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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1255474 |
審判番号 | 不服2009-15077 |
総通号数 | 150 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-19 |
確定日 | 2012-04-10 |
事件の表示 | 特願2006-216248「配線構造およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日出願公開、特開2007- 59901〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年8月8日の出願(優先権主張:2005年8月23日、米国)であって、平成21年2月19日に手続補正書が提出され、同年4月9日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年8月19日に審判が請求されたものである。 第2 本願発明 請求項1?8に係る発明は、平成21年2月19日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されている事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 誘電体層にビアおよび/またはトレンチを備えたダマシン構造と、 前記誘電体層の上表面よりも低い上表面を有し、前記ビアおよび/またはトレンチに充填される銅または銅合金からなる導体と、 金属コバルト(Co),コバルトタングステン(CoW),コバルトタングステンリン化物(CoWP),またはコバルトタングステンホウ化物(CoWB)からなり、前記導体上に存在するコバルト含有キャップと、 前記コバルト含有キャップと前記誘電体層の上部に存在するエッチング停止層と、から構成されることを特徴とする配線構造。」 第3 引用例の記載と引用発明 1 引用例とその記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-72228号公報(以下「引用例」という。)には、「半導体装置およびその製造方法」(発明の名称)について、図1、5、10?13とともに、次の記載がある(下線は当審で付加したもの。以下同じ。)。 (1)技術分野等 「【技術分野】 【0001】 本発明は、層間絶縁膜に設けられた金属配線を有する半導体装置およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 半導体集積回路の高集積度化と微細化が進んで行くのに伴って、半導体装置における金属多層配線の技術も開発が進んできている。現在では低抵抗である点とエレクトロマイグレーション耐性が高い点とから、配線金属には銅が主に使われている。 【0003】 半導体装置における銅の埋め込み配線は、まず層間絶縁膜に下層との接続孔(ビアホール)と配線溝を形成し、その表面に銅の層間絶縁膜中への拡散を防ぐバリアメタル層を形成して、さらにその上に銅を厚く堆積させて接続孔と配線溝とを銅で埋めることで形成する。そして化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical polishing)によって、接続孔と配線溝内の銅は残してその他の部分のバリアメタル層上の銅を除去し、それから再度化学機械研磨を行って露出したバリアメタル層を除去して配線ができあがる。」 (2)発明を実施するための最良の形態 「【0058】 (実施形態4) 実施形態4に係る半導体装置の製造工程を図10、図11に示す。本実施形態でも金属配線として銅(Cu)配線を用いている。 【0059】 本実施形態では実施形態1と同じように、まず半導体基板1上に、低誘電率絶縁材料からなる層間絶縁膜2を形成する(図1(a))。 【0060】 次に、フォトリソグラフィーとエッチングを行うことにより、配線溝4と接続孔5とを層間絶縁膜2に形成して、配線溝4と接続孔5との表面にバリアメタル層6を形成する(図5(b)。バリアメタル層6の構成や厚みは実施形態1のバリアメタル層6と同じである。 【0061】 そしてこのバリアメタル層6の上に、図10(a)に示すようにCu層7を形成して接続孔5および配線溝4をCuで埋め尽くす。このCu層7の形成方法は実施形態1と同じ方法である。 【0062】 次に、図10(b)に示すように第1の化学機械研磨(CMP)によりバリアメタル層6の表面6aまで銅を除去する。化学機械研磨はCu層7の表面から半導体基板1に向かって面全体を略均一に削り取っていくものであるので、ここでいうバリアメタル層6の表面6aとは、配線溝4と接続孔5との表面以外に形成されているバリアメタル層6の表面6aのことである。ここで、第1の化学機械研磨は銅を研磨する条件での化学機械研磨である。 【0063】 それから、図11(a)に示すように、たとえば無電解メッキによりCoWP合金を配線溝4部の露出したCu層7表面に形成して合金皮膜17とする。 【0064】 そして、図11(b)に示すように第1の化学機械研磨によって露出したバリアメタル層6の表面6aを第2の化学機械研磨により除去する。この時、合金皮膜17は少なくとも一部が除去されずに残る。図には示していないが、さらにその上に、Cu拡散バリア絶縁膜として、たとえばSiC膜を30nm形成する。 【0065】 本実施形態では、第2の化学機械研磨を行う前に露出したCu層7表面を銅より硬いCoWP合金の合金皮膜17で被覆することで、バリアメタル層6研磨中にCu層7の表面が合金皮膜17により保護され、銅の延伸による層間絶縁膜2上への銅のはみ出しを防止することが出来るため、層間絶縁膜2上に銅残渣が生じることを防止することができる。従って半導体装置の信頼性の低下を防止できる。 【0066】 (実施形態5) 実施形態5は、第1の化学機械研磨が終了するところまでは実施形態4と同じであるので、それ以降の工程を中心に図12および図13に基づいて説明する。 【0067】 図12(a)は、バリアメタル層6の上にCu層7を形成して配線溝4および接続孔5をCuで埋め込んだ状態を示しており、図10(a)に示している状態と同じ状態である。 【0068】 次に、図12(b)に示すようにバリアメタル層6が露出するまで第1の化学機械研磨によってCuの除去を行う。この状態は、図10(b)と同じ状態である。 【0069】 それから、図12(c)に示すように配線溝4内の露出しているCu層7表面を電気化学的にエッチングして、層間絶縁膜2の表面のうち配線溝4の部分以外の表面よりもCu層7表面を低くさせる。 【0070】 そして、図13(a)に示すように、露出した配線溝4部のCu層7表面にたとえば無電解メッキによりCoWP合金を形成して合金皮膜17とする。 【0071】 次に、図13(b)に示すように第1の化学機械研磨によって露出したバリアメタル層6の表面6aを第2の化学機械研磨により除去する。合金皮膜17の表面はバリアメタル層6の表面6aよりも低いので、この第2の化学機械研磨の工程では、合金皮膜17に対する研磨はほとんど、或いは全く行われない。図には示していないが、さらにその上に、Cu拡散バリア絶縁膜として、たとえばSiC膜を30nm形成する。 【0072】 本実施形態では、合金皮膜17を形成する前にCu層7表面を電気化学的にエッチングし、Cu層7表面を層間絶縁膜2表面より低くすることで、実施形態4よりもさらに銅の層間絶縁膜2上へのはみ出しを有効に防止することが可能となって信頼性低下を確実に防止できると供に、合金皮膜17形成時に、合金皮膜17と層間絶縁膜2の表面を面一にして段差をなくすことが可能となる。 【0073】 (その他の実施形態) これまで説明した実施形態は本発明の例示に過ぎず、本発明はこれらの実施形態に限定されない。例えば、金属配線としては、Cuだけではなく銅合金、銀、銀合金、アルミニウム又はアルミニウム合金を配線金属として用いることができる。いずれの金属の場合もCuの場合と同様にバリアメタル層よりも軟らかく、バリアメタル層の化学機械研磨の際に砥粒により引き延ばされてしまうので、本願発明の方法を適用することにより信頼性の低下を防止することができる。 【0074】 Cu層(金属層)の表面に形成する合金被膜は、CoWP合金に限定されずCoを含有する他の合金やWを含む合金などCuよりも硬い合金であればよい。 【0075】 また、層間絶縁膜やバリアメタル層、Cu拡散バリア絶縁膜などの構成物質も各膜や層の機能を果たすものであれば特に限定されない。これらの製法も特に限定されない。」 2 引用発明 上記(1)及び(2)によれば、引用例には、次の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「引用発明」という。)。 「半導体基板1上に、層間絶縁膜2を形成し、 次に、配線溝4と接続孔5とを層間絶縁膜2に形成し、Cu層7を形成して接続孔5および配線溝4をCuで埋め尽くし、 次に、化学機械研磨によってCuの除去を行い、 それから、配線溝4内の露出しているCu層7表面をエッチングして、層間絶縁膜2の表面のうち配線溝4の部分以外の表面よりもCu層7表面を低くさせ、露出した配線溝4部のCu層7表面にCoWP合金を形成して合金皮膜17とし、 さらにその上に、Cu拡散バリア絶縁膜として、SiC膜を形成した半導体装置における銅の埋め込み配線。」 第4 対比 1 本願発明と引用発明とを対比すると、 ア 引用発明の「層間絶縁膜2」、「接続孔5」、「配線溝4」は、それぞれ、本願発明の「誘電体層」、「ビア」、「トレンチ」に相当する。 そして、引用発明は、配線溝4と接続孔5とを層間絶縁膜2に形成し、Cu層7を形成して接続孔5および配線溝4をCuで埋め尽した、層間絶縁膜に設けられた金属配線を有する半導体装置であることから、ダマシン構造であると言える。 イ 引用発明の「Cu層7」は、「Cu層7を形成して接続孔5および配線溝4をCuで埋め尽く」していることから、ビアおよび/またはトレンチに充填される銅からなる導体であることが分かる。 そして、引用発明において、「層間絶縁膜2の表面のうち配線溝4の部分以外の表面よりもCu層7表面を低くさせ」ていることから、層間絶縁膜2の表面よりも低いCu層7表面を有することが分かる。 ウ 引用発明の「合金皮膜17」は、「露出した配線溝4部のCu層7表面にCoWP合金を形成して」いるから、本願発明の「コバルトタングステンリン化物(CoWP)」からなる「導体上に存在するコバルト含有キャップ」に相当する。 エ 引用発明の「半導体装置における銅の埋め込み配線」は、本願発明の「配線構造」に相当する。 2 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 〈一致点〉 「誘電体層にビアおよび/またはトレンチを備えたダマシン構造と、 前記誘電体層の上表面よりも低い上表面を有し、前記ビアおよび/またはトレンチに充填される銅または銅合金からなる導体と、 金属コバルト(Co),コバルトタングステン(CoW),コバルトタングステンリン化物(CoWP),またはコバルトタングステンホウ化物(CoWB)からなり、前記導体上に存在するコバルト含有キャップと、 から構成されることを特徴とする配線構造。」 〈相違点〉 本願発明では、「コバルト含有キャップと誘電体層の上部に存在するエッチング停止層」を有するのに対し、引用発明では、「合金被膜17」の上に「Cu拡散バリア絶縁膜として、SiC膜」を有する点。 第5 相違点についての検討 ア 引用発明は、「層間絶縁膜2」、配線としての「Cu層7」、Cu拡散バリア絶縁膜としての「SiC膜」を備える配線構造である。 イ ここで、層間絶縁膜、銅配線層を有する配線構造において、拡散防止膜としてのSiCが、層間絶縁膜のためのエッチングストッパー膜(エッチング停止層)として機能することは、例えば、以下の周知例1、周知例2に記載されているように、本願の優先権主張日前に周知技術として知られていたものである。 (周知例1:特開2005-217371号公報、原査定で引用した。) 上記周知例1には、図1?10とともに、次の記載がある。 「【0033】 図1?図10は、本実施の形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。尚、これらの図において、同じ符号を付した部分は同じものであることを示している。 【0034】 まず、下層配線としての銅配線層1が形成された半導体基板2の上に、拡散防止膜3および層間絶縁膜4をこの順に形成する(図1)。ここで、銅配線層1は、バリアメタル膜5および銅層6を有している。尚、本実施の形態においては、銅配線層以外の他の導電層が形成されていてもよい。例えば、銅以外の他の金属の配線層または不純物ドーピング領域などが半導体基板に形成されていてもよい。 【0035】 半導体基板2としては、例えばシリコン基板などを用いることができる。 【0036】 拡散防止膜3としては、例えば、SiN(窒化シリコン)膜、SiC(炭化シリコン)膜またはSiCN(炭窒化シリコン)膜などを用いることができるが、本発明においては、SiC膜またはSiCN膜などの炭素(C)を含む材料からなる膜を用いることが好ましい。尚、拡散防止膜3として層間絶縁膜4とのエッチング選択比の大きい材料を用いた場合には、拡散防止膜3はエッチングストッパー膜としても機能する。」 (周知例2:特開2005-223195号公報、原査定で引用した。) 上記周知例2には、図1とともに、次の記載がある。 「【0024】 図1?図16は、本実施の形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。尚、これらの図において、同じ符号を付した部分は同じものであることを示している。 【0025】 まず、半導体基材を準備する。例えば、下層配線1(第1の銅配線層)が形成された半導体基板の上に拡散防止膜2を形成する(図1)。 【0026】 拡散防止膜2としては、例えば、SiN(窒化シリコン)膜、SiC(炭化シリコン)膜またはSiCN(炭窒化シリコン)膜などを用いることができる。尚、拡散防止膜2として、この上に形成する層間絶縁膜とのエッチング選択比の大きい材料を用いた場合には、拡散防止膜2はエッチングストッパ膜としても機能することができる。一方、下層配線1としては、例えば、MOSトランジスタの拡散層に至るタングステンプラグを用いることができる。尚、簡便のために、図では下層配線1の構造を省略している。 【0027】 次に、拡散防止膜2の上に層間絶縁膜3を形成する(図1)。ここで、層間絶縁膜3は、空孔4を有する多孔質の低誘電率絶縁膜である。」 ウ そして、引用発明と上記周知技術とは、層間絶縁膜、銅配線層、Cu拡散バリア絶縁膜としてのSiC膜を有する配線構造である点で共通する。 エ さらに、引用発明において、層間絶縁膜を有することから、該層間絶縁膜のエッチングは普通に行われるものである。 オ したがって、引用発明において、層間絶縁膜のエッチングの際に、上記周知技術を参酌し、Cu拡散バリア絶縁膜としての「SiC膜」を本願発明のごとく「エッチング停止層」としても用いて、相違点に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たことである。 以上検討したとおり、本願発明は、周知技術を勘案することにより、引用発明に記載された発明に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 結言 以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-19 |
結審通知日 | 2011-10-24 |
審決日 | 2011-11-25 |
出願番号 | 特願2006-216248(P2006-216248) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷山 健 |
特許庁審判長 |
北島 健次 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 松田 成正 |
発明の名称 | 配線構造およびその製造方法 |
代理人 | 牛木 護 |