ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1254919 |
審判番号 | 不服2011-10790 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-05-23 |
確定日 | 2012-04-02 |
事件の表示 | 特願2005-76082「遊技機用基板ケース」拒絶査定不服審判事件〔平成18年9月28日出願公開、特開2006-255119〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は平成17年3月16日の出願であって、拒絶理由に対して平成22年4月5日付けで手続補正がなされ、再度通知された拒絶理由通知に対して同年8月26日に手続補正がなされ、その後、平成23年2月17日付けでなされた拒絶査定に対し、同年5月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 また、当審において、同年9月6日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年11月2日に回答書が提出されている。 第二.平成23年5月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年5月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願発明 本件補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。 「 遊技機の筐体内に設けられ、所要の電子部品を装備した制御回路基板を相対向して収容し前記筐体に取り付けられている前扉を開放すると目視できる正面側のケース蓋、及び該ケース蓋を前記筐体の背板上部に取り付ける背面側のケース基体と、前記ケース蓋及びケース基体とを離脱不能に係合接続する接続部材とを備える遊技機用基板ケースであって、 前記接続部材は、少なくとも一の外周面に係合凸部を有する角筒形状の角筒部を有するとともに、前記ケース基体において前記角筒部が前記ケース蓋側に対向して保持され、 前記ケース蓋には、前記ケース基体と閉塞する際に前記角筒部を挿入可能とすべくその形状に整合して開口し、挿入された前記角筒部の前記係合凸部と係合する係合凹部が内壁に形成される角筒容器状の開口部が設けられ、 該開口部は、前記ケース蓋の厚み方向に平行に立設された複数の桁部と、該各桁部の間に架け渡されて前記ケース蓋の面と平行位置に配設された薄板状の薄膜部とを有する断面がコ字形状の連結部により片持ち支持され、当該ケース蓋の本体に対して連結支持されているとともに、前記コ字形状の連結部の窪みが前記ケース基体側に向けられており、 切断工具により前記薄膜部を突き刺すことで前記桁部が個別に切断可能とされている ことを特徴とする遊技機用基板ケース。」 (下線部は補正によって追加された箇所。) 2.補正要件(目的)の検討 本件補正により、「切断工具により前記薄膜部を突き刺すことで前記桁部が個別に切断可能とされて」いる点が追加された。 しかし、連結部333及び312の切断に関しては、段落【0057】、【0071】及び【0086】に「ニッパー等の工具を用いて」切断する旨記載されているものの、切断工具を薄膜部に突き刺すことで桁部が個別に切断可能とされていることは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていない。 さらに、審判請求人が例示している特開平11-19310号公報の「2本の破断部71」の間には薄膜部が架け渡されていないので、該公報にニッパなどの切断具を薄膜部に突き刺して2本の破断部71を個別に切断することが記載されているとはいえない。 そうしてみると、「切断工具により前記薄膜部を突き刺すことで前記桁部が個別に切断可能とされている」という事項は、当初明細書等に直接的には記載されておらず、また、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるということもできない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 なお、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反しておらず、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしてみても、以下の理由により本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正を却下すべきものであることに変わりはない。 3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討 (1)引用された文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-283445号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 【0020】 パチンコ機PMは外郭方形枠サイズに構成されて縦向きの固定保持枠をなす外枠1の開口前面に、これに合わせた方形枠サイズに構成される開閉搭載用の前枠2が互いの正面左側上下に配設されたヒンジ部材3a,3bで横開き開閉および着脱が可能に取り付けられ、正面右側に設けられた施錠装置4を利用して常には外枠1と係合された閉鎖状態に保持される。 【0022】 前枠2の裏面側には、中央に前後連通する窓口を有して前枠2よりもやや小型の方形枠状に形成された裏セット盤30が、前枠2の裏面に設けられた複数のレバーL,L…を利用して着脱可能にセット保持される。裏セット盤30の各部には遊技球を貯留する球貯留タンク31、タンクレール32、整列待機通路33、賞球カセット34、賞球排出通路35などの賞球装置が装備されるとともに、裏面各部に電源基板アッセンブリ40や主基板アッセンブリ50等の各種制御基板アッセンブリが取り付けられている。 【0025】 以上のように概要構成されるパチンコ機PMにあって、主基板アッセンブリ50に不正開放防止機構が設けられている。以下、主基板アッセンブリ50について図3?図8を参照しながら説明する。ここで、図3は主基板アッセンブリ50の斜視図、図4は主基板アッセンブリ50の側断面図、図5は主基板アッセンブリ50の分解斜視図、図6は主基板アッセンブリ50に構成されるケース蓋部材70の背面図、図7(a)は係止アーム63が係止突起75に係止した状態を示す拡大図、図7(b)は係止アーム63が係止突起75に係止した状態を示す拡大側断面図、図8(a)は係止アーム63が係止突起75に係止する前の状態を示す拡大図、そして図8(b)は係止アーム63が係止突起75に係止する前の状態を示す拡大側断面図である。 【0026】 主基板アッセンブリ50は、図3?図5に示すように、パチンコ機PMの作動を統括的に制御する主制御基板51と、主制御基板51を内部に収容する主基板ケース55とを主体に構成される。さらに、主基板ケース55は、パチンコ機PMの裏セット盤30に固定されるケース本体部材60と、ケース本体部材60に開閉自在に取り付けられるケース蓋部材70と、主制御基板51の裏面側を覆う内部カバー80とを備え、主制御基板51および内部カバー80がケース蓋部材70の内面側に取り付けられた状態で、ケース蓋部材70をケース本体部材60へ装着可能に構成される。 【0050】 不正開放防止機構100は、ケース本体部材60に連結して設けられた4つの本体側係合部110,110,…と、ケース蓋部材70に連結して設けられた4つの蓋側係合部120,120,…と、本体側係合部110と蓋側係合部120とをそれぞれ連結させる4つ接続部材150,150,…とを備え、ケース蓋部材70をケース本体部材60へ装着したときに本体側係合部110と蓋側係合部120とを連結可能に構成される。 【0056】 蓋側係合部120(蓋側収容部121)とケース蓋部材70との連結部125(図6および図12を参照)は切断可能に構成されており、この連結部125を切断して蓋側係合部120(蓋側収容部121)とケース蓋部材70とを分離することができるようになっている。なお、前述したように、主基板ケース55(ケース本体部材60およびケース蓋部材70)の材料として透明な樹脂材料を使用しているが、その中でもABS樹脂を使用することが好ましい。これにより、上記のような部材に対する切断操作を行うと、ABS樹脂の成分であるブタジエンがゴム性を有して伸び、部材が割れずに白化しやすいため、その切断痕跡が明確に残りやすいという効果が得られる。また、主基板ケース55を無理にこじ開けようとしても、同様に部材が白化して(こじ開けた)痕跡が明確に残りやすいという効果が得られる。 【0068】 接続部材150は、図13?図16に示すように、一端に開口を有する中空直方体状の形態をなし、ABS樹脂やポリカーボネート(PC)等の樹脂材料を用いて射出成形等の成形手段により一体的に成形される。また、接続部材150は、係合空間CS内に、接続部材150の一端側が本体側係合部110を向くロック方向およびロック方向とは逆のアンロック方向を向いて配設可能に構成される。 【0069】 接続部材150の一端側における長方形断面の短辺を形成して対向する2面には、本体側係合突起151,151が内外へ揺動可能に形成されており、接続部材150の一端側が本体側係合空間CS1内に位置すると本体側凹部132a,132aと係合し、接続部材150の一端側が蓋側係合空間CS2内に位置すると蓋側突起ガイド部143,143に非係合状態で収容されるようになっている。 【0070】 接続部材150の他端側における長方形断面の長辺を形成して対向する2面には、蓋側係合突起152,152が内外へ揺動可能に形成されており、図17に示すように、接続部材150の他端側が蓋側係合空間CS2内に位置すると蓋側凹部142a,142aと係合し、図18に示すように、接続部材150の他端側が本体側係合空間CS1内に位置すると本体側係合補助部材130の内側面に当接し非係合状態で本体側突起ガイド部133,133に収容されるようになっている。 【0081】 また、接続部材150の一端側が本体側係合空間CS1内に位置して本体側係合突起151,151が本体側凹部132a,132aと係合するとともに、接続部材150の他端側が蓋側係合空間CS2内に位置して蓋側係合突起152,152が蓋側凹部142a,142aと係合するため、本体側係合部110と蓋側係合部120とをより容易に連結させることができ、ケース本体部材60とケース蓋部材70とを閉止状態で容易に結合保持することができる。 【0085】 保守点検作業を行うときには、例えば、ニッパ等の工具を用いて蓋側係合部120とケース蓋部材70との連結部125(例えば、図3に示すように、ケース蓋部材70の右端下方に位置する連結部125)を切断する。これにより、蓋側係合部120とケース蓋部材70とが切り離されるので、図19に示すように、主基板ケース55(主基板アッセンブリ50)を開放することができ、ケース蓋部材70の内面側に取り付けられた主制御基板51の保守点検等を行うことができる。他の三つの接続部材150,150,150は係合空間CS内にアンロック方向を向いて配設され、本体側係合部110および蓋側係合部120に挿抜可能に収容されているからである。 摘記した上記の記載等から、引用文献1には、 「 パチンコ機PMの外枠1の開口前面に前枠2が横開き開閉可能に取り付けられ、該前枠2の裏面側にセット保持された裏セット盤30の裏面に取り付けられている主基板アッセンブリ50であって、 該主基板アッセンブリ50は、主制御基板51と、該主制御基板51を内部に収容する主基板ケース55とを主体に構成されるとともに、不正開放防止機構100が設けられており、前記主基板ケース55は、前記裏セット盤30に固定されるケース本体部材60と、該ケース本体部材60に開閉自在に取り付けられるケース蓋部材70を備え、 前記不正開放防止機構100は、前記ケース本体部材60に連結して設けられた4つの本体側係合部110と、前記ケース蓋部材70に連結して設けられた4つの蓋側係合部120と、前記本体側係合部110と前記蓋側係合部120とをそれぞれ連結させる4つの中空直方体状の接続部材150とを備え、 該接続部材150は、その一端側における長方形断面の短辺を形成して対向する2面に、本体側係合突起151が内外へ揺動可能に形成され、その他端側における長方形断面の長辺を形成して対向する2面に、蓋側係合突起152が内外へ揺動可能に形成されており、 前記接続部材150の前記本体側係合突起151が本体側凹部132aと係合するとともに、前記蓋側係合突起152が蓋側凹部142aと係合するため、前記本体側係合部110と前記蓋側係合部120とを容易に連結させ、前記ケース本体部材60と前記ケース蓋部材70とを閉止状態で結合保持することができ、 前記蓋側係合部120と前記ケース蓋部材70との連結部125が2つ設けられ、ニッパ等の工具を用いて前記連結部125が切断可能に構成されている主基板アッセンブリ50。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 本願補正発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「パチンコ機PM」は、本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、 「外枠1」は「筐体」に、 「前枠2」は「前扉」に、 「主基板アッセンブリ50」は「遊技機用基板ケース」に、 「主制御基板51」は「所要の電子部品を装備した制御回路基板」に、 「ケース本体部材60」は「ケース基体」に、 「ケース蓋部材70」は「ケース蓋」に、 「接続部材150」は「接続部材」に、 「他端側における長方形断面の長辺を形成して対向する2面」は「少なくとも一の外周面」に、 「蓋側係合突起152」は「係合凸部」に、 「蓋側凹部142a」は「係合凹部」に、 「蓋側係合部120」は「開口部」に、 「連結部125」は「桁部」に、 「ニッパ等の工具を用いて」は「切断工具により」に、 「切断可能に構成されている」は「切断可能とされている」に、それぞれ相当する。 さらに、引用文献1の記載や図面等からみて、以下のことがいえる。 a.引用発明の「主基板アッセンブリ50」は、パチンコ機PMの外枠1の開口前面に取り付けられた前枠2の裏面側にセット保持された裏セット盤30の裏面に取り付けられているから、本願補正発明の「遊技機の筐体内」に相当する位置に設けられているといえる。 また、引用文献1の図2及び図5を参酌すると、引用発明の「ケース蓋部材70」は「ケース本体部材60」と相対向して「主制御基板51」を収容しているとともに、前扉を開放すると目視できるものであることが分かる。 さらに、引用発明の「主基板アッセンブリ50」は「ケース蓋部材70」と「ケース本体部材60」とを開閉自在に取り付けてなるものであるが、「接続部材150」を備えた「不正開放防止機構100」が設けられているから、通常は「接続部材150」によって「ケース蓋部材70」と「ケース本体部材60」とを離脱不能に係合接続しているものといえる。 そうすると、引用発明の「主基板アッセンブリ50」と本願補正発明の「遊技機用基板ケース」は、“遊技機の筐体内に設けられ、所要の電子部品を装備した制御回路基板を相対向して収容し前記筐体に取り付けられている前扉を開放すると目視できるケース蓋、及び該ケース蓋を取り付けるケース基体と、前記ケース蓋及びケース基体とを離脱不能に係合接続する接続部材とを備える”点で共通している。 b.引用発明の「接続部材150」は中空直方体状であるから、本願補正発明の「角筒形状の角筒部」に相当する構成を有するものといえる。 また、引用文献1の図17?19等からみて、接続部材150の本体側係合突起151は本体側凹部132aと係合するものであるとともに、その本体側凹部132aはケース本体部材60側にあるということができ、さらに、本体側係合突起151が本体側凹部132aと係合した状態においては、接続部材150の他端側がケース蓋部材70側に対向して保持されることも明らかである。 そうすると、引用発明の「接続部材150」は、本願補正発明の「前記ケース基体において前記角筒部が前記ケース蓋側に対向して保持され」に相当する構成を有するものといえる。 c.引用文献1の図10及び12を参酌すると、引用発明の「蓋側係合部120」は角筒容器状の開口部となっていること、及びその内壁に「蓋側凹部142a」が形成されていることが分かる。 そして、引用発明において、ケース本体部材60とケース蓋部材70とを閉止状態で結合保持する際に、断面長方形の接続部材150が蓋側係合部120に挿入されて蓋側係合突起152が蓋側凹部142aと係合するのであるから、引用発明の「蓋側係合部120」は、本願補正発明の「前記ケース蓋には、前記ケース基体と閉塞する際に前記角筒部を挿入可能とすべくその形状に整合して開口し、挿入された前記角筒部の前記係合凸部と係合する係合凹部が内壁に形成される角筒容器状の開口部」に相当するものといえる。 d.引用文献1の図6、12、17及び18を参酌すると、引用発明の2つの連結部125はケース蓋部材70の厚み方向に平行に立設され、蓋側係合部120は該2つの連結部125により片持ち支持され、ケース蓋部材70の本体に対して連結支持されるものであることが分かる。 そうすると、引用発明の「蓋側係合部120」と本願補正発明の「開口部」は、“前記ケース蓋の厚み方向に平行に立設された複数の桁部を有する連結部により片持ち支持され、当該ケース蓋の本体に対して連結支持されている”点で共通するものといえる。 e.引用発明の「連結部125」は、その構造からみてニッパ等の工具により個別に切断可能なものといえる。 以上を総合すると、両者は、 「 遊技機の筐体内に設けられ、所要の電子部品を装備した制御回路基板を相対向して収容し前記筐体に取り付けられている前扉を開放すると目視できるケース蓋、及び該ケース蓋を取り付けるケース基体と、前記ケース蓋及びケース基体とを離脱不能に係合接続する接続部材とを備える遊技機用基板ケースであって、 前記接続部材は、少なくとも一の外周面に係合凸部を有する角筒形状の角筒部を有するとともに、前記ケース基体において前記角筒部が前記ケース蓋側に対向して保持され、 前記ケース蓋には、前記ケース基体と閉塞する際に前記角筒部を挿入可能とすべくその形状に整合して開口し、挿入された前記角筒部の前記係合凸部と係合する係合凹部が内壁に形成される角筒容器状の開口部が設けられ、 該開口部は、前記ケース蓋の厚み方向に平行に立設された複数の桁部を有する連結部により片持ち支持され、当該ケース蓋の本体に対して連結支持されているとともに、 切断工具により前記桁部が個別に切断可能とされている ことを特徴とする遊技機用基板ケース。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明はケース蓋が正面側、ケース基体が背面側となっているのに対し、引用発明のケース蓋部材70とケース本体部材60は、裏セット盤30の裏面に取り付けられているため、ケース蓋部材70が背面側、ケース本体部材60が正面側となっている点。 [相違点2]本願補正発明はケース蓋を筐体の背板上部に取り付けているのに対し、引用発明はケース蓋部材70を取り付けている位置が筐体の背板上部ではない点。 [相違点3]本願補正発明の「連結部」は、「各桁部の間に架け渡されて前記ケース蓋の面と平行位置に配設された薄板状の薄膜部とを有する断面がコ字形状」であるとともに、「前記コ字形状の連結部の窪みが前記ケース基体側に向けられて」いるのに対し、引用発明の「連結部125」は、それらの間に架け渡される薄膜部を有しておらず、断面がコ字形状ではない点。 [相違点4]本願補正発明は「薄膜部を突き刺すことで前記桁部が個別に切断可能とされている」のに対し、引用発明は、薄膜部がないため、薄膜部を突き刺すことで2つの連結部125が個別に切断可能とされるものではない点。 (3)相違点の判断 [相違点1及び2について] 相違点1及び2は密接に関連しているので、合わせて検討する。 遊技機用基板ケースの配設箇所を、筐体に取り付けられている前扉を開放すると目視できる箇所で、且つ筐体の背板上部とすることは、例えば、特開2004-209238号公報(原査定の引用文献3、特に段落【0031】及び図1)に記載されるように、スロットマシンにおいて従来周知の技術(以下「周知技術」という。)である。 そして、引用文献1の段落【0103】には、「上述の実施形態において、主基板ケース55および不正開放防止機構100を備えた主基板アッセンブリ50がパチンコ機PMに設けられているが、これに限られるものではなく、例えば、スロットマシンや雀球遊技機等の遊技機に設けられてもよい。」と記載されているから、引用発明をスロットマシンに設けるものとし、主基板アッセンブリ50を、前扉を開放すると目視できる箇所で、且つ筐体の背板上部に取り付けるようにすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る。 また、そのようにすれば、引用発明のケース蓋部材70が正面側、ケース本体部材60が背面側を向くことになる。 よって、引用発明に周知技術を適用して、上記相違点1及び2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 [相違点3及び4について] 相違点3及び4は密接に関連しているので、合わせて検討する。 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-265812号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 【0029】しかして、前記封印手段40における開封部は、次のように構成されている。図6は封印手段の封印状態での開封部を示す正面図、図7は図6のVII-VII線断面図である。図7に示すように、前記遊技機の基板ボックス18では、封印手段40のセット側の開封部22とカバー側の開封部32とは、それぞれほぼ平板状に形成されている。各開封部22,32の断面における長手方向は、前後方向(図7において左右方向)に延びている。 【0030】しかして、図7に示すように、セット側の開封部22とカバー側の開封部32とは、それぞれ断面ほぼコの字状に形成されている。・・・ 【0032】前記カバー側の開封部32は、所定間隔を隔てて形成された上下2枚の板状のアーム部32a,32bと、その両アーム部32a,32bをその後端部において接続する接続部32cとを有している。上側のアーム部32aと下側のアーム部32bとは、前記セット側のアーム部22a,22bと同様に、異なる板厚t1,t2で形成されている。・・・ 【0034】上記した遊技機の基板ボックス18によると、セット部材20にカバー部材30が閉じられ、遊技機における制御基板が収容される(図1参照)。そして、セット部材20とカバー部材30にそれぞれ各開封部22,32を介して設けられた各連結部24,34は、かしめ部材42に対する封印ねじ43のねじ込みによって、所定の結合方向すなわち前後方向に関し封印状態に結合される(図4参照)。 【0035】また、基板ボックス18内の検査等に際し封印を解くすなわち開封する場合には、セット側の開封部22およびカバー側の開封部32を、ニッパーやカッター等の切断工具46(図7中、二点鎖線46参照)で切断する。これによって、封印手段40の封印を開封することができ、カバー部材30を開閉することができる。このときの開封状態は、各連結部24,34が基板ボックス18から切り離されるため、目視によって容易に発見することができる。 【0042】また、カバー側の開封部32の2つのアーム部32a,32bのうち少なくとも1つのアーム部32aによって弱体部を形成しながらも、それらのアーム部32b,32cによって開封部32の強度を確保することができる(図7参照)。 摘記した上記の記載等から、引用文献2には、以下の技術(以下「引用文献2記載の技術」という。)が開示されている。 「 セット部材20にカバー部材30が閉じられ、遊技機における制御基板が収容される基板ボックス18において、 前記セット部材20と前記カバー部材30に、それぞれ各開封部22,32を介して設けられた各連結部24,34が、封印ねじ43のねじ込みによって封印状態に結合され、 前記開封部32は、所定間隔を隔てて形成された異なる板厚の上下2枚の板状のアーム部32a,32bと接続部32cとを有し、断面ほぼコの字状に形成されており、 前記開封部22,32をニッパーやカッター等の切断工具46で切断することによって、封印手段40の封印を開封することができる基板ボックス18。」 そして、引用発明と引用文献2記載の技術は、遊技機の制御基板を収容するケースであって、開封した際の切断痕跡を明確に残す目的を有する点で共通しており(特に、引用文献1の段落【0056】及び引用文献2の段落【0035】を参照)、引用文献2記載の技術における「カバー部材30」、「開封部32」及び「連結部34」は、それぞれ引用発明における「ケース蓋部材70」、「連結部125」及び「蓋側係合部120」に相当しているから、引用発明における「連結部125」に代えて引用文献2記載の技術における「開封部32」の構成を採用することは当業者にとって困難なことではない。 さらに、引用文献2記載の技術における「開封部32」は、断面ほぼコの字状に形成され「アーム部32a,32b」は異なる板厚(実施例では上側のアーム部32aの板厚が下側のアーム部32bや接続部32cの板厚より小さい)であるところ、引用文献2の段落【0042】に「カバー側の開封部32の2つのアーム部32a,32bのうち少なくとも1つのアーム部32aによって弱体部を形成しながらも、それらのアーム部32b,32cによって開封部32の強度を確保することができる」と記載されていることからみて、コの字状構造における弱体部の形成箇所は、コの字状構造の強度を如何に確保するかに基づくものであって、上側のアーム部32aに限られるものではないから、「開封部32」の構成を採用するに際して、ケース蓋の面と平行位置に配設された接続部32cを弱体部として、上記相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。 また、そのような構成とすることにより、弱体部である接続部32cを先に破壊し、その後2つのアーム部32a,32bを個別に切断することも当業者であれば普通に思いつく事項である。 よって、引用発明に引用文献2記載の技術を適用して、上記相違点3及び4に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 [相違点の判断のまとめ] 本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 第三.本願発明について 1.本願発明 平成23年5月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年8月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 遊技機の筐体内に設けられ、所要の電子部品を装備した制御回路基板を相対向して収容し前記筐体に取り付けられている前扉を開放すると目視できる正面側のケース蓋、及び該ケース蓋を前記筐体の背板上部に取り付ける背面側のケース基体と、前記ケース蓋及びケース基体とを離脱不能に係合接続する接続部材とを備える遊技機用基板ケースであって、 前記接続部材は、少なくとも一の外周面に係合凸部を有する角筒形状の角筒部を有するとともに、前記ケース基体において前記角筒部が前記ケース蓋側に対向して保持され、 前記ケース蓋には、前記ケース基体と閉塞する際に前記角筒部を挿入可能とすべくその形状に整合して開口し、挿入された前記角筒部の前記係合凸部と係合する係合凹部が内壁に形成される角筒容器状の開口部が設けられ、 該開口部は、前記ケース蓋の厚み方向に平行に立設された複数の桁部と、該各桁部の間に架け渡されて前記ケース蓋の面と平行位置に配設された薄板状の薄膜部とを有する断面がコ字形状の連結部により片持ち支持され、当該ケース蓋の本体に対して連結支持されているとともに、前記コ字形状の連結部の窪みが前記ケース基体側に向けられている ことを特徴とする遊技機用基板ケース。」 2.特許法第29条第2項の検討 (1)引用文献記載事項 審判合議体が通知した拒絶理由における引用文献1及びその記載事項は、上記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。 (2)引用発明と本願発明との対比及び判断 本願発明は、上記「第二.」で検討した本願補正発明から、「切断工具により前記薄膜部を突き刺すことで前記桁部が個別に切断可能とされて」いる点の構成を省いたものといえる。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を追加したものに相当する本願補正発明が、上記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第四.むすび 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-02-09 |
結審通知日 | 2012-02-10 |
審決日 | 2012-02-21 |
出願番号 | 特願2005-76082(P2005-76082) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 561- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 酒井 保 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 秋山 斉昭 |
発明の名称 | 遊技機用基板ケース |
代理人 | 松嶋 芳弘 |