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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M
管理番号 1255580
審判番号 不服2010-9336  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-30 
確定日 2012-04-13 
事件の表示 特願2004- 90228「アキュムレータ燃料噴射システムのための圧力制御弁」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月24日出願公開、特開2005- 48763〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成16年3月25日(パリ条約による優先権主張2003年7月29日 独国)の出願であって、平成21年7月31日付けで拒絶理由が通知され、平成21年11月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年12月25日付けで拒絶査定がなされ、平成22年4月30日に拒絶査定に対する審判請求がされ、その後、当審において平成23年4月13日付けで拒絶理由が通知され、平成23年10月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成23年10月13日付けの手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに平成21年11月4日付け手続補正書によって補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
燃料アキュムレータ内の圧力を制御するための、内燃機関のためのアキュムレータ燃料噴射システムのための圧力制御弁であって、該圧力制御弁(1)は、高圧ポンプ(2)の出口に配置されており、該圧力制御弁(1)は、孔内で軸方向摺動可能にガイドされているピストン状の弁部材を備えており、該弁部材は閉鎖方向で閉鎖部材へと作用し、この閉鎖部材を弁座に向かって押圧し、この弁部材は、給電可能な電磁石の可動子を形成するものであり、弁座に隣接して高圧ポンプ(2)側に供給部(17)が設けられていて、該供給部(17)を介して燃料アキュムレータ(4)内の圧力が閉鎖部材に作用しており、圧力制御弁(1)が開放すると、供給部(17)の燃料が弁座を通過して燃料タンク(3)へと流れるようになっている形式のものにおいて、
圧力制御弁(1)の電磁石(12)の力の作用とは無関係に、燃料アキュムレータ(4)において、緊急時走行の噴射過程を行うために十分な高さの最低限の圧力を形成するように、圧力制御弁(1)の供給部(17)に、絞り部材が取り付けられていて、この絞り部材によって、圧力制御弁(1)が開放している状態において最低限の圧力が制御されることを特徴とする、アキュムレータ燃料噴射システムのための圧力制御弁。」

2.引用文献に記載された発明
(1)引用文献
当審における拒絶理由に引用された文献である特開2001-132578号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「【0008】図1には、内燃機関、特に自己点火式の内燃機関のための蓄圧式燃料噴射系が断面図で示されている。コモンレール燃料噴射系とも呼ばれる蓄圧式燃料噴射系は高圧ポンプ10を有しており、この高圧ポンプ10によって、高圧下の燃料が燃料貯蔵タンク11から燃料蓄圧器12に搬送される。燃料蓄圧器12はたとえば管状の、いわゆるレールとして形成されている。燃料蓄圧器12から管路14が内燃機関16の燃料噴射位置に導出されており、管路14にはそれぞれ1つの弁18が配置されている。燃料蓄圧器12内の圧力を調整するために圧力調整弁20が設けられており、この圧力調整弁20は高圧ポンプ10の出口または燃料蓄圧器12に配置することができる。
【0009】圧力調整弁20は弁本体24を有しており、この弁本体24に孔26が形成されている。孔26内にはプランジャ状の弁部材28が軸方向摺動可能に配置されている。この弁部材28については後で詳しく説明する。弁本体24には固定フランジ22が形成されており、この固定フランジ22を介して弁本体24は高圧ポンプ10または燃料蓄圧器12に固定されている。弁本体24は孔26を同軸的に取り囲むリング室30を有しており、このリング室30内に巻線を備えた電磁石32が配置されている。弁本体24に接続エレメント23が被せ嵌められており、この接続エレメント23は電磁石32の電気接触に役立つ。弁本体24の、接続エレメント23に向いた側にばね受け34が配置されており、このばね受け34はリング室30をカバーしている。ばね受け34の、リング室30とは反対側に、たとえば圧縮コイルばねとして構成され、プレロードを受けているばね36が支持されている。ばね36は、ばね受け34とは反対側で、弁本体24に結合された蓋体38に支持されており、この蓋体38は弁本体24の、中空円筒形の付加部40に嵌め込まれている。弁本体24の付加部40はリング室30より大きい横断面を有しており、蓋体38はたとえば付加部40を縁曲げすることによって弁本体24に保持することができる。弁部材28は、孔26から突出し、付加部40に突入しており、その突入する箇所で縮小された直径を有しているので、弁部材28にリング状肩部42が形成されている。弁部材28の端部がばね受け34の孔に突入しており、このばね受け34は軸方向で弁部材28のリング状肩部42に支持されている。
【0010】孔26は、付加部40とは反対側の端部領域に拡大された直径を有しており、この直径部分に弁挿入体44が挿入されている。たとえば弁本体24から突出する縁部が弁挿入体44に沿って縁曲げされて、弁挿入体44は弁本体24に保持される。弁挿入体44は孔46を有しており、この孔46は弁本体24の孔26に対して少なくともほぼ同軸的に配置されており、この孔46に弁部材28の端部領域が突入し、この端部領域はたとえばほぼ円錐形に先細に構成することができる。弁挿入体44内の孔46の直径は、弁部材28から離れる方向で先細になっている。この場合直径が小さくなる孔46の移行部に弁座48が形成されており、この弁座48はたとえばほぼ円錐形に構成することができる。弁座48に続く区分の後方で孔46は再び大きい直径を有している。弁挿入体44内に、たとえばボール状の閉鎖エレメント50が配置されており、この閉鎖エレメント50は弁座48と協働する。弁挿入体44は、弁部材28の端部領域が孔46に突入する領域において、単数または複数の開口52を有しており、開口52を通って、孔46は弁挿入体44の周辺部に接続されている。」(段落【0008】ないし【0010】)

イ.「【0013】以下に圧力調整弁20の機能を説明する。電磁石32が通電されていないと、弁部材28もしくは128は、閉鎖ばねを形成するばね36によって、弁挿入体44に押し込められ、この場合、弁部材28,128の端面が閉鎖エレメント50に接触し、この閉鎖エレメント50を弁座48に押しつける。閉鎖エレメント50は、高圧ポンプ10の出口側の圧力もしくは燃料蓄圧器12の圧力によって負荷されており、閉鎖エレメント50に対する圧力は閉鎖ばね36の力に対抗する力を形成する。圧力によって形成された力が閉鎖ばね36の力よりも大きいと、閉鎖エレメント50は弁座48から離間され、弁部材28,128およびばね受け34と一緒に摺動される。開放された状態の圧力調整弁20では、燃料が燃料蓄圧器12から孔46と、弁座48と、弁挿入体44の開口52とを通って、たとえば燃料貯蔵タンク11である放圧室に流出される。電磁石32が通電されていないと、圧力調整弁20は燃料蓄圧器内の圧力が比較的小さい場合でも開放される。この圧力は閉鎖ばね36の力によって規定される。燃料蓄圧器12内の圧力を高めたいときには、電磁石32が通電されるので、閉鎖ばね36の力に対して付加的に、弁部材に作用する磁力によっても弁部材28,128が閉鎖方向で負荷され、閉鎖エレメント50が弁座48に押し付けられる。燃料蓄圧器12内の圧力によって形成された、閉鎖エレメント50に対する力が、閉鎖ばね36の力と、弁部材28,128に対する磁力との合計よりも大きいと、圧力調整弁20は開放し開放位置に維持され、燃料蓄圧器12内の圧力が一定に保持される。高圧ポンプ10の搬送量の変化、または内燃機関16に燃料が噴射される場合の燃料蓄圧器12からの燃料の取り出しを、圧力調整弁20が種々異なる開放によって補償する。電磁石32によって弁部材28もしくは128に及ぼされる磁力は、たとえば単調に増加する特性曲線を備えた電磁石32によって流される電流に関連している。電磁石32の通電は制御装置によって規定される。制御装置に内燃機関16の様々な運転パラメータの信号が供給され、この制御装置によって、内燃機関16の各運転状態に必要な燃料蓄圧器12内の圧力を調整するように、電磁石32のための電流強さが調整される。電磁石32のための電流の強さは、たとえばプラス幅変調を備えた電流供給がタイミング制御されることによって変化することができる。」(段落【0013】)

(2)引用文献に記載された発明
以上(1)ア.及びイ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献には以下の事項が記載されていることがわかる。

ウ.例えば、段落【0010】における「弁挿入体44は孔46を有しており」、「弁挿入体44内の孔46の直径は、弁部材28から離れる方向で先細になっている。」、「この場合直径が小さくなる孔46の移行部に弁座48が形成されており」及び「弁座48に続く区分の後方で孔46は再び大きい直径を有している」並びに【図1】の記載を参酌すると、弁挿入体44の孔46は、図1で示すと、上から移行部で円錐径の弁座48を形成し、弁座に続く区分(以下、「区分A」という。)で小さな直径となり、弁座に続く区分の後方(以下、「後方区分B」)で再び大きな直径となっていることが分かる。
そして、区分A及び後方区分Bは、圧力制御弁20の弁挿入体44の孔46であることから、後方区分Bに、区分Aが取り付けられていると表現できる。

エ.例えば、段落【0013】における「電磁石32が通電されていないと、弁部材28もしくは128は、閉鎖ばねを形成するばね36によって、弁挿入体44に押し込められ、この場合、弁部材28,128の端面が閉鎖エレメント50に接触し、この閉鎖エレメント50を弁座48に押しつける。閉鎖エレメント50は、高圧ポンプ10の出口側の圧力もしくは燃料蓄圧器12の圧力によって負荷されており、閉鎖エレメント50に対する圧力は閉鎖ばね36の力に対抗する力を形成する。」及び「開放された状態の圧力調整弁20では、燃料が燃料蓄圧器12から孔46と、弁座48と、弁挿入体44の開口52とを通って、たとえば燃料貯蔵タンク11である放圧室に流出される。」並びに【図1】の記載を参酌すると、弁座48に隣接して高圧ポンプ10側に後方区分Bが設けられて、該後方区分Bを介して燃料蓄圧器12内の圧力が閉鎖エレメント50に作用しており、圧力制御弁20が開放すると、後方区分Bの燃料が弁座を通過して燃料貯蔵タンク11へと流れるようになっていることが分かる。

以上(1)及び(2)におけるア.ないしエ.並びに図面を参酌すると、引用文献には、以下の発明が記載されているといえる。
「燃料蓄圧器12内の圧力を制御するための、内燃機関16のための蓄圧式燃料噴射系のための圧力制御弁20であって、該圧力制御弁20は、高圧ポンプ10の出口に配置されており、該圧力制御弁20は孔26内で軸方向摺動可能にガイドされているプランジャ状の弁部材28を備えており、該弁部材28は閉鎖方向で閉鎖エレメント50へと作用し、この閉鎖エレメント50を弁座48に向かって押圧し、この弁部材28は、給電可能な電磁石32の可動子を形成するものであり、弁座48に隣接して高圧ポンプ10側に後方区分Bが設けられて、該後方区分Bを介して燃料蓄圧器12内の圧力が閉鎖エレメント50に作用しており、圧力制御弁20が開放すると、後方区分Bの燃料が弁座を通過して燃料貯蔵タンク11へと流れるようになっている形式のものにおいて、
圧力制御弁20の後方区分Bに、区分Aが取り付けられている、蓄圧式燃料噴射系のための圧力制御弁20。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「燃料蓄圧器12」は、その目的及び機能からみて、本願発明における「燃料アキュムレータ」に相当し、以下同様に「内燃機関16」は「内燃機関」に、「圧力制御弁20」は「圧力制御弁」に、「高圧ポンプ10」は「高圧ポンプ」に、「孔26」は「孔」に、「閉鎖エレメント50」は「閉鎖部材」に、「電磁石32」は「電磁石」に、「蓄圧式燃料噴射系」は「アキュムレータ燃料噴射システム」に、「弁座48」は「弁座」に、「後方区分B」は「供給部17」に、「燃料貯蔵タンク11」は「燃料タンク(3)」に、「区分A」は「絞り部材」に、「プランジャ状の弁部材28」は「ピストン状の弁部材」に各々相当することから、本願発明と引用文献に記載された発明とは、
「 燃料アキュムレータ内の圧力を制御するための、内燃機関のためのアキュムレータ燃料噴射システムのための圧力制御弁であって、該圧力制御弁は、高圧ポンプの出口に配置されており、該圧力制御弁は、孔内で軸方向摺動可能にガイドされているピストン状の弁部材を備えており、該弁部材は閉鎖方向で閉鎖部材へと作用し、この閉鎖部材を弁座に向かって押圧し、この弁部材は、給電可能な電磁石の可動子を形成するものであり、弁座に隣接して高圧ポンプ側に供給部が設けられていて、該供給部を介して燃料アキュムレータ内の圧力が閉鎖部材に作用しており、圧力制御弁が開放すると、供給部の燃料が弁座を通過して燃料タンクへと流れるようになっている形式のものにおいて、
圧力制御弁の供給部に、絞り部材が取り付けられているアキュムレータ燃料噴射システムのための圧力制御弁。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明においては、「圧力制御弁の電磁石の力の作用とは無関係に、燃料アキュムレータにおいて、緊急時走行の噴射過程を行うために十分な高さの最低限の圧力を形成するように、圧力制御弁の供給部に、絞り部材が取り付けられていて、この絞り部材によって、圧力制御弁が開放している状態において最低限の圧力が制御される」のに対して、引用文献に記載された発明においては「絞り部材」に相当するものが開示されているものの、そのように特定されていない点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
相違点について検討する。
一般に、エンジンの再始動のための燃料噴射を行う最低限の圧力を形成するように、絞り部材を用いて圧力制御弁が開放している状態において最低限の圧力が制御するようにしたエンジンの燃料噴射用の圧力制御弁は周知(例えば、当審の拒絶理由で提示したように特開平11-247734号公報参照、以下、「周知技術1」という。)であり、また、緊急時走行の噴射過程を行うために、十分な高さの最低限の圧力を形成するようにした蓄圧式燃料噴射系の制御弁も周知(例えば、当審の拒絶理由で提示したように特開2003-161196号公報、特開平7-293394号公報参照、以下、「周知技術2」という。)であることから、引用文献に記載された発明に上記周知技術1及び周知技術2を適用して、相違点に係る本願発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-16 
結審通知日 2011-11-18 
審決日 2011-11-29 
出願番号 特願2004-90228(P2004-90228)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 訓  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 金澤 俊郎
柳田 利夫
発明の名称 アキュムレータ燃料噴射システムのための圧力制御弁  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  

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