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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1256063 |
審判番号 | 不服2011-7382 |
総通号数 | 150 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-07 |
確定日 | 2012-04-23 |
事件の表示 | 特願2004-287999「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月13日出願公開、特開2006- 98998〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年9月30日の出願であって、平成22年9月29日付けで通知した拒絶理由に対し、同年12月2日付けで手続補正がなされたが、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において、同年11月29日付けで通知した拒絶理由に対して、平成24年1月31日付けで手続補正書及び意見書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 記録材にトナー像を形成する画像形成部と、 弾性層を有する筒状の定着ベルトと、 給電によって発熱し前記定着ベルトの内面に接触するセラミックヒータと、 前記定着ベルトを介して前記セラミックヒータと共に定着ニップ部を形成する加圧ローラと、 前記定着ベルトの温度を検知する第一の温度検知手段と、 前記セラミックヒータの温度を検知する第二の温度検知手段と、 を有し、 前記定着ニップ部でトナー像を担持する記録材を定着処理する間、前記第一の温度検知手段の検知温度が定着処理中の目標温度を維持するように前記セラミックヒータへの供給電力が制御される定着部と、 を有する画像形成装置において、 前記定着ベルトと前記加圧ローラが回転停止しておりプリント信号の入力を待つスタンバイモード中、前記第二の温度検知手段の検知温度が前記スタンバイモード中の目標温度を維持するように前記セラミックヒータへの供給電力を制御することを特徴とする画像形成装置。」 2.引用刊行物の記載事項 これに対して、当審で通知した拒絶理由で引用された、本願出願前に頒布された、 1.特開2004-78181号公報(以下、「刊行物1」とする。) 2.特開2001-117412号公報(以下、「刊行物2」とする。) 3.特開2004-20751号公報(以下、「刊行物3」とする。) 4.特開平11-231701号公報(以下、「刊行物4」とする。) 5.特開2004-170659号公報(以下、「刊行物5」とする。) 6.実願平4-42804号(実開平5-96858号)のCD-ROM (以下、「刊行物6」とする。) のうち、刊行物1?3には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 (1)刊行物1 (1a)「【0019】 この定着装置を用いる場合には、定着ベルト203の弾性層に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率が小さいため、定着ベルト203の温度応答性は悪く、定着ヒータ204の温度上昇速度に対して、定着スリーブ温度の上昇速度が非常に遅い。さらに、定着ヒータ204の温度と定着ベルト203の温度差は最大数十℃にも達し、またその温度差は空回転時と、通紙時において大きく異なる。このため、従来のごとく温度検知素子209を、定着ヒータ204裏面に設置した系においては、定着ベルト203の温度制御は非常に困難であった。 【0020】 そこで、図25の装置においては、定着ヒータ204部ではなく、定着ベルト203の内面や表面に温度検知手段209を配置させて、定着ベルト203自身の温度を検出し、PID制御などのフィードバック制御により定着ヒータ204の温度を制御することにより定着ベルト203の温調を行っている。 【0021】 このような構成を用いることによって定着ベルト203の温度をより精度良く制御することが可能である。」 (1b)「【0033】 この定着装置においては、立ち上げ温度制御シーケンスは、以下の二段階aとbから構成される。 【0034】 a.「立上げ(固定)電力制御」 b.「PID制御」 aの「立ち上げ電力制御」は、定着装置温度を速やかに立上げ、オンデマンド性を確保する為に、一定電力が投入される制御であり、本例においては、定着ヒータ204には1000Wが投入される。このとき、定着ベルト203は、加圧ローラ205の回転に伴い、従動回転しながら定着ヒータ204により加熱される。温度検知手段209の検知温度が所定温度(目標温度-20℃:例えば、目標温度が190℃であれば、190℃-20℃=170℃)に達したときに、bの「PID制御」に移行し、以後はPID制御により定着ベルト203裏面の温度が目標温度に近づくように定着ヒータ204への投入電力は制御される。 【0035】 上記制御を用いた場合、図21に示すように、オーバーシュートが発生し、また、オーバーシュートに伴う温度リップルも大きくなってしまう。 【0036】 立ち上げ時のオーバーシュート及び温度リップルが大きくなることにより、以下の二点の問題を生じる。 【0037】 1(当審注:丸囲み1).立ち上げ時のオーバーシュートによる高温での動作が繰り返されることにより、定着装置各部品へのダメージが大きくなり、定着装置の寿命が短くなってしまう。 【0038】 2(当審注:丸囲み2).立ち上げ時の温度リップルが大きいため、記録材Pが突入する瞬間の温度が安定せず、記録材Pが定着ニップ部206を通過する間の温度変動も大きくなるため、出力された印刷物一枚の中でのグロス変動が大きくなり、画質上好ましくない。また、記録材Pの種類や印字パターンによっては温度が低下したポイントで定着不良が生じる。 【0039】 一方、小さな電力で緩やかに立ち上げることによってオーバーシュートをある程度抑えることは可能であるものの、この場合には定着装置が所定温度に立ち上がるまでに、長時間がかかることとなり、オンデマンド性が損なわれてしまう。 【0040】 このように、従来の定着装置の制御方法を用いた場合、オンデマンド性と、温調制御の安定性はトレードオフの関係にあった。 【0041】 本発明者らがこの現象について鋭意検討を行ったところ、これらの問題は以下の二点の理由により発生することがわかった。 【0042】 1)定着ベルト203の弾性層に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率が小さく、熱容量が大きいため、定着ヒータ204へ通電してから定着ベルト203温度が上昇するまでの、応答性が悪いこと。 【0043】 2)定着ベルト203裏面の温度を検出する温度検知手段209の位置が加熱体である定着ヒータ204からから離れていることによる検知タイミングの遅れがあること。 【0044】 すなわち、PID制御に代表されるフィードバック制御は、制御量の変動を検知し、それに対応した操作量を加えることによって成り立っているため、PID制御を基調とした温調を行おうとした場合、上記の2つの理由1)と2)によるむだ時間(タイムラグ)が大きくなり、立ち上げ時や、記録材P突入時のような、温度変化が大きい場合には、温度検知手段209による検知結果を電力制御に反映しても、実際の定着ヒータ204や定着ニップ部206の温度はすでに異なる値となってしまっているため、正確な温度制御が出来ず、オーバーシュートやハンチング(温度リップル)を生じやすい。 【0045】 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、定着装置において定着部材として弾性層を有する定着ベルトを用いた場合においても定着装置の寿命が長く、また、定着部材の正確な温調制御を行い、その結果良好な定着性を示し、定着温調温度が不適切な場合に発生する画像不良が無く、グロスなどの印字品質ムラのない高画質な画像を得ることができる定着装置、および該定着装置を搭載した画像形成装置を提供することを目的とする。」 (1c)「【0052】 この画像形成装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部1Yと、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部1Mと、シアン色の画像を形成する画像形成部1Cと、ブラック色の画像を形成する画像形成部1Bkの4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えており、これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。 【0053】 各画像形成部1Y、1M、1C、1Bkには、それぞれ感光ドラム2a、2b、2c、2dが設置されている。各感光ドラム2a、2b、2c、2dの周囲には、帯電ローラ3a、3b、3c、3d、現像装置4a、4b、4c、4d、転写ローラ5a、5b、5c、5d、ドラムクリーニング装置6a、6b、6c、6dがそれぞれ設置されており、帯電ローラ3a、3b、3c、3dと現像装置4a、4b、4c、4d間の上方には露光装置7a、7b、7c、7dがそれぞれ設置されている。各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーが収納されている。 【0054】 画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの各感光ドラム2a、2b、2c、2dの各1次転写部Nに、転写媒体としての無端ベルト状の中間転写体40が当接している。中間転写ベルト40は、駆動ローラ41、支持ローラ42、2次転写対向ローラ43間に張架されており、駆動ローラ41の駆動によって矢印方向(時計方向)に回転(移動)される。 【0055】 1次転写用の各転写ローラ5a、5b、5c、5dは、各1次転写ニップ部Nにて中間転写ベルト40を介して各感光ドラム2a、2b、2c、2dに当接している。 【0056】 2次転写対向ローラ43は、中間転写ベルト40を介して2次転写ローラ44と当接して、2次転写部Mを形成している。2次転写ローラ44は、中間転写ベルト40に接離自在に設置されている。 【0057】 中間転写ベルト40の外側の駆動ローラ41近傍には、中間転写ベルト40の表面に残った転写残トナーを除去して回収するベルトクリーニング装置45が設置されている。 【0058】 また、2次転写部Mの記録材Pの搬送方向下流側には定着装置12が設置されている。 【0059】 また、この画像形成装置内には環境センサ50とメディアセンサ51が設置されている。 【0060】 画像形成動作開始信号(プリント開始信号)が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される画像形成部1Y、1M、1C、1Bkの各感光ドラム2a、2b、2c、2dは、それぞれ帯電ローラ3a、3b、3c、3dによって一様に本実施の形態では負極性に帯電される。 【0061】 そして、露光装置7a、7b、7c、7dは、入力されるカラー色分解された画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光を帯電された各感光ドラム2a、2b、2c、2d上にそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。 【0062】 そして、まず静電潜像が形成された感光ドラム2a上に、感光ドラム2aの帯電極性(負極性)と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4aによりイエローのトナーを感光体表面の帯電電位に応じて静電吸着させることで静電潜像を顕像化し、現像像とする。このイエローのトナー像は、1次転写部Nにて1次転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された転写ローラ5aにより、回転している中間転写ベルト40上に1次転写される。イエローのトナー像が転写された中間転写ベルト40は画像形成部1M側に回転される。 【0063】 そして、画像形成部1Mにおいても、前記同様にして感光ドラム2bに形成されたマゼンタのトナー像が、中間転写ベルト40上のイエローのトナー像上に重ね合わせて、1次転写部Nにて転写される。 【0064】 以下、同様にして中間転写ベルト40上に重畳転写されたイエロー、マゼンタのトナー像上に、画像形成部1C、1Bkの感光ドラム2c、2dで形成されたシアン、ブラックのトナー像を各1次転写部Nにて順次重ね合わせて、フルカラーのトナー像を中間転写ベルト40上に形成する。 【0065】 そして、中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー像先端が2次転写部Mに移動されるタイミングに合わせて、レジストローラ46により記録材(転写材)Pを2次転写部Mに搬送して、この記録材Pに、2次転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された2次転写ローラ44によりフルカラーのトナー像が一括して2次転写される。フルカラーのトナー像が形成された記録材Pは定着装置12に搬送されて、定着ベルト20と加圧ローラ22間の定着ニップ部でフルカラーのトナー像を加熱、加圧して記録材P表面に溶融定着した後に外部に排出され、画像形成装置の出力画像となる。そして、一連の画像形成動作を終了する。」 (1d)「【0068】 (2)定着装置12 図2は本実施例における定着装置12の概略構成模型図である。本例の定着装置12は、定着ベルト加熱方式、加圧用回転体駆動方式(テンションレスタイプ)の加熱装置である。 【0069】 1)装置12の全体的構成 20は第一の回転体(第一の定着部材)としての定着ベルトであり、ベルト状部材に弾性層を設けてなる円筒状(エンドレスベルト状、スリーブ状)の部材である。この定着ベルト20は後記6)項で詳述する。 【0070】 22は第二の回転体(第二の定着部材)としての加圧ローラである。17は加熱体保持部材としての、横断面略半円弧状樋型の耐熱性・剛性を有するヒータホルダ、16は加熱体(熱源)としての定着ヒータであり、ヒータホルダ17の下面に該ホルダの長手に沿って配設してある。定着ベルト20はこのヒータホルダ17にルーズに外嵌させてある。定着ヒータ16は本実施例では後記2)項で詳述するようなセラミックヒータである。 【0071】 ヒータホルダ17は、耐熱性の高い液晶ポリマー樹脂で形成し、定着ヒータ16を保持し、定着ベルト20をガイドする役割を果たす。本実施例においては、液晶ポリマーとして、デュポン社のゼナイト7755(商品名)を使用した。ゼナイト7755の最大使用可能温度は、約270℃である。 【0072】 加圧ローラ22は、ステンレス製の芯金に、射出成形により、厚み約3mmのシリコーンゴム層を形成し、その上に厚み約40μmのPFA樹脂チューブを被覆してなる。この加圧ローラ22は芯金の両端部を装置フレーム24の不図示の奥側と手前側の側板間に回転自由に軸受保持させて配設してある。この加圧ローラ22の上側に、前記の定着ヒータ16・ヒータホルダ17・定着ベルト20等から成る定着ベルトユニットをヒータ16側を下向きにして加圧ローラ22に並行に配置し、ヒータホルダ17の両端部を不図示の加圧機構により片側98N(10kgf)、総圧196N(20kgf)の力で加圧ローラ22の軸線方向に附勢することで、定着ヒータ16の下向き面を定着ベルト20を介して加圧ローラ22の弾性層に該弾性層の弾性に抗して所定の押圧力をもって圧接させ、加熱定着に必要な所定幅の定着ニップ部27を形成させてある。加圧機構は、圧解除機構を有し、ジャム処理時等に、加圧を解除し、記録材Pの除去が容易な構成となっている。 【0073】 18と19は第一と第二の温度検知手段としてのメインとサブの2つのサーミスタである。第一の温度検知手段としてのメインサーミスタ18は加熱体である定着ヒータ16に非接触に配置され、本実施例ではヒータホルダ17の上方において定着ベルト20の内面に弾性的に接触させてあり、定着ベルト20の内面の温度を検知する。第二の温度検知手段としてのサブサーミスタ19はメインサーミスタ18よりも熱源である定着ヒータ16に近い場所に配置され、本実施例では定着ヒータ16の裏面に接触させてあり、定着ヒータ16裏面の温度を検知する。 【0074】 メインサーミスタ18は、ヒータホルダ17に固定支持させたステンレス製のアーム25の先端にサーミスタ素子が取り付けられ、アーム25が弾性揺動することにより、定着ベルト20の内面の動きが不安定になった状態においても、サーミスタ素子が定着ベルト20の内面に常に接する状態に保たれる。」 (1e)図2は次のとおり。 (1f)「【0080】 2)メインサーミスタ18 メインサーミスタ18は図2,3に示すように、定着ベルト20の長手中央付近に配置され、定着ベルト20の内面に接触するよう配置されている。このメインサーミスタ18は、定着ニップ部の温度により近い温度である定着ベルト20の温度を検出する手段として用いている。よって、通常の動作においては、メインサーミスタ18の検知温度が目標温度になるよう、温調制御される。 【0081】 3)サブサーミスタ19 サブサーミスタ19は図3に示すように、定着ヒータ16の端部付近に配設され、定着ヒータ16の裏面に接触するよう配置されている。このサブサーミスタ19は、加熱体である定着ヒータ16の温度を検出し、定着ヒータの温度が所定温度以上にならないようにモニターする、安全装置としての役割を果たしている。 【0082】 また、サブサーミスタ19により、立ち上げ時の定着ヒータ16の温度のオーバーシュートや、端部の昇温をモニターし、例えば端部の昇温により定着ヒータ20の端部の温度が所定の温度を超えた場合には、それ以上に端部昇温が悪化しないようにスループットを落とす等の制御を行う為の判断に用いられる。 【0083】 4)定着ヒータ16 熱源としての定着ヒータ16は、本実施例では、窒化アルミの基板上に、銀・パラジウム合金を含んだ導電ペーストをスクリーン印刷法によって均一な厚さの膜状に塗布することで抵抗発熱体を形成した上に耐圧ガラスによるガラスコートを施した、セラミックヒータを使用している。 (中略) 【0086】 上記の定着ヒータ16は表面側を下向きに露呈させてヒータホルダ17に固定して支持させてある。 【0087】 上記定着ヒータ16の第1と第2の電極部c・d側には給電用コネクタ30が装着される。ヒータ駆動回路部28から上記の給電用コネクタ30を介して第1と第2の電極部c・dに給電されることで抵抗発熱体層bが発熱して定着ヒータ16が迅速に昇温する。ヒータ駆動回路部28は制御回路部(CPU)21により制御される。」 (1g)「【0088】 通常使用においては、加圧ローラ22の回転開始とともに、定着ベルト20の従動回転が開始し、定着ヒータ16の温度の上昇とともに、定着ベルト20の内面温度も上昇していく。定着ヒータ16への通電は、PID制御によりコントロールされ、定着ベルト20の内面温度、すなわち、メインサーミスタ18の検知温度が190℃になるように、入力電力が制御される。」 (1h)「【0097】 6)定着ベルト20 本実施の形態において、定着ベルト20はベルト状部材に弾性層を設けてなる円筒状(エンドレスベルト状)の部材である。 【0098】 具体的には、SUSにより、厚み30μmの円筒状に形成したエンドレスベルト(ベルト基材)上に、厚み約300μmのシリコーンゴム層(弾性層)を、リングコート法により形成した上に、厚み30μmのPFA樹脂チューブ(最表面層)を被覆してなる。このような構成で作成した定着ベルト20の熱容量を測定したところ、12.2×10^(-2)J/cm^(2)・℃(定着ベルト1cm^(2)あたりの熱容量)であった。」 (1i)「【0102】 4(当審注:丸囲み4).定着ベルトの熱容量 一般に、定着ベルト20の熱容量が大きくなると、温度立ち上がりが鈍くなり、オンデマンド性が損なわれる。たとえば、定着装置の構成にも拠るが、スタンバイ温調無しで、1分以内での立ち上がりを想定した場合、定着ベルト20の熱容量は約4.2J/cm^(2)・℃以下である必要があることが分かっている。」 これらの記載事項によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「記録材にトナー像を形成する画像形成部と、 ベルト状部材に弾性層を設けてなる円筒状の定着ベルトと、 給電によって発熱しヒータホルダの下面に該ヒータホルダの長手方向に沿って配設されるセラミックヒータと、 前記定着ベルトを介して前記セラミックヒータと共に定着ニップ部を形成する加圧ローラと、 前記定着ベルトの内面の温度を検知するメインサーミスタと、 前記セラミックヒータの裏面の温度を検知するサブサーミスタと、 を有し、 前記定着ベルトは前記ヒータホルダにルーズに外嵌させてあり、 通常の動作においては、前記メインサーミスタの検知温度が目標温度となるように前記セラミックヒータへの供給電力を制御する定着装置を備えた画像形成装置。」 (2)刊行物2 (2a)「【0047】 図2に示すように、定着装置36内には、定着ローラ44および加熱ローラ45が離間して互いに平行に配置されている。定着ローラ44および加熱ローラ45には、無端の定着ベルト50がループ状に掛け渡されている。また、定着ローラ44に所定圧力で転接するように加圧ローラ48が設けられている。 【0048】 定着ローラ44は、金属芯金に肉厚5mmのスポンジを形成したものである。加熱ローラ45は、金属芯金にフッ素樹脂をコーティングしたものであり、金属芯金の内部には第1の加熱源として容量500Wのヒータ46および容量500Wのヒータ47の合計2本が設けられている。 【0049】 加圧ローラ48は、金属芯金にシリコーンゴムを被覆し、さらにフッ素樹脂含有フッ素ゴムラテックスのコーティングを施したものであり、金属芯金の内部には第2の加熱源として容量500Wのヒータ49が設けられている。定着ベルト50は、ポリイミドにシリコーンゴムを200μmコーティングしたものである。この定着ベルト50の外径は、円筒形状に配置した場合において50.0mmである。 【0050】 加圧ローラ48は定着ベルト50を挟んで定着ローラ44を押圧する。定着ローラ44と加圧ローラ48とにより定着ベルト50が挟まれるニップ部41に用紙30が挿通される。 【0051】 加圧ローラ48は、駆動モータ58により矢印R1の方向(反時計回り)に回転する。未定着トナー像43を担持する用紙30が矢印Zで示すようにニップ部41に挿入されると、定着ローラ44と加圧ローラ48との間での挟持力によって定着ベルト50が用紙30の表面に確実に押圧される。加圧ローラ48の回転に伴って定着ベルト50が摩擦力により矢印Xの方向に走行し、定着ローラ44も定着ベルト50との摩擦力によって矢印R2の方向(時計回り)に回転する。さらに、加熱ローラ45も定着ベルト50との摩擦力によって矢印R3の方向(時計回り)に回転する。 【0052】 定着ローラ44と加圧ローラ48との間のニップ部41を定着ベルト50が用紙30とともに走行する間に、用紙30上の未定着トナー像43が加熱溶融され、用紙30に定着される。 【0053】 定着ベルト50の走行方向に対してニップ部41の上流側の近傍の位置でかつ定着ベルト50の裏面側にサーミスタ51が定着ベルト50の内周面に当接するように配置されている。このサーミスタ51により走行時の定着ベルト50の温度が測定される。 【0054】 また、定着ベルト50の裏面側において加熱ローラ45の表面に接触するようにサーミスタ52が配置されている。このサーミスタ52により定着ベルト50の停止時の加熱ローラ45の表面の温度が測定される。さらに、加圧ローラ48の表面に接触するようにサーミスタ53が配置されている。このサーミスタ53により加圧ローラ48の表面の温度が測定される。 【0055】 サーミスタ51,52,53は制御装置54に接続されている。また、加熱ローラ45内のヒータ46,47および加圧ローラ48内のヒータ49は電源回路55を介して制御装置54に接続されている。制御装置54は、サーミスタ51,52,53の出力に基づいてヒータ46,47,49をオンオフ制御する。」 (2b)図2は次のとおり。 (2c)「【0069】 ウォームアップの終了後、時点t2で待機状態になると、印字命令が入力されるまで定着装置36は停止している。このとき、加熱ローラ45および加圧ローラ48の温度制御をそれぞれヒータ46およびヒータ49を用いて行う。すなわち、制御装置54は、サーミスタ52により測定される温度に基づいてヒータ46をオンオフ制御することにより、加熱ローラ45を所定の温度に保つ。また、制御装置54は、サーミスタ53により測定される温度に基づいてヒータ49をオンオフ制御することにより、加圧ローラ48を所定の温度に保つ。 【0070】 時点t3で印字命令が入力されると、定着装置36が動作を開始する。それにより、定着ローラ44、加熱ローラ45および加圧ローラ48が回転するとともに定着ベルト50が走行する。このとき、定着装置36の温度が一時的に下降するので、定着装置36の温度を回復させるために立ち上げが行われる。すなわち、ヒータ46,47の両方をオンにし、電力を加熱ローラ45に集中させ、熱の供給を行う。この場合、まずヒータ46をオンにした後、所定の遅延時間Δtをおいてヒータ47をオンにする。この場合にも、ウォームアップ時と同様に遅延時間Δtは500msecである。 【0071】 時点t4で立ち上げが終了すると、印字が開始される。印字時には、用紙30および未定着トナー像43が定着ベルト50の熱を奪うので、定着ベルト50を所定の温度に保つためには、熱を供給する必要がある。したがって、印字時には、ヒータ46,47をオンにし、電力を加熱ローラ45に集中させ、熱の供給を行う。制御装置54は、サーミスタ51により測定される温度に基づいてヒータ46,47をオンオフ制御することにより、定着ベルト50を所定の定着温度に保つ。この場合、ヒータ47をオンにするタイミングをヒータ46をオンにするタイミングに対して所定の遅延時間Δtずらせる。所定の遅延時間Δtは500msecである。」 (2d)図3は次のとおり。 (3)刊行物3 (3a)「【0092】 図10は、スタンバイモード時における各ローラの温度設定がそれぞれ異なる3種類の場合について、平均消費電力とコピーモードへの復帰時間および各ローラのライフについての実験結果を示している。スタンバイモード時では、CPU50は、駆動モータをオフして各ローラの回転を停止するとともに、外部加熱ローラ33の制御温度を150℃に設定する。」 (3b)「【0096】 さらに、スタンバイ時での加熱ローラ制御温度は、コピー時における温度(190℃)よりも低い温度に設定変更する方がより望ましい。これは、コピー時における外部加熱ローラの標準的な温度(190℃)でスタンバイを行った場合における上ヒートローラ表面層であるPFAチューブへの熱的なダメージを防止し、かつ消費電力を更に低減できるためである。この場合でも、コピーモードへの復帰時間は約6.6秒と実際の使用上において問題ないレベルである。」 3.対比・判断 そこで、本願発明1と刊行物1記載の発明とを比較すると、 刊行物1記載の発明の「記録材」「トナー像」「画像形成部」「定着ベルト」「セラミックヒータ」「定着ニップ部」「加圧ローラ」「メインサーミスタ」「サブサーミスタ」「定着装置」「画像形成装置」は、それぞれ 本願発明1の「記録材」「トナー像」「画像形成部」「定着ベルト」「セラミックヒータ」「定着ニップ部」「加圧ローラ」「第一の温度検知手段」「第二の温度検知手段」「定着部」「画像形成装置」に相当する。 そして、刊行物1に記載された画像形成装置は「定着ニップ部」でトナー像を担持する「記録材」を「定着処理」して画像形成を行う装置なのであるから、「定着ニップ部」でトナー像を担持する「記録材」を「定着処理」することは、刊行物1に記載された画像形成装置における通常の動作に含まれることは明らかであり、刊行物1に記載された通常の動作である定着処理において、メインサーミスタの検知温度を制御するための「目標温度」は、本願発明1における「定着処理中の目標温度」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりと認められる。 [一致点] 「記録材にトナー像を形成する画像形成部と、 弾性層を有する筒状の定着ベルトと、 給電によって発熱し前記定着ベルトの内面に接触するセラミックヒータと、 前記定着ベルトを介して前記セラミックヒータと共に定着ニップ部を形成する加圧ローラと、 前記定着ベルトの温度を検知する第一の温度検知手段と、 前記セラミックヒータの温度を検知する第二の温度検知手段と、 を有し、 前記定着ニップ部でトナー像を担持する記録材を定着処理する間、前記第一の温度検知手段の検知温度が目標温度を維持するように前記セラミックヒータへの供給電力が制御される定着部と、 を有する画像形成装置。」 [相違点] 画像形成装置において、 本願発明1では、「前記定着ベルトと前記加圧ローラが回転停止しておりプリント信号の入力を待つスタンバイモード中、前記第二の温度検知手段の検知温度が前記スタンバイモード中の目標温度を維持するように前記ヒータへの供給電力を制御する」のに対して、 刊行物1記載の発明では、定着ニップ部でトナー像を担持する記録材を定着処理する通常の動作においては、メインサーミスタの検知温度が目標温度となるように前記セラミックヒータへの供給電力を制御するが、通常の動作以外のときにセラミックヒータへの供給電力の制御をいかに行っているのか不明である点。 相違点について検討する。 (相違点について) 定着ニップ部でトナー像を担持する記録材を定着処理する通常の動作とは異なるスタンバイ時に、ヒータに対する供給電力を制御して、定着に対する熱源である箇所の温度を所定の温度に保つ技術は、本願出願日前に周知である。例えば、刊行物2(【0069】),3(【0092】)を参照。 また、スタンバイモード中、定着ベルト等の回転を停止し、該定着ベルトと加圧ローラとの間を離間させ、定着ニップ部にかかる加圧力を解除する技術も、本願出願日前に周知である。例えば、刊行物4?6を参照。 また、刊行物2の摘示した(2c)には、待機状態になると、印字命令が入力されるまで定着装置は停止し、定着ベルト50に対する熱源である加熱ローラ45の表面に接触するように配置されたサーミスタ52により測定される温度に基づいて前記加熱ローラ45を所定の温度に保つ制御が行われ、印字が開始されると、定着ベルト50の裏面側に配置されたサーミスタ51により測定される温度に基づいて前記定着ベルト50を所定の温度に保つ制御を行う技術が記載されている。 刊行物1の摘示した(1a)の【0020】、(1b)の【0035】【0041】?【0043】、(1f)の【0081】?【0082】の記載によれば、定着ベルトの内側や表面に温度検知手段(図25の209。図2のメインサーミスタ18に相当。)を配置させて定着ベルトの温度を検出し、定着ヒータの温度を制御することにより定着ベルトの温調を行う従来の制御方法では、定着ベルトの弾性層に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率が小さく、熱容量が大きいため、定着ヒータへ通電してから定着ベルトの温度が上昇するまでの応答性が悪く、また、定着ベルト裏面の温度を検出する温度検知手段の位置が定着ヒータから離れていることにより検知タイミングの遅れがあることにより、立ち上げ時にオーバーシュートが発生してしまう。そこで、刊行物1記載の発明においては、定着ヒータの裏面に接触するように配置されたサブサーミスタにより定着ヒータの温度のオーバーシュート等をモニターし、スループットを落とす等の制御を行うための判断に用いている。 ところで、【0102】の記載から、刊行物1記載の発明はスタンバイモードを備えているところ、該スタンバイモード時には、定着ベルトの回転が停止しているので、メインサーミスタのみによる制御の場合、定着ヒータへ通電してから定着ベルトの温度が上昇するまでの応答性の悪さや、温度検知タイミングの遅れの影響が、定着ベルトが回転している立ち上げ時よりもさらに顕著に現れ、オーバーシュートが容易に発生してしまうことは、刊行物1の上記記載に接した当業者であれば直ちに理解し得る。さらに、刊行物1記載の発明において、オーバーシュート対策がサブサーミスタにより定着ヒータの温度をモニターすることなのであるから、同様にオーバーシュートが発生しやすいスタンバイモード時にも該サブサーミスタによるモニターが有効であることは当業者であれば理解し得る。 そのように刊行物1の記載を理解した当業者が刊行物2の記載に接すれば、刊行物2のサーミスタ52、待機状態、ヒータ46が、サブサーミスタ、スタンバイモード、セラミックヒータに各々相当するので、刊行物1記載の発明において、スタンバイモード時には、サブサーミスタの検知温度がスタンバイモード中の目標温度を維持するようにセラミックヒータへの電力供給を制御するようにすることを容易に想到し得る。 よって、本願発明1は、刊行物1?6に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (本願発明1の効果について) そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1?6に記載の発明及び周知技術から当業者であれば予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。 (まとめ) よって、本願発明1は、刊行物1?6に記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (請求人の主張について) 請求人は、平成24月1月31日付け意見書で、 「3.本願発明が特許されるべき理由 ○特許法第29条第2項の規定について (3-1)本願発明の説明 本願発明は、記録材にトナー像を形成する画像形成部と、弾性層を有する筒状の定着ベルトと、給電によって発熱し前記定着ベルトの内面に接触するセラミックヒータと、前記定着ベルトを介して前記セラミックヒータと共に定着ニップ部を形成する加圧ローラと、前記定着ベルトの温度を検知する第一の温度検知手段と、前記セラミックヒータの温度を検知する第二の温度検知手段と、を有し、前記定着ニップ部でトナー像を担持する記録材を定着処理する間、前記第一の温度検知手段の検知温度が定着処理中の目標温度を維持するように前記セラミックヒータへの供給電力が制御される定着部と、を有する画像形成装 置に関するものです。 上記の画像形成装置は、定着部の定着ベルトが弾性層を有するので、定着処理中に定着ベルトの温度を応答性良く所定の温度に維持するためには、定着ベルトの温度を第一の温度検知手段で検知して、その検知温度を定着処理中の目標温度に維持されるようにヒータへの供給電力を制御する必要があります。 このような画像形成装置において、プリント指示があった場合に、迅速に定着部を立ち上げるため、定着ベルトと加圧ローラが回転停止している状態でヒータに給電して発熱させて加圧ローラ等を温めておくスタンバイモードが考えられます。 しかしながら、定着ベルト及び加圧ローラが回転を停止しているスタンバイモードの時に、定着ベルトの温度を検知する第一の温度検知手段の検知温度に基づいてヒータへの供給電力を制御すると、セラミックヒータの温度が急上昇する場合があります。 なぜなら、スタンバイモード中のセラミックヒータは、定着ベルト及び加圧ローラが回転を停止していてそれらが回転している時よりもヒータの熱が逃げにくい状況だからです。 このような状況で、セラミックヒータから離れた定着ベルトの検知温度に基づいてヒータへの供給電力を制御すると、セラミックヒータの温度が急上昇してしまいます。 更に、上記の定着部は、セラミックヒータが定着ニップ部を形成する部材でもあるので、セラミックヒータに定着ニップ部の加圧力が作用する構成です。このように、セラミックヒータに加圧力が作用する構成で、セラミックヒータの温度が急上昇すると、セラミックヒータが熱応力で割れる場合があるという課題があります。 そこで、本願発明は、前記定着ベルトと前記加圧ローラが回転停止しておりプリント信号の入力を待つスタンバイモード中、前記第二の温度検知手段の検知温度が前記スタンバイモード中の目標温度を維持するように前記セラミックヒータへの供給電力を制御することを特徴とするものです。 上記の特徴によって、スタンバイモード中はセラミックヒータの温度を検知してその検知温度がスタンバイモード中の目標温度に維持されるようにセラミックヒータへの供給電力を制御するので、セラミックヒータの温度が急上昇するのを抑えることができます。 従って、定着処理中に定着ベルトの温度を検知してその検知温度が定着処理中の目標温度に維持されるようにヒータへの供給電力を制御する構成においても、セラミックヒータを保護しつつ加圧ローラ等を温めることができるスタンバイモードを実現できるという効果があります。 (3-2)本願発明と刊行物との対比 刊行物1では、スタンバイモード(定着ベルト及び加圧ローラが回転停止するモード)について何ら開示していません。 刊行物2では、印字時において定着ベルトに接触するように配置されたサーミスタ51により測定される温度に基づいて定着ベルトを所定の温度に保つ制御が行われ、定着装置が停止している待機状態においては、ヒータを内包する加熱ローラの表面に接触するように配置されたサーミスタ52により測定される温度に基づいて加熱ローラを所定の温度に保つ制御が行われることを開示しています。 しかしながら、刊行物2の定着装置は、サーミスタ52が温度を検知している対象はヒータによって加熱される加熱ローラであって、本願発明のように給電によって発熱するセラミックヒータ、即ち、熱応力により割れやすいものではありません。更に、刊行物2の定着装置において、サーミスタ52によって検知される対象物である加熱ローラは定着ニップ部を構成するものでもないので、定着ニップ部の加圧力が作用することもありません。このように刊行物2のサーミスタ52は、急な温度上昇による割れなどを気にする必要がないものの温度を検知して、その検知温度に基づいて割れなどを気にする必要がないも のを所定の温度に保つ制御をしているに過ぎず、本願発明のように定着ニップ部の加圧力が作用する状況において、急な温度上昇が生ずると割れる虞のあるセラミックヒータの温度を検知して、その検知温度に基づいてセラミックヒータを所定の温度に保つ制御をする構成を連想させるものではないと考えます。 従って、刊行物1及び2には、定着ベルト及び加圧ローラが回転停止するスタンバイモード中に、急な温度上昇で割れてしまう虞があるセラミックヒータの温度を検知して、その検知温度に基づいてセラミックヒータを所定の温度に維持する制御をする思想など全くないと考えます。 よって、刊行物1及び2からは、定着処理中に定着ベルトの温度を検知してその検知温度が定着処理中の目標温度に維持されるようにヒータへの供給電力の制御を行う構成において、セラミックヒータを保護しつつ加圧ローラ等を温めることができるスタンバイモードを実現できるという本願発明の効果を奏するはずがありません。 次に、刊行物3は、同時提出の手続補正書により削除した補正前の請求項1の構成要件に対して引かれた文献であり、温度制御を行う際にスタンバイ時にはコピー時よりも低い温度に設定することが望ましい旨が記載されているだけのものです。そして刊行物4-6については、同時提出の手続補正書により削除した補正前の請求項2に対して引かれた文献であり、スタンバイモード中に定着ベルトの回転を停止し、定着ベルトと加圧ローラの間を離間させ、定着ニップ部にかかる加圧力を解除するものが記載されているだけのものです。 よって、刊行物3-6においても、定着ベルト及び加圧ローラが回転停止するスタンバイモード中に、急な温度上昇で割れてしまう虞があるものの温度を検知して温調する思想など全くなく、記載もありません。 従って、刊行物3-6についても、定着処理中に定着ベルトの温度を検知してその検知温度が定着処理中の目標温度に維持されるようにヒータへの供給電力を制御する構成においても、セラミックヒータを保護しつつ加圧ローラ等を温めることができるスタンバイモードを実現できるという本願発明の効果を奏するはずがありません。 以上説明しましたように、本願発明の構成を有さず本願発明の効果も奏さない刊行物1?6をどのように組み合わせても本願発明は容易に発明できないと確信します。」 と主張する。 しかし、上記(相違点について)で検討したように、刊行物1記載の発明に接した当業者が、温度検知を行うメインサーミスタ及びサブサーミスタを備えた画像形成装置における通常の動作とは異なるスタンバイモード中の具体的構成として、刊行物2に記載された待機状態になると、印字命令が入力されるまで定着装置は停止し、熱源である加熱ローラの表面に接触するように配置されたサーミスタ52により測定される温度に基づいて前記加熱ローラを所定の温度に保つ制御が行われる技術を採用し、本願発明1のようにすることは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。 そして、上記請求人が主張する効果は、刊行物1において、サブサーミスタによりセラミックヒータである定着ヒータの温度をモニターしているのであるから、刊行物1に対して刊行物2の技術を採用することにより結果的に得られる効果に過ぎない。 そのため、本願発明1が奏する効果は、刊行物1?6に記載の発明が奏する効果の総和を超えるものではない。 よって、上記請求人の主張は採用できない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-02-23 |
結審通知日 | 2012-02-27 |
審決日 | 2012-03-12 |
出願番号 | 特願2004-287999(P2004-287999) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大森 伸一 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 立澤 正樹 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 永川 行光 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 木村 秀二 |