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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J |
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管理番号 | 1254856 |
審判番号 | 不服2010-28719 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-20 |
確定日 | 2012-04-05 |
事件の表示 | 特願2005-355566号「分子内にフッ素原子を有するプロスタグランジン含有製品」拒絶査定不服審判事件〔平成18年7月20日出願公開、特開2006-187602号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成17年12月9日(優先権主張平成16年12月9日)の出願であって、平成22年8月26日付け(発送日:同9月21日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成21年11月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αもしくはそのアルキルエステルまたはその塩を含有する水性液剤を、滅菌処理した、プロピレン-エチレンコポリマーを材質とする樹脂製容器に保存した製品であって、同容器の滅菌処理をエチレンオキサイドガスで行うことにより水性液剤中の該16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αもしくはそのアルキルエステルまたはその塩の含有率の低下を抑制することを特徴とするプロスタグランジン含有製品。」 第2 引用例の記載事項 A.これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、特表2002-520368号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 1-ア 「(発明の要旨) 本発明は、ポリプロピレン容器に詰められた水性プロスタグランジン組成物を含む薬学的製品に関する。ポリプロピレン容器に詰められた水性プロスタグランジン組成物は、ポリエチレン容器に詰められた水性プロスタグランジン組成物よりもより安定である。 (詳細な説明) 本明細書中で使用される、『水性プロスタグランジン組成物』は、少なくとも1つのプロスタグランジンおよび多量の水を含む水性組成物を意味し、ここで、水は、組成物の連続相を構成する。」(段落【0009】?【0010】) 1-イ 「本明細書中で使用される、「ポリプロピレン」は、非ポリプロピレンオレフィンを実質的に含まない(例えば、約5重量%未満)ポリプロピレンを意味する。用語ポリプロピレンには、例えば、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンおよびアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレンのブレンドが挙げられる。」(段落【0011】) 1-ウ 「本発明の製品における使用のために適切なプロスタグランジンの具体例には、以下の化合物が挙げられる: (化合物番号) ・・・・・・ 2. (5Z)-(9R,11R,15R)-9-クロロ-15-シクロヘキシル-11,15-ジヒドロキシ-3-オキサ-16,17,18,19,20-ペンタノル-5-プロステン酸イソプロピルエステル; ・・・・・・ および 32. フルプロステノールイソプロピルエステル。 上記の全ての化合物が公知である。本発明の組成物で使用するための好ましいプロスタグランジンは、上記の化合物2および32である。 本発明に従ってポリプロピレン容器中に詰められるプロスタグランジン組成物は、投与の任意の経路に適応され得る。耳、鼻または眼への局所的投与に適応される組成物が好ましく、眼への局所的投与に調製される組成物が最も好ましい。」(段落【0016】?【0020】) 1-エ 「(実施例1) 以下の局所的に投与可能な眼用処方物を、上述の様式で調製した。 成分 処方物(w/v%) A 化合物番号32 0.001+5%過剰 (プロスタグランジン) ・・・・・・ 精製水 100%にするまでの量 ・・・・・・」(段落【0029】?【0030】) 1-オ 【表1】(段落【0032】)には、「処方物Aの適合性」として、各種素材の容器に処方物Aを保存した場合の時間経過後の処方物の薬剤残存パーセント測定結果が、初期を100.0%として2週間ごとに8週間にわたり示されている。 8週間経過後の薬剤残存パーセントは次のとおりである。 透明ガラスアンプル(非滅菌) 96.3 透明LDPEビン(ETO滅菌) 93.2 透明LDPEビン(ガンマ滅菌) 80.6 不透明LDPEビン(ガンマ滅菌) 82.8 アイソタクチックポリプロピレン(ETO滅菌) 101.0 上記記載について検討すると、記載1-アには、ポリプロピレン容器に詰められた水性プロスタグランジン組成物(プロスタグランジンおよび多量の水を含む水性組成物)を含む薬学的製品について、ポリプロピレン容器に詰められた水性プロスタグランジン組成物は、ポリエチレン容器に詰められた水性プロスタグランジン組成物よりもより安定であることが記載されている。 記載1-イには、引用例1でいう「ポリプロピレン」は、非ポリプロピレンオレフィンの含有量が、例えば約5重量%未満であるようなポリプロピレンを意味する旨記載されている。 記載1-ウには、発明に係る製品で使用するのに好ましいプロスタグランジンの具体例として、化合物番号2の(5Z)-(9R,11R,15R)-9-クロロ-15-シクロヘキシル-11,15-ジヒドロキシ-3-オキサ-16,17,18,19,20-ペンタノル-5-プロステン酸イソプロピルエステルと、化合物番号32のフルプロステノールイソプロピルエステルとが挙げられ、ポリプロピレン容器中に詰められるプロスタグランジン組成物は、眼への局所的投与に調製される組成物が最も好ましい旨記載されている。 記載1-エには、局所的に投与可能な眼用処方物Aとして、化合物番号32のプロスタグランジン、すなわち、フルプロステノールイソプロピルエステルを含有する水溶液を処方することが記載されている。なお、フルプロステノールは、分子式がC_(23)H_(29)F_(3)O_(6)の、分子中にフッ素を有するプロスタグランジンであることが良く知られている。 記載1-オには、数種の素材からなる容器に保存した処方物Aの薬剤残存パーセント測定結果が滅菌方法を含めて示されており、非滅菌のガラス、ETOすなわちエチレンオキサイド滅菌したLDPE(低密度ポリエチレン)、ガンマ線滅菌したLDPE、ETO滅菌したポリプロピレンを比較すると、ETO滅菌したポリプロピレンでは殆ど処方物中の薬剤の減少が見られず、他のものに比べ安定しており保存性が優れることが認められる。 なお、同じ素材(LDPE)の容器であっても、ETO滅菌したものの方がガンマ線滅菌したものより処方物中の薬剤の減少割合が少なく、滅菌方法により残存量に違いがあることも認められる。 上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「フルプロステノールイソプロピルエステルのようなプロスタグランジンの眼用処方物に好ましい水性組成物を、ETO滅菌したポリプロピレン容器に詰めた製品であって、プロスタグランジンの薬剤残存パーセントが減少せず安定したプロスタグランジンを含む製品。」 B.また、同じく原査定の拒絶の理由で引用した、特開平11-71344号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 2-ア 「【発明の属する技術分野】本発明は15位にフッ素原子2個を有する含フッ素プロスタグランジン誘導体(またはその塩)、および、その化合物を有効成分とする医薬、特に眼疾患の予防ないし治療のための医薬、に関する。 【従来の技術】天然のプロスタグランジン(PG)類は生体内において合成される一群の生理活性物質で、種々の生理活性を有する局所ホルモンとして生体各組織の細胞機能を調節している。天然型PGの一種であるPGF類は、局所的に眼に投与すると眼内圧を低下することが知られており、高眼圧症や緑内障の治療薬としての応用が期待されてきた(USP4,599,353など)。しかし、眼に対する刺激性を有し充血、角膜傷害など炎症性の副作用を伴うことが問題となっている。このため、これらの副作用のないPGF誘導体の開発研究が内外で活発に行われている。ω鎖に環構造を有するPGF誘導体も知られている。シエルンシャンツらは環構造を有するように変性したPGA、PGB、PGD、PGE、およびPGFの特定の誘導体が眼に対する刺激作用および充血作用が弱いことを報告した(特開平8-109132)。また、クロプロステノールやフルプロステノールの類似体を用いた緑内障および高眼圧症の治療用局所眼薬組成物(特開平7-165703)も報告されている。」(段落【0001】?【0002】) 2-イ 「一般式(1)で表される化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されない。 ・・・・・・ 16-(3-トリフルオロメチルフェノキシ)-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αメチルエステル、16-(3-トリフルオロメチルフェノキシ)-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αエチルエステル、16-(3-トリフルオロメチルフェノキシ)-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αイソプロピルエステル、16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αメチルエステル、16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αエチルエステル、16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αイソプロピルエステル。」(段落【0085】?【0088】) 2-ウ 「上記本発明の化合物(含フッ素プロスタグランジン誘導体またはその塩)は、公知の天然型PGF2αに比べて優れた眼圧降下作用を有している。また、眼刺激性や角膜、虹彩、結膜等の眼組織への影響が非常に少ない。さらに、生体内においては加水分解や酸化などの代謝による分解を受けにくく安定で、角膜透過性、眼内吸収性が高いことなどから医薬としての有用性が非常に高い。しかもメラニン産生性が高いという従来のPGF2α誘導体の問題が解決され、メラニン産生性がきわめて低い化合物である。したがって、本発明の医薬は特に緑内障または高眼圧症の治療剤として有効である。 本発明の医薬は、上記本発明における化合物を有効成分として含有する製剤を点眼などの方法により眼に局所投与して用いる。投与剤型としては点眼液や眼軟膏等の点眼剤、注射剤等が挙げられ、汎用される技術を用いて本発明における化合物を製剤化できる。例えば、点眼液であれば塩化ナトリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(以下、ポリソルベート80とする)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤などを必要に応じて用い製剤化でき、pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4?8の範囲が好ましい。」(段落【0112】?【0113】) 記載2-アには、眼疾患の予防ないし治療のための医薬としての含フッ素プロスタグランジン誘導体(またはその塩)、および、その化合物を有効成分とする医薬について記載されている。なお、従来技術として、フルプロステノールの類似体を用いた緑内障および高眼圧症の治療用局所眼薬組成物についての言及がある。 記載2-イには、発明に係る含フッ素プロスタグランジン誘導体として、16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αのアルキルエステルが数種記載されている。 記載2-ウには、発明に係る含フッ素プロスタグランジン誘導体またはその塩が、点眼液として投与可能である旨記載されている。 以上より、引用例2には、眼疾患の予防ないし治療のための点眼液として投与可能なプロスタグランジンとして16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αのアルキルエステルが記載されているといえる。 C.また、同じく原査定の拒絶の理由で引用した、国際公開第02/22106号明細書(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている(訳文は当審による仮訳)。 3-ア "The invention relates to a stable ophthalmic preparation containing a prostaglandin-like-compound that may be used to treat glaucoma by reducing intraocular pressure. More specifically, the present invention relates to an aqueous preparation containing a prostaglandin-like-compound having increased stability in polypropylene container, and thus, not requiring refrigeration." 「本発明は、眼内圧を下げることにより緑内障を治療するために使用可能なプロスタグランジン様化合物を含む安定した眼科製剤に関する。より具体的には、本発明は、ポリプロピレン容器に保存され安定性の増した冷蔵不要なプロスタグランジン様化合物を含む水性製剤に関する。」(1ページ2行?6行) 3-イ "It has been surprisingly found that the stability of a preparation comprising a prostaglandin-like-compound, especially a lipid-soluble prostaglandin-like-compound, in a polypropylene bottle is increased to such a degree over the bolltes currently used in the art, e.g., LDPE bottles, that refrigeration is no longer necessary, e.g., the preparation can be stored at room temperature." 「驚くべき事に、ポリプロピレンボトルの場合、プラスタグランジン様化合物、特に脂質可溶性プラスタグランジン様化合物を含む製剤の安定性が、例えばLDPEボトルのような現在使用されているボトルに比べ、冷蔵がもはや不要な程度にまで改善され、室温で製剤が保存可能であることが見いだされた。」(2ページ28行?3ページ3行) 3-ウ "Particularly suitable polypropylene for the present invention is random copolymer propylen, which contains up to about 5 wt%, preferably up to about 3wt%, more preferably up to about 2wt%, of ethylene." 「本発明に特に好適なポリプロピレンは、約5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下のエチレンを含むランダムコポリマープロピレンである。」(4ページ2行?4行) 以上より、引用例3には、プロスタグランジン様化合物を含む眼科用水性製剤をポリプロピレン容器に保存すると安定性が増加することが記載され、そのために好適なポリプロピレンは、約5重量%以下のエチレンを含むランダムコポリマープロピレンであることが記載されている。 第3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「フルプロステノールイソプロピルエステルのようなプロスタグランジンの眼用処方物に好ましい水性組成物」と、本願発明の「16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αもしくはそのアルキルエステルまたはその塩を含有する水性液剤」とを対比すると、引用発明のフルプロステノールイソプロピルエステルは、プロスタグランジンであるフルプロステノールのアルキルエステルであり眼用処方物として用いられるものであり、一方、本願発明の16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αもしくはそのアルキルエステルまたはその塩も、本願の請求項2にあるように点眼液に用いられるものであるので、両者は、「眼用処方物として用いられるプロスタグランジンもしくはそのアルキルエステルまたはその塩を含有する水性液剤」である点で共通する。 次に、引用発明の「ETO滅菌したポリプロピレン容器に詰めた製品」と、本願発明の「滅菌処理した、プロピレン-エチレンコポリマーを材質とする樹脂製容器に保存した製品であって、同容器の滅菌処理をエチレンオキサイドガスで行う」とを対比すると、引用発明の「ETO滅菌」は、エチレンオキサイドガスによる滅菌のことであるので、本願発明の「同容器の滅菌処理をエチレンオキサイドガスで行」った「滅菌処理」に相当する。また、引用発明の「ポリプロピレン容器」と本願発明の「プロピレン-エチレンコポリマーを材質とする樹脂製容器」とは、「主としてプロピレンが結合したポリマーを材質とする樹脂製容器」である点で共通する。 そして、引用発明の「プロスタグランジンの薬剤残存パーセントが減少せず安定したプロスタグランジンを含む製品」と、本願発明の「水性液剤中の該16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αもしくはそのアルキルエステルまたはその塩の含有率の低下を抑制することを特徴とするプロスタグランジン含有製品」とは、「水性液剤中の眼用処方物として用いられるプロスタグランジンもしくはそのアルキルエステルまたはその塩の含有率の低下を抑制したプロスタグランジン含有製品」である点で共通する。 したがって、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 (一致点) 「眼用処方物として用いられるプロスタグランジンもしくはそのアルキルエステルまたはその塩を含有する水性液剤を、滅菌処理した、主としてプロピレンが結合したポリマーを材質とする樹脂製容器に保存した製品であって、同容器の滅菌処理をエチレンオキサイドガスで行い水性液剤中の眼用処方物として用いられるプロスタグランジンもしくはそのアルキルエステルまたはその塩の含有率の低下を抑制したプロスタグランジン含有製品。」 そして、両者は、次の点で相違する。 (相違点a) 眼用処方物として用いられるプロスタグランジンもしくはそのアルキルエステルまたはその塩が、本願発明では「16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αもしくはそのアルキルエステルまたはその塩」であるのに対し、引用発明では「フルプロステノールイソプロピルエステルのようなプロスタグランジン」である点。 (相違点b) 主としてプロピレンが結合したポリマーを材質とする樹脂製容器が、本願発明では「プロピレン-エチレンコポリマーを材質とする樹脂製容器」であるのに対し、引用発明では「ポリプロピレン容器」である点。 第4 判断 上記相違点について検討する。 (相違点aについて) 引用例2には、眼疾患の予防ないし治療のための点眼液として投与可能なプロスタグランジンとして、16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αのアルキルエステルが記載されている。 そこで、眼用処方物として用いられるプロスタグランジンもしくはそのアルキルエステルまたはその塩として、フルプロステノールイソプロピルエステルのようなプロスタグランジンに代え、引用発明に、この16-フェノキシ-15-デオキシ-15,15-ジフルオロ-17,18,19,20-テトラノルプロスタグランジンF2αのアルキルエステルを適用し、相違点aに係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点bについて) 引用例3には、安定性の増した、プロスタグランジン様化合物を含む眼科用水性製剤を保存するポリプロピレン容器が記載され、そのために好適なポリプロピレンとして、約5重量%以下のエチレンを含むランダムコポリマープロピレンが記載されている。 そこで、引用発明において、プロスタグランジンの眼用処方物に好ましい水性組成物を安定して保存するポリプロピレン容器の素材として、引用例3記載の約5重量%以下のエチレンを含むランダムコポリマープロピレンからなるポリプロピレンを適用し、相違点bに係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 なお、引用例1には、上記記載1-イに、引用例1でいう「ポリプロピレン」は、非ポリプロピレンオレフィンの含有量が、例えば約5重量%未満であるようなポリプロピレンを意味する旨記載されているが、このことは言い換えれば、約5重量%未満のエチレンのような非ポリプロピレンオレフィンを分子中に含有するようなプロピレンコポリマーであっても、ポリプロピレンとして許容することを意味するので、この記載が、引用発明のポリプロピレン容器として、引用例3記載の約5重量%以下というような少量のエチレンを分子中に含むランダムコポリマープロピレンからなるポリプロピレン容器を適用することを阻害するものとはいえない。 そして、本願発明による効果も、引用発明ないし引用例3に記載されたものから当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明ないし引用例3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-02-02 |
結審通知日 | 2012-02-07 |
審決日 | 2012-02-20 |
出願番号 | 特願2005-355566(P2005-355566) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 一ノ瀬 薫 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
佐野 遵 青木 良憲 |
発明の名称 | 分子内にフッ素原子を有するプロスタグランジン含有製品 |
代理人 | 日比 紀彦 |
代理人 | 渡邊 彰 |
代理人 | 岸本 瑛之助 |