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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25J
管理番号 1255597
審判番号 不服2011-7087  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-05 
確定日 2012-04-16 
事件の表示 特願2001- 53227「手持ち操作装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月10日出願公開、特開2002-254365〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成13年2月27日の特許出願であって、平成22年8月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月29日に手続補正がなされ、同年12月24日付けで拒絶査定がされ、平成23年4月5日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、当審において同年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月30日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年1月30日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「片手で両側面から挟持され、当該両側面の一方の側面を当該片手の指、他方の側面側を当該片手の手の平で挟持される両側面を有する筐体と、
前記筐体の両側面のうち、いずれか1つの側面のみに設けられ、前記指又は手の平で押えて操作することができる大きさの押しボタンスイッチと、
を備え、
前記押しボタンスイッチは、前記手の平で押さえられるときに、親指と人差し指との間を受ける凹みを有し、
親指と人差し指との間で当該押しボタンスイッチの凹みを操作する手持ち操作装置。」

3.刊行物記載の発明
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平11-58289号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はロボット非常停止用デッドマンスイッチ機構並びに該機構を搭載した教示操作盤に関する。」

イ.段落0051?0054
「【0051】以上説明した2つの実施形態では、スイッチ、作用子、操作子等を1組づつ教示操作盤の左右両側に配置しているが、他の種々の配置方式を採用することも出来る。本発明の思想を適用出来る教示操作盤(乃至ケース)の全体形状にもバリエーションがあり、それら形状に応じて、機構各部、特に操作子の配置方式が設計が多様に行なわれることが好ましい。
【0052】そこで、教示操作盤(乃至ケース)の全体形状の代表例として、図8(a)?(d)に示した型1?型4を考え、それらに適合したスイッチ機構の配置方式について、図9?図16を順次参照し、第3実施形態?第13実施形態として簡単に箇条書形式で説明する。図8中で、符号DPはディスプレイ、符号KYはキーボード(諸操作ボタンを含む)、符号BH1,BH2は把持ハンドルを表わしている。
【0053】[図9(a);型1に適用/第3実施形態]ケース後部(オペレータから見て手前側)の両側部に2個のグリップレバーGL1、GL2を配置し、1個の従動レバーSLを旋回動作させる。従動レバーSLの2個のヘッドHD1、HD2で2個のスイッチSW1、SW2を同時にON/OFFする。
【0054】[図9(b);型1に適用/第4実施形態]ケース後部(オペレータから見て手前側)の一方の側部に1個のグリップレバーGLを配置し、1個の従動レバーSLを旋回動作させる。従動レバーSLの2個のヘッドHD1、HD2で2個のスイッチSW1、SW2を同時にON/OFFする。」

ウ.段落0062
「【0062】[図15(a)、(b);型3に適用/第12実施形態]掌大の小型の教示操作盤に適用した例である。(a)に示したように、ケース両側部に1個づつのグリップレバーGL1、GL2を配置し、従動レバーSLを旋回動作させる。従動レバーSLの2個のヘッドHD1、HD2で2個のスイッチSW1、SW2を同時にON/OFFする。(b)に示したように、例えば左手HLの掌でケースを包み込むように把持し、一方のグリップレバーGL1を操作する。」

エ.図15
ケースの一方の側部を片手の指、他方の側部を片手の手の平で挟持していること、
グリップレバーGL1、GL2が、指又は手の平で押えて操作することができる大きさであること、が看取できる。

これらを、図面、特に図15を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理する。
上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「片手HLで包み込むように把持され、両側部の一方の側部を当該片手の指、他方の側部側を当該片手の手の平で挟持される両側部を有するケースと、
前記ケースの両側部に設けられ、前記指又は手の平で押えて操作することができる大きさのグリップレバーGL1、GL2と、
を備え、
親指と人差し指との間で一方のグリップレバーGL1を操作する、デッドマンスイッチ機構を搭載した掌大の小型の教示操作盤。」

また、刊行物1には、特に上記イ.記載事項、図9を参照すると、以下の事項(以下「刊行物1事項」という。)も記載されていると認められる。
「ケースの両側部に2個のグリップレバーGL1、GL2を配置するもの、又はケースの一方の側部に1個のグリップレバーGLを配置するもの。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「包み込むように把持」は本願発明の「両側面から挟持」に相当し、同様に、「側部」は「側面」に、「ケース」は「筐体」に、「グリップレバーGL1、GL2」は「押しボタンスイッチ」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「デッドマンスイッチ機構を搭載した掌大の小型の教示操作盤」と、本願発明の「手持ち操作装置」とは、「手持ち操作器」である限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「片手で両側面から挟持され、当該両側面の一方の側面を当該片手の指、他方の側面側を当該片手の手の平で挟持される両側面を有する筐体と、
前記筐体の両側面に設けられ、前記指又は手の平で押えて操作することができる大きさの押しボタンスイッチと、
を備え、
親指と人差し指との間で当該押しボタンスイッチを操作する手持ち操作器。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:押しボタンスイッチの位置について、本願発明では「いずれか1つの側面のみ」に設けられるが、刊行物1発明では「両側面」に設けられる点。
相違点2:押しボタンスイッチの形状について、本願発明では「押しボタンスイッチは、手の平で押さえられるときに、親指と人差し指との間を受ける凹み」を有するが、刊行物1発明では凹みを有しない点。
相違点3:「手持ち操作器」について、本願発明では「手持ち操作装置」であるが、刊行物1発明では「デッドマンスイッチ機構を搭載した掌大の小型の教示操作盤」である点。

相違点1について検討する。
押しボタンスイッチを「いずれか1つの側面のみ」とするもの、「両側面」とするもの、いずれも、刊行物1事項のとおり知られており、必要に応じて選択されている。
刊行物1発明において、押しボタンスイッチが1つで十分である場合に、「いずれか1つの側面のみ」とすることは、製造の手間、費用の削減の観点から、当然考慮すべき設計的事項にすぎない。

相違点2について検討する。
本願発明の「押しボタンスイッチは、手の平で押さえられるときに、親指と人差し指との間を受ける凹み」について、技術的意義をみると、明細書には、以下の記載がある。
「右手で手持ち操作装置を持った場合は(図2)、手の平を使って押えることができるので、右手あるいは左手のどちらでも操作しやすくなる」(段落0008)
「押しボタンスイッチを少なくとも4本の指で同時に押えることができる大きさにしたので、右手あるいは左手のどちらでも操作しやすくなる」(段落0010)
図2には、親指と人差し指との間が、押しボタンスイッチの凹みに接している状態が記載されている。
すなわち、手の親指と人差し指との間の形状に合わせ、凹みを設けることで、操作しやすくなるためのものと解される。
手の親指と人差し指との間の形状に合わせ、凹みを設けることで、操作しやすくするため「凹み」を設けることは、拒絶理由で周知例として引用した特開平5-227078号公報の段落0014、図2、図9、図10、同じく特開平9-83402号公報の段落0015、図2、新たに示す特開2000-294947号公報の段落0026、図1、同じく特開平8-318205号公報の段落0013、図7、同じく特開昭64-32244号公報の第2ページ右下欄第5?9行、第1図、第5図にみられるごとく周知である。
そして、かかる周知技術により、手の親指と人差し指との間で「角部」が当たるようなことがなくなり、手になじみ、操作しやすくなることが期待できるから、これを刊行物1発明に適用することは、必要に応じてなしうる事項である。

請求人は、特開平5-227078号公報、特開平9-83402号公報のものは、いずれも指先のための凹部であり、手の親指と人差し指との間のための凹部ではない旨、主張する。
しかし、特開平5-227078号公報については、図9の状態で、親指により機器のボタン操作を行う場合、凹部は「親指と人差し指との間」に位置することになる。また、特開平9-83402号公報については、段落0034に「掌の親指の付根に相当する部分を親指の付根の形状に合わせて窪ませ、窪み部分34を形成」と記載されているように、「窪み部分34」は「親指と人差し指との間」に位置するものである。
よって、請求人の主張は根拠がない。

相違点3について検討する。
刊行物1発明の「デッドマンスイッチ機構を搭載した掌大の小型の教示操作盤」に用いられる「押しボタンスイッチ」と、本願発明の「手持ち操作装置」の「押しボタンスイッチ」は、「スイッチ」としての機能が異なるものの、本願発明は、発明の詳細な説明の段落0004に「本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、右手あるいは左手のどちらでも操作しやすい手持ち操作装置を得ることを目的とする」と記載されているように、「操作性」を課題とするもので、「押しボタンスイッチ」の機能を課題とするものではない。
したがって、相違点3は、単なる用途の差違にすぎない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-16 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2001-53227(P2001-53227)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 崇文佐々木 一浩  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 藤井 眞吾
菅澤 洋二
発明の名称 手持ち操作装置  

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