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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1255738
審判番号 不服2011-25973  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-01 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2001-140926「自立性袋」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月27日出願公開、特開2002-337886〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成13年5月11日に出願されたもので、平成22年11月29日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての平成23年2月3日付け手続補正書が提出されたものの、同年8月31日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたものである。

2.原査定
原査定の拒絶理由の1つは、以下のとおりのものと認める。

「この出願の全ての請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である登録実用新案第3041522号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

なお、ここにおける「登録実用新案第3041522号公報」を、以下、「引用例」という。

3.原査定の拒絶理由について

3-1.本件の発明

1)本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の請求項1に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、以下のとおりのものと認める。

「最内層にヒ-トシ-ル性樹脂層を有する積層材を2枚用意し、その一方を前板、その他方を後板とし、そして、その両者を、最内層に位置するヒ-トシ-ル性樹脂層の面を対向させて配置し、更に、上記の前板と後板との層間の下端部に、上記と同様な積層材を使用し、それを逆V字型に折り曲げ形成した底板を、そのヒ-トシ-ル性樹脂層の面を内面にして配置し、次いで、上記の前板、後板、および、底板を、その重合部分の両側端部、下端部において、そのヒ-トシ-ル性樹脂層を介してヒ-トシ-ルして、それぞれ、側縁熱接着部、底壁熱接着部を形成すると共にその上端辺に開口部を形成した構成からなる自立性袋において、
上記の自立性袋を構成する前板、後板、および、底板が、少なくとも、基材フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材と、ヒ-トシ-ル性樹脂層とを、そのバリア性基材を構成するガスバリア性塗布膜の面とヒ-トシ-ル性樹脂層の面とを対向させて、積層した積層材から構成されることを特徴とする自立性袋。」

2)ここで、上述したように、本件発明を「基材フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材と、ヒ-トシ-ル性樹脂層とを、そのバリア性基材を構成するガスバリア性塗布膜の面とヒ-トシ-ル性樹脂層の面とを対向させて、」との、いわゆる、発明特定事項を有するものとし、バリア性基材は、少なくとも、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜をその構成要素として有するものと認定した点について、補足しておく。
本件明細書等の、本件に係る発明の説明としての、図1を参照して記載している段落【0008】には、バリア性基材4と、無機酸化物の蒸着膜2やガスバリア性塗布膜3とは、別の構成要素として記載されており、上述した本件発明の認定と整合しない記載となっているが、図1及び段落【0008】の記載を詳細に見ると、「無機酸化物の蒸着膜2」、「ガスバリア性塗布膜3」及び「バリア性基材4」を総称して「ヒ-トシ-ル性樹脂層5」としており、これら「無機酸化物の蒸着膜2」等からなる複数層がヒ-トシ-ル性樹脂層であるとの記載は、きわめて不明りょうといえる。
そこで、本件に係る発明の実施例としての記載のある段落【0066】を見ると、ここには、要すれば、酸化珪素の蒸着膜を基材フィルムの一方の面に形成し、該蒸着膜の面をプラズマ処理面とし、該プラズマ処理面にガスバリア性塗布膜を形成してバリア性基材を製造し、バリア性基材のガスバリア性塗布膜の面に、ヒ-トシ-ルに利用する低密度ポリエチレンフィルムをドライラミネ-トして積層材を製造した旨が記載され、少なくとも、ガスバリア性塗布膜は、バリア性基材の構成要素として記載されている。
また、本件に係る発明の効果としての記載のある段落【0076】を見ると、ここには「本発明は、基材フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材に着目し、」とあり、少なくとも、ガスバリア性塗布膜は、バリア性基材の構成要素として記載されている。
以上の検討を踏まえると、本件発明を、「1)」で認定したとおりとするのが相当といえる。

3-2.引用例の発明

1)引用例には、以下の記載a?fが認められる。

a;「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】農薬を、水蒸気透過率が2g/m^(2) ・day以下、好ましくは、1g/m^(2)・day以下のアルミニウム層を有しない構成の積層包装材料で密封包装した農薬包装体。
【請求項2】積層包装材料が、外装材の片側に接着層を介して基材に金属酸化物蒸着層を設け、この蒸着層面に水溶性高分子と金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む被覆層を設けたバリアフィルム、およびシーラント層を設けた構成とした、請求項1に記載した農薬包装体。」
b;「【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本考案の包装体に用いる積層包装材料の構成を説明する断面図である。
図1において、1は外装材であり、2は基材、3は金属酸化物蒸着層、4は被覆層、5はシーラント層の積層構成の包装材料である。」及び【図1】(2頁)
c;「【0013】
基材2は、シート状またはフィルム状のものであって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミドなど、あるいはこれらの高分子の共重合体など、通常包装材料として用いられるプラスチックフィルムないしはシートが使用できる。」
d;「【0016】
被覆層4は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなどの処理を行ったものを混合した溶液を、プラスチック基材2上の無機化合物蒸着層3にコーティング、加熱乾燥し、形成したものである。・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。)。
【0019】
上述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらにコーティング剤のバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。」
e;「【0022】
そして、シーラント層5は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体等ヒートシール性を有する樹脂であれば目的に応じて使用することができる。
このシーラント層は、フィルム化した材料を接着剤を介してラミネートして設けてもよいし、溶融した樹脂を直接押出しコーティングによりラミネートしてもよい。」
f;「【0023】
包装体の形状は、前記角底状以外、積層包装材料のヒートシール性樹脂層を内面として、ピロー包装袋、4方シール袋、3方シール袋、ガゼット状袋、スタンディングパウチ等の容器に成形して用いることができる。」

2)引用例には、記載bを参照しつつ、記載aを見ると、「水蒸気透過率が2g/m^(2) ・day以下の、アルミニウム層を有しない構成の積層包装材料で農薬を密封包装した農薬包装体において、上記積層包装材料が、外装材の片側に接着層を介して基材に金属酸化物蒸着層を形成したものを設け、この蒸着層の面に水溶性高分子と金属アルコキシド又はその加水分解物を含む被覆層を設け、更に、シーラント層を設けた上記農薬包装体。」の発明が記載されていると認められる。
そこで、更に、引用例の記載c、e?fを見ると、上記発明における「基材」を「プラスチックフィルム」と、また、同じく「包装体」を「スタンディングパウチ」とすることが記載され、更に、同じく「シーラント層」として「樹脂層」を使用できることが記載されている。更に、記載dを見ると、上記発明における「被覆層」は、バリア性を有し、且つ、コーティングにより形成されたもので、記載bを併せ見ると、「被覆層」の面と「シーラント層」の面とを対向させて積層していることも見て取れる。
以上の検討を踏まえ、更に、上記発明において、その積層包装材料に注目した発明を把握できるのは明らかで、引用例には、以下の積層包装材料についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載され、該引用発明については、これを農薬を密封包装するスタンディングパウチに供することも記載されていると認められる。

「水蒸気透過率が2g/m^(2) ・day以下の、アルミニウム層を有しない構成の積層包装材料であって、
外装材の片側に接着層を介してプラスチックフィルムである基材に金属酸化物蒸着層を形成したものを設け、この蒸着層の面に水溶性高分子と金属アルコキシド又はその加水分解物を含む、コーティングにより形成されたバリア性の被覆層を設け、更に、該被覆層の面とシーラント樹脂層の面が対向するように、該シーラント樹脂層を設けた上記積層包装材料」

3-3.対比判断

1)本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「プラスチックフィルムである基材」、「コーティングにより形成されたバリア性の被覆層」及び「シーラント樹脂層」は、本件発明の「基材フィルム」、「ガスバリア性塗布膜」及び「ヒ-トシ-ル性樹脂層」に対応し、本件発明の「基材フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材と、ヒ-トシ-ル性樹脂層とを、そのバリア性基材を構成するガスバリア性塗布膜の面とヒ-トシ-ル性樹脂層の面とを対向させて、積層した積層材」は、引用発明に相当するから、結局の所、本件発明は、

「引用発明、そのシーラント樹脂層(審決注;本件発明では「ヒ-トシ-ル性樹脂層」)を最内層としたものを、2枚用意し、その一方を前板、その他方を後板とし、そして、その両者を、最内層であるシーラント樹脂層の面を対向させて配置し、更に、上記の前板と後板との層間の下端部に、引用発明と同様な積層材を使用し、それを逆V字型に折り曲げ形成した底板を、そのシーラント樹脂層の面を内面にして配置し、次いで、上記の前板、後板、および、底板を、その重合部分の両側端部、下端部において、そのシーラント樹脂層を介してヒ-トシ-ルして、それぞれ、側縁熱接着部、底壁熱接着部を形成すると共にその上端辺に開口部を形成した構成からなる自立性袋」にしたものということができる。この自立性袋にした点を、以下、「相違点A」という。

2)そこで、相違点Aについて検討する。
引用発明は、先に「3-2.」の「2)」で述べたことから明らかなように、スタンディングパウチに供されるもので、その一方で、スタンディングパウチとして、「最内層にヒ-トシ-ル性樹脂層を有する積層材を2枚用意し、その一方を前板、その他方を後板とし、そして、その両者を、最内層に位置するヒ-トシ-ル性樹脂層の面を対向させて配置し、更に、上記の前板と後板との層間の下端部に、上記積層材と同様な積層材を使用し、それを逆V字型に折り曲げ形成した底板を、そのヒ-トシ-ル性樹脂層の面を内面にして配置し、次いで、上記の前板、後板、および、底板を、その重合部分の両側端部、下端部において、そのヒ-トシ-ル性樹脂層を介してヒ-トシ-ルして、それぞれ、側縁熱接着部、底壁熱接着部を形成すると共にその上端辺に開口部を形成した構成からなる自立性袋」とすることは、この出願前の周知技術であると認められるから(特開昭51-82178号公報の「かかる自立性袋?になり易い。」(2頁右上欄2行?左下欄3行)の記載、実願昭59-70795号(実開昭60-182342号)のマイクロフィルム、特開平7-232743号公報、参照。)、引用発明を該周知技術に適用すること、すなわち、相違点Aは容易になし得るものであり、また、適用したことによる格別な効果も見当たらない。

3-4.まとめ
本件発明は、引用発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、原査定の拒絶理由は相当である。

4.結び
原査定は、妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-15 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2001-140926(P2001-140926)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 真  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 佐野 健治
亀田 貴志
発明の名称 自立性袋  
代理人 金山 聡  

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