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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1255509
審判番号 不服2011-5118  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-07 
確定日 2012-04-09 
事件の表示 特願2005-170430「縦方向に伸縮できるペットボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月21日出願公開、特開2006-341904〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成17年6月10日に出願されたもので、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面について平成22年2月22日付け手続補正書が提出された後、同年5月14日付け拒絶理由通知書が送付され、上記特許請求の範囲等について平成22年7月20日付け手続補正書が提出されたものの、同年11月26日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたもので、上記特許請求の範囲等についての平成23年3月7日付け手続補正書が提出され、その後、同年10月6日付け審尋が送付されたものの、これに対する回答書の提出は、未だにないものである。

2.原査定
原査定の拒絶理由は、以下のとおりのものと認める。

「この出願の全ての請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.登録実用新案第3106059号公報
2.独国特許出願公開第10324893号明細書」

「登録実用新案第3106059号公報」及び「独国特許出願公開第10324893号明細書」を、以下、「引用例1」及び「引用例2」という。

3.当審の判断

3-1.平成23年3月7日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、以下に詳述するように、認められるものである。

3-1-1.本件補正の内容
本件補正は、以下の補正事項a及びbからなるものと認める。

補正事項a;特許請求の範囲の記載につき、以下の(cl)を(CL)と補正する。
(cl);「【請求項1】
ペット樹脂のような可撓性ある樹脂材料で造られ、上端に飲み口部3を有し、側面周囲を水平方向或いは斜方向の蛇腹状2に形成するとともに該蛇腹状2の各襞4は、谷部Qを介して連結し、かつ山部Pを介する上面5および下面6が断面形状を横V字状に形成したペットボトル本体1において、
前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を下方に湾曲するとともに、各襞4の水平軸線L方向の上面5の距離を、下面6の距離より長く形成し、前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を容易かつ確実に折り畳みつつ押し潰すことができるとともにこの折り畳み状態を保持することができ、さらに前記ペットボトル本体1を傾倒あるいは逆さ状態として、内容物を飲む際の流出を迅速、スムースならしめるとともにペットボトル本体1の洗浄水による洗浄面のムラをなくし、洗浄水の残留なくペットボトル本体1内の洗浄、殺菌をすることができるように構成したことを特徴とする縦方向に伸縮できるペットボトル。
【請求項2】
ペット樹脂のような可撓性ある樹脂材料で造られ、上端に飲み口部3を有し、側面周囲を水平方向或いは斜方向の蛇腹状2に形成するとともに該蛇腹状2の各襞4は、谷部Qを介して連結し、かつ山部Pを介する上面5および下面6が断面形状を横V字状に形成したペットボトル本体1において、
前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を下方に湾曲するとともに、各襞4の水平軸線L方向の上面5の距離を、下面6の距離より長く、かつ各襞4の水平軸線Lの上半分の高さh2を、下半分の高さh3より高く形成し、前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を容易かつ確実に折り畳みつつ押し潰すことができるとともにこの折り畳み状態を保持することができ、さらに前記ペットボトル本体1を傾倒あるいは逆さ状態として、内容物を飲む際の流出を迅速、スムースならしめるとともにペットボトル本体1の洗浄水による洗浄面のムラをなくし、洗浄水の残留なくペットボトル本体1内の洗浄、殺菌をすることができるように構成したことを特徴とする縦方向に伸縮できるペットボトル。
【請求項3】
ペット樹脂のような可撓性ある樹脂材料で造られ、上端に飲み口部3を有し、側面周囲を水平方向或いは斜方向の蛇腹状2に形成するとともに該蛇腹状2の各襞4は、谷部Qを介して連結し、かつ山部Pを介する上面5および下面6が断面形状を横V字状に形成したペットボトル本体1において、
前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を下方に湾曲するとともに、各襞4の水平軸線L方向の上面5の距離を、下面6の距離より長く形成し、さらに前記各襞4の谷部Qに、当該谷部Qよりさらにペットボトル本体1の軸線方向に突出させて環状の窪み7を形成し、前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を容易かつ確実に折り畳みつつ押し潰すことができるとともにこの折り畳み状態を保持することができ、さらに前記ペットボトル本体1を傾倒あるいは逆さ状態として、内容物を飲む際の流出を迅速、スムースならしめるとともにペットボトル本体1の洗浄水による洗浄面のムラをなくし、洗浄水の残留なくペットボトル本体1内の洗浄、殺菌をすることができるように構成したことを特徴とする縦方向に伸縮できるペットボトル。
【請求項4】
前記蛇腹状2の各襞4の前記谷部Qと山部Pの肉厚との比較において、谷部Qの肉厚を山部Pの肉厚より厚く形成することにより構成したことを特徴とする請求項1?3に記載の縦方向に伸縮できるペットボトル。」
(CL)「【請求項1】
ペット樹脂のような可撓性ある樹脂材料で造られ、上端に飲み口部3を有し、側面周囲を水平方向或いは斜方向の蛇腹状2に形成するとともに該蛇腹状2の各襞4は、谷部Qを介して連結し、かつ山部Pを介する上面5および下面6が断面形状を横V字状に形成したペットボトル本体1において、
前記蛇腹状2の各襞4の上面5をペットボトル本体1の内側で、かつ当該上面5に対向する下面6方向である下方に湾曲し、また当該上面5に対向する下面6をペットボトル本体1の外側方向である下方に湾曲するとともに、各襞4の水平軸線L方向の上面5の距離を、下面6の距離より長く形成し、
さらに、前記蛇腹状2の各襞4の前記谷部Qと山部Pの肉厚との比較において、谷部Qの肉厚を山部Pの肉厚より厚く形成するとともに、前記各襞4の谷部Qに、当該谷部Qよりさらにペットボトル本体1の軸線方向に突出させて環状の窪み7を形成し、前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を容易かつ確実に折り畳みつつ押し潰すことができるとともにこの折り畳み状態を保持することができ、さらに前記ペットボトル本体1を傾倒あるいは逆さ状態として、内容物を飲む際の流出を迅速、スムースならしめるとともにペットボトル本体1の洗浄水による洗浄面のムラをなくし、洗浄水の残留なくペットボトル本体1内の洗浄、殺菌をすることができるように構成したことを特徴とする縦方向に伸縮できるペットボトル。」

補正事項b;明細書の段落【0044】の記載につき、
「本発明を実施するに当たって、その襞4の形状は各種のものが考えられる。その一例としてこの実施例(図3)では、その上面5も下面6も下方に湾曲した断面略々横V字の形状をしている。さらにこの場合その襞4の上面5は水平軸線L方向の距離が下面6の距離よりも実質的に長いことである。また、これに加えその水平軸線Lの上方h2が高く下方h3は低くなっている。」とあるのを、
「本発明を実施するに当たって、その襞4の形状は各種のものが考えられる。その一例としてこの実施例(図3)では、その上面5をペットボトル本体1の内側で、かつ当該上面5に対向する下面6方向である下方に湾曲し、また当該上面5に対向する下面6をペットボトル本体1の外側方向である下方に湾曲した断面略々横V字の形状をしている。さらにこの場合その襞4の上面5は水平軸線L方向の距離が下面6の距離よりも実質的に長いことである。また、これに加えその水平軸線Lの上方h2が高く下方h3は低くなっている。」と補正する。

ここ「3-1.」では、本件補正前の請求項1を旧【請求項1】といい、本件補正後の請求項1を新【請求項1】といい、他の請求項についても同様とする。

3-1-2.本件補正の適否

(1)補正事項aについて

1)補正事項aは、特許請求の範囲についてする補正であるので、まずは、その目的について検討する。
新【請求項1】は、旧【請求項3】を引用した旧【請求項4】(以下、「旧【本件請求項】」という。)に由来するもので、旧【本件請求項】に記載されていた「前記蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を下方に湾曲するとともに、」との事項が「前記蛇腹状2の各襞4の上面5をペットボトル本体1の内側で、かつ当該上面5に対向する下面6方向である下方に湾曲し、また当該上面5に対向する下面6をペットボトル本体1の外側方向である下方に湾曲するとともに、」との事項に補正されていると認められる。
そこで、補正前後の上記事項について検討すると、補正前の「蛇腹状2の各襞4の上面5を下方に湾曲する」との事項は、補正前の明細書及び図面の記載からして、「蛇腹状2の各襞4の上面5をペットボトル本体1の内側で、かつ当該上面5に対向する下面6方向である下方に湾曲し」との技術的事項であると解釈でき、また、補正前の「蛇腹状2の各襞4の下面6を下方に湾曲する」との事項は、同様に、「上面5に対向する下面6をペットボトル本体1の外側方向である下方に湾曲する」との技術的事項であると解釈できる。
以上の検討を踏まえると、補正事項aは、旧【本件請求項】を残して、他の請求項を削除すると共に、補正前に実質的に記載されていた技術的事項を、拒絶査定を受けて、より明りょうな記載にしたといえ、「第36条第5項に規定する請求項の削除」及び「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的にしていると認められる。

2)また、補正事項aが、この出願前の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載の事項の範囲内でしたものであることは、補正事項aが、先に「1)」に述べたとおりの目的にしていることから、明らかである。

(2)補正事項bについて
補正事項bは、【図3】に示された実施例について、「上面5も下面6も下方に湾曲した断面略々横V字の形状をしている。」との記載を、「上面5をペットボトル本体1の内側で、かつ当該上面5に対向する下面6方向である下方に湾曲し、また当該上面5に対向する下面6をペットボトル本体1の外側方向である下方に湾曲した断面略々横V字の形状をしている。」との記載に補正するもので、ここに記載の事項は、当初明細書等の【図3】の記載を根拠にしているものといえ、当初明細書等に記載の事項の範囲内でしたものである。

3-1-3.まとめ
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項及び第4項の規定を満たし、認められるものである。

3-2.原査定の拒絶理由について

3-2-1.本件に係る発明
本件補正は、先に「3-1.」で述べたように認められるものであって、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件補正後の、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載のとおりであって、同項の記載は、先に「3-1-1.」において補正事項aにつき、(CL)として認定したとおりのものと認める。

3-2-2.引用例の発明

1)引用例1及び2には、以下の記載1a?2aが認められる。

引用例1:
1a;「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
上端部の飲み口部と、該飲み口部の高さ方向の幅と、底部の高さ方向の幅とを除いて、高さ方向の一部或いは全部が水平方向の蛇腹状となっているペットボトル本体であって、この成型されたペットボトル本体を縦方向に圧縮させ、上記ペットボトル本体の蛇腹状部分がその長手方向の一方或いは両方からペットボトル本体の中心方向に押し圧した際、上記蛇腹状部分が重なりあう潰された状態を保つことができるようになしかつ、上記蛇腹状を構成する谷部をペットボトル本体の軸線方向に向う略々環状の窪みに造型したことが特徴の、長さ方向が縮小された状態を保つことが可能なペットボトル。
【請求項2】
上記請求項1に示した各蛇腹状部は、上面が湾曲状で下面が直線状の断面「>」で構成されていることが特徴の、長さ方向が縮小された状態を保つことが可能なペットボトル。
【請求項3】
上記請求項2に示した各蛇腹状部のその最下段を除く、下面の高さ(巾)が約5乃至7mmで、その上面の高さ(巾)が、下面の高さ(巾)より稍々広い(高い)巾となっていることが特徴の、長さ方向が縮小された状態を保つことが可能なペットボトル。」(2頁)
1b;「【0053】
この時図1で上記第1段の蛇腹状の外径(2A)の下(h2)の高さは5.5mm,第2段の蛇腹状の外径(2B)の上(h1)は7mm,下は(h2)5mm,第3段の蛇腹状の外径(2C)のそれは上が8.5mm,下が6.5mmとなした。
【0054】
より具体的に上記蛇腹状はその断面形状、特に肉厚が重要な構成のポイントとなっており、それは図3で示している。
【0055】
即ち上記蛇腹状(2)を構成する谷部(P)の肉厚が、同山部(Q)の肉厚との比較に於て、厚く造型されていることであり、具体的な例としては谷部(P)の肉厚は、0.49mmであり、山部(P)の肉厚は0.27mm,この谷部(P)と山部(Q)との略中間部の厚さは0.39mmとした。」(8頁)
1c;「【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本考案ペットボトル本体全体の正面図
【図2】潰された状態のペットボトル本体全体の正面説明図
【図3】蛇腹形状を構成する襞部の断面拡大図」(12頁)並びに【図1】?【図3】(13頁)

引用例2:
2a;「Patentanspruche
1.Flasche aus Kunststoff, ・・・gewolbt ausgebildet sind.(5/8頁右欄9?18行、翻訳;特許請求の範囲 1 ボトルを折り畳みロックするための用具として機能する部材を備えたプラスチック製ボトルであっで、該ボトルの底部11(第1図)の近くの部位からボトルの頚部12(第1図)の近くの部位に至る基体10(第1図)が、変動径13及び14(第1図)を有し、且つ折り畳み面15及び16(第1図)が湾曲する様式で折り畳み面を構成していることを特徴とするプラスチック製ボトル。)」及びFig.1(7頁)

2)引用例1には、その記載全体によれば、ペットボトルについての発明が記載されていると認められる。
そして、記載aの【請求項1】には、先に記載aとして摘示したとおりの記載がなされており、該記載における「蛇腹状」のものとは、この出願当時の技術常識に従い記載1cをみれば、複数の「各襞」から構成され、「各襞」は、「谷部を介して連結し」、かつ「山部を介する上面および下面から」なるもので、その断面形状がV字状のものが普通に想念されるものであって、記載aの【請求項1】には、要すれば、「上端部の飲み口部と、該飲み口部の縦方向の幅と、底部の縦方向の幅とを除いて、縦方向の一部或いは全部が蛇腹状となっており、該蛇腹状の各襞は、谷部を介して連結し、かつ山部を介する上面および下面が断面形状を横V字状に形成されているペットボトル本体であって、この成型されたペットボトル本体を縦方向に圧縮させることにより、上記蛇腹状部分が重なりあう潰された状態を保つことができるようになし、かつ、上記蛇腹状を構成する谷部に、ペットボトル本体の縦方向中心軸に向う略々環状の窪みを造型した、縦方向が縮小された状態を保つことが可能なペットボトル。」の発明が記載されていると認められる。
そこで、更に、引用例1の記載を検討すると、その記載1bの段落【0054】?【0055】には、上記発明の谷部の肉厚を山部の肉厚より厚く造型することが記載されて、以上の検討を踏まえると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「上端部の飲み口部と、該飲み口部の縦方向の幅と、底部の縦方向の幅とを除いて、縦方向の一部或いは全部が蛇腹状となっており、該蛇腹状の各襞は、谷部を介して連結し、かつ山部を介する上面および下面が断面形状を横V字状に形成されているペットボトル本体であって、この成型されたペットボトル本体を縦方向に圧縮させることにより、上記蛇腹状部分が重なりあう潰された状態を保つことができるようになし、かつ、上記蛇腹状を構成する谷部に、ペットボトル本体の縦方向中心軸に向う略々環状の窪みを造型した、縦方向が縮小された状態を保つことが可能なペットボトルにおいて、
蛇腹状を構成する谷部の肉厚を山部の肉厚より厚く造型した上記ペットボトル。」

3)また、引用例2には、記載2aによれば、プラスチック製ボトルについての発明が記載され、特に、記載2aのFig.1を参照すると、プラスチック製ボトルの側面周囲は蛇腹状に形成されており、引用例2の記載全体からして、この蛇腹状に形成することにより、プラスチック製ボトルを縦方向に圧縮できるようにしているものと認められる。そして、上記蛇腹状の形状を構成する各襞は、谷部を介して連結し、かつ山部を介する上面および下面が断面形状を横V字状に形成され、その上面をボトルの内側で、かつ当該上面に対向する下面方向である下方に湾曲し、また当該上面に対向する下面をボトルの外側方向である下方に湾曲させていることが見て取れる。
してみると、引用例2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「その側面周囲が蛇腹状に形成されていることにより、縦方向に圧縮できるようにしているプラスチック製ボトルにおいて、蛇腹状の形状を構成する各襞は、谷部を介して連結し、かつ山部を介する上面および下面が断面形状を横V字状に形成され、その上面をボトルの内側で、かつ当該上面に対向する下面方向である下方に湾曲させ、また当該上面に対向する下面をボトルの外側方向である下方に湾曲させたプラスチック製ボトル」

3-2-3.対比判断

1)本件発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1のペットボトルが、その縦方向が縮小された状態から伸張できることは、引用例1の記載全体から明らかで、両発明は、

「ペット樹脂のような可撓性ある樹脂材料で造られ、上端に飲み口部3を有し、側面周囲を水平方向或いは斜方向の蛇腹状2に形成するとともに該蛇腹状2の各襞4は、谷部Qを介して連結し、かつ山部Pを介する上面5および下面6が断面形状を横V字状に形成したペットボトル本体1において、
さらに、前記蛇腹状2の各襞4の前記谷部Qと山部Pの肉厚との比較において、谷部Qの肉厚を山部Pの肉厚より厚く形成するとともに、前記各襞4の谷部Qに、当該谷部Qよりさらにペットボトル本体1の軸線方向に突出させて環状の窪み7を形成した、縦方向に伸縮できるペットボトル。」で一致し、

以下の相違点A及びBで、一応、相違していると認められる。

相違点A;本件発明は、「蛇腹状2の各襞4の上面5をペットボトル本体1の内側で、かつ当該上面5に対向する下面6方向である下方に湾曲し、また当該上面5に対向する下面6をペットボトル本体1の外側方向である下方に湾曲するとともに、各襞4の水平軸線L方向の上面5の距離を、下面6の距離より長く形成し」た点。
相違点B;本件発明は、「蛇腹状2の各襞4の上面5および下面6を容易かつ確実に折り畳みつつ押し潰すことができるとともにこの折り畳み状態を保持することができ、さらにペットボトル本体1を傾倒あるいは逆さ状態として、内容物を飲む際の流出を迅速、スムースならしめるとともにペットボトル本体1の洗浄水による洗浄面のムラをなくし、洗浄水の残留なくペットボトル本体1内の洗浄、殺菌をすることができるように構成し」た点。

2)相違点A及びBについて検討する。

2-1)引用発明1と2は、共に、プラスチック製ボトルにおいて、その形状の一部を蛇腹状とすることにより、ボトルをその縦方向に縮め得るようにしたといった、同一技術分野に属する発明で、引用発明1の蛇腹状の形態として、引用発明2の「蛇腹状の形状を構成する各襞は、谷部を介して連結し、かつ山部を介する上面および下面が断面形状を横V字状に形成され、その上面をボトルの内側で、かつ当該上面に対向する下面方向である下方に湾曲させ、また当該上面に対向する下面をボトルの外側方向である下方に湾曲させた」との技術的事項を適用することは、容易になし得るものである。
また、上記技術的事項を適用するに際して、蛇腹状を構成する各襞において、その山部の最頂部のボトル縦方向位置を、ボトル縦方向上下にある2つの谷部最底部間において、そのボトル縦方向中間位置にするか、或いは、中間位置の上方又は下方とするかは適宜に設定し得る事項で、中間位置の下方とすることは容易に設計できるものであって、そうした場合、各襞の水平軸線方向の上面の距離が下面の距離より長くなるのは自然なことである。特に、引用例1の記載1aの【請求項3】や1bの段落【0053】から、上記最頂部の位置を上記中間位置の下方とすることが見て取れることは、この下方とすることが適宜に設定し得る事項であるとした上述の認定と符合するものである。

2-2)また、引用発明1の蛇腹状の形態として、上記技術的事項を適用したものについて検討すれば、その構成、特に、各襞の上面がボトルの内側で当該上面に対向する下面方向である下方に湾曲させ、また当該上面に対向する下面をボトルの外側方向である下方に湾曲させたものとなることから、これが「蛇腹状の各襞の上面および下面を容易かつ確実に折り畳みつつ押し潰すことができるとともにこの折り畳み状態を保持することができ、さらにペットボトル本体を傾倒あるいは逆さ状態として、内容物を飲む際の流出を迅速、スムースならしめるとともにペットボトル本体の洗浄水による洗浄面のムラをなくし、洗浄水の残留なくペットボトル本体内の洗浄、殺菌をすることができるように構成」されていることは、明らかであるし、少なくとも、上述した、上面や下面を下方に湾曲させる際の、その湾曲の程度を工夫することなどにより、容易になし得るものである。

2-3)以上の検討から、相違点A及びBは、容易になし得るものである。

3)したがって、本件発明は、引用発明1及び2に基いて、容易に発明をすることができたものである。
これに対し、請求人は、本件に係る審判請求書において、要するに、本件発明は、「ペットボトル本体の洗浄水による洗浄面のムラをなくし、洗浄水の残留なくペットボトル本体内の洗浄、殺菌をすることができるように」することを目的にしているもので、引用例1及び2には、該目的を有する発明は記載されていない旨を主張するが、本件発明は、先に「3-2-1.」で認定したとおりのもので、これまで述べたように、容易に発明をすることができたものであって、仮に、請求人が主張するように、引用例1及び2に、主張するような目的を有するものとして発明が記載されていないとしても、本件発明は、容易に発明をすることができたものであるとの判断を左右しない。

3-2-4.まとめ
本件発明は、引用発明1及び2に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、原査定の拒絶理由は、相当である。

4.結び
原査定は、妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-09 
結審通知日 2012-02-15 
審決日 2012-02-28 
出願番号 特願2005-170430(P2005-170430)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 晋渡邊 豊英  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 亀田 貴志
熊倉 強
発明の名称 縦方向に伸縮できるペットボトル  
代理人 奈良 武  

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