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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C21D |
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管理番号 | 1254853 |
審判番号 | 不服2010-28137 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-13 |
確定日 | 2012-04-05 |
事件の表示 | 特願2005- 76183「方向性電磁鋼板の焼鈍方法及び方向性電磁鋼板のバッチ焼鈍用インナーカバー」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-257486〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年3月17日の出願であって、平成22年5月13日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日付けで手続補正がされ、同年9月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がされたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項2に係る発明は、平成22年12月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項2】 バッチ焼鈍炉内に、軸を鉛直にして載置された方向性電磁鋼帯のコイルを覆うインナーカバーであって、前記インナーカバーが、側壁部と天井部とを有し、前記側壁部の内壁側に接して断熱材を設置すると共に、該断熱材を天井部の内壁側まで延ばしてなることを特徴とする方向性電磁鋼板のバッチ焼鈍炉用インナーカバー。」 (以下、本願の請求項2に係る各発明を「本願発明2」という。) 第3 拒絶査定の理由の概要 本願発明2は、本願出願前に頒布された下記刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1 実願昭60-32271号(実開昭61-150849号)のマイクロフィルム 刊行物2 .実願平4-49687号(実開平6-25353号)のCD-ROM 第4 刊行物の記載事項(以下、審決中:「・・・」は、記載事項の省略を意味する。) 1.刊行物1の記載事項 1-1 「実用新案登録請求の範囲 鋼板コイルに被着して焼鈍を行なうインナーカバーに於いて、上記インナーカバーの胴部に、断熱物質を充填した金属製薄箱を設けてなる鋼板コイル焼鈍用インナーカバー。」 1-2 「(従来の技術) 周知の如く、鋼板コイルの焼鈍にさいしては、鋼板コイルにインナーカバーを被着して・・・インナーカバーの外部に設けた加熱装置により加熱して、焼鈍が行われる。・・・焼鈍に用いるインナーカバーに於いて、その側部に断熱材を設けて、均一加熱・・・を行うことが、例えば実開昭56-103046号公報によって提案されている。」 1-3 第2図には、胴部の内壁側に接して断熱材を設けた胴部と天井部を有するインナーカバーとインナーカバー内に軸を鉛直方向に向けて載置されたコイルが記載されている。 2.刊行物2の記載事項 2-1 「【0003】 この焼鈍において、インナーカバーからの輻射熱による加熱はコイルの上面および側面から行われるが、コイルの半径方向では、その熱伝導率が軸方向に比較して小さく、温度差を生じる。特に、一方向性電磁鋼板のように、鋼板表面にMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布しているコイルでは、高温加熱時のコイル半径方向の内部と外部での温度差が大きくなり、最熱点温度と最冷点温度では150℃以上の温度差になることがあり、コイル外周部分の鋼板に相当な長さに亘って熱歪(中歪)が発生し、鋼板の形状不良を起こすことがある。」 2-2 「【0005】 【考案が解決しようとする課題】 本考案は、さらに入熱方向制御を極めて大きく改善し、コイル内温度偏差を低減させ、中歪みの発生を抑制してこれによる歩留落を飛躍的に改善できる薄鋼板コイルの焼鈍装置を提供することを目的とするものである。」 2-3 「【0008】 更に本考案においては、断熱筒体4の上端部に庇6を設けることができ、・・・本考案で庇6を設けるのは、インナーカバー上部から間隔5部分への輻射熱伝対を遮蔽し、コイル半径方向への入熱の制御をより効果的にすることが出来るからである。」 2-4 「【0011】 すなわち本考案装置では、コイルに近接して断熱筒体4を設け、インナーカバー1の側面からの入熱を遮断し、かつ庇6によって間隔5にも上部からの熱の入を防いでコイルへの入熱を殆ど軸方向からとしため、半径方向で温度差が少なくなり均一化傾向となっている。」 2-5 第2、4図には、庇を有する断熱筒体が、第3図には、従来装置における輻射熱の方向が記載されている。 第5 当審判断 1.刊行物1に記載された発明 刊行物1には、『コイル状に巻いた鋼板を、該コイルの軸を鉛直にして焼鈍炉内に装入、載置し、インナーカバーで覆って加熱する鋼板の焼鈍方法において、該インナーカバーの胴部の内壁側に接して断熱材を設けたインナーカバー』(1-1、1-3)の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 2.対比 引用発明(前者)と本願発明2(後者)とを対比すると、前者の「胴部」は、後者の「側壁部」に相当し、また、前者のインナーカバーが天井部を有していることは明らかである。 よって、両者は、「コイル状に巻いた鋼板を、該コイルの軸を鉛直にして焼鈍炉内に装入、載置し、インナーカバーで覆って加熱する鋼板の焼鈍方法において、前記インナーカバーとして、側壁部と天井部とを有し、前記側壁部の内壁側に接して断熱材を設置するインナーカバー」の点で一致し、(1)前者が、後者のように「断熱材を天井部の内壁側まで延ばしてなる」か否かが明らかでない点(相違点1)、(2)前者が、鋼板を対象としているのに対して、後者が方向性電磁鋼板を対象としている点(相違点2)、(3)前者が、後者のように「バッチ」焼鈍炉を用いるか明らかでない点(相違点3)で相違する。 3.相違点についての判断 (1)相違点1 刊行物1には、「焼鈍に用いるインナーカバーに於いて、その側部に断熱材を設けて、均一加熱・・・を行うことが、例えば実開昭56-103046号公報によって提案されている」とあり(1-2)、実開昭56-103046号公報には、「コイルの半径方向に大きな温度差が生じてコイル外周部に中伸びと呼ばれる形状不良が発生する・・・コイル半径方向の温度差を少なくすることによって均一加熱・・・を行って中伸びの発生を防止する」とあるから(第2頁6?11行)、引用発明は、コイル内の径方向の温度分布の不均一を低減し、コイルの最外巻き寄りの形状不良が抑制されるように断熱材を配置することを前提にしていると解される。 また、刊行物2には、コイルの半径方向での温度差によって、「コイル外周部分の鋼板に相当な長さに亘って熱歪(中歪)が発生し、鋼板の形状不良を起こす」ことから(2-1)、「コイル内温度偏差を低減させ、中歪みの発生を抑制してこれによる歩留落を飛躍的に改善」するため(2-2)、庇を設けてコイル半径方向への入熱を制御し(2-3、2-5)、「半径方向で温度差が少なくなり均一化傾向」をもたらすことによって(2-4)、「輻射熱伝対を遮蔽し、コイル半径方向への入熱の制御をより効果的にする」ことが開示されているから(2-3)、「コイルの最外巻き寄りの形状不良が抑制されるように」断熱材を配置するという技術思想は、本願出願前、既に公知であると解される。 さらに、刊行物2に記載のものは、「輻射熱伝対を遮蔽し、コイル半径方向への入熱の制御をより効果的にする」ものであるから(2-3)、この効果を生じさせるため、断熱材の設置位置を考慮することは(2-5)、本願出願前、既に示唆されていると解される。 加えて、加熱源(バーナ)の位置をインナーカバーの上部に設けることは、周知であるから(特開平10-46233号公報【図1】、特開平5-271790号公報【図1】)、加熱源(バーナ)の位置に応じて断熱材の位置も天井部まで延ばすように適宜設定できると解される。 そうすると、引用発明において、コイルの半径方向の温度差を少なくすることによって均一加熱を行って中伸びの発生を防止するために、「断熱材を天井部の内壁側まで延ばしてなる」ようにすることは、当業者が容易に推考できる範囲にとどまるというべきである。 (2)相違点2 方向性電磁鋼板のように鋼板表面に焼鈍分離材を塗布して焼鈍すると、一般の鋼板の場合に比し、コイル内の径方向の温度分布がさらに不均一になるところ(2-1)、コイル径方向の温度分布の不均一を低減するという観点から、鋼板に妥当するものは、方向性電磁鋼板により妥当するといえ、相違点2は、当業者が適宜なし得る範囲にとどまるというべきである。 (3)相違点3 方向性電磁鋼板をバッチ焼鈍炉で焼鈍することは、周知であるから、相違点3は、当業者が適宜なし得る範囲にとどまるというべきである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明2は、刊行物1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-02-01 |
結審通知日 | 2012-02-07 |
審決日 | 2012-02-20 |
出願番号 | 特願2005-76183(P2005-76183) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C21D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 陽一 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 田中 則充 |
発明の名称 | 方向性電磁鋼板の焼鈍方法及び方向性電磁鋼板のバッチ焼鈍用インナーカバー |
代理人 | 小杉 佳男 |
代理人 | 山田 正紀 |