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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して差戻し F02C
管理番号 1256203
審判番号 不服2011-10740  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-23 
確定日 2012-05-22 
事件の表示 特願2005-179545「流量制御装置、エンジンシステム、および流量制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 9798、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願は、さらに審査に付すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年6月20日(パリ条約による優先権主張2004年6月21日、米国)の出願であって、平成22年7月27日付けで拒絶理由が通知され、平成22年11月16日付けで意見書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成23年1月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月23日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2.平成22年7月27日付けの拒絶理由の概要
平成22年7月27日付けの拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

理由1.この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

理由2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

(理由1について)
請求項1に係る発明が有する技術的特徴は、引用文献1に記載された事項(下記理由2参照)の開示内容に照らして、先行技術に対する貢献をもたらすものではないから、特別な技術的特徴であるとはいえない。
よって、請求項1に係る発明と請求項2-19に係る発明との間で同一の又は対応する特別な技術的特徴を見出すことができない。
ただし、請求項2-5、9-12に係る発明については、審査基準に基づき、例外的に発明の単一性の要件を問わないこととする(「特許・実用新案 審査基準」第I部第2章4.2を参照)。
以上のように、請求項1に係る発明と請求項6-8、13-19に係る発明とは、発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当しないから、この出願は特許法第37条に規定する要件を満たさない。
なお、この出願は特許法第37条の規定に違反しているので、請求項6-8、13-19に係る発明については特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。

(理由2について)
・請求項 1、2
・引用文献 1
・備考
引用文献1には、システムに対する流体流動を制御するための流量制御装置であって、第1および第2の開口及びノズルを有するハウジング62と、ハウジング内に配置されたフラッパ部材64とを含み、該フラッパ部材は屈曲可能な部分を有する流量制御部材110、112、210、212を含み、流量制御部材はシステムの1つの動作モードの間にハウジングを通って流れることを可能にする開いた位置にあり、システムの別の動作モードにおいてハウジングを通って流れることを阻止する閉じた位置にある流量制御装置が記載されている(特に、第1-3図参照。)。してみると、請求項1、2に係る発明と引用文献1記載の流量制御装置とに差異はない。

(理由3について)
・請求項 1、2
・引用文献 1
・備考
上記理由1備考欄参照。

・請求項 3-5、9-12
・引用文献 1-3
・備考
引用文献1には、さらに、ハウジングの第2の開口がジェネレータ及びギヤボックスに接続され、ジェネレータ及びギヤボックスを冷却することが記載されている。 そして、エンジン入口の空気ダクトからの空気により電子エンジン制御装置を冷却することは周知技術であり(例えば、引用文献2の図、引用文献3の第1図参照。)、引用文献1記載の装置に該周知技術を適用することは当業者にとって容易である。

引 用 文 献 等 一 覧
1.米国特許出願公開第2004/118105号明細書
2.特開昭59-105936号公報
3.米国特許第4674704号明細書

第3.平成23年1月6日付けの拒絶査定の概要
平成23年1月6日付けの拒絶査定の概要は、以下のとおりである。

この出願については、平成22年 7月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由3によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
1.請求項1について
請求項1は、補正前の請求項1について、流量制御部材がフラッパ部材に結合された屈曲可能な部分を有するものであること、気流の流通及び阻止する位置に気流がフラッパ部材を位置づけることができるようにフラッパ部材が曲がっていることを特定したものである。
しかしながら、引用文献1記載の流量制御部材はフラッパ部材に結合された屈曲可能な部分を有するものであるし、フラッパ部材を曲げることは周知技術である(例えば、特開平9-250461号公報の図1-8参照。)。
また、曲がったフラッパ部材を有する流量制御弁は周知技術であり(例えば、実願昭59-101839号(実開昭61-17571号)のマイクロフィルムの第7図、実願平2-108479号(実開平4-64676号)のマイクロフィルムの第1-3図参照。)、引用文献1記載の流量制御部材に代えて、同様の機能を有する当該周知の流量制御弁を採用することは格別なものでない。
よって、請求項1に係る発明は、先の拒絶理由で述べたとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.請求項2-4
上記「1.」の理由に加え、先の拒絶理由において説示した理由により、請求項2-4に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に-より特許を受けることができない。

なお、拒絶査定の理由とはならないが、請求項5、9については引用文献1からみて、請求項6については引用文献1及び上記周知技術からみて進歩性を有しないことに注意してください。ただし、請求項7、8については検討しておらず、新規性進歩性の判断はしていない。

第4.本件補正
1.本件補正の内容
平成22年11月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、下記(A)から(B)へと補正された。
(A)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
システムに対する流体流動を制御するための流量制御装置であって、
第1および第2の開口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたフラッパ部材とを含み、該フラッパ部材は、屈曲可能な部分を有する流量制御部材を含み、
該流量制御部材は、前記システムの1つの動作モードの間に、前記ハウジングを通って流れることを可能にする開いた位置にあり、前記システムの別の動作モードにおいて、前記ハウジングを通って流れることを阻止する閉じた位置にある、流量制御装置。
【請求項2】
前記ハウジングの前記第1および第2の開口に結合された第1および第2のノズルをさらに含み、
前記流量制御部材は、前記第1のおよび第2のノズルの間での材料の流れを封鎖するように構成される、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
当該流量制御装置は、エンジン電子制御(EEC)装置に結合される、請求項2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記第2のノズルは前記EEC装置に接続され、前記第1のノズルは冷却ダクトに接続される、請求項3に記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記冷却ダクトは、エンジンの入口に接続される、請求項4に記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記システムは航空エンジンであり、1つの動作モードは、地上での航空機の動作、離陸、および上昇エンジン動作のうちの少なくとも1つを含み、別の動作モードは、高度でのおよび巡航のエンジン動作のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項7】
前記屈曲可能な部分は回旋状の部分を含む、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、少なくとも1つの視覚窓を含む、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項9】
エンジンと、
空気ダクトと、
該空気ダクトに結合された弁の構成要素と、
該弁の構成要素に結合された電子エンジン制御(EEC)装置とを含み、
前記弁の構成要素は、屈曲可能な部分を有する流量制御部材を含み、該流量制御部材は、1つのエンジン動作モードの間に気流が前記EEC装置を通るのを可能にする1つの位置と、別のエンジン動作モードの間に気流が前記EEC装置を通るのを阻止する別の位置との間で可動である、エンジンシステム。
【請求項10】
前記弁の構成要素は、
第1のおよび第2の開口を有するハウジングを含み、前記流量制御部材は前記ハウジング内に配置され、前記構成要素はさらに、
前記第1および第2の開口それぞれに結合された第1および第2のノズルを含み、
前記流量制御部材は、前記第1および第2のノズルの間で気流を塞ぐように構成される、請求項9に記載のエンジンシステム。
【請求項11】
前記第2ノズルは前記EEC装置に接続され、前記第1のノズルは前記空気ダクトに接続される、請求項10に記載のエンジンシステム。
【請求項12】
前記空気ダクトは前記エンジンの空気入口部分に接続される、請求項11に記載のエンジンシステム。
【請求項13】
前記エンジンは航空機エンジンであり、1つの動作モードは、地上での航空機の動作、離陸、および上昇エンジン動作のうちの少なくとも1つを含み、別の動作モードは、高度でのおよび巡航のエンジン動作のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のエンジンシステム。
【請求項14】
前記弁の構成要素は、
前記流量制御部材を含むためのハウジングと、
該ハウジングに取り付けられた、前記流量制御部材を見るための1つ以上の視覚窓とをさらに含み、
前記流量制御部材は前記ハウジングに接続される、請求項9に記載のエンジンシステム。
【請求項15】
前記視覚窓は、ポリカーボネートまたはポリフェニルの材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載のエンジンシステム。
【請求項16】
第1および第2の開口を有し、かつ内部に配置された流量制御部材を有するハウジングを与えるステップを含み、前記流量制御部材は屈曲可能な部分を含み、さらに、
前記流量制御部材を、前記ハウジングを通って流れるのを可能にする1つの位置に屈曲可能に位置付けるために、前記ハウジング内で第1の圧力状態を生成するステップと、
前記流量制御部材を、前記ハウジングを通って流れるのを阻止する別の位置に屈曲可能に位置付けるために、前記ハウジング内で第2の圧力状態を生成するステップとを含む、流量制御方法。
【請求項17】
前記屈曲可能な部分は回旋状の部分を含む、請求項16に記載の流量制御方法。
【請求項18】
1つの圧力状態は、地上での航空機の動作、離陸、および上昇エンジン動作のうちの少なくとも1つを含み、別の圧力状態は、高度でのおよび巡航のエンジン動作のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の流量制御方法。
【請求項19】
前記ハウジングを与えるステップは、前記流量制御部材を見るための1つ以上の視覚窓を有するハウジングを与えるステップを含む、請求項16に記載の流量制御方法。」

(B)「【請求項1】
エンジンと、
空気ダクトと、
該空気ダクトに結合された弁の構成要素と、
該弁の構成要素に結合された電子エンジン制御(EEC)装置とを含み、
前記弁の構成要素は、フラッパ部材に結合された屈曲可能な部分を有する流量制御部材を含み、
第1のエンジン動作モードの間に気流が前記EEC装置を通るのを可能にする1つの位置と、第2のエンジン動作モードの間に気流が前記EEC装置を通るのを阻止する別の位置とに、気流が前記フラッパ部材を位置づけることができるように前記フラッパ部材が曲がっていることを特徴とする、エンジンシステム。
【請求項2】
前記弁の構成要素は、
第1のおよび第2の開口を有するハウジングを含み、
前記第1および第2の開口それぞれに結合された第1および第2のノズルを含み、
前記フラッパ部材は、前記第1および第2のノズルの間で気流を塞ぐように構成される、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記第2ノズルは前記EEC装置に接続され、前記第1のノズルは前記空気ダクトに接続される、請求項2に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記空気ダクトは前記エンジンの空気入口部分に接続される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記エンジンは航空機エンジンであり、1つの動作モードは、地上での航空機の動作、離陸、および上昇エンジン動作のうちの少なくとも1つを含み、別の動作モードは、高度でのおよび巡航のエンジン動作のうちの少なくとも1つを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項6】
前記屈曲可能な部分は回旋状の部分を含む、請求項1ないし5のいずれ1項に記載のエンジンシステム。
【請求項7】
前記ハウジングは、少なくとも1つの視覚窓を含む、請求項2ないし6のいずれか1項に記載エンジンシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの視覚窓は、ポリカーボネートまたはポリフェニルの材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のエンジンシステム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のエンジンシステムを作動させる方法。」
なお、下線は請求人が付した。

2.本件補正と拒絶査定
本件補正後の請求項と本件補正前の請求項との対応関係についてみると、本件補正は、本件補正前の請求項1ないし6を削除し、本件補正前の請求項9ないし12を本件補正後の請求項1ないし4とし、本件補正前の請求項7、8及び15を本件補正後の請求項6、7及び8と各々対応するものに補正する補正を含むものである。そして、平成23年1月6日付けの拒絶査定は、平成22年7月27日付けの拒絶理由の(理由3)で指摘した請求項9ないし12すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明に対して、引用文献1及び周知技術に基づいて、請求項2ないし4に係る発明に対して、引用文献1ないし引用文献3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとする内容を含むものである。

第5.当審の判断
平成23年1月6日付けの拒絶査定の理由となっている特許法第29条第2項(理由3)について、検討する。
拒絶査定は、本件補正後の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明」という。)に対して、刊行物として引用文献1を主たる根拠として特許法第29条第2項の規定により、当業者が容易に発明することができたとするものである。
ところで、本願は第1.に記載されているようにパリ条約による優先権主張を伴う出願であって、優先日を2004年6月21日とする出願である。一方、拒絶査定において、拒絶理由で示した理由3の根拠となる引用文献1として挙げた米国特許出願公開第2004/118105号明細書の公開日(公知日)は、2004年6月24日であって、本願の優先日である2004年6月21日の後に引用文献1は公開されたものである。
しかも、請求人は、引用文献1の公知性に関して、平成22年11月16日付けの意見書及び平成23年5月23日付けの審判請求書で、引用文献1の公開は2004年6月24日であり、本願のパリ条約上の優先日は2004年6月21日となっており、優先日は当該公開日より前である旨の主張もしている。
さらに、原審における拒絶理由及び拒絶査定の際に、本願に関して、優先権を認めることができないとする旨を示したものでもない。また、本願に関して、優先権を認めることができないとする理由もない。

したがって、本願の優先日より後に頒布された刊行物である引用文献1を引用して、本件発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした原査定は違法なものである。

第6.むすび
よって、本願は、さらに審査に付すべきものと認め、特許法第160条第1項の規定により、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-05-07 
出願番号 特願2005-179545(P2005-179545)
審決分類 P 1 8・ 121- W (F02C)
最終処分 差戻し  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 岡崎 克彦
柳田 利夫
発明の名称 流量制御装置、エンジンシステム、および流量制御方法  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  

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