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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25B
管理番号 1255724
審判番号 不服2011-7099  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-05 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2000-275115号「ペア型の冷凍装置およびマルチ型の冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年3月27日出願公開、特開2002-89978号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年9月11日の出願であって、平成23年1月4日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月11日)、これに対し、平成23年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、平成23年6月2日付けで審尋がなされ、それに対して平成23年8月4日に回答書が提出され、さらに、平成23年11月22日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して平成24年1月27日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年4月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「圧縮機(23)、凝縮器(22)および膨張手段(26)を有する一つの室外機と、蒸発器(2)を有する一つの室内機とを備えた冷媒回路に、冷媒としてR32を循環させて冷凍サイクルを実行するペア型の冷凍装置において、
上記冷媒回路に対する上記R32の全充填量が、上記冷媒回路の成績係数がピークを呈する範囲である冷凍能力1kW当たり120g?450gの範囲内にあることを特徴とするペア型の冷凍装置。」

第3 引用例
1.当審の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開2000-28238号公報(以下「引用例1」という。)には、「空気調和機」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下、同様。)

ア.段落【0027】、【0028】
「図1に、この発明の空気調和機の実施の形態の構成を示す。この空気調和機は、室内機1と室外機2と、この室内機1と室外機2を接続している連絡配管3および5を備える。連絡配管3は継ぎ手6で室内機1内の配管7に接続されており、連絡配管5は継ぎ手9で室内機1内の配管8に接続されている。
上記室内機1は、室内熱交換器10と上記配管8に取り付けられた感震装置11と制御部12を有している。また、上記室外機2は、上記連絡配管3に接続された電動膨張弁13と、この電動膨張弁13を室外熱交換器15に接続する冷媒配管16と、室外熱交換器15を4路切替弁17に接続する冷媒配管18を有している。この4路切替弁17は上記連絡配管5に接続されている。また、この4路切替弁17の2つのポート17a,17bは圧縮機20に接続されている。そして、この圧縮機20の吐出側20aとポート17bとの間に、吐出方向に向かって順方向の逆止弁21が接続されている。」
イ.段落【0040】
「また、上記実施の形態では、弱燃焼性を有する低GWP冷媒としてR32を用いたが、燃焼性を有する冷媒として、R32以外のR152a,R290(プロパン),R600(ブタン),R600a(イソブタン),R717(アンモニア),R1270(プロピレン)、さらには、これらの混合物や、これら以外の冷媒との混合物を用いる場合にも本発明を適用できる。」
そして、図1には、圧縮機20、室外熱交換器15、電動膨張弁13を有する一つの室外機2と、室内熱交換器10を有する一つの室内機1を備えたペア型の空調装置が図示されている。また、圧縮機20、室外熱交換器15、電動膨張弁13、室内熱交換器10、連絡配管3,5、配管7,8、冷媒配管16,18、4路切替弁17からなる回路は冷媒回路ということができる。そして、冷媒としてR32を用いるものであり、R32を循環させて冷凍サイクルを実行するものである。

上記記載事項及び認定事項を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「圧縮機20、室外熱交換器15および電動膨張弁13を有する一つの室外機2と、室内熱交換器10を有する一つの室内機1とを備えた冷媒回路に、冷媒としてR32を循環させて冷凍サイクルを実行するペア型の空調装置。」

2.当審の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平6-347109号公報(以下「引用例2」という。)には、その従来技術として以下の事項が記載されている。

ア.段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は冷凍サイクル装置に関するものであり、例えば自動車用空調装置に用いて好適である。」
イ.【0002】?【0004】
「 【従来の技術】一般に、冷凍サイクルは凝縮器出口においてスーパークールをとることにより冷凍能力が向上する。しかし、あまりスーパークールを大きくとりすぎると、高圧側冷媒の圧力が上昇して圧縮機の必要動力も増加し、結果的に圧縮に必要な仕事の熱当量が増加するために成績係数COPは減少してしまう。
すなわち、冷凍サイクルが最適な冷凍能力を発揮するためには、冷凍サイクルを成績係数COPが最大となる最適なスーパークールをとるように運用させる必要がある。このような観点に基づいて、特開昭55-134253号公報の冷凍装置が提案されている。この冷凍装置では、レシーバが排除され、レシーバと同等の容積を有する所定の長さの径大部が凝縮器内に設けられた。そして、径大部内での液相または気相の占める割合を調節することにより、適度なスーパークールをとり、ひいては常に冷凍能力が有効に発揮できる状態で冷凍装置を運転させるようにしていた。
また、特開平3-95368号公報において提案された凝縮器では、凝縮器に主凝縮器部、気液分離部および補凝縮器部が設けられ、気液分離部の前後に位置する主凝縮器部内および補凝縮器部内において冷媒の冷却および凝縮が行われていた。さらに、補凝縮器部には冷媒状態を目視にて観察するサイトグラスが設けられていた。そして、冷媒充填量を調節することにより、気液分離部内で適度なスーパークールを得られるように工夫されていた。」

上記記載のア、イの記載によれば、引用例2には、「冷凍サイクルを成績係数COPが最大となるように運用させるために、冷媒充填量を調節すること」が記載されている。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能、作用からみて、引用発明の「室外熱交換器15」は、本願発明の「凝縮器(22)」に相当し、以下同様に、「電動膨張弁13」は「膨張手段(26)」に、「室内熱交換器10」は「蒸発器(2)」に、それぞれ相当する。

そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「圧縮機、凝縮器および膨張手段を有する一つの室外機と、蒸発器を有する一つの室内機とを備えた冷媒回路に、冷媒としてR32を循環させて冷凍サイクルを実行するペア型の冷凍装置。」

[相違点]
冷媒回路に対するR32の全充填量について、本願発明では、冷媒回路の成績係数がピークを呈する範囲である冷凍能力1kW当たり120g?450gの範囲内にあるのに対して、引用発明では、R32の全充填量が明らかでない点。

第5 当審の判断
引用例2に記載された事項のとおり、「冷凍サイクルを成績係数COPが最大となるように運用させるために、冷媒充填量を調節すること」は当業者が当然考慮する事項であって、冷媒回路の成績係数が最大となるように冷媒充填量は調整されるものである。
ところで、COPの評価には、能力クラス別に、COPに対して最も支配的な熱交換器の内容積を種々換えて測定することが、当業者には技術常識であることから、冷媒としてR32を選択するに当たって、COPを評価するために実験等を通して、冷媒の全充填量の最適な範囲を設定することに困難性はなく、また、冷媒の全充填量を冷凍能力1kW当たりの重量で表すことは当業者の通常の創作能力の発揮に止まるものであり、相違点に係る発明特定事項とすることは、引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。このことは、例えば、拒絶査定に引用された特開平11-270918号公報には、冷媒及び冷凍能力は明らかではないが、冷媒回路の冷媒充填量がCOPが定格運転で最大値となった状態では1000gとなることが記載されており、冷凍能力として2.2kW?5.0kWが能力クラスとして通常のものであるから、1kW当たり455g?200gとなり、冷媒の種類を考慮しても本願発明で特定している冷媒の全充填量が120g?450gの範囲が特別な数値範囲でないことからも明らかである。
なお、本願発明において、その冷媒回路(回路の長さ、アキュムレータの容量等)が特定されていないことから、R32の全充填量の数値範囲の技術的な意味が明らかでない。すなわち、冷媒回路において、配管長は冷媒充填量に大きく影響する(例えば、特開平5-248717号公報(段落【0005】)、特開平10-153354号公報(段落【0002】)、特開2000-105030号公報(段落【0008】))ものであり、回路全体の容量が不明であるのに、冷媒の全充填量を特定しても、初期の目的がどのように達成できるのか明らかでない。この点に関して、請求人は性能試験はJISに準拠して行う旨及び回路長やアキュムレータの容量等のCOPに対する影響は無視できる程微少であり、熱交換器の内容積に比べて極めて少ない旨主張しているが、本願発明は性能試験を行うための発明ではないこと及び配管長は冷媒充填量に大きく影響することからみて、請求人の主張は失当である。

そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明、引用例2に記載された事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-15 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2000-275115(P2000-275115)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千壽 哲郎久保 克彦山崎 勝司  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 松下 聡
佐野 遵
発明の名称 ペア型の冷凍装置およびマルチ型の冷凍装置  
代理人 仲倉 幸典  
代理人 田中 光雄  
代理人 山崎 宏  

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