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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1255424
審判番号 不服2010-23156  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-13 
確定日 2012-04-12 
事件の表示 特願2005- 3755「遊技機及び遊技者監視・認識システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月17日出願公開、特開2006-212043〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年1月11日(国内優先権主張、平成17年1月5日)に特許出願されたものであって、
平成20年10月20日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して同年12月26日付けで手続補正書が提出され、
平成21年10月21日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して同年12月25日付けで手続補正書が提出されたが、
平成22年7月7日付けで拒絶査定がされたため、
これを不服として平成22年10月13日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、
当審において、平成23年7月27日付けで、上記平成22年10月13日付け手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶理由通知が通知され、これに応答して同年10月3日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本出願に係る発明は、平成23年10月3日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 【請求項1】
複数の遊技ホールに設置された遊技機及び遊技機セル(管理者用端末、景品管理機、遊技玉又はメダル計数機、同貸出機又はプリペイドカード管理機のいずれかを含む周辺機器群を称する)の状態と遊技者の操作とを、ネットワークを介して監視する遊技機及び遊技者の監視・認識システムであって、
前記遊技機及び遊技機セルと遊技ホール内の天井及び遊技機毎に設置され遊技者の顔の表情、手の動作とを含む撮像動画像データをネットワークで伝送する複数の監視カメラと、
前記複数の監視カメラを島ネットワーク経由で接続して制御すると共に、撮像動画像データの画像処理及び暗号化処理を行う複数の島BOXコンピュータと、
前記遊技ホール内の複数の島BOXコンピュータをホール内ネットワーク経由で接続して制御すると共に、広域ネットワーク接続用の前記撮像動画像データの処理、IPアドレス変換、VPN接続機能を有し、ホール外の各種関連施設又は機関と連携して前記複数の島BOXコンピュータが収集したホール内の全ての撮像動画像データを受信して管理し、遊技ホール内の全遊技機及び遊技者の監視を行うためのホールアプリケーションサーバ(以下、HASと称する)と、
前記広域ネットワークを介して接続された系列ホール毎のHASの群管理のマスタHASと、
前記暗号化処理の公開鍵を受信し、該公開鍵及びその所有者を保証する証明書として認証局の署名付きの公開鍵を返送する認証局としての第三者管理センターと、を備え、
前記監視カメラと前記マスタHASとの間で処理される前記暗号化処理の方法は、前記撮像動画像データを受信する受信側が該受信側で生成した公開鍵を、前記撮像動画像データを送信する送信側へ送信する公開鍵伝送手順と、該公開鍵を受信した該撮像動画像データの送信側で共通鍵を生成する共通鍵生成手順と、該共通鍵を用いて平文撮像動画像データを該共通鍵で暗号化すると共に該共通鍵を前記公開鍵で暗号化した暗号化共通鍵と暗号文撮像動画像データとを前記受信側へ送信する暗号化手順と、該受信側で自己の秘密鍵により前記暗号化共通鍵を復号して前記暗号文撮像動画像データを平文撮像動画像データに戻す復号化手順と、を有する共通鍵、公開鍵及び秘密鍵を用いたハイブリッド暗号方式により機密性及び安全性保護を行う方法であって、
前記HASは、前記暗号化処理により暗号化データを処理し、公開鍵による該暗号化データの認証機能と前記証明書による否認防止機能とにより該暗号化データのアクセス権者を特定して記録すると共に、前記暗号化処理を用い、前記撮像動画像データを特定する暗号フアイルの公開鍵を与えることで前記暗号文撮像動画像データへのアクセス権者を設定し、該公開鍵の所有者であるアクセス権者に当該暗号文撮像動画像データのファイル単位のアクセス権を設定し、前記共通鍵を1000回/秒以上でリアルタイムに変更することを特徴とする遊技機及び遊技者監視・認識システム。」


3.特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載について
この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

(1) 請求項1に記載された「前記監視カメラと前記マスタHASとの間で処理される前記暗号化処理の方法」における「受信側」及び「送信側」が、「マスタHAS」及び「監視カメラ」であるのか、他のものであるのか、明確でない。
また、他のものである場合、具体的に何か明確でない。

(2)請求項1には、
「島BOXコンピュータ」が「前記複数の監視カメラを島ネットワーク経由で接続して制御すると共に、撮像動画像データの画像処理及び暗号化処理を行う」点、
「HAS」が「前記遊技ホール内の複数の島BOXコンピュータをホール内ネットワーク経由で接続して制御すると共に、広域ネットワーク接続用の前記撮像動画像データの処理、?前記複数の島BOXコンピュータが収集したホール内の全ての撮像動画像データを受信して管理し、?監視を行う」点、
「前記監視カメラと前記マスタHASとの間で処理される前記暗号化処理の方法」、
及び「前記HASは、?前記暗号化処理を用い、?アクセス権者を設定し、?アクセス権を設定」する点が記載されているが、
前記「島BOXコンピュータ」、「監視カメラ」、「マスタHAS」、「HAS」及び「アクセス権者」が、前記「撮像動画像データ」及び「暗号化処理」に関して、具体的に如何なる技術範囲の処理を実行しているのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても明確でない。
すなわち下記の点。
・各「暗号化処理」が、同一の処理であるのか、異なる処理であるのか、明確でない。
・撮像動画像データの暗号化、暗号化撮像動画像データの復号化、暗号化撮像動画像データの送受信の仲介、撮像動画像データに対する処理を、何がどのように実行しているのか、明確でない。
・前記「前記監視カメラと前記マスタHASとの間で処理される前記暗号化処理の方法」という記載を参酌した上で、「島BOXコンピュータ」及び「HAS」が暗号化されたデータの送受信を仲介していると解する場合、
公開鍵を用いた情報処理の技術常識を考慮すれば、「受信側」ではない「島BOXコンピュータ」及び「HAS」は、「暗号文撮像動画像データ」から元の「撮像動画像データ」を復号できないと解されるので、
前記「撮像動画像データの画像処理」等の、「撮像動画像データ」自体に対する処理を、具体的にどのようにして実現するのか明確でない。
・前記「島BOXコンピュータ」が「撮像動画像データの画像処理及び暗号化処理を行う」点に関して、
発明の詳細な説明には、「島BOXコンピュータ4は、監視用動画像の収集を行い、画像処理機能により各カメラからの動画像データの伝送データ量の削減を、動体認識/消去機能などを利用した画像データの抽出処理、JPEG、MPEG等の圧縮処理やサイクリック伝送処理等を考慮して、各カメラ1よりセキュリティのためにリアルタイム暗号化(?)により暗号化されて伝送されてきた動画像データを、ホールアプリケーションサーバ(?)7からの要求に応じて転送する。」(【0014】)と記載されているが、
前記「島BOXコンピュータ」が、既に「暗号化されて」いる動画像データを転送するにあたって何をどのように「考慮して」いるのか、そのために具体的にどのような処理を実行しているのか、明確でない。
よって、請求項1に記載された「島BOXコンピュータ」が「撮像動画像データの画像処理及び暗号化処理を行う」点が、具体的にどのようにして実現されているのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても明確でない。
また、このため、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において説明されたものとはいえず、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

(3) 請求項1には、「HAS」が、
「前記暗号化処理により暗号化データを処理」し、
「公開鍵による該暗号化データの認証機能と前記証明書による否認防止機能とにより該暗号化データのアクセス権者を特定して記録する」と共に、
「前記暗号化処理を用い、前記撮像動画像データを特定する暗号フアイルの公開鍵を与えることで前記暗号文撮像動画像データへのアクセス権者を設定」し、
「該公開鍵の所有者であるアクセス権者に当該暗号文撮像動画像データのファイル単位のアクセス権を設定」することが記載されているが、
如何なる技術事項を特定する記載か、発明の詳細な説明の記載を参酌しても明確でない。
すなわち下記の点。
・各機能の技術範囲が明確でなく、各機能を具体的にどのように用いて如何なる処理を行っているのか明確でない。
・「撮像動画像データ」の送信側である「HAS」が「前記暗号化処理を用い」て「与える」、前記「前記撮像動画像データを特定する暗号フアイルの公開鍵」とは、どのようなものか明確でない。特に、本願発明における「前記撮像動画像データを受信する受信側が該受信側で生成した公開鍵」と、同一のものか否か明確でない。
・前記「前記撮像動画像データを特定する暗号フアイルの公開鍵」と対になる「秘密鍵」がどのように与えられるのか等、「秘密鍵」についての処理が不明である。
・前記「前記撮像動画像データを特定する暗号フアイルの公開鍵を与える」ことと、前記「前記暗号文撮像動画像データへのアクセス権者を設定」することについて、どのような因果関係があるのか明確でない。
・請求項1に記載された前記「HAS」が実行する各処理と、発明の詳細な説明において説明されている事項との、対応関係が明確でない。
このため、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において説明されたものとはいえず、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

(4) 現在の請求項1は、平成23年10月3日付け手続補正書で補正されたものであって、「前記監視カメラと前記マスタHASとの間で処理される前記暗号化処理の方法は?」と記載されている。(下線は当審で付加。以下同じ。)
一方、補正前の請求項1には「前記HASは、前記暗号化処理の方式及び?」と、前記手続補正書と同日付けで提出された意見書には「前記監視カメラと前記HASとの間で処理される前記暗号化処理の方法は?」と、「マスタHAS」ではなく「HAS」である旨記載されている。
よって、請求項1に記載された前記「前記暗号化処理」の対象となるのが、「マスタHAS」又は「HAS」のどちらか明確でない。


4.むすび
以上のとおり、この出願は、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-10 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-27 
出願番号 特願2005-3755(P2005-3755)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A63F)
P 1 8・ 536- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗郡山 順安久 司郎  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 吉村 尚
秋山 斉昭
発明の名称 遊技機及び遊技者監視・認識システム  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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