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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1254283
審判番号 不服2011-10733  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-23 
確定日 2012-03-21 
事件の表示 特願2004-237939「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 55242〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年8月18日の出願であって、平成23年3月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成23年5月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、当審において、平成23年11月15日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し平成24年1月7日付けで手続補正がされた。

2.本願発明
本願の請求項1に記載された発明は、平成24年1月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】遊技の当否を示すための特別図柄を変動表示および停止表示する特別図柄表示装置と、
特別図柄の変動と同期して遊技の当否を示すために画像を変動表示する画像表示装置と、
遊技の進行を司る遊技制御基板と、
前記画像表示装置を制御する画像制御基板と、
少なくとも賞球の払い出しを実行する払出制御基板と、を備え、
前記遊技制御基板は、遊技球が始動領域に入球した時に取得した特別図柄の変動時間と停止図柄のデータに基づいて、前記特別図柄表示装置の変動制御を直接行う構成であって、
前記特別図柄は、確変図柄と通常図柄を備えており、
前記画像表示装置は、遊技盤の前面にレール部によって囲まれた略円形の遊技領域内に設けられ、
前記特別図柄表示装置は、前記遊技盤を視認可能としながら覆うための光透過部材の領域外で、かつトップランプの位置に設けた
ことを特徴とする遊技機。」

3.引用文献
当審の拒絶の理由で引用文献1として引用された特開平6-304312号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【0009】
図1は、遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技盤面を示した図である。遊技盤1の前面側の区画レール2で囲まれた部分が遊技領域3である。遊技者が図示しない打球操作ハンドルを操作することにより、パチンコ玉が1つずつ区画レール2を通って遊技領域3内に打込まれる。遊技領域3内には、数値および図柄等からなる複数種類の識別情報を可変表示可能とし、所定のキャラクタを表示可能として可変表示装置4が設けられている。可変表示装置4は、前記キャラクタを表示する領域である可変表示部5を有している。可変表示部5はLCDにより構成される。
【0010】
遊技領域の左端部および右端部にはサイドランプ21が設けられる。左端部のサイドランプ21が設けられた領域内には、4つのLED(発光ダイオード)72a,72b,72c,72dが設けられている。右端部のサイドランプ21が設けられた領域内には、4つのLED72e,72f,72g,72hが設けられている。また、可変表示装置4の左端部には、2つのLED72i,72jが設けられ、可変表示装置4の右端部には、2つのLED72k,72mが設けられている。すなわち、可変表示装置4には、合計4つのLED72i?72mが設けられていることになる。
【0011】
可変表示装置4の下方には始動入賞口9が配設されており、この始動入賞口9に入賞した始動入賞玉が始動入賞玉検出器10により検出される。この始動入賞玉検出器10の検出信号に基づいて、可変表示装置4における可変表示部5の表示状態およびLED72a?72mの点灯状態が同時に変化開始される。その際に、LED72a?72mは、LED72a?72dを第1のブロック、LED72e?72hを第2のブロック、LED72i,72j,72k,72mを第3のブロックとして、それぞれのブロック単位で点灯状態が変化させられる。前記変化開始時から所定時間経過後、可変表示部5の表示状態およびLED72a?72mの点灯状態の変化が停止される。
【0012】
この停止時において、可変表示部5の表示結果が第1のブロックのLED72a?72dと第2のブロックのLED72e?72hと第3のブロックのLED72i?72mとが同一の点灯態様の場合、可変入賞球装置11が開成して遊技者にとって有利な第1の状態とする大当り制御が開始される。ここで、大当り制御が開始される条件は、LED72a?72mの3つのブロックが同一の点灯態様となることであり、可変表示部5は、LED72a?72mの点灯状態の変化が停止するまでの演出をキャラクタ表示により行なっている。なお、本発明でいうキャラクタとは、画像表示に登場する人物、動物あるいは宝箱等の物を表わす図柄をいう。
【0013】
可変入賞球装置11には、開閉自在な開閉板12が設けられており、通常時においてはソレノイド13が励磁されていないために開閉板12が閉成状態となっているが、特定遊技状態が発生したことに基づいてソレノイド13が励磁されて開閉板12が開成する。この開閉板12は、所定期間(たとえば30秒間)または所定個数(たとえば10個)のパチンコ玉の入賞のうちいずれか早い方の条件が成立したことにより閉成して遊技者にとって不利な第2の状態となる。この可変入賞球装置11内に入賞した入賞玉の合計個数が入賞個数表示器14により表示される。また、可変入賞球装置11内に形成された特定入賞領域(Vポケット)にパチンコ玉が入賞すれば繰返し継続条件が成立して、その回の可変入賞球装置11の第1の状態が終了するのを待って可変入賞球装置11を再度第1の状態にする繰返し継続制御が行なわれる。」

(イ)「【0017】
パチンコ遊技機の制御回路は、各種機器を制御するためのプログラムに従って、遊技機制御を行なうメインCPUとしてのマイクロコンピュータを含む基本回路50と、電源投入時に基本回路50および後述する基本回路66をリセットするための初期リセット信号PRESETを出力するための初期リセット回路52と、基本回路50から与えられるクロック信号を分周して定期的(たとえば2msec毎)にリセット信号RRESETを基本回路50に与えるための定期リセット回路52と、各スイッチやセンサに接続され、与えられるアドレス信号によって選択されるスイッチからの信号を基本回路50に与えるためのスイッチ回路54と、基本回路50等に接続され、基本回路50から与えられるアドレス信号をデコードして基本回路50等に与えるためのアドレスデコード回路51とを含む。さらに、パチンコ遊技機の制御回路には、基本回路50によって制御されるLED回路55,LCD回路58と、基本回路50によって制御されるモータ回路56およびソレノイド回路57と、大当り情報や可変表示装置の表示状態を変化開始するのに利用される始動入賞個数に関する情報である有効始動情報等を遊技場におけるホストコンピュータであるホール用管理コンピュータに出力する情報出力回路59とを含む。また、制御回路は、基本回路50からの制御信号を受けて図3に示す基本回路66のサブCPUに指令信号を出力するためのサブCPUコマンド出力回路60を含む。
【0018】
LCD回路58は、サブCPU、ROMおよびRAMを含み、可変表示部5を構成するLCD40に画像を表示させる。このLCD回路58は基本回路50と相互通信を行なうようになっている。LCD回路58と基本回路50との間で相互通信を行なうようにしたために、LCD40の画像表示に合わせてLCD回路58から基本回路50へその画像に応じた音を表わす音指令信号(スピーカ等から音を発生させるための信号)を与えれば、基本回路50からサブCPUコマンド回路60および基本回路66を介して音発生増幅回路70に音指令信号が与えられる。その結果、可変表示部5における表示画像と音の同期が簡単にとれる。なお、LCD回路58と基本回路50との間は、基本回路50からLCD回路58への一方向通信にしてもよい。」

(ウ)「【0023】
LED回路68は、基本回路66からの指令信号に基づいて、LED72a?72mおよびその他のLED(たとえばサイドランプ21のLED)を点灯または点滅制御する。LED回路68によるLED72a?72mの点灯・点滅制御は、基本回路66からの一方向通信による指令信号に基づいて行なわれるが、LED72a?72mの点灯・点滅制御は、大当りの発生表示に関係するものであるので、基本回路50から直接的に与えられる指令信号に基づいて行なうようにしてもよい。」

(エ)「【0025】
基本回路50内には、CPUを動作させるためのプログラムが記憶されたROMやRAMを有しており、基本回路50は、遊技制御、可変表示装置4の可変表示部5およびLED72a?72mを制御するための種々のランダムカウンタの機能を有している。ランダムカウンタは、ランダム1カウンタ、ランダム2カウンタおよびランダム3カウンタを含む。
【0026】
ランダム1カウンタは、パチンコ玉の始動入賞時における当りはずれを決定するためのランダムカウンタである。ランダム1カウンタは、「0」?「255」のカウント値をランダムにとり得るものであり、始動入賞時におけるカウント値がたとえば「1」である場合に大当りの発生が事前決定され、その決定に従って、可変表示装置4の可変表示部5の変化停止時の表示結果が特定の表示態様となるように制御される。このランダム1カウンタでの大当りが発生する確率は1/256である。
【0027】
ランダム2カウンタは、大当りが発生する際のLED72a?72mの点灯表示態様の図柄(以下図柄と略する)を決定するためのランダムカウンタである。ランダム2カウンタは、「0」?「15」のカウント値をランダムにとり得るものであり、始動入賞時におけるカウント値に基づいて、大当りとなるLED72a?72mの図柄(以下大当り図柄と呼ぶ)を決定する。
【0028】
ランダム3カウンタは、大当りが発生しない場合のLED72a?72mの図柄を決定するためのランダムカウンタである。ランダム3カウンタは、「0」?「4095」のカウント値をランダムにとり得るものであり、始動入賞時におけるカウント値に基づいて、LED72a?72mの大当り図柄以外の図柄(以下はずれ図柄と呼ぶ)を決定する。
【0029】
以上のような制御回路では、LED72a?72mにより第1の可変表示装置が構成され、可変表示部5を含む可変表示装置4により第2の可変表示装置が構成される。また、基本回路50およびLED回路68により、LED72a?72mの点灯・点滅制御を行なう第1の可変表示制御手段が構成され、基本回路50およびLCD回路58により、キャラクタ表示の制御を行なう第2の可変表示制御手段が構成されている。」

(オ)「【0039】
このように、可変表示部5の表示画像において、勇者キャラクタ5dとモンスターキャラクタ5eとの間で武器や魔法などを使って相手の生命力を減少させる戦闘のシーンが表示される。この戦闘においては、先に相手の生命力を無くした方のキャラクタが勝ちとなる。そして、この戦闘で勇者キャラクタ5dが勝った場合は、図6(b)に示されるように、モンスターキャラクタ5eが倒れた態様と、「モンスターは倒れた!」というメッセージとが表示され、それと同時にまたは少し遅れてLED72a?72mが大当り図柄となり、大当りが発生する。一方、勇者キャラクタ5dが負けた場合は、勇者キャラクタ5dが負けたことを示すキャラクタの状態とメッセージとが表示され、それと同時にまたは少し遅れてLED72a?72mがはずれ図柄となる。
【0040】
このように、始動入賞後、LED72a?72mにおいて大当り図柄またははずれ図柄が表示されるまでに、可変表示部5においてキャラクタ画面が現われて所定のゲームが行なわれるので、遊技者は、可変表示装置4およびLED72a?72mを含めた可変表示装置全体の表示を見飽きることなく楽しく遊技を行なうことができる。また、本実施例は、勇者キャラクタは必ず勝つか負けるかのどちらかであるが、これには限らず、引分けとなり、第2の可変表示装置では第1の可変表示装置が当りになるか否かがわからないときがあってもよい。」

(カ)「【0043】
大当りが発生した後の大当り制御中には、可変表示装置4の可変表示部5に以下に示すような表示がなされる。
【0044】
大当り制御中に、所定の物語に従って、たとえば図7(a)に示されるような勇者キャラクタ5jなどの所定のキャラクタが山や洞窟等を冒険する。この冒険中には、図7(a)に示されるようなモンスターキャラクタ5k、川および岩などの様々な障害が出現する。勇者キャラクタ5jは、これらの障害を克服して冒険を続ける。たとえば、モンスターキャラクタ5kが現われた場合は、たとえば第1実施例に示されるような戦闘シーンと同様の戦闘シーンが繰り広げられる。
【0045】
そして、このような冒険の最中に、図7(b)に示されるように勇者キャラクタ5jは、所定の確率で宝箱5mを見付けることが可能となっている。この宝箱5mは、勇者キャラクタ5jがモンスターキャラクタ5kとの戦闘で勝った場合および勇者キャラクタ5jが冒険物語中の所定の場所に到着した場合に得られる。このようにして得られた宝箱5mの中には特別な遊技価値が付与されるラッキーリング5n(図7(b)参照)および特別な遊技価値の付与が中止される悪魔のリングなどの品物が入っており、その品物が以後の遊技状態に影響を与えるようになっている。
【0046】
ラッキーリング5nを得たことにより付与される前記特別な遊技価値とは以下のようなものである。
【0047】
(1)その大当り終了後に、大当りが発生する確率が高くなる。
(2)図1に示されるようなパチンコ遊技機に、パチンコ玉が通過する通過口と、その通過口をパチンコ玉が通過したことに応答して普通図柄(たとえば複数種類の数値)の可変表示を行なう普通図柄可変表示部と、その普通図柄可変表示部が停止した場合の図柄が所定の態様となった場合に所定時間開放する電役である普通電役とを付加的に備えたパチンコ遊技機において、前記普通図柄が所定の表示態様となる確率を向上させる。」

(キ)「【0052】
また、本実施例においては、第1の可変表示装置としてLED72a?72mを用いたが、その代わりに、7セグメント、ドットマトリックスまたは回転ドラム等の表示装置からなるものを用いてもよい。さらに、本実施例においては、第2の可変表示装置としてLCDを用いた可変表示部5を含む可変表示装置4を用いたが、その代わりに、プラズマ、CRT等の表示装置からなるものを用いてもよい。さらに、第1および第2の可変表示装置は、たとえば前面ガラス、幕板、島等の遊技機以外に設けてもよい。」

摘記した上記(ア)?(キ)の記載や図面等によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「始動入賞口9に入賞した始動入賞玉が始動入賞玉検出器10により検出されると始動入賞玉検出器10の検出信号に基づいて、可変表示装置4における可変表示部5の表示状態およびLED72a?72mの点灯状態が同時に変化開始され、LED72a?72mは、LED72a?72dを第1のブロック、LED72e?72hを第2のブロック、LED72i,72j,72k,72m(以下「72i?72m」という。)を第3のブロックとして、それぞれのブロック単位で点灯状態が変化させられ、前記変化開始時から所定時間経過後、可変表示部5の表示状態およびLED72a?72mの点灯状態の変化が停止され、可変表示部5は、LED72a?72mの点灯状態の変化が停止するまでの演出をキャラクタ表示により行なっており、
可変表示部5の表示画像において、勇者キャラクタ5dとモンスターキャラクタ5eとの間で武器や魔法などを使って相手の生命力を減少させる戦闘のシーンが表示され、この戦闘で勇者キャラクタ5dが勝った場合は、モンスターキャラクタ5eが倒れた態様と、「モンスターは倒れた!」というメッセージとが表示され、それと同時にまたは少し遅れてLED72a?72mが大当り図柄となり、大当りが発生し、勇者キャラクタ5dが負けた場合は、勇者キャラクタ5dが負けたことを示すキャラクタの状態とメッセージとが表示され、それと同時にまたは少し遅れてLED72a?72mがはずれ図柄となり、
各種機器を制御するためのプログラムに従って、遊技機制御を行なうメインCPUとしてのマイクロコンピュータを含む基本回路50と、
サブCPU、ROMおよびRAMを含み、可変表示部5を構成するLCD40に画像を表示させるLCD回路58と、
LED72a?72mの点灯・点滅制御は、基本回路50から直接的に与えられる指令信号に基づいて行ない、
遊技盤1の前面側の区画レール2で囲まれた部分である遊技領域3に可変表示部5を有した可変表示装置4を設け、
LED72a?72mをパチンコ遊技機以外に設けたパチンコ遊技機。」

4.引用発明と本願発明との対比
引用発明の「LED72a?72m」は本願発明の「特別図柄表示装置」に相当し、以下同様に、
「可変表示装置4における可変表示部5」は「画像表示装置」に、
「各種機器を制御するためのプログラムに従って、遊技機制御を行なうメインCPUとしてのマイクロコンピュータを含む基本回路50」は「遊技の進行を司る遊技制御基板」に、
「LCD回路58」は「画像制御基板」に、
「始動入賞玉」は「遊技球」に、
「始動入賞口9」は「始動領域」に、
「入賞した」は「入球した」に、
「遊技盤1」は「遊技盤」に、
「区画レール2」は「レール部」に、
「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、
それぞれ相当する。

さらに、引用文献1の記載及び図面の記載から次のことがいえる。

引用発明では、LED72a?72mは、LED72a?72dを第1のブロック、LED72e?72hを第2のブロック、LED72i?72mを第3のブロックとして、それぞれのブロック単位で点灯状態が変化させられ、変化開始時から所定時間経過後、可変表示部5の表示状態およびLED72a?72mの点灯状態の変化が停止され、大当りの時は、LED72a?72mが大当り図柄となり、はずれの時は、LED72a?72mがはずれ図柄となることから、LED72a?72mのブロック単位での点灯状態によって遊技の当否を示しており、引用発明は本願発明の「遊技の当否を示すための特別図柄を変動表示および停止表示する特別図柄表示装置」を備えているといえる。

引用発明では、可変表示装置4における可変表示部5の表示状態およびLED72a?72mの点灯状態が同時に変化開始され、可変表示部5は、LED72a?72mの点灯状態の変化が停止するまでの演出をキャラクタ表示により行なっていることから、可変表示部5の表示状態とLED72a?72mの点灯状態とは同期しているといえ、可変表示部5の表示画像において、勇者キャラクタ5dとモンスターキャラクタ5eとの間で武器や魔法などを使って相手の生命力を減少させる戦闘のシーンが表示され、この戦闘で勇者キャラクタ5dが勝った場合は、モンスターキャラクタ5eが倒れた態様と、「モンスターは倒れた!」というメッセージとが表示され大当りとなり、勇者キャラクタ5dが負けた場合は、勇者キャラクタ5dが負けたことを示すキャラクタの状態とメッセージとが表示されはずれとなることから、引用発明は本願発明の「特別図柄の変動と同期して遊技の当否を示すために画像を変動表示する画像表示装置」を備えているといえる。

引用発明では、始動入賞口9に入賞した始動入賞玉が始動入賞玉検出器10により検出されると始動入賞玉検出器10の検出信号に基づいて、LED72a?72mの点灯状態が変化開始されており、上記(エ)の記載によれば、パチンコ玉の始動入賞時における当りはずれを決定するためのランダムカウンタ、大当りが発生する際のLED72a?72mの点灯表示態様の図柄を決定するためのランダムカウンタ、大当りが発生しない場合のLED72a?72mの点灯表示態様の図柄を決定するためのランダムカウンタによりLED72a?72mを制御することが記載されており、遊技球が始動領域に入球した時に取得した特別図柄の変動時間と停止図柄のデータではないものの、パチンコ玉の始動入賞時におけるデータに基づいて制御しており、LED72a?72mの点灯・点滅制御は、基本回路50から直接的に与えられる指令信号に基づいて行なっていることから、引用発明と本願発明とは「前記遊技制御基板は、遊技球が始動領域に入球した時に取得したデータに基づいて、前記特別図柄表示装置の変動制御を直接行う構成」である点で共通している。

引用文献1の図1から、遊技盤1の前面側の区画レール2で囲まれた部分である遊技領域3は、略円形であることは明らかであるため、引用発明は本願発明の「遊技盤の前面にレール部によって囲まれた略円形の遊技領域」を備えているといえる。

引用発明では、LED72a?72mをパチンコ遊技機以外に設けていることから、引用発明と本願発明とは「前記特別図柄表示装置は、前記遊技盤を視認可能としながら覆うための光透過部材の領域外に設けた」点で共通している。

以上を総合すると、両者は、
「遊技の当否を示すための特別図柄を変動表示および停止表示する特別図柄表示装置と、
特別図柄の変動と同期して遊技の当否を示すために画像を変動表示する画像表示装置と、
遊技の進行を司る遊技制御基板と、
前記画像表示装置を制御する画像制御基板と、を備え、
前記遊技制御基板は、遊技球が始動領域に入球した時に取得したデータに基づいて、前記特別図柄表示装置の変動制御を直接行う構成であって、
前記画像表示装置は、遊技盤の前面にレール部によって囲まれた略円形の遊技領域内に設けられ、
前記特別図柄表示装置は、前記遊技盤を視認可能としながら覆うための光透過部材の領域外に設けた遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、少なくとも賞球の払い出しを実行する払出制御基板を備えているのに対して、引用発明では払出制御基板を備えているかどうかが不明である点。

<相違点2>
本願発明では、前記遊技制御基板は、遊技球が始動領域に入球した時に取得した特別図柄の変動時間と停止図柄のデータに基づいて、前記特別図柄表示装置の変動制御を直接行う構成であるのに対して、引用発明では特別図柄の変動時間と停止図柄のデータに基づいていない点。

<相違点3>
本願発明では、特別図柄は、確変図柄と通常図柄を備えているのに対して、引用発明では、当該構成を備えていない点。

<相違点4>
本願発明では、前記特別図柄表示装置は、前記遊技盤を視認可能としながら覆うための光透過部材の領域外で、かつトップランプの位置に設けたのに対して、引用発明では、光透過部材の領域外ではあるが、トップランプの位置ではない点。

5.判断
<相違点1>について
遊技機に賞球の払い出しを実行する払出制御基板を備えることは、例えば、当審の拒絶の理由で引用文献2として引用された特開平9-234276号公報(特に、段落【0020】参照)に記載されているように周知技術(以下「周知技術1」という。)である。そして、引用発明においても所定の条件を満たすと賞球を払い出すことは明らかであるから、引用発明に上記周知技術1を採用して、本願発明の相違点1に係る発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

<相違点2>について
遊技球が始動領域に入球した時に取得した特別図柄の変動時間と停止図柄のデータに基づいて変動制御を行うことは、例えば、当審の拒絶の理由で引用文献3として引用された特開2001-104574号公報(特に、段落【0035】、【0045】?【0048】を参照)に記載されているように周知技術(以下「周知技術2」という。)である。そして、引用発明においても、図柄の停止図柄と変動時間を決定しなければならないことは明らかであるから、引用発明に上記周知技術2を採用して、本願発明の相違点2に係る発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

<相違点3>について
遊技機の分野において、特別図柄として、確変図柄と通常図柄を備えることは、例えば、特開2003-320110号公報(特に、段落【0033】、【0034】参照)、特開2004-208902号公報(特に、段落【0019】参照)に記載されているように周知技術(以下「周知技術3」という。)である。そして、引用文献1の段落【0044】?【0047】には、大当り終了後に、大当りが発生する確率が高くなる特別な遊技価値を付与することが記載されていることから、何らかの手段により大当りが発生する確率が高くなったことを報知しなければならないことは明らかであるから、引用発明に上記周知技術3を採用して、本願発明の相違点3に係る発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

<相違点4>について
引用文献1にはトップランプの位置について明記はされていないものの、遊技機のガラス扉枠の上方であって前面枠の上部分にトップランプを備えることは、例えば、当審の拒絶の理由で引用文献4として引用された特開2003-310886号公報(特に、段落【0133】、図1参照)に記載されているように周知技術(以下「周知技術4」という。)であり、当該部分がトップランプの位置といえるから、引用発明にもガラス扉枠の上方であって前面枠の上部分であるトップランプの位置が存在していると認められる。そして、引用文献1には、可変表示装置を光透過部材の領域外に設けることが記載されており、具体的にどこに設けるかは、当業者が適宜選択決定し得る事項に過ぎず、また、トップランプの位置に設けた時の効果についても当業者が予測し得る程度のものであるため、引用発明のLED72a?72mをトップランプの位置に設けて、本願発明の相違点4に係る発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

そして、本願発明の効果は、引用発明及び上記周知技術1?4から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術1?4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術1?4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-25 
結審通知日 2012-01-26 
審決日 2012-02-08 
出願番号 特願2004-237939(P2004-237939)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 貴理  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 澤田 真治
吉村 尚
発明の名称 遊技機  

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