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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1254685
審判番号 不服2010-24365  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-28 
確定日 2012-03-26 
事件の表示 特願2004-295646「内燃エンジン排気システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日出願公開、特開2005-155611〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年11月25日、英国)を出願日とする出願であって、平成19年10月4日付けの手続補正書が提出された後、平成21年11月10日付けの拒絶理由通知に対し、平成22年3月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年6月23日付けで拒絶査定がなされ、平成22年10月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成23年4月18日付けで書面による審尋がなされたものである。

第2.平成22年10月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正の内容
平成22年10月28日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年3月11日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記(ア)を、下記(イ)と補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
内燃エンジン排気システムであって、
粒子フィルタと、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路と、
エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、前記粒子フィルタの再生を行うバーナーとを備え、
前記排気ガス再循環経路は、前記排気ガス再循環経路内に配置された冷却機構を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動による前記フィルタの再生をトリガーするように構成されたトリガー機構が設けられている、内燃エンジン排気システム。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記トリガー機構は前記排気システム内の背圧を感知する、内燃エンジン排気システム。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記トリガー機構は、エンジンが所定期間作動した後にバーナーに点火するタイマーである、内燃エンジン排気システム。
【請求項5】
請求項2に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記トリガー機構は、排気背圧、最後の燃焼からの経過時間、フィルタによって捕捉された粒子の質量、及び特定のエンジン作動特性のうちの二つ又はそれ以上の組み合わせを感知する、内燃エンジン排気システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記内燃エンジン排気システムは前記バーナーの作動及び前記排気ガス再循環の両方を制御する制御手段を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記排気ガス再循環は、前記エンジンの前記吸気経路に排気ガス再循環バルブを設けることによって行われる、内燃エンジン排気システム。
【請求項8】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、排気ガス再循環経路に配置された前記冷却機構は、前記バーナーの作動中に追加の冷却を提供するように構成されている、内燃エンジン排気システム。
【請求項9】
請求項7に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動中、前記排気ガス再循環バルブを閉鎖し、排気ガス再循環を阻止する、内燃エンジン排気システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーは、燃料燃焼バーナーである、内燃エンジン排気システム。
【請求項11】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、ターボチャージャータービンを更に備える、内燃エンジン排気システム。
【請求項12】
内燃エンジン排気システムの作動方法において、
粒子フィルタを提供する工程と、
前記粒子フィルタを作動し、粒子を排気ガス流からフィルタ除去する工程と、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所から冷却機構を通してエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する工程と、
前記エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、粒子フィルタをバーナーによって定期的に再生する工程とを含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項13】
請求項12に記載の内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記粒子フィルタを定期的に再生する前記工程は、トリガーに応じて再生を行う工程を含み、前記トリガーは、排気背圧、最後の再生からの経過時間、エンジンの特定の作動状態を示すこの他のエンジンパラメータのうちの一つ又はそれ以上を含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記排気ガスを再循環する前記工程は、再循環した排気ガスを冷却する工程を含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項15】
請求項14に記載の内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記バーナーの作動中、再循環した排気ガスに追加の冷却を行って前記フィルタを再生する工程を含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項16】
内燃エンジン排気システムであって、
粒子フィルタと、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路と、
前記粒子フィルタの再生を行うバーナーとを備え、
前記排気ガス再循環経路は、該排気ガス再循環経路に配置された冷却機構を有する、内燃エンジン排気システム。
【請求項17】
請求項16に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、排気ガス再循環経路に配置された前記冷却機構は、前記バーナーの作動中に追加の冷却を提供するように構成されている、内燃エンジン排気システム。
【請求項18】
内燃エンジン排気システムであって、
粒子フィルタと、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路と、
前記粒子フィルタの再生を行う燃料燃焼バーナーとを備え、
前記排気ガス再循環経路は、前記排気ガス再循環経路内に配置された冷却機構を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項19】
請求項18に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動による前記フィルタの再生をトリガーするように構成されたトリガー機構が設けられている、内燃エンジン排気システム。
【請求項20】
請求項16乃至19のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記内燃エンジン排気システムは前記バーナーの作動及び前記排気ガス再循環の両方を制御する制御手段を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項21】
請求項16乃至20のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記排気ガス再循環は、前記エンジンの前記吸気経路に排気ガス再循環バルブを設けることによって行われる、内燃エンジン排気システム。
【請求項22】
請求項21に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動中、前記排気ガス再循環バルブを閉鎖し、排気ガス再循環を阻止する、内燃エンジン排気システム。
【請求項23】
請求項16乃至22のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーは、エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、前記粒子フィルタの再生を行う、内燃エンジン排気システム。
【請求項24】
請求項16又は17に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーは、燃料燃焼バーナーである、内燃エンジン排気システム。
【請求項25】
請求項16乃至24のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、ターボチャージャータービンを更に備える、内燃エンジン排気システム。
【請求項26】
内燃エンジン排気システムの作動方法において、
粒子フィルタを提供する工程と、
前記粒子フィルタを作動し、粒子を排気ガス流からフィルタ除去する工程と、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する工程とを備え、
前記エンジンの排気ガスを再循環する工程は、再循環した排気ガスを冷却する工程と、
前記粒子フィルタをバーナーによって定期的に再生する工程とを含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項27】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,16,17,18,19,20,21、22,23,24叉は25に記載された内燃エンジン又は請求項12,13,14,15又は26に記載された内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記粒子フィルタは、前記排気ガスの全てを実質的にフィルタ除去する、内燃エンジン又は内燃エンジン排気システムの作動方法。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
内燃エンジン排気システムであって、
粒子フィルタと、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路と、
エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、前記粒子フィルタの再生を行うバーナーとを備え、
前記粒子フィルタは、前記バーナーが再生を行わないときにフィルタ除去し続け、
前記排気ガス再循環経路は、前記排気ガス再循環経路内に配置された冷却機構を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動による前記フィルタの再生をトリガーするように構成されたトリガー機構が設けられている、内燃エンジン排気システム。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記トリガー機構は前記排気システム内の背圧を感知する、内燃エンジン排気システム。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記トリガー機構は、エンジンが所定期間作動した後にバーナーに点火するタイマーである、内燃エンジン排気システム。
【請求項5】
請求項2に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記トリガー機構は、排気背圧、最後の燃焼からの経過時間、フィルタによって捕捉された粒子の質量、及び特定のエンジン作動特性のうちの二つ又はそれ以上の組み合わせを感知する、内燃エンジン排気システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記内燃エンジン排気システムは前記バーナーの作動及び前記排気ガス再循環の両方を制御する制御手段を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記排気ガス再循環は、前記エンジンの前記吸気経路に排気ガス再循環バルブを設けることによって行われる、内燃エンジン排気システム。
【請求項8】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、排気ガス再循環経路に配置された前記冷却機構は、前記バーナーの作動中に追加の冷却を提供するように構成されている、内燃エンジン排気システム。
【請求項9】
請求項7に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動中、前記排気ガス再循環バルブを閉鎖し、排気ガス再循環を阻止する、内燃エンジン排気システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーは、燃料燃焼バーナーである、内燃エンジン排気システム。
【請求項11】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、ターボチャージャータービンを更に備える、内燃エンジン排気システム。
【請求項12】
内燃エンジン排気システムの作動方法において、
粒子フィルタを提供する工程と、
前記粒子フィルタを作動し、粒子を排気ガス流からフィルタ除去する工程と、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所から冷却機構を通してエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する工程と、
粒子フィルタを、前記エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、バーナーによって定期的に再生する工程とを含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項13】
請求項12に記載の内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記粒子フィルタを定期的に再生する前記工程は、トリガーに応じて再生を行う工程を含み、前記トリガーは、排気背圧、最後の再生からの経過時間、エンジンの特定の作動状態を示すこの他のエンジンパラメータのうちの一つ又はそれ以上を含む、内燃エンジン排気システムの作動方法

【請求項14】
請求項12又は13に記載の内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記排気ガスを再循環する前記工程は、再循環した排気ガスを冷却する工程を含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項15】
請求項14に記載の内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記バーナーの作動中、再循環した排気ガスに追加の冷却を行って前記フィルタを再生する工程を含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項16】
内燃エンジン排気システムであって、
粒子フィルタと、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路と、
前記粒子フィルタの再生を行うバーナーとを備え、
前記排気ガス再循環経路は、該排気ガス再循環経路に配置された冷却機構を有する、内燃エンジン排気システム。
【請求項17】
請求項16に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、排気ガス再循環経路に配置された前記冷却機構は、前記バーナーの作動中に追加の冷却を提供するように構成されている、内燃エンジン排気システム。
【請求項18】
内燃エンジン排気システムであって、
粒子フィルタと、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路と、
前記粒子フィルタの再生を行う燃料燃焼バーナーとを備え、
前記粒子フィルタは、前記粒子フィルタの再生の間、前記エンジンの排気ガスをフィルタ除去し続けるように構成されており、
前記排気ガス再循環経路は、前記排気ガス再循環経路内に配置された冷却機構を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項19】
請求項18に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動による前記フィルタの再生をトリガーするように構成されたトリガー機構が設けられている、内燃エンジン排気システム。
【請求項20】
請求項16乃至19のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記内燃エンジン排気システムは前記バーナーの作動及び前記排気ガス再循環の両方を制御する制御手段を含む、内燃エンジン排気システム。
【請求項21】
請求項16乃至20のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記排気ガス再循環は、前記エンジンの前記吸気経路に排気ガス再循環バルブを設けることによって行われる、内燃エンジン排気システム。
【請求項22】
請求項21に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーの作動中、前記排気ガス再循環バルブを閉鎖し、排気ガス再循環を阻止する、内燃エンジン排気システム。
【請求項23】
請求項16乃至22のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーは、エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、前記粒子フィルタの再生を行う、内燃エンジン排気システム。
【請求項24】
請求項16又は17に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、前記バーナーは、燃料燃焼バーナーである、内燃エンジン排気システム。
【請求項25】
請求項16乃至24のうちのいずれか一項に記載の内燃エンジン排気システムにおいて、ターボチャージャータービンを更に備える、内燃エンジン排気システム。
【請求項26】
内燃エンジン排気システムの作動方法において、
粒子フィルタを提供する工程と、
前記粒子フィルタを作動し、粒子を排気ガス流からフィルタ除去する工程と、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する工程とを備え、
前記エンジンの排気ガスを再循環する工程は、再循環した排気ガスを冷却する工程と、前記粒子フィルタをバーナーによって定期的に再生する工程とを含む、内燃エンジン排気システムの作動方法。
【請求項27】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,16,17,18,19,20,21、22,23,24叉は25に記載された内燃エンジン又は請求項12,13,14,15又は26に記載された内燃エンジン排気システムの作動方法において、前記粒子フィルタは、前記排気ガスの全てを実質的にフィルタ除去する、内燃エンジン又は内燃エンジン排気システムの作動方法。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「粒子フィルタ」に関して、「バーナーが再生を行わないときにフィルタ除去し続け」る旨を特定して限定するとともに、本件補正前の特許請求の範囲の請求項18における発明特定事項である「粒子フィルタ」に関して、「粒子フィルタの再生の間」、「エンジンの排気ガスをフィルタ除去し続けるように構成」する旨を特定して限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
なお、本件補正のうち請求項12についての補正は、「前記エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、粒子フィルタをバーナーによって定期的に再生する工程」との記載を、「粒子フィルタを、前記エンジンの排気ガスが前記粒子フィルタによってフィルタ除去される間、バーナーによって定期的に再生する工程」と語順を変えたに過ぎず、実質的な内容の補正を伴うものではない。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項16に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-98927号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来の排気ガス中の微粒子除去装置は、いずれも、多孔質体の隔壁を透過させることにより黒煙粒子を濾過する方式である。このため、排気ガス流の抵抗が増加し、ディーゼルエンジンの出力が低下してしまうという問題がある。また、隔壁で捕捉された黒煙粒子は、最終的に焼却されて処分されるが、焼却した後に残った灰がセラミックの隔壁表面に残留して次第に目詰まりを起こし、最終的にフィルタ機能が低下すると共に、排気抵抗が益々増加してエンジン出力が低下するという問題を引き起こす。このため、従来は、セラミックの隔壁表面で捕捉した黒煙粒子を逆洗して別の場所に移してから焼却するという方法を採用している。従って、装置が大がかりになってしまうという問題がある。
【0005】この発明は、排気抵抗の増加を抑えて出力低下を防止すると共に、捕捉された微粒子を効率良く処理して装置の簡素化を図ることができる排気ガス中の微粒子除去装置を提供することを目的とする。」(段落【0004】及び【0005】)

(b)「【0008】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明の実施例を説明する。図1は、排気還流装置(EGR装置)と触媒装置を備えたディーゼルエンジン100の排気ガス経路に微粒子除去を行う微粒子除去装置200を取り付けた構成を示している。微粒子除去装置200は、略円筒型の容器2の後部2b内に収められたフィルタ3と、フィルタ3に捕捉される微粒子を燃焼させるための容器2の前部2a内に形成された燃焼室4とを有する。微粒子除去装置200のガス導入管5は、ディーゼルエンジン100の排気管7に蛇腹式のガス管6を介して接続されている。微粒子除去装置200の排気管8は蛇腹式のガス管9を介し、有害ガスを除去するための触媒装置10を介してマフラー16に接続されている。触媒装置10は具体的に、CO,HC,NOx等を除去できる触媒を用いて構成されている。」(段落【0008】)

(c)「【0010】容器前部2aに構成される燃焼室4には、フィルタ3のガス入力端面と平行に排気ガスを再燃焼させるための半円筒状の燃焼管41が配置され、その両端部に燃料噴霧ノズル42a,42bが配置され、更にこれらの噴霧ノズル42a,42bに隣接して、着火用のメイングロー43a,43bとサブグロー44a,44bが設けられている。メイングロー43a,43bは燃焼管41に供給される燃料を霧化するためのもの、サブグロー44a,44bは霧化した燃料に着火するためのものであり、これらの部分はセラミック筒46により覆われて、燃焼管41に供給される燃料が滞留できるようになっている。そして、メイングロー43a,43bのスイッチがオンになってセラミック筒46が熱せられるとセラミック筒46に浸み込んだ燃料が気化し、サブグロー44a,44bのスイッチオンにより点火できる。メイングロー43a,43b及びブグロー44a,44bは、コントロールボックス18の制御の下に、リレー回路26によりオンオフ制御される。」(段落【0010】)

(d)「【0012】燃焼管41の下流側は切り欠きとなっていて、ここには攪拌用の一対の板羽根51が燃焼管41の長手方向に沿って形成されている。一対の板羽根51の中央部に沿って攪拌効果を高めるための孔52が配列形成されている。燃焼管41での燃焼により生成された炎は、障壁45の孔47を通ってくる排気ガスにより板羽根51の上下や孔52から混合室50に押し出される。混合室50では、板羽根51及び孔52により排気ガスが攪拌される結果、押し出される炎による熱は、フィルタ3の入力端面の範囲でほぼ均等に分散されて、フィルタ3の入力端面に平均的に熱風が供給される。これにより、フィルタ3内の隔壁に捕捉されている微粒子を均等に再燃焼させることができる。」(段落【0012】)

(e)「【0014】この実施例においては、微粒子除去装置200の排気管8とディーゼルエンジン100の吸気管11の間に、排気ガスを再循環させる循環経路13が設けられている。この循環経路13には、排気ガスの還流量を制御してNOxを低減するための排気還流制御装置(EGR装置)14が挿入されている。微粒子除去装置200のフィルタ3のセラミック温度は温度センサ21により検出され、その検出値がコントロールボックス18に送られる。燃料タンク19に収容された軽油等の燃料は、アイドリング時はニードルコントローラ27でその流れが絞られ、エンジン100が所定周波数を超えると、ポンプ22と電磁弁25a,25bを介して各燃料噴霧ノズル42a,42bに段階的に流量が増加されて供給される。エアポンプ23は、各噴霧ノズル42a,42bにエアを供給する。」(段落【0014】)

(2)引用文献記載の事項
(f)上記(1)(b)及び(c)並びに図面の記載から、燃焼室に配置された燃焼管41で燃焼により生成された炎による熱が、フィルタ3に供給されて、フィルタに補足される微粒子を燃焼させることがわかる。

(3)引用発明
上記(1)(a)ないし(e)及び(2)(f)並びに図面の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「排気環流装置(EGR装置)と触媒装置を備えたディーゼルエンジン100の排気ガス経路に微粒子除去を行う微粒子除去装置200を取り付けた構成において、
フィルタ3と、
微粒子除去装置200の排気管8とディーゼルエンジン100の吸気管11の間に設けられ、排気ガスを再循環させる循環経路13と、
フィルタ3に補足される微粒子を燃焼させるための燃焼管41とを備えた、排気環流装置(EGR装置)と触媒装置を備えたディーゼルエンジン100の排気ガス経路に微粒子除去を行う微粒子除去装置200を取り付けた構成。」

2.-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「排気環流装置(EGR装置)と触媒装置を備えたディーゼルエンジン100の排気ガス経路に微粒子除去を行う微粒子除去装置200を取り付けた構成」は、その機能及び構成からみて、本願補正発明における「内燃エンジン排気システム」に相当し、以下、同様に、「フィルタ3」は「内燃フィルタ」に、「微粒子除去装置200の排気管8とディーゼルエンジン100の吸気管11の間に設けられ、排気ガスを再循環させる循環経路13」は、「排気システムの粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路」に、それぞれ相当する。
また、引用発明において「フィルタ3に補足される微粒子を燃焼させる」ことは、本願補正発明において「粒子フィルタの再生を行うこと」に他ならないから、引用発明における「フィルタ3に補足される微粒子を燃焼させるための燃焼管41」は、本願補正発明における「粒子フィルタの再生を行うバーナー」に相当する。
したがって、両者は、
「内燃エンジン排気システムであって、
粒子フィルタと、
前記排気システムの前記粒子フィルタの下流の箇所からエンジンの吸気にエンジンの排気ガスを再循環する排気ガス再循環経路と、
前記粒子フィルタの再生を行うバーナーとを備えた、内燃エンジン排気システム。」
で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願補正発明において「排気ガス再循環経路は、該排気ガス再循環経路に配置された冷却機構を有する」のに対し、引用発明において排気ガスを再循環させる循環経路13が、該循環経路13に配置された冷却機構を有するかどうか、不明である点(以下、「相違点」という。)。

2.-3 判断
上記相違点について検討する。
排気ガス再循環経路に冷却機構を設けることは、周知技術(例えば、特開2002-276405号公報(段落【0021】等)、特開2000-120433号公報(段落【0018】)及び特開2001-115826号公報(段落【0033】)等参照、以下、「周知技術」という。)であり、「排気ガス再循環が高温によって損なわれないように」(本願の明細書の段落【0008】)するという一般的な課題の解決のために、上記周知技術の冷却機構を採用して、相違点に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2.-4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
前記のとおり、平成22年10月28日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項16に係る発明は、平成22年3月11日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項16に記載された事項により特定された上記(第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項16】)のとおりのものであり(以下、「本願発明」という。)、本願発明は本願補正発明と同一である。

したがって、本願発明は、本願補正発明と同様に、上記2.-3において記載した理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-31 
結審通知日 2011-11-01 
審決日 2011-11-14 
出願番号 特願2004-295646(P2004-295646)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
川口 真一
発明の名称 内燃エンジン排気システム  
代理人 宮前 徹  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  
代理人 社本 一夫  

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