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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1255453
審判番号 不服2011-21415  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-04 
確定日 2012-04-12 
事件の表示 特願2008-321444「接着フィルムおよびその用途ならびに半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月18日出願公開、特開2009-135506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成13年3月15日に特許出願した特願2001-74268号の一部を平成20年12月17日に新たな特許出願としたものであって,平成23年6月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2000-154356号公報
2.特開2000-256628号公報」

第3.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年6月17日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下,「本願発明」という)。
「半導体チップと,これを搭載する配線付き外部接続用部材または別の半導体チップとを接続する接着フィルムであって,圧着温度での溶融粘度が5×10?1×10^(5)Pa・s(但し,1×10^(5)Pa・sは除く)の範囲にあることを特徴とする接着フィルム。」

2.刊行物記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-256628号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
1a)「【請求項1】半導体チップとこれを搭載する配線付外部接続用部材を接続する接着材フィルムであって,圧着温度での粘度が1×10^(5)?1×10^(7)Pa・sの範囲である接着剤層aを備えることを特徴とする接着材フィルム。」
1b)「【請求項13】配線付外部接続用部材の半導体チップ搭載面に請求項1?11各項記載の接着材フィルムを圧着する際,圧着圧力が0.5?3.0MPaで5秒以下で熱圧着することを特徴とする半導体搭載用外部接続用部材の製造法。」
1c)「【0004】上記ボイドや接着材フィルムの切断周辺部での過剰なはみ出しがあると,この部分が起点となりパッケージの実装過程や温度サイクルにおいて,外部接続用部材や半導体チップと接着材フィルム界面で大きなはく離が発生しパッケージの信頼性が劣る問題がある。したがって接着材フィルムを配線層へ接着する際に,上記ボイドや接着材の過剰なはみ出しを起こさない接着材フィルムが必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,配線付外部接用続部材と半導体チップを接着材フィルムで熱圧着する際に,接着界面のボイドがなくかつ過剰な接着材のはみ出しが発生しにくい接着材フィルムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】外部接続用部材側に発生するボイド,すなわち接着材フィルムの配線間への埋め込み性不足は,熱圧着温度での接着材フィルムの粘度や,圧着圧力および圧着時間等の圧着条件に大きく依存する。埋込性は,接着材フィルムの粘度を小さくしたり,圧着条件の圧力を大きく,時間を長くすること向上できる。しかし粘度を小さくし過ぎたり,圧着圧力大きくし過ぎたり,圧着時間を長くし過ぎると接着材フィルムが過剰に溶融するため,圧着前のフィルム形状より接着材がはみ出し,接着材フィルムの寸法精度が劣化する。このはみ出しが半導体チップパッド部や外部接続用部材のワイヤーボンディングパッド部やTABのインナーリードボンディング部まで達すると,ボンディングが不可能となる場合がある。
【0007】本発明者らは,半導体チップとこれを支持する配線付外部接続部材を接着材フィルムで接着する際に生ずる,ボイドとはみ出しの支配因子を調べた。接着材フィルムの圧着におけるパラメータは,圧着温度,圧着温度での接着材フィルムの粘度,圧着圧力,圧着の剪断速度,圧着時間,接着材フィルムの厚み等が考えられるが,実際には圧着剪断速度,圧着時間,接着材フィルムの厚み等は作業性やパッケージ仕様により限られた設定範囲,運用されている。したがって,圧着における主なパラメータは圧着温度,圧着温度での接着材フィルムの粘度および圧着圧力である。しかし粘度は圧着温度の関数で表されるので,独立なパラメータは接着材の粘度と圧着圧力の二つである。そこで本発明者らは粘度の異なる接着材フィルムを用い,接着材の粘度と圧着圧力がボイドとはみ出し量にあたえる影響を定量的に調べた。」
1d)「【0009】
【発明の実施の形態】ここでの接着材フィルムの接着剤層の粘度は1946年度のJournalof Applied Physics 第17巻,458?471ページに記載されたような平行平板プラストメータ法による測定,算出値で定義した。すなわち接着材フィルム接着剤層の粘度ηは,半径rの円柱状の接着材フィルムに荷重を加えていき,その高さ変位を測定することにより次式から算出される。
η=t/(3V^(2)(1/Z^(4)-Z0^(4))/8πF))・・(1)
ここで,Z0は荷重を加える前の接着材フィルムの厚さ,Zは荷重を加えた後の接着材フィルムの厚さ,Vは接着材フィルムの体積,F加えた荷重,tは荷重を加えた時間である。」
1e)「【0011】粘度の異なる接着剤層を備えた接着材フィルムを用い,さらに圧着温度を変えて異なる粘度の状態で凹凸部のある外部接続用部材へ圧着し,接着材接着剤層の粘度と圧着圧力が圧着により生ずるボイドに与える影響を調べた。詳しい評価条件および結果は実施例2?比較例2に示すが,圧着圧力範囲が0.5?2.1MPaでボイドなく圧着するには,接着材フィルム接着剤層の粘度が1×10^(7)Pa・s以下の必要があった。ここで圧力範囲を0.5?2.1MPaとしたのは,圧力が0.5MPa未満であると設定圧力に対し実効圧力のばらつきが大きく実用上好ましくなく,また圧着圧力が大きすぎ2.1MPaを超えるとはんだボール搭載用のランド部が変形する場合があるためである。
【0012】同様に圧着による接着材フィルムのはみ出し量に関しても,接着材接着剤層の粘度と圧着圧力が与える影響を調べた。詳しい評価条件および結果は実施例2?比較例2に示すが,圧着圧力範囲が1?2.1MPaで接着材フィルムのはみ出し量を50μm以下にするためには,接着材フィルムの粘度が1×10^(5)Pa・s以上の必要があった。ここではみ出し量を50μm以下としたのは,通常接着材フィルム端はアウターリードのボンディング用開口部から50?100μm離れた位置に圧着されているので100μm以上接着材フィルムがはみ出しボンディング用開口部に達すると,リードボンディングができなくなる場合がある。はみ出しは接着材フィルムを外部接続部材に接着する際と,さらに半導体チップを接着材フィルムに接着する際で生じる。したがって,接着材フィルムを外部接続部材に圧着した時点でのはみ出しは50μm以下とするのが望ましい。
【0013】上記より接着界面のボイドがなくかつ過剰な接着材のはみ出しを防ぐためには,接着材フィルム接着剤層の圧着温度での粘度を1×10^(5)?1×10^(7)Pa・s,好ましくは1×10^(5)?1×10^(6)Pa・sの範の範囲に設定することにより両立できることを見いだした。」

上記記載事項1a?1eによれば,引用例1には,次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。
「半導体チップとこれを搭載する配線付外部接続用部材を接続する接着材フィルムであって,圧着温度での粘度が1×10^(5)?1×10^(7)Pa・sの範囲にある接着剤層を備え,配線付外部接続用部材の半導体チップ搭載面に0.5?2.1MPaの圧力で熱圧着する際,接着界面のボイドがなくかつ過剰な接着材のはみ出しが発生しないようにした接着材フィルム。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-154356号公報(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,接着部材,接着部材を設けた半導体搭載用配線基板及び接着部材を用いて半導体チップとインターポーザと呼ばれる配線基板とを接着させた半導体装置に関する。」
2b)「【0054】得られた接着部材を25℃,50%RHの条件で30日保管したのちに任意の大きさに金型で打ち抜いてA面が接するように厚み25μmのポリイミドフィルムを基材に用いた配線基板に貼り付けた。この時の貼付け条件は,温度140℃,圧力0.3MPa,時間2秒であった。さらにこの状態で25℃,50%RHの条件で60日(合わせて90日)保管したのちに半導体チップを貼り付けた。この時の貼付け条件は,温度150℃,圧力0.4MPa,時間5秒であった。その後,リード線のボンディング,樹脂による封止を行い図3(c),(d)に示す半導体チップと配線基板を接着部材で貼り合せた半導体装置サンプル(片面にはんだボールを形成)を作製した。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「接着材フィルム」は,本願発明の「接着フィルム」に相当するから,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「半導体チップと,これを搭載する配線付き外部接続用部材または別の半導体チップとを接続する接着フィルム。」
の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
本願発明の接着フィルムは,圧着温度での溶融粘度が5×10?1×10^(5)Pa・s(但し,1×10^(5)Pa・sは除く)の範囲にあるのに対して,引用発明の接着材フィルムは,圧着温度での粘度が1×10^(5)?1×10^(7)Pa・sの範囲にある点。

上記相違点について検討する。
引用発明は,接着剤層の圧着温度での粘度が1×10^(5)?1×10^(7)Pa・sの範囲のものとし,圧着圧力を0.5?2.1MPaの範囲とすることにより,配線付外部接用続部材と半導体チップを熱圧着する際に,接着界面のボイドがなくかつ過剰な接着材のはみ出しが発生しないようにするものである。
引用例1には,ボイドとはみ出しを支配する主な要因が接着材の粘度と圧着圧力であること,接着材フィルムの粘度を小さくしたり圧着圧力を大きくすることで埋込性の向上,すなわちボイドの抑制を図れることが記載されており(記載事項1c参照),はみ出しについては,ボイドを抑制する場合とは逆に,接着材フィルムの粘度を大きくしたり圧着圧力を小さくすることでこれを抑制できることが容易に理解されるところである(記載事項1e参照)。したがって,接着材フィルムの粘度と圧着圧力は,一方を小さくした場合はそれに見合った分だけ他方も小さくすれば,また,一方を大きくした場合はそれに見合った分だけ他方も大きくすれば,ボイドとはみ出しの抑制の度合いを維持し得る関係にある。
そうしてみると,引用発明では,粘度が1×10^(5)?1×10^(7)Pa・sの範囲,圧着圧力が0.5?2.1MPaの範囲としているが,圧着圧力をその下限値0.5MPaよりも小さい値とすることについて格別の支障がなければ,圧着圧力を0.5MPaより少し小さい値とするとともに,それに見合った分だけ粘度をその下限値1×10^(5)より小さい値とすること,すなわち,上記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たといえる。
引用例1には,「ここで圧力範囲を0.5?2.1MPaとしたのは,圧力が0.5MPa未満であると設定圧力に対し実効圧力のばらつきが大きく実用上好ましくなく」との記載があるが(段落【0011】;記載事項1e参照),これは,0.5MPa未満の圧着圧力を精度良く実現するのは装置の都合等から容易でないことをいうに過ぎず,「実用上好ましくなく」との表現からも明らかなように,圧力を0.5MPaより小さくすることができないとするものではない。実際,引用例2には,半導体チップと配線基板を接着部材で接着する際の圧力を0.3MPaあるいは0.4MPaとすることが記載されている(記載事項2a及び2b参照)。引用例2を参照すれば,引用発明において圧力を0.5MPaよりも小さい値とすることに困難があったとはいえない。
以上のことから,本願発明は,その出願前に,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,その出願前に,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-10 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-29 
出願番号 特願2008-321444(P2008-321444)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馳平 憲一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 川向 和実
杉浦 貴之
発明の名称 接着フィルムおよびその用途ならびに半導体装置の製造方法  
復代理人 柴 大介  
代理人 小澤 圭子  
代理人 津国 肇  
復代理人 伊藤 佐保子  
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