ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J |
---|---|
管理番号 | 1256124 |
審判番号 | 不服2007-30069 |
総通号数 | 150 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-05 |
確定日 | 2011-11-21 |
事件の表示 | 特願2001-340931「高湿式エネルギー炭素質摩擦材料の表面に摩擦調整剤を堆積させることで形成する摩擦材料」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-234951〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成13年11月6日(パリ条約による優先権主張 2000年11月6日 アメリカ合衆国)の出願であって、平成17年12月21日付けで拒絶理由が通知され、平成18年6月13日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年3月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月3日に意見書が提出されたが、同年8月3日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対して、同年11月5日に拒絶査定不服審判が請求され、同年12月5日に手続補正書が提出され、平成20年1月17日に手続補正書(方式)が提出され、同年2月8日付けで前置審査の結果が報告され、当審において平成21年10月28日付けで審尋され、平成22年4月27日に回答書が提出され、当審において平成23年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年4月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2.当審による拒絶理由通知について 当審が、平成23年1月21日付けで通知した拒絶理由のうち、「理由B」は、次のとおりである。 「B.本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」 第3.本願明細書の記載について 1.特許請求の範囲の記載 平成23年4月21日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1には、次のとおり記載されている。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 「少なくとも1種の硬化可能な樹脂を含浸させた、非アスベストでかつ非金属の繊維質基材を含み、該繊維質基材は、フィブリル化したアラミド繊維を含む一次層と該一次層の少なくとも1つの表面上のシリカ摩擦調整粒子を含む二次層とを含み、前記摩擦調整粒子のサイズは0.5?20ミクロンの範囲にわたり、該シリカ摩擦調整粒子は、前記繊維質基材の重量を基準として0.2?20重量%存在し、前記シリカ摩擦調整粒子は、前記一次層の表面積の3?90%を被覆する、摩擦材料。」 2.発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明には、次のとおり記載されている。 イ.「摩擦調整粒子の二次すなわち上層を一次層の表面に堆積させて、繊維質基材を形成する。様々な摩擦調整粒子が、繊維質基材の表面の二次層として有用である。特に、シリカ粒子の例えばケイソウ土、セライト、celatom、及び/または二酸化ケイ素は特に有用である。表面摩擦調整粒子は、繊維質基材の約0.2?約20重量%、好ましくは約2?10重量%、最も好ましくは約3?5重量%存在する。」(段落0025) ロ.「繊維質基材の一次層の表面に摩擦調整粒子を使用することで、繊維質基材に三次元構造を与える。繊維質基材の表面の摩擦調整粒子の二次層の均一性を実現するために、好ましくは約0.5?約80ミクロン、好ましくは約.5?約20ミクロンである粒子の範囲とサイズとを使用する。こうした特定の実施例においては、摩擦調整粒子のサイズが大き過ぎるか小さ過ぎる場合、最適三次元構造は実現されず、従って熱放散も同様に最適ではないことが発見されている。 好適な実施例においては、一次層の表面の摩擦調整粒子の量は、摩擦紙の約0.2?約20重量%、特定の実施例においては約2?約15重量%、特定の好適な実施例においては約2?約5重量%の範囲にわたる。好適な実施例においては、一次層の表面の摩擦調整粒子の被覆面積は、表面積の約3?約90%の範囲内である。 摩擦調整粒子の二次層を一次層の表面に堆積させて、繊維質基材を形成する。様々な摩擦調整粒子が、繊維質基材表面の二次層として有用である。有用な摩擦調整粒子としては、シリカ粒子;樹脂粉末の例えばフェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの混合物;部分的及び/または完全に炭化した炭素粉末及び/または粒子及びこれらの混合物;並びにこのような摩擦調整粒子の混合物が挙げられる。特に、シリカ粒子の例えばケイソウ土、セライト(登録商標)、Celatom(登録商標)、及び/または二酸化ケイ素は特に有用である。シリカ粒子は、繊維質材料に強く結合する廉価な有機材料である。シリカ粒子は、摩擦材料に高い摩擦係数を与える。シリカ粒子はまた、摩擦材料に平滑な摩擦表面を与え、摩擦材料に良好な「シフト感触」と摩擦特性とを与え、これによって、いかなるシャダも最小になるようにする。」(段落0045?0047) ハ.「繊維質基材構造は、多孔質の高温合成繊維網目構造を含んで、高い熱放散と摩擦安定性とを提供する。摩擦調整粒子を繊維質基材表面に堆積して、「耐シャダ」特性を提供する。スリップクラッチ用の本発明の摩擦材料を、図2に示す。BWは本発明の摩擦材料であり、約38?40重量%のより少なくフィブリル化したアラミド繊維;約13?15重量%の炭素粒子;約10?12重量%の綿繊維;約4?6重量%の炭素繊維;及び約28?30重量%のセライト充填材料を含む繊維質基材の一次層を有し、約3?約5重量%セライト摩擦調整粒子を含む二次層すなわち上層を有する。」(段落0055) 第4.当審の判断 1.本願発明は、上記第3.1.のとおりの「摩擦材料」に係るものであり、その発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)の一部として、 「少なくとも1種の硬化可能な樹脂を含浸させた、非アスベストでかつ非金属の繊維質基材を含み、該繊維質基材は、フィブリル化したアラミド繊維を含む一次層を含む」との事項(以下、「発明特定事項a」という。)及び 「シリカ摩擦調整粒子のサイズは0.5?20ミクロンの範囲にわたり、該シリカ摩擦調整粒子は、前記繊維質基材の重量を基準として0.2?20重量%存在し、前記シリカ摩擦調整粒子は、前記一次層の表面積の3?90%を被覆する」との事項(以下、「発明特定事項b」という。) を備えるものと認められる。 (1)発明特定事項aについて 本願明細書の発明の詳細な説明には、「実施例」として、記載事項ハのとおり、「BWは本発明の摩擦材料であり、約38?40重量%のより少なくフィブリル化したアラミド繊維;約13?15重量%の炭素粒子;約10?12重量%の綿繊維;約4?6重量%の炭素繊維;及び約28?30重量%のセライト充填材料を含む繊維質基材の一次層を有し」と記載されているが、前記「本発明の摩擦材料」の調製に際して、硬化可能な樹脂を使用することについて何も具体的記載がない。 したがって、発明特定事項aに係る「繊維質基材」ないし「一次層」が、「少なくとも1種の硬化可能な樹脂を含浸させた」ものである点は、発明の詳細な説明において、具体的かつ十分に裏付けられているとはいえない。 (2)発明特定事項bについて 本願発明は、発明特定事項b、すなわち、特定量の、粒径が0.5?20ミクロンの「シリカ摩擦調整粒子」を含む「摩擦材料」に係るものである。 これに対して、本願明細書の発明の詳細な説明には、「実施例」として、記載事項ハのとおり、「BWは本発明の摩擦材料であり、……、約3?約5重量%セライト摩擦調整粒子を含む二次層すなわち上層を有する。」と記載されているのみである。前記「セライト摩擦調整粒子」(なお、「セライト」は記載事項ロのとおり登録商標であると解される。)が、記載事項イ及びロからみて、上記「シリカ摩擦調整粒子」に該当するとしても、その粒径及び使用(存在)量ないし一次層の表面積の被覆割合は、いずれも、記載されておらず明らかではない。 すると、「本発明の摩擦材料」について、その性能を「摩擦特性試験」〔段落0056?0066〕により測定・評価したことが記載されていても、「セライト摩擦調整粒子」としてどの程度の粒径を有するものを、どの程度の量用いて「摩擦材料」を調製したか、不明であるから、上記発明特定事項bに係る、「シリカ摩擦調整粒子」として、その粒径が0.5?20ミクロンであるものを選択し、一次層の表面積の3?90%を被覆することにより、摩擦特性に優れる「摩擦材料」となすことが、具体的かつ十分に裏付けられているとはいえない。 また、この「実施例」における「セライト摩擦調整粒子」の量は「約3?約5重量%」と範囲としては特定されているが、実際に使用した量については特定されておらず、また、こうした不明確な開示事項から、上記発明特定事項bに係る「前記繊維質基材の重量を基準として0.2?20重量%存在し」との数値限定範囲がその全般にわたって十分に裏付けられているとはいえない。 2.請求人の主張について 請求人は、平成23年4月21日付け意見書において、「本願発明の摩擦材料の特定の具体例を用いてテストデータを報告したにすぎない。」、「「実施例」の項目に開示されているBW摩擦材料が、本願請求項1及び22に記載の発明の範囲に包含されていることが明らかであり、実施例は、むしろ本願請求項1及び22に記載の発明が摩擦特性に優れる材料であることを裏付ける具体例として作用している。」、「BW摩擦材料が本願請求項1及び22に記載の発明の範囲に包含されており、本願請求項1及び22によって定義された摩擦材料の利点を実証しているという事実こそが、本願請求項1及び22に記載の発明が本願発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されていることを示している。」などと主張しているが、実施例における記載(記載事項ハ)には、本願発明で特定する種々の事項について、すべてを具体的に特定しているわけではないから、そもそも実施例のBW摩擦材料が本願発明の範囲に包含されているのかいないのかを客観的に判断することができず、したがって、本願発明として特定された摩擦材料の利点を実証していることを確認できない。 請求人は「本願明細書の記載を参酌すれば、本願請求項1及び22に記載の発明の各特徴が上述の「発明を解決するための手段」や「発明の実施の形態」などの各項目に明示されていることが明らか」とも主張しているが、例えば、実施例においては、繊維質基材に樹脂を含浸することについて触れておらず、「発明を解決するための手段」や「発明の実施の形態」にも、繊維質基材に樹脂含浸が必須であるとは記載されていないことは明らかであるから(段落0026、0029)、そうすると、実施例に記載されたものは、発明の詳細な説明のその他の部分の記載を参酌しても、繊維質基材に樹脂を含浸したものか否か特定できないことになる。 したがって、請求人の主張は採用できない。 3.まとめ したがって、上記発明特定事項a及びbを備える本願発明は、上記1.(1)及び(2)に記載の理由により、実質上、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。 よって、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第5.むすび 以上のとおりであるから、当審において通知した、請求項1についての特許法第36条第6項第1項違反に係る理由は妥当なものであるので、他の請求項や他の理由について検討するまでもなく、本願は、前記拒絶理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-06-27 |
結審通知日 | 2011-06-28 |
審決日 | 2011-07-12 |
出願番号 | 特願2001-340931(P2001-340931) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C08J)
P 1 8・ 537- WZ (C08J) P 1 8・ 113- WZ (C08J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小野寺 務 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 ▲吉▼澤 英一 |
発明の名称 | 高湿式エネルギー炭素質摩擦材料の表面に摩擦調整剤を堆積させることで形成する摩擦材料 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 桜井 周矩 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 社本 一夫 |