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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1254612
審判番号 不服2010-20265  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-08 
確定日 2012-03-28 
事件の表示 特願2007-205948「光ディスク表面の機械的耐久性検査装置及び検査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日出願公開、特開2007-317358〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年9月14日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2003年9月16日,大韓民国)を国際出願日とする出願である特願2006-526827号の一部を平成19年8月7日に新たな出願としたものであって、平成22年2月8日付で通知した拒絶の理由に対し、同年4月28日付で手続補正されたが、同年7月29日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。
その後、平成23年7月7日付で審査官の作成した前置報告書を利用した審尋を行ったところそれに対し、同年9月9日付で回答書が提出されたものである。

2.平成22年9月8日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年9月8日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成22年9月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、以下の補正事項を含む。

[補正事項1]
特許請求の範囲の請求項2を削除するとともに、請求項3乃至6を順次繰り上げて請求項2乃至5とする補正。

[補正事項2]
上記補正事項1で補正後の請求項5(補正前の請求項6)の記載を、下記のとおりとする補正。

「光ディスクの表面のスクラッチ耐久性を検査する方法であって、前記方法は、
予め定められた荷重を伴う複数の摩耗輪を前記光ディスクの前記表面に接触させる接触段階と、
前記光ディスクが予め定められた回転数だけ回転するまで、前記光ディスクと前記摩耗輪との間の前記接触を維持する維持段階であって、前記予め定められた回転数は10回以下である維持段階と、
前記スクラッチがつけられた光ディスクに情報を記録する記録段階であって、前記スクラッチは、前記光ディスクが回転し、前記摩擦輪が前記光ディスクに前記荷重をかける間に発生する記録段階と、
前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階と、
前記スクラッチがつけられた光ディスクに記録されている前記情報から生成される信号から測定された前記ジッター値と予め定められた参照ジッター値とを比較することによって、前記光ディスクが充分な耐久性を有するかどうかを判定する判定段階と
を備え、
前記複数の摩耗輪の数は2つであり、前記複数の摩耗輪は互いに反対方向に回転することを特徴とする方法。」
と補正された。

上記補正事項1は,特許法17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
上記補正事項2は、補正前の請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階と、測定された前記ジッター値」について、「前記スクラッチがつけられた光ディスクに情報を記録する記録段階であって、前記スクラッチは、前記光ディスクが回転し、前記摩擦輪が前記光ディスクに前記荷重をかける間に発生する記録段階と、前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階と、前記スクラッチがつけられた光ディスクに記録されている前記情報から生成される信号から測定された前記ジッター値」である旨限定するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日(優先権主張の日)前に頒布された刊行物である、特開2002-260280号公報(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

「【請求項9】 透光性基体および情報記録層を有し、前記透光性基体側から前記情報記録層に入射したレーザービームによって光学的に記録および/または再生がなされる光情報媒体に対し、レーザービーム入射側表面の耐擦傷性に関する評価を行う方法であって、
光情報媒体のレーザービーム入射側表面を故意に摩耗させた後、記録/再生特性を測定し、その測定値に基づいてレーザービーム入射側表面の耐擦傷性を評価する光情報媒体の評価方法。
【請求項10】 光情報媒体のレーザービーム入射側表面を故意に摩耗させる手段として、ISO 9352に規定されている摩耗輪を用いる請求項9の光情報媒体の評価方法。」
「【0016】ところで、前記ハードコート層として用いられる、樹脂材料または無機材料の耐摩耗性の指標となる表面硬度は、ビッカース硬さなどの押し込み硬度や、引っかき硬さ、または摩耗試験などによって測定することが一般的である。これらの測定法のうち、例えば摩耗試験については、摩耗によって生じた試験片の摩耗量を、試験片の質量、厚さ、または光透過率などの各種パラメータの変化量を用いて定量化することが多い。光情報媒体のハードコート層材料のように、光学的に透明でかつ表面硬度が比較的高い材料の場合、光透過率や光拡散の変化量によって定量化することが最も適切である。具体的には、前記試験片に白色平行光を入射させ、その曇価(ヘイズ値)を測定する方法などが一般的に用いられる。」
「【0054】光情報媒体の評価方法
次に、光情報媒体の記録/再生光入射側表面の耐擦傷性を評価する方法について説明する。
【0055】様々な方法によって表面を摩耗させた透光性基体の摩耗の程度と、透光性基体を摩耗させた後における光情報媒体の記録/再生特性との相関について、本発明者らが鋭意検討した結果、透光性基体の摩耗度と、摩耗後に記録/再生した際の反射率、ジッタ、エラーレート等との間に比較的強い相関が存在することが確認された。
【0056】すなわち、適当な摩耗方法を選択した場合、光情報媒体の反射率、ジッタ等の諸特性は、摩耗時間などの摩耗条件の関数として表される。したがって、本発明の評価方法では、所定の摩耗方法を用いて、光情報媒体の透光性基体表面を故意に摩耗させた後に、反射率、ジッタ、およびエラーレート等の電気特性を評価することによって、現実の光情報媒体における透光性基体の耐摩耗性および耐擦傷性を定量化することができる。
【0057】前記媒体の透光性基体の評価において、故意に表面を摩耗させる方法および摩耗に用いる手段は、磨耗が再現性よく生じうるものであれば特に限定されない。しかし、評価に時間がかかりすぎることは好ましくないので、好ましくは1?60分間、より好ましくは1?30分間程度の摩耗処理により、光情報媒体の実使用環境において生じうる摩耗を上回る摩耗が生じるような方法および手段を用いることが望ましい。
【0058】具体的な摩耗方法としては、例えばISO 9352に規定されている、摩耗輪による摩耗試験方法や、JIS K7205に規定されている、研磨材による摩耗試験方法などの、標準化された試験方法、あるいは、スチールウールによって摩耗させる方法などが好ましい。
【0059】ISO 9352に規定された摩耗輪による摩耗試験方法とは、一般的にテーバー摩耗試験と呼ばれる試験方法であって、以下の方法によって実施される。この方法では、摩耗輪と呼ばれる車輪状の研削砥石2個が、ターンテーブル上の所定の位置に配置されている試験機を用い、このターンテーブル上に試料を載せる。その後、摩耗輪に所定の荷重をかけ、ターンテーブルをモーターにより回転させる。その際、摩耗輪は、ターンテーブルの回転する方向に対して一定の傾きを保ちながら試料表面を研削する仕組みとなっている。摩耗輪は、その材質や砥石粒度の異なるものが数種類用意されており、摩耗輪の種類や、摩耗の際の荷重、およびターンテーブルの回転数などを適宜選択することにより、試料の耐摩耗性を知ることができる。なお、光情報媒体における一般的なハードコート層の場合、CS-10、CS-10FおよびCS-17のいずれかの弾力性の摩耗輪を用い、2.5N以上9.8N以下の荷重にてターンテーブルを10回以上500回以下の範囲で回転させて摩耗させることが好ましい。
【0060】一方、スチールウールを用いる摩耗方法では、研磨用のスチールウールとして#0000のものを用い、これを所定の荷重で試料に押し当て、一定回数往復させる方法が一般的に用いられる。
【0061】上記試験方法の中では、試験結果の再現性がよく、摩耗輪の種類や印加する荷重の選択によって比較的広範な種類の材料に適用できることや、国際的に標準化された試験方法であることなどから、摩耗輪による摩耗試験方法を用いることが最も好ましい。ただし、特別な装置を必要とせず、簡便であることなどから、スチールウールによって摩耗させる方法を用いてもよい。
【0062】従来一般的に用いられている方法においては、上述した各種の摩耗試験方法によって摩耗させた試料の摩耗度を、試料の厚さ、質量、光学的散乱量などの各種パラメータの変化量によって定量化することが普通であるが、本発明の評価方法では、摩耗させた光情報媒体を、光ディスク駆動装置によって直接評価する。
【0063】本発明の評価方法において、評価対象とする記録/再生特性は特に限定されないが、具体的には、例えば 媒体再生時の反射率、変調度、またはRF信号平坦度;記録済み信号、上書き信号、および追記信号のいずれかについてのジッタ、出力レベル、CN比(carrier to noise ratio)、またはエラーレート;記録時または再生時の線速度におけるフォーカス感度曲線のp-p(peak-to-peak)値、フォーカスエラー信号の残留エラー分の量、または前記p-p値と前記残留エラー分の量との比率;などが挙げられる。これらのうちの1種または複数を評価対象とし、測定することができる。なお、フォーカス感度曲線は、通常、S字曲線と呼ばれるものであり、例えば1989年2月10日にラジオ技術社から刊行された「光ディスク技術」の第81ページに記載されている。このフォーカス感度曲線から、フォーカスエラー信号出力のp-p値、すなわちプラス側出力のピーク値とマイナス側出力のピーク値との差を求めてこれをFで表し、一方、フォーカスエラー信号の残留エラー成分の出力p-p値を求めてこれをRで表したとき、R/Fが小さければ、具体的にはR/Fが10%以下であれば、再生時のジッタが十分に小さくなり、また、書き込みエラーが十分に少なくなる。」
「【0072】評価
上記各媒体を光ディスクドライブに挿入し、再生信号のビットエラーレート(BER)を測定した。なお、評価に用いた光ディスクドライブのレーザー波長は650nmである。次に、媒体1をテーバー摩耗試験機にセットし、摩耗輪CS-10Fを用い、荷重4.9Nにてターンテーブルを10回転させて摩耗させたのち、摩耗後のBERを上記と同様に測定した。その後、このディスクに対し、上記摩耗輪を用いてターンテーブルをさらに40回転(合計50回転)させて摩耗させ、同様にBERの測定を行った。BERは傷の発生と相関関係があり、傷の発生によりBERが上昇する。初期、10回転摩耗後および50回転摩耗後それぞれのBERについて、1.0×10^(-4)未満の場合を○、そして1.0×10^(-4)以上の場合を×とした。結果を表1に示す。
【0073】また、再生動作中にピックアップが媒体に衝突した場合の影響を評価するため、パルステック工業(株)製のDDU-1000を改造し、媒体回転中にピックアップが媒体に意図的に接触するようにした。媒体を一定線速度(6.0m/s)で回転させながら、媒体の半径40mmの位置にてピックアップを接触させて3分間摺動させた後、フォーカスエラー信号を確認し、ピックアップの摺動前後で波形に乱れがあるか確認を行った。フォーカスエラー信号に変化が見られない場合を◎、信号に若干乱れがある場合を○、信号にノイズが大きく見られる場合を×とした。結果を表1に示す。なお、この評価においてディスク表面に接触するのは前記レンズプロテクタであり、その材質はポリプロピレンである。」
「【0076】次に、ポリシラザン硬化膜を以下の手順で形成したほかは媒体1と同様にして、媒体1Aを作製した。この媒体1Aでは、まず、透光性基体21上に、有機基を導入したポリシラザン(東燃ゼネラル石油(株)製N-L710)の硬化膜を厚さ1μmとなるように形成した。次いで、この硬化膜上に、媒体1と同様にして無機ポリシラザンの硬化膜を厚さ0.2μmとなるように形成した。この媒体1Aにおいて、レーザービーム入射側表面の鉛筆硬度は媒体1と同等であった。この媒体1Aと上記媒体1とについて、テーバー摩耗試験機を用いた上記評価を行った。ただし、評価条件を厳しくするために、ターンテーブルは100回転させた。その結果、摩耗後のBERは、媒体1では1.0×10^(-4)以上であったが、媒体1Aでは1.0×10^(-4)未満であり、ポリシラザン硬化膜を厚く形成することによる効果が確認できた。」
「【0079】実施例2
媒体4
市販のDVD-RAM(記録容量2.6GB/面)を用意した。DVD-RAMは相変化型記録媒体であり、図2に示す媒体とほぼ同様の構造をもち、この構造のものの保護層6同士を貼り合わせた構成である。記録層4は主としてGe、SbおよびTeからなっており、透光性基体21は厚さ0.6mmのポリカーボネート基板である。」
「【0082】この媒体4に対して、半径39.5?57.5mmの領域にランダム信号の記録を行い、その後、媒体1と同様の評価を行ったところ、媒体1と同様に良好な結果が得られた。なお、ピックアップ摺動後のフォーカスエラー信号についての結果は表2に示した。」
「【0106】評価
このようにして作製した各サンプルの記録層を、バルクイレーザーで初期化(結晶化)した後、光記録媒体評価装置に載せ、
レーザー波長:650nm、
レーザーパワー:1.0mW、
対物レンズ開口数NA:0.60、
線速度:3.5m/s、
の条件で、グルーブにトラッキングをかけながら未記録部分の反射率を測定した。次いで1-7変調信号(最短信号長2T)をグルーブに記録後、再生信号の出力レベルおよびジッタを測定した。これらの結果を表3に示す。なお、このジッタは、再生信号をタイムインターバルアナライザ(横河電機株式会社製)により測定して「信号の揺らぎ(σ)」を求め、検出窓幅をTwとして、
σ/Tw (%)
により算出した。このジッタが13%以下であればエラーが許容範囲内に収まるが、各種マージンを十分に確保するためには、このジッタが10%以下、より好ましくは9%以下であることが望ましい。」
上記記載事項および図面を総合勘案すると、上記第1引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「透光性基体および情報記録層を有し、前記透光性基体側から前記情報記録層に入射したレーザービームによって光学的に記録および再生がなされる光情報媒体に対し、レーザービーム入射側表面の耐擦傷性に関する評価を行う方法であって、
前記光情報媒体のレーザービーム入射側表面を、
ISO 9352に規定されている摩耗輪を用いる方法により、
車輪状の研削砥石2個が、ターンテーブル上の所定の位置に配置されている試験機を用い、
前記摩耗輪は、前記ターンテーブルの回転する方向に対して一定の傾きを保ちながら試料表面を研削する仕組みとなっており、
前記ターンテーブル上に前記光情報媒体を載せ、その後前記摩耗輪に所定の荷重をかけ、前記ターンテーブルをモーターにより10回以上500回以下の範囲で回転させて故意に摩耗させた後、
記録/再生特性を測定し、その測定値に基づいて前記レーザービーム入射側表面の耐擦傷性を評価する光情報媒体の評価方法。 」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「透光性基体および情報記録層を有し、前記透光性基体側から前記情報記録層に入射したレーザービームによって光学的に記録および再生がなされる光情報媒体」は、本願補正発明における「光ディスク」に相当する。
引用発明における「レーザービーム入射側表面」は、本願補正発明における「光ディスクの表面」に相当する。
引用発明における「耐擦傷性に関する評価を行う方法」は、本願補正発明における「スクラッチ耐久性を検査する方法」に相当する。
引用発明における「摩耗輪」は、本願補正発明における「摩耗輪」に相当する。
引用発明における「所定の荷重」は、本願補正発明における「予め定められた荷重」に相当する。
引用発明の「摩耗輪」に関し「車輪状の研削砥石2個」とする点は、本願補正発明の「前記複数の摩耗輪の数は2つであり」を満足している。
引用発明の「前記光情報媒体のレーザービーム入射側表面を、ISO 9352に規定されている摩耗輪を用いる方法により」「故意に摩耗させ」に関し、「車輪状の研削砥石2個がターンテーブル上の所定の位置に配置されている試験機を用い、前記摩耗輪は」「試料表面を研削する仕組みとなっており、このターンテーブル上に前記光情報媒体を載せ、その後、摩耗輪に所定の荷重をかけ、ターンテーブルをモーターにより」「回転させて」「故意に摩耗させ」ている点は、本願補正発明の「予め定められた荷重を伴う複数の摩耗輪を前記光ディスクの前記表面に接触させる接触段階と、前記光ディスクが予め定められた回転数だけ回転するまで、前記光ディスクと前記摩耗輪との間の前記接触を維持する」「維持段階と」「前記スクラッチは、前記光ディスクが回転し、前記摩擦輪が前記光ディスクに前記荷重をかける間に発生する」「前記複数の摩耗輪の数は2つであり」に相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは次の点で一致する。

<一致点>
「光ディスクの表面のスクラッチ耐久性を検査する方法であって、前記方法は、
予め定められた荷重を伴う複数の摩耗輪を前記光ディスクの前記表面に接触させる接触段階と、
前記光ディスクが予め定められた回転数だけ回転するまで、前記光ディスクと前記摩耗輪との間の前記接触を維持する維持段階と、
前記スクラッチは、前記光ディスクが回転し、前記摩擦輪が前記光ディスクに前記荷重をかける間に発生し、
前記複数の摩耗輪の数は2つである方法。」

一方、次の点で相違する。

<相違点>
[相違点1]
本願補正発明は、「前記スクラッチがつけられた光ディスクに情報を記録する記録段階」と「前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階」とを有することから、「スクラッチ」が「発生する」工程、「情報を記録する記録段階」、「前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階」の順に行われるのに対し、引用発明の「評価方法」は、「故意に摩耗させた後、記録/再生特性を測定し、その測定値に基づいて前記レーザービーム入射側表面の耐擦傷性を評価する」ものであり、「故意に摩耗させ」る工程と「記録」する工程と、「再生特性を測定」する工程の順序が明記されていない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「前記ジッター値と予め定められた参照ジッター値とを比較することによって、前記光ディスクが充分な耐久性を有するかどうかを判定する判定段階」を備えるのに対し、引用発明は、「その測定値に基づいて前記レーザービーム入射側表面の耐擦傷性を評価する」であって、具体的にどのような特性を測定しどのように評価を行うのかに関する限定を有していない点。

[相違点3]
本願補正発明は、「スクラッチ」の「発生」に関し、「前記予め定められた回転数は10回以下である維持段階と」「前記複数の摩耗輪は互いに反対方向に回転」してスクラッチを発生させるのに対し、引用発明は、「故意に摩耗させ」に関し、「前記摩耗輪は、ターンテーブルの回転する方向に対して一定の傾きを保ちながら試料表面を研削する仕組みとなっており」「ターンテーブルをモーターにより10回以上500回以下の範囲で回転させて」摩耗させる点。

(4)判断
[相違点1]について
検査を行う際には実際の使用状況と可能な限り同一の状況を再現する、実際の使用状況とより相関性の高い状況を採用する、などの配慮をすべきことが自明であるところ、記録可能光情報媒体は、使用により「レーザービーム入射側表面」に摩耗が生じた後も記録および再生がともに可能であることが要求されるものであるから、検査を行う際にスクラッチの発生後に記録し、これを再生して検査をすることとするという程度のことは当業者であれば容易に想到しうることである。
なお、例えば、特開平6-223410号公報(段落【0018】等を参照。)には耐擦傷性試験後に記録再生が可能であることを確認したことが記載されている。

[相違点2]について
第1引用例には、「評価」に関し、「このジッタが13%以下であればエラーが許容範囲内に収まるが、各種マージンを十分に確保するためには、このジッタが10%以下、より好ましくは9%以下であることが望ましい。」(段落【0106】)と記載されていることから、引用発明において「ジッター」を測定するとともに、「前記ジッター値と予め定められた参照ジッター値とを比較することによって、前記光ディスクが充分な耐久性を有するかどうかを判定する」ことによって評価を行うという程度のことは、当業者であれば適宜なしえることである。

[相違点3]について
「複数の摩耗輪」を「互いに反対方向に回転」させるものが周知である(例えば、特開昭64-26647号公報の第7頁右下欄下から3行目?第8頁左上欄10行目を参照。)ことを勘案すると、単に「前記摩耗輪は、ターンテーブルの回転する方向に対して一定の傾きを保ちながら試料表面を研削する仕組みとなっており」に代えて「前記複数の摩耗輪は互いに反対方向に回転」とする程度のことは当業者であれば適宜なしえることである。

また、引用発明の「ターンテーブルをモーターにより10回以上500回以下の範囲で回転させて」に関し、第1引用例には「磨耗が再現性よく生じうるものであれば特に限定されない。しかし、評価に時間がかかりすぎることは好ましくないので、好ましくは1?60分間、より好ましくは1?30分間程度の摩耗処理により、光情報媒体の実使用環境において生じうる摩耗を上回る摩耗が生じるような方法および手段を用いることが望ましい。」(段落【0057】)、「摩耗輪の種類や、摩耗の際の荷重、およびターンテーブルの回転数などを適宜選択することにより、試料の耐摩耗性を知ることができる。なお、光情報媒体における一般的なハードコート層の場合、CS-10、CS-10FおよびCS-17のいずれかの弾力性の摩耗輪を用い、2.5N以上9.8N以下の荷重にてターンテーブルを10回以上500回以下の範囲で回転させて摩耗させることが好ましい。」(段落【0059】)、と記載されているから、当業者であれば「光ディスクの表面のスクラッチ耐久性を検査する」にあたり「光情報媒体の実使用環境において生じうる摩耗を上回る摩耗が生じるような方法および手段」となるように「摩耗輪の種類や、摩耗の際の荷重」を勘案しつつ「ターンテーブルの回転数」「を適宜選択する」ことにより、「ターンテーブルの回転数」を「予め定められた回転数は10回以下」とする程度のことは適宜なし得ることである。

本願補正発明において「前記予め定められた回転数は10回以下であること」や「前記複数の摩耗輪は互いに反対方向に回転する」ことによりそうでない場合と比較して当業者に予測できない格別顕著な効果が奏されていることを確認することができる具体的な根拠(データ等)も見いだせないことを勘案すると、引用発明の「前記摩耗輪は、ターンテーブルの回転する方向に対して一定の傾きを保ちながら試料表面を研削する仕組みとなっており」「ターンテーブルをモーターにより10回以上500回以下の範囲で回転させて」をそれぞれ、「前記複数の摩耗輪は互いに反対方向に回転」および「前記予め定められた回転数は10回以下であること」とする程度のことは、当業者であれば容易になしえることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、第1引用例および周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、第1引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年9月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1乃至11に係る発明は,平成22年4月28日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「光ディスクの表面のスクラッチ耐久性を検査する方法であって、前記方法は、
予め定められた荷重を伴う複数の摩耗輪を前記光ディスクの前記表面に接触させる接触段階と、
前記光ディスクが予め定められた回転数だけ回転するまで、前記光ディスクと前記摩耗輪との間の前記接触を維持する維持段階であって、前記予め定められた回転数は10回以下である維持段階と、
前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階と、
測定された前記ジッター値と予め定められた参照ジッター値とを比較することによって、前記光ディスクが充分な耐久性を有するかどうかを判定する判定段階と
を備え、
前記複数の摩耗輪の数は2つであり、前記複数の摩耗輪は互いに反対方向に回転することを特徴とする方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明の「前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階と、測定された前記ジッター値」について「前記スクラッチがつけられた光ディスクに情報を記録する記録段階であって、前記スクラッチは、前記光ディスクが回転し、前記摩擦輪が前記光ディスクに前記荷重をかける間に発生する記録段階と、前記光ディスクの信号から得られるジッター値を測定する測定段階と、前記スクラッチがつけられた光ディスクに記録されている前記情報から生成される信号から測定された前記ジッター値」である旨の限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに限定したものに相当する本願補正発明が,前記2.(4)に記載したとおり,第1引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,第1引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願の請求項6に係る発明は,第1引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-31 
結審通知日 2011-11-04 
審決日 2011-11-15 
出願番号 特願2007-205948(P2007-205948)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G11B)
P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡部 博樹  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 馬場 慎
山田 洋一
発明の名称 光ディスク表面の機械的耐久性検査装置及び検査方法  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 藤原 弘和  

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