015】先ず,図1を参照すると,フィルタユニットは,平行な側部11及び半円形端部12を有する連続的な周縁部材を含むプラスチック材料から成るフレーム10を備えている。付加的部材13が半円形端部12の直径を横断して伸長し,半円形の孔14を形成する。
【0016】フレーム10の部材は略矩形の断面であり,離間して相互に平行な面内に位置する対向面15,16を備えている。付加的な部材13aの一方は,フレーム10の一側部15に凹状面17aを有し,他方の付加的な部材13bは,フレームの反対側16に凹状面17bを有している。これは,図3に最も良く示してある。
【0017】側部11及び付加的部材13a,13bは,フィルタ媒体19のシートを保持する略矩形の孔18を画成する。フィルタ媒体は,例えば,ポリアミド,PVDF,PTFE,ポリプロピレン繊維又はガラス繊維のような任意の所望の型式とすることが出来る。
【0018】このように,一方の付加的部材13aは周縁部材と共に,孔14の一方の孔及び媒体の孔18の一部を形成する。他方の付加的部材13bは周縁部材と共に,孔14の他方の孔及び媒体孔18の残りを形成する。凹状面17aは,1つの孔14と媒体孔18との間の通路の一部を形成し,凹状面17bは他方の孔14と媒体孔18との間の通路の一部を形成する。
【0019】フィルタユニットは次のように形成される。
【0020】適当な寸法のフィルタ媒体19のシートを適当な形状の金型内に挿入する。フィルタ媒体19の融点より低いか又はそれよりも顕著に高くない融点を有するプラスチック材料を溶融状態にて金型内に射出する。例えば,このプラスチック材料はポリプロピレンとすることが出来る。フィルタ媒体19は,その周縁が側部11及びフレームの付加的部材13を画成する金型部分内に伸長するように保持する。このようにして,成形工程が完了すると,フィルタ媒体の周縁は側部11及びフレーム10の付加的部材13内に挿入成形される。次に,フィルタユニットを金型から除去する。」

(b)「【0025】これらマニホルド21,22の各々は,関係するフィルタユニット24の形状と同一の周縁形状を有する蓋23を備えている。該蓋23の1つの面25は,平坦である一方,その他方の面は,蓋23の面に対して直角な方向に向け蓋23から突出する管26を担持する。通路27が表面25から管を通って伸長する。
【0026】入口マニホルド21及び出口マニホルド22は,フィルタユニットと同一のプラスチック材料(例えば,ポリプロピレン)にて成形することが便宜である。」

(c)「【0027】図4のフィルタにおいて,6つのフィルタユニットが入口マニホルド21と出口マニホルド22との間で組立体として配置されている。交互のフィルタユニット24を反対にし,図4に示すように,隣接するフィルタユニット24が相互に対面し,共通の通路29を形成するそれぞれの凹状部分17b及び相互に反対方向を向いた他方の凹状部分17aを備えている。フィルタユニット24のフレーム10の周縁部材は対面状態に密封係合する。更に,対称面の一側部への孔14は全て整合し,対称面の反対側への孔14は全て入口マニホルドと連通し,単一の入口30を形成する一列の孔14,及び出口マニホルド22と連通し,単一の出口31を形成する別の一列の孔と整合する。」

(d)「【0028】1つの端部フィルタユニット24の1つの面は,入口マニホルド21の面25に接触し,その結果,フレーム10の面15は蓋23の面25と対面状態に密封接触する。このようにして,チャンバ32が形成され,ろ過すべき流体は入口30及び凹状面17aへの通路27からこのチャンバ32内に流動する。
【0029】この構成は,出口マニホルド22についても同一である。出口マニホルド22に隣接するフィルタユニット24のフレーム10の反対面15は,該出口マニホルド22の蓋23の面25と対面状態に密封係合する。このようにして,流体がフィルタ媒体19から流動するチャンバ33が形成され,流体は出口31及び出口マニホルド22の通路27を通ってフィルタ媒体19の凹状面17から排出される。」

(e)「【0030】このようにして,図4に示すように,ろ過すべき流体は,入口30及び出口31間でフィルタユニット24を通り,平行に図面の矢印の方向に流動する。このように,フィルタユニット24及びマニホルド21,22の組立体は,フィルタ媒体19に対して一体の容器を提供する。この容器は一体であるため,内部に封じ込められるフィルタのコストを削減し,又,製造時間を短縮する。」

イ.ここで,上記記載事項(a)ないし(e)、図1及び図4から,次のことが分かる。

(f)上記(b)、(c)の記載及び図4から,一対の蓋23の間に複数のフィルタユニット24が挿入されていることが分かる。

(g)上記(c),(e)の記載及び図4から,一体型のフィルタユニットであること,及びフィルタユニット24および蓋23が実質的に固定された一体型積層体を形成していることが分かる。

(h)上記(a)の記載、図1及び図4から,入口30を形成する孔14,媒体孔18,及び出口31を形成する孔14は,重ならないゾーンにあることが分かる。

(i)上記(a)、(c),(d),(e)の記載、図1及び図4から,入口30を形成する孔14は,媒体孔18に接続しているチャンバ32に接続する凹状面17aに連通していることが分かる。
さらに,出口31を形成する孔14は,媒体孔18に接続しているチャンバ33に接続する凹状面17bに連通していることが分かる。

(j)上記(c),(e)の記載、図1及び図4から,フィルタユニット24の全ての孔14を整合することによって,ろ過すべき流体が流動する通路27を通してフィルタユニットに入る流体は,前記流体が排出される通路27を通してフィルタユニットを出る前に,実質的に平行に,各フィルタユニット24の入口30を形成する孔14,フィルタ媒体19,および出口31を形成する孔14を通ることが分かる。

ウ.以上の(a)ないし(j)及び図1,3,4によれば,引用例1には,次の発明(以下,これを「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ろ過すべき流体が流動する通路27および流体が排出される通路27を有し,一対の蓋23の間に挿入された複数のフィルタユニット24を備える一体型フィルタユニットであって,
前記フィルタユニット24の各々が,少なくとも3つの重ならないゾーン,すなわち,
媒体孔18に接続しているチャンバ32に接続する凹状面17aに連通する,入口30を形成する孔14,
媒体孔18,
および媒体孔18に接続しているチャンバ33に接続する凹状面17bに連通する,出口31を形成する孔14,
を有するポリプロピレンからなるフレーム10と,
フィルタ媒体19とを備え,該フィルタ媒体19が,媒体孔18で前記フレーム10の側部11及び付加的部材13内に挿入され,
フィルタユニット24および蓋23が実質的に固定された一体型積層体を形成し,フィルタユニット24の全ての入口30を形成する孔14および全ての出口31を形成する孔14を整合することによって,前記ろ過すべき流体が流動する通路27を通して一体型フィルタユニットに入る流体は,前記流体が排出される通路27を通して前記一体型フィルタユニットを出る前に,実質的に平行に,各フィルタユニット24の入口30を形成する孔14,フィルタ媒体19,および出口31を形成する孔14を通る,一体型フィルタユニット。」

(2-2)引用例2
ア.原査定における拒絶の理由に引用された特開昭52-142373号公報(以下,「引用例2」という。)には,以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「従って効率的な濾過の条件は,・・・(2)塵埃が粗いものから細かいものへ順次濾過されていくように濾材に密度勾配をもたせて形成することである。」(第2頁右上欄第11-15行)

(b)「第4図は上記第2図,第3図に示す不織布の略中程度の密度を有する密度勾配型の不織布(7)で実質的な不要物濾過層であり,下層(5)より上層(6)になるに従ってその密度が粗くなる様構成されている。」
(第2頁左下欄第15-19行)

(c)「流体は整流作用を兼ねそなえた積層濾材の最も抵抗の小さなB層(イ)より流入する。
流入した流体は矢印の方向に従って移動し,・・・表層が比較的密度が低く,下層になるに従って密度が高くなるよう構成した密度勾配型不織布よりなるC層に均等に分配されて流入し,矢印(ロ)を通過してD層(10)に達し・・・」
(第3頁右下欄第8-16行)

イ.ここで,上記記載事項(b),(c)及び第13ないし15図から,次のことが分かる。

(d)積層濾材に入る流体は,積層濾材を出る前に,実質的に同時に,各濾過層の入口,濾過層,濾過層の出口を通るものであることが分かる。

ウ.以上の(a)ないし(d)及び第13ないし15図によれば,引用例2には,次の発明(以下,これを「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「積層濾材に入る流体が,積層濾材を出る前に,実質的に同時に,各濾過層の入口,濾過層,濾過層の出口を通る濾過材において,効率的な濾過をするために,濾過層が出口側の下層より入口側の上層になるに従ってその密度が粗くなる様構成されている密度勾配型の濾過層である,濾過材。」

(3)対比
引用発明1において「ろ過すべき流体が流動する通路27」「流体が排出される通路27」「蓋23」「フィルタユニット24」は,それぞれ本願補正発明の「入口」「出口」「端板」「フィルタ板」に相当する。

引用発明1において「チャンバ32」「チャンバ33」は,それぞれ本願補正発明の「供給チャネル」「ろ過チャネル」に相当し,引用発明1の「媒体孔18」「チャンバ32に接続している凹状面17a」「入口30を形成する孔14」,「チャンバ33に接続している凹状面17b」「出口31を形成する孔14」「ポリプロピレンからなるフレーム10」は,それぞれ本願補正発明の「ろ過ゾーン」「供給チャネルに接続している開口」「入口ゾーン」「ろ過チャネルに接続している開口」「出口ゾーン」「ポリマーフレーム構造」に相当する。
とすれば,引用発明1において「媒体孔18に接続しているチャンバ32に接続する凹状面17aに連通する,入口30を形成する孔14,媒体孔18,および媒体孔18に接続しているチャンバ33に接続する凹状面17bに連通する,出口31を形成する孔14を有するポリプロピレンからなるフレーム10」は,本願補正発明の「入口ゾーンからろ過ゾーンへの流体のアクセスを可能にするために,入口ゾーンをろ過ゾーンに接続する供給チャネルへ接続する開口を備える入口ゾーン,ろ過ゾーン,およびろ過ゾーンから出口ゾーンへの流体のアクセスを可能にするろ過ゾーンを出口ゾーンに接続するろ過チャネルへ接続する開口を備える出口ゾーンを有するポリマーフレーム構造」との要件を満たす。

引用発明1において「媒体孔18で前記フレーム10の側部11及び付加的部材13内に挿入され」ということは,本願補正発明の「ろ過ゾーンで前記ポリマーフレームに埋め込まれ」という要件を満たす。

本願補正発明における「流体は・・・実質的に同時に・・・を通る」とは,流体が平行に各フィルタ板を通ることであるから(本願明細書段落0019,0031参照),引用発明において「流体は・・・実質的に平行に・・・を通る」とは,本願補正発明の「流体は・・・実質的に同時に・・・を通る」との要件を満たす。

したがって,本願補正発明と,引用発明1とは,本願補正発明の記載に倣うと,
「入口および出口を有し,一対の端板の間に挿入された複数のフィルタ板を備える一体型フィルタユニットであって,
前記フィルタ板の各々が,少なくとも3つの重ならないゾーン,すなわち,入口ゾーンからろ過ゾーンへの流体のアクセスを可能にするために,入口ゾーンをろ過ゾーンに接続する供給チャネルへ接続する開口を備える入口ゾーン,ろ過ゾーン,およびろ過ゾーンから出口ゾーンへの流体のアクセスを可能にするろ過ゾーンを出口ゾーンに接続するろ過チャネルへ接続する開口を備える出口ゾーンを有するポリマーフレーム構造と,
フィルタ媒体19とを備え,該フィルタ媒体19が,ろ過ゾーンで前記ポリマーフレームに埋め込まれ,
フィルタ板および端板が実質的に固定された一体型積層体を形成し,フィルタ板の全ての入口ゾーンおよび全ての出口ゾーンを整合することによって,前記入口を通して一体型フィルタユニットに入る流体は,前記出口を通して前記一体型フィルタユニットを出る前に,実質的に同時に,各フィルタ板の入口ゾーン,フィルタ媒体19,および出口ゾーンを通る,一体型フィルタユニット。」である点で一致し,次の相違点で相違している。

相違点1
本願補正発明においては,一体型フィルタユニットは「使い捨て」であるのに対し,引用発明1では,そのように特定されていない点。

相違点2
本願補正発明においては,フィルタ板は「互いの積層によって形成される複合パッドに似た構造を形成するろ過材の厚い層状配置構成で形成される深い勾配フィルタパケット」を備えるのに対し,引用発明1では,「フィルタ媒体19」を備えるとしている点。

(4)相違点の検討
ア.上記相違点1について検討する。
フィルタを使い捨てにすることは,適宜設定しうるものにすぎない。

イ.上記相違点2について検討する。
引用発明2における「濾過層」は,本願補正発明の「フィルタパケット」に相当し,引用発明2の「出口側の下層より入口側の上層になるに従ってその密度が粗くなる様構成されている密度勾配型の濾過層」は,本願補正発明における「互いの積層によって形成される複合パッドに似た構造を形成するろ過材の厚い層状配置構成で形成される深い勾配フィルタパケット」という要件を満たす。
引用発明1と引用発明2は共に,実質的に同時に,各フィルタパケットを通る形式のものである点で,共通する。また効率的な濾過をすることは,フィルタ一般において当然に有している課題であって,引用発明1も当該課題を有している。
とすれば,引用発明1において,効率的な濾過をするために,「フィルタ媒体19」に代えて,引用発明2の「密度勾配型の濾過層」を適用し,相違点2に係る本願補正発明の構成とすることに格別の困難性は認められない。

ウ.しかも,全体として本願補正発明が奏する効果も,引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できたものであって,格別顕著なものとはいえない。

(5)独立特許要件について
したがって,本願補正発明は,引用発明1及び引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)まとめ
以上のとおり,本件手続補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり,本件手続補正は却下されたので,本願の請求項1ないし請求項11に係る発明は,平成20年5月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項11に記載された事項により特定されるところ,請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】 入口および出口を有し,一対の端板の間に挿入された複数のフィルタ板を備える使い捨て一体型フィルタユニットであって,
前記フィルタ板の各々が,少なくとも3つの重ならないゾーン,すなわち,入口ゾーン,ろ過ゾーン,および出口ゾーンを有する熱可塑性フレーム構造と,複合パッドに似た構造を形成するろ過材の厚い層状配置構成で形成される深い勾配フィルタパケットとを備え,該深い勾配フィルタパケットが,ろ過ゾーンで前記熱可塑性フレームに埋め込まれ,
フィルタ板および端板が実質的に固定された一体型積層体を形成し,前記入口を通して使い捨て一体型フィルタユニットに入る流体は,前記出口を通して前記一体型フィルタユニットを出る前に,実質的に同時に,各フィルタ板の入口ゾーン,深い勾配フィルタパケット,および出口ゾーンを通る,前記使い捨て一体型フィルタユニット。」
(以下,請求項1に係る発明を,「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された特開平5-96108号公報(引用例1)に記載された事項,及び引用例1に記載された発明,並びに特開昭52-142373号公報(引用例2)に記載された事項,及び引用例2に記載された発明は,上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明1は,上記2(1)で検討した本願補正発明から,上記補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である,「入口ゾーン」,「出口ゾーン」,「複合パッド」,「流体は・・・実質的に同時に,各フィルタ板の入口ゾーン,深い勾配フィルタパケット,および出口ゾーンを通る」についてそれぞれ限定する,「入口ゾーンからろ過ゾーンへの流体のアクセスを可能にするために,入口ゾーンをろ過ゾーンに接続する供給チャネルへ接続する開口を備える」,「ろ過ゾーンから出口ゾーンへの流体のアクセスを可能にするろ過ゾーンを出口ゾーンに接続するろ過チャネルへ接続する開口を備える」,「互いの積層によって形成される」,「フィルタ板の全ての入口ゾーンおよび全ての出口ゾーンを位置合わせすることによって,」との事項を省き,さらに本願補正発明の「ポリマーフレーム」を「熱可塑性フレーム」としたものである。
引用発明1の「ポリプロピレンからなるフレーム」は,本願発明1の「熱可塑性フレーム」に相当する。そして,「熱可塑性フレーム」を除き,これ以外の本願発明1を特定する事項を全て含み,さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明は,上記2(4)に記載したとおり,引用発明1及び引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明1も,同様の理由により,引用発明1及び引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであって,本願発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-12 
結審通知日 2011-10-18 
審決日 2011-11-02 
出願番号 特願2005-175993(P2005-175993)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 新司吉岡 沙織服部 智  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 亀田 貴志
熊倉 強
発明の名称 使い捨て一体型フィルタユニット  
代理人 金山 賢教  
代理人 小野 誠  
代理人 川口 義雄  
代理人 坪倉 道明  
代理人 大崎 勝真  
代理人 渡邉 千尋  

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