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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1256009
審判番号 不服2011-8491  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-21 
確定日 2012-04-25 
事件の表示 特願2001- 49719「樹脂製洗面ボールの取り付け構造及び取り付け方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 3日出願公開、特開2002-248059〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成13年 2月26日:出願
平成22年 8月10日:拒絶理由を通知
平成22年 8月18日:意見書及び手続補正書提出
平成22年11月24日:最後の拒絶理由通知
平成22年12月 2日:意見書及び手続補正書提出
平成23年 3月 4日:平成22年12月2日受付の手続補正に対する 補正の却下の決定,及び拒絶査定
平成23年 4月21日:拒絶査定不服審判の請求,及び手続補正書提出
平成23年 9月 7日:審尋
平成23年10月 3日:回答書提出

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年4月21日受付の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成23年4月21日受付の手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項を含むものである。
(補正前,平成22年8月18日受付の手続補正書参照。)
「【請求項1】 樹脂製洗面ボール5が表面材1と基材2からなる天板10に取り付けられた構造であって、前記樹脂製洗面ボール5の外周縁6と前記表面材1との間にスペース形成物7が介装されるともに、前記樹脂製洗面ボール5の上面と表面材1と前記スペース形成物により囲まれた空間に樹脂9が充填され、前記外周縁6の裏側と前記基材2と前記表面材1により囲まれた空間にも樹脂9が充填されてなり、前記樹脂製洗面ボール5は前記表面材1より低い位置に段差なく取り付けられてなることを特徴とする樹脂製洗面ボールの取り付け構造。」
を,
(補正後)
「【請求項1】 樹脂製洗面ボウル5の外周縁6と表面材1との間にパッキン7が、基材2に対して水平方向に、かつ前記基材2と連続しない離れた位置に前記外周縁6上の中央に介在されるともに、前記樹脂製洗面ボウル5の上面と表面材1と前記パッキン7により囲まれた空間に樹脂9が充填され、前記外周縁6の裏側と前記基材2と前記表面材1により囲まれた空間にも樹脂9が充填され、前記樹脂製洗面ボウル5が前記表面材1より低い位置に段差なくシームレスに取り付けられてなることを特徴とする樹脂製洗面ボウルの取り付け構造。」
と補正する。

2 補正の適否(補正の目的)の判断
上記補正事項の補正の目的について検討すると,補正後の請求項1に係る発明は,少なくとも,補正前の請求項1に係る発明の特定事項の一部である,「樹脂製洗面ボール5が表面材1と基材2からなる天板10に取り付けられた構造であって」という事項が削除されており,それにより,樹脂製洗面ボール5が取付けられる部位,すなわち天板10に取り付けられることが特定されないものとなるから,当該補正事項は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第4項の第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
また,上記補正事項は,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とする補正にも該当しない。

3 むすび
したがって,本件手続補正は,平成14年改正前の特許法第17条の2第4項に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年4月21日受付の手続補正は却下されたので,本願の請求項1ないし7に係る発明は,平成22年8月18日受付で手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,前記「第1 1(補正前)」に記載されたとおりのものである (以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された特開昭61-92618号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載が認められる(以下,下線は当審で付与)。
(1a)「(1)木質系基材に熱硬化性樹脂化粧板を貼着してなる天板部材において、熱硬化性樹脂化粧板の開口端は水槽フランジ部の内周端と略同一寸法で木質系基材の開口端は水槽フランジ部の内周端より大きく、かつ水槽フランジ部の外周端より小さくしかも厚みが1mm前後の第1開口端と、水槽フランジ部の外周端より大きな第2開口端とからなり、これによって形成される木質系基材の開口端段部に水槽フランジ部が当接し、前記熱硬化性樹脂化粧板の突出部と水槽フランジ部との空隙部及び水槽フランジ部裏面の凹部とに熱硬化性樹脂が充填されてなる水槽付き天板。
(2)木質系基材の開口端段部が部分的に切削除去されて開口端段部の欠損部が複数個形成されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の水槽付き天板。」(特許請求の範囲)
(1b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は新規な構造の水槽付き天板とその製造方法に関するものであり、例えば流し台、洗面台などにおいてメラミン樹脂化粧板などの熱硬化性樹脂化粧板を貼着した天板部材に水槽を取付けるに際し、・・・」(2頁左上欄8?13行)
(1c)「以下本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。まず第1図は本発明による新規な構造の水槽付き天板の部分拡大断面図を示すものである。この図における水槽付き天板は、合板基材(1)にメラミン樹脂化粧板(2)を貼着してなる天板部材において、メラミン樹脂化粧板(2)の開口端(3)は水槽フランジ部(4)の内周端(5)と略同一寸法で、合板板基材(1)の開口端は水槽フランジ部の内周端(5)より大きく、かつ水槽フランジ部の外周端(6)より小さくしかも厚みdが1mmの第1開口端(7)と、水槽フランジ部の外周端(6)より大きな第2開口端(8)とからなり、これによって形成される合板基材の開口端段部(9)に水槽フランジ部(4)が当接し、前記メラミン樹脂化旋板(2)(当審注:「化粧板(2)」の誤記と認める。)の突出部(10)と水槽フランジ部(4)との空隙部及び水槽フランジ部(4)裏面の凹部とにウレタン樹脂層(11)、(12)が充填形成されてなる水槽付き天板である。」(2頁右下欄10行?3頁左上欄6行)
(1d)「第5図の(a)から(g)は本発明による水槽付き天板の製造方法の実施例を示す工程図の部分拡大断面図である。本発明の製造方法ではまず合板基材(1)とメラミン樹脂化粧板(2)とをゴム系接着剤等で貼着する。次に合板基材(1)のメラミン樹脂化粧板(2)側に1mmの厚みを残して合板基材(1)の裏面側(14)から水槽のフランジ部の幅よりも大きく略同一形状の環状凹部(15)を切削形成する。次いで該環状凹部(15)の内周端寄りの部分(16)に水槽フランジ部の内周端(5)より大きく、かつ水槽フランジ部の外周端(6)より小さい第1開口端(7)が形成されるようにメラミン樹脂化粧板(2)の環状露出部(17)を切削形成し、更に合板基材の開口端段部(9)を部分的に切削除去した後、前記環状露出部(17)の内側の合板基材(18)の一部を残して天板鍔部(19)を設けた天板開口部(20)を切削形成する。・・・次にこの天板の環状凹部(15)に水槽(22)を取付けるに際し、第5図の(e)に示すように水槽フランジ部(4)を合板基材の開口端段部(9)に当接し水槽フランジ部裏面の凹部(23)にウレタン樹脂層(12)を注入し硬化形成させる。注入したウレタン樹脂は合板基材の開口端段部の欠損部(21)を通って水槽フランジ部(4)とメラミン樹脂化粧板の環状露出部(17)との空隙部(24)に達してウレタン樹脂層(11)及び(25)を形成する。ウレタン樹脂層(11)、(12)、(25)の硬化後例えばハンドトリマーの如き回転刃物を有する切削道具により水槽フランジ部の内周端(5)に沿って前記天板鍔部(19)及びウレタン樹脂層(25)を切削除去することにより第1図及び第4図に示す本発明の水槽付き天板が得られるものである。」(3頁左上欄11行?左下欄5行)
(1e)「〔発明の効果〕
以上示したように本発明の水槽付き天板においてはメラミン樹脂化粧板(2)の開口端(3)とウレタン樹脂開口端(13)及び水槽フランジ部の内周端(5)とが略同一寸法であることを特徴としているので天板の水槽取付け部分の外観がすっきりとし、きわめて美麗となる利点があるうえ、天板開口端と水槽フランジ部(4)との間に従来品のような隅部(ヨ)が形成されないため汚れやゴミが付着することはなく衛生上も良好となるという大きな利点がある。・・・また天板の開口端の下方にウレタン樹脂の薄層を介して水槽が取付けられる構造であるため、天板上に付着した汚れや水滴の拭き取りが要易(当審注:「容易」の誤記と認める。)であるうえ水仕舞いが良好になるという利点がある。」(3頁左下欄19行?右下欄17行)
(1f)第1図には,メラミン樹脂化粧板(2)の突出部(10)は,メラミン樹脂化粧板(2)において,合板板基材(1)の第1開口端より突出している部分であること,ウレタン樹脂層(11)は,メラミン樹脂化粧板(2)の突出部(10)と水槽フランジ部(4)と合板基材(1)の第1開口端(7)により囲まれた空隙部充填されていること,ウレタン樹脂層(12)は,水槽壁裏面と,水槽フランジ部(4)裏面と合板基材(1)の第2開口端(8)と開口端段部(9)により囲まれた凹部に充填されることが記載されている。

上記記載事項(1d)によれば,切削道具により水槽フランジ部の内周端(5)に沿って天板鍔部(19)及びウレタン樹脂層(25)を切削除去しているから,水槽フランジ部の内周端(5)は,メラミン樹脂化粧板(2)の開口端(3)の下方に段差無く取り付けられることは明らかである。

したがって,上記各記載事項によれば,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「洗面台などにおいて,水槽(22)が,合板基材(1)にメラミン樹脂化粧板(2)を貼着してなる天板部材に取り付けられた構造であって,
合板板基材(1)の開口端は,水槽フランジ部(4)の内周端(5)より大きく,かつ水槽フランジ部(4)の外周端(6)より小さくしかも厚みが1mmの第1開口端(7)と,水槽フランジ部の外周端(6)より大きな第2開口端(8)とからなり,
これによって形成される合板基材の開口端段部(9)の裏面に水槽フランジ部(4)の外周端側の上面が当接し,
前記メラミン樹脂化粧板(2)の突出部(10)と水槽フランジ部(4)と第1開口端(7)により囲まれた空隙部にウレタン樹脂が充填されてウレタン樹脂層(11)が形成され,
水槽壁裏面と,水槽フランジ部(4)裏面と合板基材(1)の第2開口端(8)と開口端段部(9)により囲まれた凹部にもウレタン樹脂が充填されてウレタン樹脂層(12)が形成されてなり,
メラミン樹脂化粧板(2)の開口端(3)は水槽フランジ部(4)の内周端(5)と略同一寸法であり,水槽(22)フランジ部の内周端(5)は,メラミン樹脂化粧板(2)の開口端(3)の下方に段差無く取り付けられてなる,
水槽の取り付け構造。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)
(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された特開昭61-87042号公報(以下、「刊行物2」という。)には,以下の記載が認められる。
(2a)「窓孔を有する天板と、この天板の窓孔周囲の裏面に取付けた水槽と、前記天板と水槽フランジ間に隙間を形成する位置決め材と、前記天板と水槽フランジ間および水槽フランジの裏面に接着性のある注型用樹脂を注入硬化してなる水槽付天板。」(特許請求の範囲)
(2b)「産業上の利用分野
本発明は流し台、洗面台などの上面部を構成する水槽付天板に関するものである。」(1頁左下欄11?13行)
(2c)「実施例の説明
以下、本発明の一実施例について、第1図?第3図に基づいて説明する。
図において、6はステンレス製の天板7とキャビネット8で構成される流し台である。上記天板7の中央部には窓孔9を穿設し、その窓孔9部周囲は下方に折曲げ部7aを有している。10はステンレス製の水槽で、周縁部の水槽フランジ11を天板7の窓孔9周囲の裏面に当接し、水槽フランジ11の当接部12に上方切起し部13を設けてある。14は天板7と水槽フランジ11を一体接合するウレタン等の接着性のある注型用樹脂で、天板7と水槽フランジ11の間から水槽フランジ11の外まわりまで注入硬化している。なお図中の15は注型用樹脂14の注入時の堰となる桟材である。
上記構成において、天板7と水槽10との接合は、まず天板7を裏返しにした後、天板7の窓孔9の周囲に水槽フランジ11が相対するように水槽10を裏返しにしてセットする。このとき、水槽フランジ11には上方切起し部13を形成しているので、天板7と水槽フランジ11とに隙間確保ができる。そして天板7と水槽フランジ間、および水槽フランジ11の裏面まわりに樹脂14が注入硬化するのである。以上のように接着面積が増大するとともにアンカー接合する形となって接合は強固となる。また切起し部13で天板7との隙間確保が確実になるため、接合する際の大型生産設備が不要であり、設置現場での取付作業が可能となる。
なお、本実施例は材料コスト等を考慮して、水槽フランジ11に切起し部13を設けた水槽としたが、その他にコストを考慮しないと第4図に示すように水槽フランジ11部に別部材の鉄板16を点在配置してスポットした実施例やさらに第5図に示すように別部材の桟材16を点在配置して天板7に貼付けした実施例が考えられる。」(2頁左上欄5行?左下欄1行)

これらの記載によれば,刊行物2には,次の発明が記載されていると認められる。
「水槽10が天板7の窓孔9周囲の裏面に取り付けられた構造であって,
前記水槽10の外周縁と前記天板7との間に,水槽フランジ11とは別部材の桟材16が,隙間確保のための位置決め材として天板に取付けられ,
前記水槽フランジ11の上面と天板7と前記位置決め材により囲まれた空間,及び前記水槽フランジ11の裏側と前記天板7の裏面と,注入時の堰となる桟材15により囲まれた空間に接着性のある注型用樹脂14が充填されてなる,
水槽の取り付け構造。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)

3 本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と上記刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の,洗面台における「水槽の取り付け構造」は,本願発明の「洗面ボールの取り付け構造」に相当し,以下同様に,
「水槽(22)」が「洗面ボール」に,
「合板基材(1)」が「基材」に,
「メラミン樹脂化粧板(2)」が「表面材」に,
「天板部材」が「天板」に,
「水槽フランジ部(4)」が「外周縁」に,
「ウレタン樹脂」が「樹脂」に,それぞれ相当する。
また,刊行物1記載の発明の「開口端段部(9)」は,水槽を位置決めするものであるから,本願発明の「スペース形成物」とは,「スペース形成部材」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の「メラミン樹脂化粧板(2)の合板板基材(1)の第2開口端より突出している突出部(10)と水槽フランジ部(4)と第1開口端(7)により囲まれた空隙部」と,本願発明の「洗面ボールの上面と表面材とスペース形成物により囲まれた空間」とは,「洗面ボールの上面と表面材とスペース形成部材により囲まれた空間」である点で共通する。
さらに,刊行物1記載の発明の「水槽壁裏面と,水槽フランジ部(4)裏面と合板基材(1)の第2開口端(8)と開口端段部(9)により囲まれた凹部」と,本願発明の「外周縁の裏側と基材と表面材により囲まれた空間」とは,「外周縁の裏側と天板により囲まれた空間」である点で共通する。

したがって,両者は以下の点で一致している。
「洗面ボールが表面材と基材からなる天板に取り付けられた構造であって、前記洗面ボールの外周縁と前記表面材との間にスペース形成部材が位置するともに、前記洗面ボールの上面と表面材と前記スペース形成部材により囲まれた空間に樹脂が充填され、前記外周縁の裏側と天板により囲まれた空間にも樹脂が充填されてなり、前記洗面ボールは前記表面材より低い位置に段差なく取り付けられてなる洗面ボールの取り付け構造。」

そして,両者は,下記の点で相違している。
(相違点1)
本願発明は,「スペース形成部材」が,基材とは別の「スペース形成物」であり,樹脂が充填される「外周縁の裏側と天板により囲まれた空間」が,外周縁の裏側と基材と表面材により囲まれた空間であるのに対し,
刊行物1記載の発明は,「スペース形成部材」が,基材の一部として形成された開口端段部であって,「外周縁の裏側と天板により囲まれた空間」が,外周縁の裏側と基材により囲まれた空間である点。

(相違点2)
洗面ボールが,本願発明では,樹脂製であるのに対し,刊行物1記載の発明では,材質が不明である点。

4 判断
上記相違点1について検討する。
刊行物2記載の発明には,天板7(本願発明の「表面材」に相当。)の窓孔9周囲の裏面に水槽10(本願発明の「洗面ボール」に相当。)を取り付ける水槽10の取り付け構造において,天板7と水槽フランジ11(同「洗面ボールの外周縁」に相当)間に樹脂を注入する際に,天板7と水槽フランジ11間の隙間を確保するための位置決め材を設けること,この位置決め材は,水槽フランジや天板とは別部材の桟材とすることが示されており,この別部材の位置決め材は,本願発明の「スペース形成物」に相当する。
そして,刊行物1記載の発明において,洗面ボールと表面材の隙間を確保するためのスペース形成部材として,基材の一部に開口端段部を形成することに代えて,刊行物2記載の発明に示されるスペース形成物を採用し,基材の開口端全体を,刊行物2記載の発明の「注入時の堰となる桟材15」と同様に,洗面ボールの外周縁より大きな開口とすることは,当業者が容易に想到しうることである。
また,基材の開口端全体を洗面ボールの外周縁より大きな開口とし,スペース形成物を採用すれば,基材の開口端とスペース形成物の間に表面材の裏面が存在するから,樹脂を充填する「外周縁の裏側と天板により囲まれた空間」が,「外周縁の裏面と基材と表面材により囲まれた空間」となることは明らかである。

上記相違点2について検討する。
洗面ボールを樹脂製とすることは,原査定の拒絶の理由で提示された,実願平3-100467号(実開平5-48777号)のCD-ROM,実願平4-46966号(実開平6-81386号)のCD-ROMに記載されているように周知技術であり,刊行物1記載の発明において,洗面ボール(水槽)を樹脂製とすることは,当業者が適宜なしうることである。

そして,本願発明の作用効果は,刊行物1,2記載の発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

5 まとめ
したがって,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。


〈付言〉
なお,請求人は,平成23年10月3日付けの回答書において,補正案を提示して,請求項1に係る発明の「スペース形成物7」を「パッキン7(裁断したものを除く)」と限定し,該パッキンの介在位置を「基材2に対して水平方向に、かつ前記基材2と連続しない離れた位置に前記外周縁6上の中央」と限定すると共に,樹脂製洗面ボウル5が,「前記表面材1より低い位置に段差なくシームレスに、かつ前記表面材1から前記樹脂製洗面ボウル5の上端にかけては垂直である」と限定しようとしている。
しかしながら,刊行物1には,一実施例として開口端段部を部分的に切削除去することが記載されているにすぎず,刊行物1記載の発明には,裁断しないものを使用することも含まれていることは明らかである。 そして,裁断しないパッキンを使用するか,裁断したパッキンを使用するかは,パッキンにより洗面ボール内面側からの水の侵入を阻止することを重視するか,洗面ボールの上面側に充填される樹脂と,洗面ボール外周縁の裏側空間に充填される樹脂を連続したものとして,固着強度を高めることを重視するかにより適宜選択しうることにすぎない。
また,刊行物2の第5図にはスペース形成物(位置決め材)を,水槽の外周縁上の中央付近に設けることが記載されており,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を採用するに際し,スペース形成物を,基材に対して水平方向にかつ基材と連続しない離れた位置であって,外周縁上の中央付近とすることは,当業者が適宜なしうることである。
さらに,メラミン樹脂化粧板から水槽の上端にかけて垂直となるように仕上げることは,デザイン等を考慮して適宜なしうることにすぎず,補正案の発明によっても,特許を受けることはできない。
 
審理終結日 2012-02-20 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-14 
出願番号 特願2001-49719(P2001-49719)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (A47K)
P 1 8・ 573- Z (A47K)
P 1 8・ 574- Z (A47K)
P 1 8・ 572- Z (A47K)
P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 鈴野 幹夫
仁科 雅弘
発明の名称 樹脂製洗面ボールの取り付け構造及び取り付け方法  

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