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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47G
管理番号 1254770
審判番号 無効2010-800172  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-29 
確定日 2012-03-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第4105749号発明「個別搬送装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯の概要
本件特許第4105749号に係る主な手続は、以下のとおりである。
平成19年 5月 2日 本件出願(特願2007-121860号)
平成20年 4月 4日 設定登録(特許第4105749号)
平成22年 9月29日 無効審判請求
12月17日 答弁書
平成23年 1月19日 審理事項通知書
2月16日 被請求人上申書
2月16日 請求人上申書
3月15日 請求人口頭審理陳述要領書
3月15日 被請求人口頭審理陳述要領書
3月29日 口頭審理
4月28日 被請求人上申書
5月 9日 手続続行通知書

II.本件特許発明
本件特許の請求項1、請求項2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、本件特許の特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送装置であって、
循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設されて照明を保持する支柱に取り付けられ、且つ前記2列のレーンの少なくとも一方側においてレーンに沿って設けられる直線状のフレームと、
このフレームに設けられ、フレームから水平に延出して、前記フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される透光性を有する支持板と、
駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ、前記支持板上を前記フレームに沿って直線状に往復動するトレーと
を備えることを特徴とする個別搬送装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、無端状のベルトと、このベルトを回転させるモータとを備え、
前記ベルトに固定されたフックに前記トレーが着脱可能に連結される
ことを特徴とする請求項1に記載の個別搬送装置。」

III.請求人の主張
請求人は、本件特許発明1、本件特許発明2の特許を無効にするとの審決を求め、その理由として概ね次のように主張するとともに、証拠方法として本件特許発明1、本件特許発明2についての特許出願(以下、「本件出願」という。)の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第19号証を提出している。

本件特許発明1及び本件特許発明2は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許発明1に係る特許及び本件特許発明2に係る特許は特許法第123条第1項第2号に該当する。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2004-187921号公報
甲第2号証:特開平8-108925号公報
甲第3号証:特開平8-268525号公報
甲第4号証:特開昭60-241410号公報
甲第5号証:特開平9-37915号公報
甲第6号証:特開昭53-128872号公報
甲第7号証:特開昭56-60513号公報
甲第8号証:特開平6-211346号公報
甲第9号証:特開2002-102044号公報
甲第10号証:特開2004-187922号公報
甲第11号証:特開平5-245033号公報
甲第12号証:特開平11-164764号公報
甲第13号証:特開2004-194810号公報
甲第14号証:特開2005-185326号公報
甲第15号証:特開平8-112173号公報
甲第16号証:意匠登録第1098054号公報
甲第17号証:意匠登録第1111148号公報
甲第18号証:意匠登録第1148185号公報
甲第19号証:意匠登録第1256941号公報

IV.被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判請求は成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求め、概ね次のように主張している。

本件特許発明1及び本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

V.甲各号証の記載事項
1.甲第1号証(特開2004-187921号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

甲1ア:「【請求項1】
飲食客エリア内を飲食物を載置して循環する無端状の循環搬送路を備える循環型飲食物搬送装置において、前記搬送路の近傍に、注文飲食客に注文飲食物を移送する循環注文搬送装置を設け、該循環注文搬送装置は注文飲食物を正逆に循環移送可能で注文飲食客の座席位置で注文飲食物を停止する手段を備えていることを特徴とする循環型飲食物搬送装置。
【請求項2】
前記注文飲食物を停止する手段は、注文飲食物が注文飲食客の座席位置まで移送されたときに、前記循環注文搬送装置の駆動を停止するものである請求項1に記載の循環型飲食物搬送装置。
【請求項3】
前記注文飲食物を停止する手段は、注文飲食物が注文飲食客の座席位置まで移送されたときに、停止部材を注文飲食物の載置容器に当接してその移送を阻止するものである請求項1に記載の循環型飲食物搬送装置。
【請求項4】
前記循環注文搬送装置はリニアモータ駆動の吊り下げ式回走である請求項項1ないし3の何れかに記載の循環型飲食物搬送装置。」(【特許請求の範囲】)

甲1イ:「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、より多くの飲食客を収納できるようにした大型店舗が増加している現況において、繁盛時には多くの注文飲食客から注文を受けるので、注文飲食物を直接店員が移動して手渡すには多くの店員を動員させなければならず、また店員が飲食物を持ちながら飲食客の後をうろうろすること自体好感のもてるものではなかった。一方、座席番号を記した表示物を付けて一般の循環搬送路に投入する方法は、人手が掛からない反面、注文飲食客が会話に夢中になって見逃してしまう恐れもあり、確実に注文飲食物を注文飲食客に送り届けることができなかった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、人手を掛けずに注文飲食物を注文飲食客に手早く且つ確実に送り届けることができる専用の循環注文搬送路を設けた循環型飲食物搬送装置を提供することを目的としている。」(【0005】?【0006】)

甲1ウ:「次に、本発明の第2実施形態に付き図4を参照して説明する。
図4は本発明の第2実施形態に係る循環型飲食物搬送装置であって、無端状循環搬送路とその近傍上部に配設されるリニアモータ駆動の吊り下げ式循環注文搬送装置を横切る断面図である。
尚、前述した構成部分と同一構成部分については、同一符号を付して重複する説明を省略する。
図4に示す符号30は、吊り下げ式循環注文搬送装置であって、この吊り下げ式循環注文搬送装置30は、循環型飲食物搬送装置1を構成する無端状のクレセントチェーンコンベヤ12から成る略水平に並設された循環搬送路1a,1bの対面にそれぞれ設置された仕切板5a,5b間の支持台上部の中間には、搬送方向に沿う複数の支柱25が所定間隔毎に立設しており、これら支柱25間には注文飲食客の対面側の飲食客の視界から遮る目隠し板32が取付けられている。
上記支柱25の上端から搬送方向と直交する左右方向に張り出した支持アーム26の外端には無端状のガイドレールRが支持されている。そして、このガイドレールRは、循環型飲食物搬送装置1上方で平面回走するように構成されている。なお、支持アーム26は支柱25に支えられているが天井に直接吊り下げるようにしてもよい。
ガイドレールRは、食器皿8を載置して搬送する吊り下げ搬送トレー31を吊り下げる吊り下げ体Tをガイドローラを介して移動自在に支持しており、吊り下げ体Tのガイドローラと反対側には、ガイドレールRの一部に取付けられた無端状の固定子コイルと、可動子から成るリニアモータが設けられている。
本実施形態に係る吊り下げ式循環注文搬送装置30は、上記の実施形態と同様に、飲食カウンター4a,4b前の座席に対応して注文伝達手段としてのインターフォンがそれぞれ取付けられており、その座席に着席した飲食客は、インターフォンのボタンを押すことで好みの飲食物を厨房側に口頭で注文することができるようになっている。
また、吊り下げ搬送トレー31の下方には、仕切板5a,5bの上端から循環搬送路1a,1bの上部にそれぞれヒサシ24a、24bが張り出しており、吊り下げ搬送トレー31から循環搬送路1a,1b上に飲食物が落下するのを防止している。
従って、前記の吊り下げ式循環注文搬送装置30によれば、この吊り下げ式循環注文搬送装置30と通常の循環型飲食物搬送装置1とを上下に振り分けて配置しているので、搬送駆動部のスペースに余裕ができると共に、吊り下げ式循環注文搬送装置30をリニアモータ駆動とすることで搬送時の騒音が抑えられるので飲食客エリアの環境を向上することができる。」(【0039】?【0047】)

甲1エ:甲1アの「飲食客エリア内を飲食物を載置して循環する無端状の循環搬送路を備える循環型飲食物搬送装置」との記載からして、「循環型飲食物搬送装置」は飲食店用といえる。

甲1オ:甲1アの「注文飲食客に注文飲食物を移送する循環注文搬送装置」との記載及び上記ウの「本実施形態に係る吊り下げ式循環注文搬送装置30は、・・・飲食客は、インターフォンのボタンを押すことで好みの飲食物を厨房側に口頭で注文することができるようになっている。」との記載からして、吊り下げ式循環注文搬送装置30は、飲食客の注文に応じて飲食物を個別に搬送するものといえる。

甲1カ:図4には、ガイドレールRを覆う態様の部材28が図示されており、部材28はガイドレールRをカバーする機能を奏するものと解されるとともに、ガイドレールRが無端状であることからして、部材28も無端状であるといえる。

甲1キ:図4には、部材28が、支柱25に取り付けられ、且つ2列の循環搬送路1a,1bの両側において循環搬送路1a,1bに沿って設けられている態様が図示されている。

甲1ク:甲1カ、甲1キ、甲1ウの「図4に示す符号30は、吊り下げ式循環注文搬送装置であって、この吊り下げ式循環注文搬送装置30は、循環型飲食物搬送装置1を構成する無端状のクレセントチェーンコンベヤ12から成る略水平に並設された循環搬送路1a,1bの対面にそれぞれ設置された仕切板5a,5b間の支持台上部の中間には、搬送方向に沿う複数の支柱25が所定間隔毎に立設しており、これら支柱25間には注文飲食客の対面側の飲食客の視界から遮る目隠し板32が取付けられている。」との記載及び図4の図示内容からして、吊り下げ式循環注文搬送装置30は、循環型飲食物搬送装置1の台に設けられた平行な2列の循環搬送路1a,1bの間に立設された支柱25に取り付けられ、且つ2列の循環搬送路1a,1bの両側において循環搬送路1a,1bに沿って設けられる無端状の部材28を備えているといえる。

甲1ケ:甲1カ、甲1ウの「ガイドレールRは、食器皿8を載置して搬送する吊り下げ搬送トレー31を吊り下げる吊り下げ体Tをガイドローラを介して移動自在に支持しており、吊り下げ体Tのガイドローラと反対側には、ガイドレールRの一部に取付けられた無端状の固定子コイルと、可動子から成るリニアモータが設けられている。」との記載及び図4の図示内容からして、吊り下げ式循環注文搬送装置30は、リニアモータにより無端状の部材28内を可動する吊り下げ体Tに設けられた吊り下げ搬送トレー31を備えているといえる。

甲1コ:甲1ケ及び甲1アの「循環注文搬送装置は注文飲食物を正逆に循環移送可能」との記載からして、吊り下げ搬送トレー31は、無端状の部材28に沿って正逆に循環移動するといえる。

以上によれば、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「飲食店用の循環型飲食物搬送装置1に設けられる、飲食客の注文に応じて飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30であって、
循環型飲食物搬送装置1の台に設けられた平行な2列の循環搬送路1a,1bの間に立設された支柱25に取り付けられ、且つ2列の循環搬送路1a,1bの両側において循環搬送路1a,1bに沿って設けられる無端状の部材28と、
リニアモータにより無端状の部材28内を可動する吊り下げ体Tに設けられ、無端状の部材28に沿って正逆に循環移動する吊り下げ搬送トレー31と
を備える飲食客の注文に応じて飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30。」

2.甲第2号証(特開平8-108925号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

甲2ア:「【産業上の利用分野】本発明は、キュウリ(胡瓜)、ヘチマ(糸瓜)、人参、あるいは大根等の長もの野菜を、形状や大きさ等によって選別して仕分ける選別装置に関する。」(【0001】)

甲2イ:「【発明が解決しようとする課題】前記提案技術によると、キュウリをベルトコンベヤで搬送するものであるから、搬送中にキュウリがベルト上で転がったり位置ずれしたりする可能性があり、隣合うキュウリが接触して正確な形状認識が行えないとか、仕分け作動のときに隣のキュウリまで誤って押してしまうといった具合に、選別作動に支障をきたすおそれがあった。本発明の目的は、レイアウト段階からの根本的な見直しにより、上記不都合なく確実に選別作動できるとともに、効率良く機能し得る選別装置を提供する点にある。」(【0003】)

甲2ウ:「【実施例】以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1?図3にキュウリ選別機が示されている。この選別機は、キュウリを収容したコンテナ1をローラーコンベヤ(載置搬送機構に相当)2で連続搬送可能な搬送装置Aと、この搬送装置Aから供給されてくるキュウリを、長円形で平面循環移動する搬送コンベヤ(平面循環搬送機構に相当)3で送りながら選別して仕分ける選別装置Bと、搬送装置Aにあるキュウリを選別装置Bの受取部4に移送する供給装置Cとから構成されている。」(【0011】)

甲2エ:「搬送コンベヤ3は、一対の軸心P1,P2 回りで長円移動するチェーン10に多数のトレイ7を片持ち支持状態で取付けるとともに、トレイ7の先端部に支持した転動ローラ7Aを転がり移動させるための支持レールRを設けて構成されている。従って、トレイ7が水平姿勢のままで循環移動するとともに、直線移動部分ではトレイ7が隙間なく並ぶ状態に設定してある。図4に示すように、トレイ7は、下方に観音開き可能な長さの異なる2枚の傾斜底面7b,7c上にキュウリを載置する開閉構造に構成されている。選別部6において底面7b,7cを開くことでキュウリを所定の回収箱12に落下供給できるのである。」(【0014】)

3.甲第4号証(特開昭60-241410号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

甲4ア:「この発明は回転式カウンターに関し、一層詳細には、清掃が容易で清潔保持が簡易に行える鮨店用等のカウンターに関する。」(1頁左欄下19行?右下欄1行)

甲4イ:「本発明は上記の難点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鮨皿載置板の脱着を容易に行え、清掃が容易で、常に清潔に保持しておける回転式カウンターを提供するにあり・・・」(2頁左上欄4?7行)

甲4ウ:「鮨皿載置台32が密接して移動するので流し11に飯粒等が落下する度合いは少なくなるが、清掃が必要なときには、鮨載置台32をチェーン24上方に容易に取外して周回溝14内を露出しうるから、水を掛けて簡単に洗浄することができる。場合によってはセンターテーブル15、台座13をも取外して、流し11全体を露出することによって完全な清掃が行える。」(3頁左上欄16行?右上欄3行)

甲4エ:第2図には、チェーン24にL字形フック24により固定された鮨皿載置台32が流し11に立設された合成樹脂レール42で支持する態様が図示されている。

4.甲第5号証(特開平9-37915号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

甲5ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、巡回搬送させる商品、例えばパン、ケーキ以外に、保温が必要である商品、例えばコーヒー、紅茶等が注入されたポット、冷蔵が必要である商品、例えばサラダ、フルーツ等を提供することができる回転飲食台に関するものである。」(【0001】)

甲5イ:「本発明は、この要望に対処すると共に、前記欠点に鑑み、火傷等をすることがなく安全な保温機構を備えた回転飲食台を提供すると共に、商品が取り易く、通常商品、保温商品、冷蔵商品の3種類の商品を同時に提供することができる保温機構および冷気循環機構を備えた回転飲食台を提供することを目的とするものである。」(【0010】)

甲5ウ:「また、保温機構のクレセントチェーンの上方に載置板が配設されているため、冷蔵コンベア上の商品を取分けて載置させる取皿を、この載置板上に載置させることができ、商品を取分け易くすることができると共に、保温機構のクレセントチェーンの上方が載置板により被覆されるため、クレセントチェーン上の通常商品および保温商品をチリ、ほこり等から保護でき、冷蔵コンベア上から取分ける商品が、保温機構のクレセントチェーンの商品上に落下することがなく、衛生的である。」(【0062】)

甲5エ:「また、載置板を透明素材により成形することにより、保温機構のクレセントチェーン上の商品を見易くすることができる。」(【0067】)

5.甲第9号証(特開2002-102044号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

甲9ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、無端状の搬送路上に載置された飲食物容器を循環搬送させて飲食物を客に提供する循環型飲食物搬送装置において、特に搬送方向下流側の客に、注文された飲食物を速やかに提供しうるようにした供給方法及び装置に関する。」(【0001】)

甲9イ:「上記供給装置1は、搬送路5により囲まれた中央の空間部内、すなわち左右の直線搬送路5a、5bの間に、それと平行をなして直線状に設けられている。」(【0017】)

6.甲第10号証(特開2004-187922号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証には、以下の事項が記載されている。

甲10ア:「そして、これら各支柱7の頂部には、U字状の支持枠F1が支持されており、支持枠F1の内部底枠には往復注文搬送装置2が支持されており、この往復注文搬送装置2は、図示しない前後に配置された一対のスプロケットに係止されて水平に折り返される無端チェンC1,C2と、一側チェンC1に連結されて厨房エリア内で飲食物Nを載せた食器皿8を載置して飲食客エリア内に向く案内レール13上に支持されて往復直線移動する注文用トレーTとから構成されている。」(【0026】)

甲10イ:「これら往復注文搬送装置3a,3bは、第1実施形態と同じ構成であって、前後に配置された一対のスプロケットに係止されて水平に折り返される無端チェンC1,C2の一方側チェンC1にそれぞれ独立して連結された注文用トレーT,Tを厨房エリアと飲食客エリア間で往復直線移動するように構成されている。」(【0045】)

7.甲第13号証(特開2004-194810号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第13号証には、以下の事項が記載されている。

甲13ア:「そして、これら各支柱7の頂部には、水平な支持枠17が支持されており、この支持枠17の上部にはドーム型注文搬送装置3が支持されており、このドーム型注文搬送装置3は、前後に配置された図示しない一対のスプロケットに係止されて水平に折り返されて両側に配置される無端チェンC1,C2と、一方側チェンC1に連結されて厨房エリア内で飲食物Nを載せた食器皿8を載置して飲食客エリア内に向く案内レール13上に支持されて往復直線移動する注文用トレーTとから構成されている。」(【0040】)

8.甲第19号証(意匠登録第1256941号公報)
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第19号証には、以下の事項が記載されている。

甲19ア:「本意匠は、・・・飲食物等物品の循環搬送を行うクレセントチェーンによる搬送路の上方にチェーン駆動による搬送トレーの運搬路を設けた構成を有するもので、当該搬送トレー運搬路は主に個別注文に応じて所定の位置まで直線状に物品を搬送するために使用される。」(【意匠の説明】)

VI.当審の判断
1.本件特許発明1
1-1.対比
(1)本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比するに当たり、まず、本件特許発明1の発明特定事項の技術的意義を確認する。
本件特許明細書には、
「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の注文搬送装置(2)は、既存の循環搬送装置に適用することができず、設備の変更にコストがかかってしまう。
また、特許文献1に記載の発明の場合、注文搬送装置(2)と飲食物搬送装置(1)とを照らす蛍光灯についてはなんら考慮がなされておらず、注文搬送装置(2)の下側に配置される飲食物搬送装置(1)のトレーなどに照明が届かないおそれがある。・・・
本発明が解決しようとする課題は、簡易に既存の循環搬送装置に取り付けることが可能であり、照明が適切に当てられる個別搬送装置を提供することにある。」(【0003】?【0004】)と記載され、
「本実施例では、ベルト75やローラ65を収容したフレーム39を支柱19側に配置し、透明な支持板71をフレーム39より外側へ延出させて、レーン11a(11c),11b(11d)の上方に透明な支持板71を配置している。
これにより、支柱19の上端部に設けられた照明23の光がフレーム39などに遮られることなく、支持板71を介して下側のレーン11a(11c),11b(11d)まで照らすことができ、飲食物が載せられた食器皿を適切に照らすことができる。したがって、照明を増やす必要がない。
さらに、レーン11a(11c),11b(11d)と照明23との間には、薄い支持板71とトレー103とが配置されるだけであり、レーン11a(11c),11b(11d)と照明23との間のスペースを有効に利用することが可能である。
つまり、本実施例の個別搬送装置1を循環搬送装置3に取り付けた場合でも、循環搬送装置3のレーン11a,11b,11c,11dを流れる食器皿が取り難くなってしまうことがなく、トレー103により運ばれる食器皿も取り難くなることがない。」(【0044】)と記載されている。
本件特許明細書の上記記載からして、本件特許発明1はその発明特定事項により、循環搬送装置の支柱に設けられた照明の光が個別搬送装置により遮られることなく、個別搬送装置の支持板を介して下側の循環搬送装置のレーンまで照らすことができる結果、下側の循環搬送装置のレーンの飲食物が載せられた食器皿を適切に照らすことができて、照明を増やす必要がないとともに、下側の循環搬送装置のレーンと照明との間には、個別搬送装置の支持板とトレーとが配置されるだけであり、下側の循環搬送装置のレーンと照明との間のスペースを有効に利用することが可能となるものである。

(2)本件特許発明1の発明特定事項の技術的意義を考慮して本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比する。
甲第1号証記載の発明の「飲食店用の循環型飲食物搬送装置1」は本件特許発明1の「飲食店用の循環搬送装置」に相当し、以下同様に、「飲食客の注文に応じて飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30」は「飲食物用の個別搬送装置」に、「循環搬送路1a,1b」は「レーン」に、「支柱25」は「支柱」に、「無端状の部材28」は「フレーム」に、「2列の循環搬送路1a,1bの両側」は「2列のレーンの少なくとも一方側」、「リニアモータ」は「駆動装置」に、「リニアモータにより無端状の部材28内を可動する吊り下げ体T」は「駆動装置によりフレーム内を可動する部材」に、「吊り下げ搬送トレー31」は「トレー」に、それぞれ相当する。

甲第1号証記載の発明の「正逆に循環移動する」は、往復動する動作を含むことは明らかだから、本件特許発明1の「駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ、前記支持板上を前記フレームに沿って直線状に往復動するトレー」と甲第1号証記載の発明の「リニアモータにより無端状の部材28内を可動する吊り下げ体Tに設けられ、無端状の部材28に沿って正逆に循環移動する吊り下げ搬送トレー31」とは、「駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ、前記フレームに沿って往復動するトレー」という点で一致する。

以上によれば、本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とは、次の点で一致する。
「飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送装置であって、
循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設された支柱に取り付けられ、且つ前記2列のレーンの少なくとも一方側においてレーンに沿って設けられるフレームと、
駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ、前記フレームに沿って往復動するトレーと
を備える個別搬送装置。」

そして、両者は以下の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1では、
個別搬送装置のフレームが取り付けられる循環搬送装置の支柱が「照明を保持」し、
個別搬送装置が、
「フレームに設けられ、フレームから水平に延出して、前記フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される透光性を有する支持板」を備え、
個別搬送装置のトレーが「前記支持板上を前記フレームに沿って往復動する」のに対して、
甲第1号証記載の発明では、飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30の無端状の部材28が取り付けられる、循環型飲食物搬送装置1の支柱25が「照明を保持」しておらず、
飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30の吊り下げ搬送トレー31が、リニアモータにより無端状の部材28内を可動する吊り下げ体Tに設けられ、無端状の部材28に沿って正逆に循環移動するものの、本件特許発明1のような「支持板」を備えていない点。

(相違点2)
本件特許発明1では、個別搬送装置の「フレーム」が「直線状」であるとともに、個別搬送装置の「トレー」が支持板上を「前記フレームに沿って直線状に」往復動するのに対して、
甲第1号証記載の発明では、飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30の吊り下げ搬送トレー31が無端状の部材28に沿って正逆に循環移動する点。

(3)請求人は、以下の理由により、支柱が照明を保持するか否かは、実質的な相違点ではない旨主張する。
i:特許請求の範囲記載の本件特許発明が個別搬送装置に係る発明であることから、個別搬送装置が取り付けられる循環搬送装置に関する限定要素(照明の存在)は個別搬送装置の発明の特定のための構成要素とはならない。
ii:本件特許発明は、照明が既存の循環搬送装置に設けられた支柱に設置されていることを当然の前提にしており、支柱の上部に照明を備えた循環搬送装置が本件特許発明の出願前に周知慣用であったことは明らかである。

そこで、請求人の主張について検討する。
iについて:
本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、
「飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送装置であって、
循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設されて照明を保持する支柱に取り付けられ、且つ前記2列のレーンの少なくとも一方側においてレーンに沿って設けられる直線状のフレームと、・・・
を備えることを特徴とする個別搬送装置。」
と記載されている。
してみると、本件特許発明1に係る「個別搬送装置」が、「循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設されて照明を保持する支柱に取り付けられ」ることを発明特定事項としていることは明らかであって、個別搬送装置が取り付けられる循環搬送装置に関する限定要素(照明の存在)であることと、本件特許発明1に係る「個別搬送装置」の発明特定事項であることとは、矛盾しないから、個別搬送装置が取り付けられる循環搬送装置に関する限定要素(照明の存在)であることを根拠に支柱が照明を保持するか否かは実質的な相違点ではないという請求人の主張は採用することができない。

iiについて:
仮に、支柱の上部に照明を備えた循環搬送装置が本件特許発明の出願前に周知慣用であって、そのことを考慮して甲第1号証の記載を検討したとしても、支柱25の上部に照明を備えているものが甲第1号証に記載されていると解することはできないから、支柱の上部に照明を備えた循環搬送装置が本件特許発明の出願前に周知慣用であったことを根拠に支柱が照明を保持するか否かは実質的な相違点ではないという請求人の主張は採用することができない。

以上のとおり、請求人の主張i、iiは採用することができない。

1-2.相違点についての判断
1-2-1.相違点1
(1)請求人は、相違点1に係る事項について以下のように主張する。
(支持板)
a:甲第1号証記載の発明と甲第2号証記載の発明又は甲第4号証記載の発明とは、水平方向への食品の搬送という同一の技術分野に関するものであり、このような水平方向への食品の搬送技術においては、食品を載置したトレーの重量を支持する機構が必要であって、また、かかる搬送装置における支持機構自体は周知慣用の技術にすぎず、当業者であれば必要に応じてその支持機構を選択し得る。
したがって、甲第1号証の個別搬送装置におけるトレーの支持構造を、甲第2号証又は甲第4号証が示すような支持構造(駆動装置であるチェーンに片持ち支持状態で取り付けられているトレーの先端部を支持レールで支持する構造)に代替させることは、当業者に容易であって、このようにトレーを片持ちにするとともにトレーの支持のために支持レールを用いる場合、支持レールをトレー支持原理が同じである支持板にさらに代替させることは、設計事項である。

b:甲第2号証の支持レールRと同様の機能を有する甲第4号証の合成樹脂製レール42は流し11上に設けられるから、合成樹脂製レール42と流し11平面を構成する板材とを一体化した板材(すなわち支持板)とすることは極めて容易である。

(支持板を透明とすること)
c:甲第1号証に甲第2号証又は甲第4号証を適用し、トレーの支持構造に支持板を用いる際に、甲第2号証又は甲第4号証のチェーンと支持レール間が中空(究極の透光性を備える:甲第4号証のチェーン24と合成樹脂レール42との間が中空で、究極の透光性を備える点では同一である。)であることから、支持板を透光性とすることは、設計事項である。

d:甲第5号証には、回転式飲食台において、飲食物を搬送するクレセントチェーンの上方を被覆する載置台を、商品を見やすくするために透明にする技術が開示されている。
トレーの支持構造を構成する支持板を透光性のものとすることは、回転寿司の搬送装置の分野においては、設計事項であること、
上下2段のレーンが構成され、上段のレーンに支持板がある場合、下方のレーンに上方からの照明を照らそうとした際に、上方のレーンの支持板が透光性を有するものとすることは、設計事項であること、
上下2段のレーンを設けた場合に、下のレーンの食品をチリやほこり等から保護し、或いは下のレーンの食品上に上のレーンの食品が落下しないようにすることは共通の課題であることからして、
甲第1号証に甲第2号証又は甲第4号証を適用し、トレーの支持構造を甲第2号証又は甲第4号証の支持レールに代えて甲第5号証の載置台のように透光性の支持板とすることは、当業者が容易に想到し得る。

(3)請求人の上記主張を参酌しつつ、相違点1について検討する。
(支持板)
甲第1号証記載の発明は、「本発明は、・・・人手を掛けずに注文飲食物を注文飲食客に手早く且つ確実に送り届けることができる専用の循環注文搬送路を設けた循環型飲食物搬送装置を提供することを目的としている」(甲1イ)ものであって、飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30の吊り下げ搬送トレー31が、リニアモータにより無端状の部材28内を可動する吊り下げ体Tに設けられ、無端状の部材28に沿って正逆に循環移動するものであるから、吊り下げ搬送トレー31を支持する支持板はそもそも必要ない。
また、甲第2号証記載の発明は、「長もの野菜を・・・選別して仕分ける選別装置」(甲2ア)であって、「発明の目的は、レイアウト段階からの根本的な見直しにより、上記不都合なく確実に選別作動できるとともに、効率良く機能し得る選別装置を提供する点にある」(甲2イ)ものであり、甲第2号証の「トレイ7は、下方に観音開き可能な長さの異なる2枚の傾斜底面7b,7c上にキュウリを載置する開閉構造に構成されている。選別部6において底面7b,7cを開くことでキュウリを所定の回収箱12に落下供給できるのである。」との記載からして、甲第2号証記載の発明のトレイ7は、開閉構造に構成された底面を開くことで長もの野菜を回収箱12に落下供給するものであるから、トレイ7の下に野菜の落下の邪魔になる支持板を設けることを想定しているとはいえず、甲第2号証の記載を検討しても、支持レールRを支持板に代替することを示唆する記載は見出せない。
してみると、仮に請求人が主張するように(主張a)、甲第1号証の吊り下げ式循環注文搬送装置30(個別搬送装置)における吊り下げ搬送トレー31(トレー)の支持構造を、甲第2号証の片持ち支持状態で取り付けられているトレーの先端部を支持レールで支持する構造に代替させることを当業者が容易に想到し得るとしても、さらに支持レールを支持板に代替することまで当業者が容易に想到し得るとはいえない。
そして、甲第1号証記載の発明はそもそも支持板を必要とせず、甲第2号証に記載された発明は支持板を設けることを想定しておらず、甲第2号証に支持レールRを支持板に代替することを示唆する記載は見出せないから、仮に請求人が主張するように(主張a)、トレー支持原理が同一であるとしても、このことだけを根拠に、トレーを片持ちにするとともにトレーの支持のために支持レールを用いる場合、支持レールを支持板にさらに代替させることが設計事項であるとはいえない。

さらに、甲第4号証記載の発明は、「清掃が容易で清潔保持が簡易に行える鮨店用等のカウンターに関する」(甲4ア)ものであって、「その目的とするところは、鮨皿載置板の脱着を容易に行え、清掃が容易で常に清潔に保持しておける回転式カウンターを提供する」(甲4イ)ものであり、甲第4号証の「清掃が必要なときには、鮨皿載置台32をチェーン24上方に容易に取外して周回溝14内を露出しうるから、水を掛けて簡単に洗浄することができる。場合によってはセンターテーブル15、台座13をも取外して、流し11全体を露出することによって完全な清掃が行える。」(甲4エ)との記載からして、甲第4号証記載の発明の流し11は、流し11の上から、鮨皿載置台32、センターテーブル15、台座13を取外して、水を掛けて清掃するものといえ、甲第1号証及び甲第4号証の記載を検討しても、甲第1号証記載の発明の個別搬送装置におけるトレーの支持構造として、甲第4号証記載の発明の流し11に立設された合成樹脂製レール42で鮨皿載置台32(トレー)を支持する構成(甲4ウ)を採用することを示唆する記載は見出せず、このことを当業者が容易に想到し得るとはいえない。
同様の理由で、仮に請求人が主張するように(主張b)、合成樹脂製レール42と流し11平面を構成する板材とを一体化した板材とすることを当業者が容易に想到し得るとしても、甲第1号証記載の発明の個別搬送装置におけるトレーの支持構造として上記一体化した板材を適用することを当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(支持板を透明とすること)
甲第1号証記載の発明は、「本発明は、・・・人手を掛けずに注文飲食物を注文飲食客に手早く且つ確実に送り届けることができる専用の循環注文搬送路を設けた循環型飲食物搬送装置を提供することを目的としている。」(甲1イ)ものであって、そもそも循環型飲食物搬送装置1の支柱25は照明を保持しておらず、甲第1号証の記載を検討しても、循環注文搬送路(個別搬送装置)を介して循環型飲食物搬送装置(循環搬送装置)の搬送路(レーン)を照明することを示唆する記載は見出せない。
また、甲第2号証記載の発明は、「長もの野菜を・・・選別して仕分ける選別装置」(甲2ア)であって、「発明の目的は、レイアウト段階からの根本的な見直しにより、上記不都合なく確実に選別作動できるとともに、効率良く機能し得る選別装置を提供する点にある。」(甲2イ)ものであり、甲第4号証記載の発明は、「清掃が容易で清潔保持が簡易に行える鮨店用等のカウンターに関する」(甲4ア)ものであって、「その目的とするところは、鮨皿載置板の脱着を容易に行え、清掃が容易で常に清潔に保持しておける回転式カウンターを提供する」(甲4イ)ものであり、甲第2号証及び甲第4号証の記載を検討しても、支持レールを透光性の支持板に代替することを示唆する記載は見出せない。
加えて、請求人が主張するように、照明の光が個別搬送路で遮られないと解される支持レールで支持する構造を、支持板で支持する構造にすると、照明の光が支持板で遮られることになってしまうから、請求人の該主張は、照明の光が個別搬送路で遮られないように支持板を透光性にすることと相反するものであるともいえる。
してみると、仮に甲第1号証の個別搬送装置におけるトレーの支持構造を、甲第2号証又は甲第4号証の片持ち支持状態で取り付けられているトレーの先端部を支持レールで支持する構造に代替させるとともに、支持レールを支持板に代替することを当業者が容易に想到し得るとしても、代替した支持板を透光性のものとすることまで当業者が容易に想到し得るとはいえない。

なお、請求人は、甲第1号証記載の発明に甲第2号証記載の発明又は甲第4号証記載の発明を適用し、トレーの支持構造に支持板を用いる際に、甲第2号証又は甲第4号証のチェーンと支持レール間が中空であることから、支持板を透光性とすることは設計事項である(主張c)とも主張する。
しかしながら、チェーンと支持レール間が中空の空間であることは、支持板を透光性とすることが設計事項であることの合理的根拠とはいえず、請求人の上記主張は採用できない。

さらに、甲第5号証記載の発明は、「火傷等をすることがなく安全な保温機構を備えた回転飲食台を提供すると共に、商品が取り易く、通常商品、保温商品、冷蔵商品の3種類の商品を同時に提供することができる保温機構および冷気循環機構を備えた回転飲食台を提供することを目的とするもの」(甲5イ)であって、「保温機構のクレセントチェーンの上方に載置板が配設されているため、冷蔵コンベア上の商品を取分けて載置させる取皿を、この載置板上に載置させることができ、商品を取分け易くすることができると共に」(甲5ウ)、「載置板を透明素材により成形することにより、保温機構のクレセントチェーン上の商品を見易くすることができる」(甲5エ)ものであり、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証の記載を検討しても、甲第1号証記載の発明に甲第2号証記載の発明又は甲第4号証記載の発明を適用し、トレーの支持構造を甲第2号証又は甲第4号証の支持レールに代えて甲第5号証の載置台のように透光性の支持板とすることを示唆する記載は見出せない。
また、甲第1号証乃至甲第19号証の記載を検討しても、請求人が主張する(主張d)「トレーの支持構造を構成する支持板を透光性のものとすることは、回転寿司の搬送装置の分野においては、設計事項であること」、「上下2段のレーンが構成され、上段のレーンに支持板がある場合、下方のレーンに上方からの照明を照らそうとした際に、上方のレーンの支持板が透光性を有するものとすることは、設計事項であること」を裏付ける根拠は見出せず、「上下2段のレーンを設けた場合に、下のレーンの食品をチリやほこり等から保護し、或いは下のレーンの食品上に上のレーンの食品が落下しないようにすることは共通の課題であること」は、甲第1号証記載の発明に甲第2号証又は甲第4号証記載の発明を適用し、トレーの支持構造を甲第2号証又は甲第4号証の支持レールに代えて甲第5号証の載置台のように透光性の支持板とすることを当業者が容易に想到し得ることを裏付けるものとはいえない。
してみると、甲第1号証記載の発明に甲第2号証記載の発明を適用し、トレーの支持構造を甲第2号証又は甲第4号証の支持レールに代えて甲第5号証の載置台のように透光性の支持板とすることを当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(周知慣用技術)
仮に請求人が主張するように、「支柱の上部に照明を備えた循環搬送装置」、「注文された飲食物を載置したトレーが直線往復移動する個別搬送装置」、「飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送装置であって、循環搬送路の台に設けられた2列のレーンの上方において、直線上を往復移動するトレーを備える個別搬送装置」、「上下2段/3段のレーンを設けた飲食物の搬送装置」、「片持ちアタッチメントやフック」が本件出願前に周知慣用であるとしても、(支持板)及び(支持板を透明とすること)についての上記検討結果に加え、甲第1号証乃至甲第19号証には、照明の光が個別搬送装置の支持板により遮られることを技術的課題として示唆する記載や、照明の光で個別搬送装置の支持板を介して下側の循環搬送装置のレーンまで照らすことを示唆する記載は見出せないから、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項([個別搬送装置のフレームが取り付けられる循環搬送装置の支柱が「照明を保持」し、個別搬送装置が、「フレームに設けられ、フレームから水平に延出して、前記フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される透光性を有する支持板」を備え、個別搬送装置のトレーが「前記支持板上を前記フレームに沿って往復動する」)を、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に想到することができたとはいえない。

(4)相違点1についてのまとめ
以上によれば、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

1-2-2.相違点2
(1)個別搬送装置のトレーを直線状に往復動することは、本件出願前に周知であったといえる(甲9ア、甲9イ、甲10ア、甲10イ、甲13ア、甲19ア)から、甲第1号証記載の発明において、飲食物を個別に搬送する吊り下げ式循環注文搬送装置30(個別搬送装置)の吊り下げ搬送トレー31(トレー)が直線状に往復動するように、無端状の部材28(フレーム)を直線状とし、本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは、甲第1号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に想到することができたものである。

1-2-3.相違点についてのまとめ
本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項が、甲第1号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に想到することができたものであるとしても、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証に記載された周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえないから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証に記載された周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

1-3.効果
そして、本件特許発明1は、その発明特定事項を備えることにより、特許明細書記載の作用効果を奏することができるものである。

1-4.まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件特許発明1に係る特許についての無効理由は理由がない。

2.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を「前記駆動装置は、無端状のベルトと、このベルトを回転させるモータとを備え、前記ベルトに固定されたフックに前記トレーが着脱可能に連結される」点でより限定したものであって、本件特許発明1が甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明1の発明特定事項を全て具備した本件特許発明2は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証乃至甲第19号証記載の周知慣用の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明2は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件特許発明2に係る特許についての無効理由は理由がない。

VII.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許発明1に係る特許及び本件特許発明2に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
審理終結日 2011-06-06 
結審通知日 2011-06-10 
審決日 2011-06-21 
出願番号 特願2007-121860(P2007-121860)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A47G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 寺澤 忠司
関谷 一夫
登録日 2008-04-04 
登録番号 特許第4105749号(P4105749)
発明の名称 個別搬送装置  
代理人 向江 正幸  
代理人 福島 三雄  
代理人 長谷川 武治  
代理人 森山 航洋  
代理人 高崎 真行  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 吉田 肇  
代理人 日高 一樹  
代理人 大友 良浩  
代理人 渡邉 知子  
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