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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1256670
審判番号 不服2010-13861  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-23 
確定日 2012-05-10 
事件の表示 特願2006-535891「文書処理装置及び文書処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日国際公開、WO2005/098664、平成19年11月15日国内公表、特表2007-532986〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年4月8日(優先権主張2004年4月8日及び2005年1月27日、日本国、パリ条約による優先権主張2004年8月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年7月10日付けの拒絶理由通知に対し同年9月14日付けで手続補正がされ、平成22年3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年6月23日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年6月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 本願発明と補正後の発明
本件補正は、平成21年9月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「自身が対応している第1のマークアップ言語により記述された文書を表示し、編集を受け付けることが可能な処理系と、
文書が、前記処理系が対応していない第2のマークアップ言語により記述されていたときに、前記第2のマークアップ言語により記述された第2文書を、前記第1のマークアップ言語により記述された第1文書にマッピングすることが可能な変換部と、を備え、
前記第1文書を表示する処理系が、ユーザから前記第1文書の編集指示を受け付けたとき、前記変換部は、まず、前記第1文書の編集を指示されたデータにマッピングされている前記第2文書のデータを変更し、つづいて、変更された前記第2文書を参照して、前記第2文書において変更されたデータをマッピングした前記第1文書のデータを変更し、前記処理系は、変更された前記第1文書を参照して、表示を更新する
ことを特徴とする文書処理装置。」(以下、「本願発明」という。)を、

平成22年6月23日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「自身が対応している第1のマークアップ言語により記述された文書を表示し、編集を受け付けることが可能な処理系と、
文書が、前記処理系が対応していない第2のマークアップ言語により記述されていたときに、前記第2のマークアップ言語により記述された第2文書を、前記第1のマークアップ言語により記述された第1文書にマッピングすることが可能な変換部と、
前記文書から、文書をデータとして扱うときのアクセス方法を提供するために定められた文書オブジェクトモデルに準拠した形式のデータを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、前記第2文書に対応する変換元文書オブジェクトモデルデータを生成し、
前記変換部は、前記第2文書を前記第1文書にマッピングするための定義を記述した定義ファイルを参照して、前記定義に含まれる、前記第1文書に対応する変換先文書オブジェクトモデルデータの各ノードと、前記変換元文書オブジェクトモデルデータに含まれるデータとの対応関係を保持するコネクタを生成し、
前記コネクタは、前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードと前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードとの対応関係を保持する第1コネクタと、対応する前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードを有しない第2コネクタと、を含み、
前記第1コネクタは、前記対応関係に基づいて、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードにマッピングされるべき前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードから、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードを生成し、
前記処理系は、前記変換先文書オブジェクトモデルデータを参照して、前記マッピングされた第1文書を表示し、
前記第1文書を表示する処理系が、ユーザから前記第1文書の編集指示を受け付けたとき、前記コネクタは、前記編集指示を取得し、前記対応関係に基づいて、編集すべき前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードを特定し、そのノードに対して、前記編集指示に対応した変更操作を実行し、
前記第1コネクタは、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードにマッピングされるべき前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードが変更されたとき、変更された前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードから、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードを再生成することにより、前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードに対する変更を前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードに反映させる
ことを特徴とする文書処理装置。」(以下、「補正後の発明」という。)

に変更することを含むものである。(なお、下線部は、本願発明に対する補正箇所である。)

2 補正の適否

(1)新規事項の有無、補正の目的要件
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
そして、「変換部」が、「第1文書の編集を指示されたデータにマッピングされている第2文書のデータを変更」し、変更された第2文書を参照して、「第2文書において変更されたデータをマッピングした第1文書のデータを変更する」という処理において、
ア 「変換部」は、「コネクタ」を生成し、そのコネクタによって、第2文書において変更されたデータをマッピングした第1文書のデータを変更するものであり、
イ 「第1文書」は、「生成部」によって、第1文書に対応する「変換先文書オブジェクトモデルデータ」の形式のデータにされ、「第2文書」は、「生成部」によって、第2文書に対応する「変換元文書オブジェクトモデルデータ」の形式のデータにされることで、マッピングが行われるものであり、
ウ 「文書のデータ」の変更では、文書のデータが、文書のデータに対応する「文書オブジェクトモデルデータのノード」の形式のデータにされ、そのノードがコネクタを介して変更されることによって、データの変更が行われるものであり、
エ 「変換部」が生成する「コネクタ」は、「第1コネクタ」と「第2コネクタ」があり、
第1コネクタは、第1文書のデータに対応する「変換先文書オブジェクトモデルデータのノード」と、第2文書のデータに対応する「変換元文書オブジェクトモデルデータのノード」との対応関係を保持するものであり、
第2コネクタは、対応する「変換元文書オブジェクトモデルデータのノード」を有しないものであり、
オ 「第1文書の編集を指示されたデータにマッピングされている第2文書のデータを変更」するにあたり、「コネクタは、編集指示を取得し、対応関係に基づいて、編集すべき変換元文書オブジェクトモデルデータのノードを特定し、そのノードに対して、編集指示に対応した変更操作を実行」するものであり、
カ 「第2文書において変更されたデータをマッピングした第1文書のデータを変更」するにあたり、「第1コネクタは、自身に対応する変換先文書オブジェクトモデルデータのノードにマッピングされるべき変換元文書オブジェクトモデルデータのノードが変更されたとき、変更された変換元文書オブジェクトモデルデータのノードから、自身に対応する変換先文書オブジェクトモデルデータのノードを再生成することにより、変換元文書オブジェクトモデルデータのノードに対する変更を変換先文書オブジェクトモデルデータのノードに反映させる」ものである、
と、上記の処理がどのようになされているものかをそれぞれ具体的に限定するものとなっているから、上記補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲を減縮したものに該当し、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)および第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

ア 補正後の発明
上記「1 本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

イ 引用発明
(ア)引用発明1
原審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特表2004-501450号公報(以下、「引用例1」という。)には、「DHTMLおよびXSLTを使用した任意のXMLドキュメントの作成」に関して、図面とともに下記の事項が記載されている。

a 「【0009】
(発明の概要)
DHTMLビューを使用してXMLを作成する方法およびシステムを説明する。ユーザが、DHTMLビューと対話し、関連するDHTMLツリーの値(例えば、テキストまたはプロパティ)を変更することができるようにする様々なユーザインターフェースが、DHTMLビューの中で自動的に、または半自動的に提供される。値の変更は、関連するXML構造の変更に翻訳される。変換、例えば、XSL-Tが、その変更されたXML構造に適用され、次にXML構造が、ユーザの対話を反映するようにDHTMLビューを変更する。一部が「ドキュメント内」インターフェースと呼ばれるインターフェース群により、ユーザは、DHTMLビューと対話することができ、そのDHTMLビューに関連するデータを記述する対応するXMLドキュメントに自動的に値の変更が行われるようにさせることができる。様々な「ドキュメント内」インターフェースのプレゼンテーションが、XMLスキーマ(XMLドキュメントは、そのインスタンスである)だけでなく、XMLドキュメントをDHTMLビューに変換するのに利用されたXSL-T(XSLT変換)も考慮することによって行われる。
【0010】
さらに、クリスタルの概念が導入され、DHTMLビューの変更を、対応するXMLドキュメントに直接マップし戻すのに使用される。基本的形態で、クリスタルは、1つまたは複数のビヘイビアおよび関連するXSL-Tを含む。図示する例では、ビヘイビアは2進コードとして実装される。上記2進コードはXSL-Tによって生成されたDHTMLタグに関連付けられるか、または、付加される。クリスタルを使用して、XMLをDHTMLビューに変換する。クリスタルのビヘイビアは、データ形状特有、またはデータ形状依存であるように定義される。データ形状はXMLドキュメントによって定義される。このビヘイビアは、必ずしも、何らかのスキーマ、データ、またはタグに依存するわけではない。データ形状に依存する性質を持つため、クリスタルは様々なXMLドキュメントで再使用するために、パッケージ化することができる。これらのドキュメントは、XMLによって定義された形状以外は、互いに全く関係を有さない。
【0011】
ビヘイビアは、XSL-Tによって生成されたDHTMLタグに付加することができる。DHTMLビューとのユーザの対話を、XMLドキュメントに直接に反映するようにマップすることがビヘイビアにより確実になる。このようにして、ユーザによってDHTMLビューに行われた変更を反映するようにXMLドキュメントを作成することができる。」

b 「【0012】
(好適実施形態の詳細な説明)
概要
DHTMLビューを使用してXMLを作成する方法およびシステムを説明する。一実施形態では、ユーザが、DHTMLビューと対話して関連するDTHMLツリーの値(例えば、テキストまたはプロパティ)を変更することができるようにする様々なユーザインターフェースが、DHTMLビューの中で自動的に、または半自動的に提供されることが可能である。値の変更は、関連するXML構造の変更に翻訳される。変換、例えば、XSL-Tが、変更されたXML構造に適用され、次にXML構造が、ユーザの対話を反映するようにDHTMLビューを変更する。一部が「ドキュメント内」インターフェースと呼ばれるインターフェース群により、ユーザは、DHTMLビューと対話することができ、そのDHTMLビューに関連するデータを記述する対応するXMLドキュメントでその対話を反映させることができる。この変更は、XMLをDHTMLに変換するのに利用されたXSL-Tの複雑さに関わらず行うことができる。様々なドキュメント内インターフェースのプレゼンテーションは、XMLスキーマ(XMLドキュメントはそのインスタンスである)だけでなく、XMLドキュメントをDHTMLビューに変換するのに利用されたXSL-T(XSLT変換)も考慮することによって行われる。
【0013】
別の実施形態では、クリスタルの概念が導入される。基本的形態で、クリスタルは、1つまたは複数のビヘイビア、および関連するXSL-Tを含む。クリスタルは、XMLをDHTMLビューに変換するのに使用される。クリスタルのビヘイビアは、データ形状がXMLドキュメントによって定義されて、データ形状に特有である、またはデータ形状に依存するように定義される。ビヘイビアは、必ずしも何らかのスキーマ、データ、またはタグに依存するわけではない。データ形状に依存する性質のため、クリスタルは、XMLによって定義された形状以外、互いに全く関係を有さない様々なXMLドキュメントで再使用するためにパッケージ化することができる。説明する実施形態では、ビヘイビアは、XSL-Tによって生成されたDHTMLタグに付加される。ビヘイビアにより、DHTMLビューとのユーザ対話が、XMLドキュメントに直接に返るようにマップされることが確実になる。このようにして、ユーザによってDHTMLビューに行われた変更を反映するようにXMLドキュメントを作成することができる。クリスタルは、データ形状に依存し、スキーマには依存しないので、形状がXMLドキュメントによって定義されると、異なるスキーマに属するXMLの断片を作成するためにクリスタルを使用することができる。つまり、それらの断片は、単に同じ形状を共有している。
【0014】
本明細書では、以下の用語を使用する。
【0015】
スキーマ 特定のタイプのXMLドキュメントに関するスキーマを記述するファイル(例えば、XSDファイル);スキーマは、通常、XMLドキュメントを表現するXMLツリーの形状を定義する事前定義されたタグおよび属性を含む。スキーマは、各XMLドキュメントが準拠しなければならない構造を提供する;XMLドキュメントを編集している間、スキーマは、インスタンス化されたDOM(ドキュメントオブジェクトモデル)(XDR DOM)を介してアクセス可能である。あるいは、関係のある情報をスキーマから獲得して、使用のためにキャッシュに入れることができる。
【0016】
XMLドキュメント XMLスキーマのインスタンス。理論上、1つのスキーマに対して、そのスキーマをインスタンス化する無限数のドキュメントが存在することが可能である。ドキュメントを編集している間、ドキュメントの初期バージョンと最終バージョンがともに、同一のスキーマに属するが、ドキュメント自体は、異なっている。処理中、XMLドキュメントは、インスタンス化されたDOM(XML DOM)を介してインスタンス化される。
【0017】
XSLT変換 XMLドキュメントをHTMLビューに変換するXMLファイル;各XMLドキュメントに関して、同一のドキュメントに対してそれぞれが異なるHTMLビューを作成する任意の数のXSLT変換が存在することが可能である。XSL-Tファイルは、XMLドキュメントの中の要素にマッチする1つまたは複数のテンプレートから成る。アプリケーション作成者によって最初に作成されたXSL-Tファイルが、編集モードで適用された際にNetDocsによってNetDocs編集認知のXSL-Tに変換される。この変換は、テンプレートを複数のテンプレートに分割し、アプリケーション開発者によって追加されたNetDocs特有のヒントに基づいて適切なビヘイビア(以下を参照)を追加することが可能である。XMLドキュメントを編集している間、変換されたXSL-Tは、インスタンス化されたDOM(XSL-T DOM)を介してNetDocsにとってアクセス可能である。
【0018】
DHTMLビュー これは、XMLドキュメントに対して適用されたXSLT変換の結果である。DHTMLツリーは、データを表示するためのビジュアルキューだけでなく、ビヘイビアも含む。このビヘイビアは、XSLT変換によって導入される。XSLT変換の作成者によって導入されたビヘイビアが存在するのが可能である一方で、NetDocsが変換を適用する際にNetDocsによって導入されるビヘイビアが存在する。NetDocsによって導入されるビヘイビアは、以下を行うための論理を保持する。
変更されたHTMLリーフノードの値をXML DOMにコピーする
HTMLドキュメントにおけるカーソル位置に基づき、その編集コンテキストでどのような編集サービスが利用可能であるかを判定する。編集コンテキストは、XSDコンテキスト、およびビューのその部分を生成するのに適用されたXSL-Tテンプレートに関連してHTMLコンテキストによって決定される。サービスは、ユーザに知らされ、
事前定義されたUI構造(例えば、テーブル、グリッド、カレンダコントロール、ラベル)に関する定位置(編集エリアの中)で、
NetDocs ContextBlockエリアの中で適切なXML編集コンテキストブロックをイネーブルにする。
選択された編集サービスに基づいてXML DOMの構造を変更する
XML DOMに対する変更によって影響を受けたビューの部分だけをリフレッシュすることによってHTMLビューを増分式に更新する。」

c 「【0028】
ユーザインターフェースを生成するためのスキーマおよびXSL-Tの使用
ユーザが、何らかの形でドキュメントの値またはプロパティの1つまたは複数の操作を介してドキュメントを変更する目的で、DHTMLドキュメントと対話する際、その操作が、DHTMLドキュメントの背後のデータの構造を記述するXMLドキュメントに対して整合性のある形で行われることが重要である。DHTMLの背後のデータ構造を記述する
XMLドキュメントを操作するため、DHTMLにおけるユーザ対話をXMLドキュメントにおける変更に変換する手立てが必要である。これは、XSL-Tによって提供される変換機能の逆を見出す問題である。
【0029】
一実施形態では、説明する実施形態は、ユーザが、DHTMLドキュメントを操作する、またはDHTMLドキュメントと対話するのを可能にする適切なユーザインターフェース(UI)をDHTML内で自動的に(またはアプリケーション開発者によって何らかのヒントが与えられて半自動的に)生成することによってこの問題に対処する。UIのプレゼンテーションは、XMLスキーマだけでなく、DHTMLを提供するのに利用されたXSL-T変換も考慮に入れる。これは、XMLドキュメントに何を追加することができ、何を追加することができないかを判定するのにXMLスキーマだけを見る他のXML作成解決策からの相当な脱却である。したがって、UIにより、DHTLMビューとのユーザ対話(例えば、構造を追加および/または削除する)をXMLドキュメントに直接に移し戻すことができる。」

d 「【0042】
クリスタルを使用するXML構造の操作
XMLの利点の1つは、豊富にデータを記述できることであったことを思い起こされたい。XMLは、その性質のため、多種多様なバリエーションのデータを提供することができる。このため、データと対話するためのUI解決策(XSL-Tを使用してDHTMLで表示される)は、ハードコード式で、個々のスキーマに特有であった。これは、XSL-Tを介してハードコード化された解決策を提供できる容易さの表れである。
【0043】
説明する一実施形態では、DHTMLビューとの対話が、XMLファイルまたはXMLツリーに直接に返るようにマップされるのを可能にするクリスタルの概念が導入される。有利には、クリスタルは、XMLスキーマとは独立に、様々なデータ形式に対して機能するように構成される。これは、データが、XMLツリーによって定義された特定の形状を有する場合、その特定の形状のために構成された特定のクリスタルを使用してDHTMLをレンダリングすることができ、またDHTMLビューとのユーザ対話が、XMLツリーに直接に返るようにマップされるのを確実することができるのを意味する。クリスタルは、データ形状によって提供される特定のデータに拘らず、またデータを含めるのに使用されるスキーマまたはタグにも拘らない。
【0044】
例えば、XMLドキュメント400、クリスタル402、および結果のDHTMLドキュメント404を示す図4を考慮されたい。1つの基本的形態では、クリスタルは、1つまたは複数のビヘイビア406、およびXMLをDHTMLに変換するのに利用される基本XSL-T408を含む。ビヘイビアは、この特定の例では、XSL-Tによって生成されるDHTMLタグに関連付けられる、または付加される2進コードとして実装される。例えば、XMLドキュメント400のすぐ下に示している階層ツリーを考慮されたい。この階層ツリーは、メモリの中で維持されるXMLツリーの一部分を表す。この例では、ツリーは、「製品」ルートノード、および「製品」ルートノードの子である「製品1」ノードを有する。「製品1」ノードの下には、「名前」、「量」、および「価格」とラベル付けされた3つの子ノードが存在する。したがって、このXMLツリーは、様々な製品を購入するのに利用される購入注文の一部分を表す。クリスタル402によってレンダリングされた際、結果のDHTMLビューが、410で示されている。このDHTMLビューは、ビヘイビアがDHTMLタグに関連付けられたツリーとしてビュー410のすぐ上に示されている。DHTMLビューは、基本的には、XMLドキュメントによって提供されるデータを含むテーブルである。次に、ユーザが、対応する量および価格を有する追加の製品を追加することによって購入注文を変更することを所望するものと想定する。過去には、この問題の解決策は、XMLに特定の「製品タグ」を追加し、次に、それに応じて、DHTMLビューに追加する機能をハードコードすることであったであろう。これは、XMLドキュメントのスキーマおよびタグに特定で結び付いた非常に柔軟性を欠いた解決策である。説明する例では、XMLドキュメントの変更は、クリスタル402に関連する1つまたは複数のビヘイビアを介して行われる。具体的には、この特定のXMLツリー構造に関して定義されたビヘイビアは、XMLドキュメントに行うことができる変更、およびXSL-Tの適用を使用して、その変更をDHTMLビューにマップするマッピングを含む。このビヘイビアは、データ形状に依存し、スキーマまたはデータに依存するものではない。
【0045】
これをDHTMLビュー404の下に示されるDHTMLツリー構造で図4に図示している。図4では、「製品」ノードに対応するノードが、ビヘイビアで装飾されて示されている。このビヘイビアは、ユーザが、適切なUI(テーブルに付加されたドキュメント内「製品追加」ボタン411などの)を介してDTHMLビューと対話し、ユーザによって行われた定義された変更が、適切なXMLツリーに返るようにマップされるようにするのを可能にする2進コードである。ユーザが、DHTMLビューと対話する際、XMLツリーが、構造上、操作され(適切なタグおよび構造を追加することによるなど)、次に、DHTMLビューを再表示するようにXSL-Tが呼び出される。
【0046】
購入注文の例では、ユーザが、新しい行をテーブル410に追加する「製品追加」ボタン411をクリックすることによってDHTMLビューテーブルに新しい製品を追加するものと想定する。この例では、新しい製品が追加されたとき、ビヘイビア、つまり2進コードが、その変更をXMLツリーに返るようにマップし、XMLツリーに構造上の変更を行うことによってその変更を組み込む。この特定の例では、構造上の変更は、新たに追加された製品を表すようにブランチをXMLツリーに追加することを含む。この追加されたブランチが、「製品」XMLツリー上の破線のブランチとして示されている。
【0047】
製品XMLツリーのすぐ下に示されている第2のXMLツリー412を考慮されたい。このツリーは、「アドレス」XMLツリーであり、アドレス帳に表れることが可能なアドレスに関連している。このデータは、製品XMLツリーに関連するデータとは極めて異なる。実際、これらのデータ間で関係は全く存在しない。ただし、アドレスXMLツリーは、すぐ上に現れるXMLツリーと同じ形状を有することに留意されたい。説明する実施形態では、同様なクリスタルを使用して、名前、ストリート、および郵便番号に関するエント
リを含むDHTMLアドレス帳をレンダリングすることができる。クリスタルは、ラベル付けの目的でわずかに異なるXSL-Tを含む可能性があるが、製品XMLツリーの構造を操作するのに上記の例で利用されたのと全く同じビヘイビアを含むことが可能である。この点で、アドレステーブル上でユーザインターフェースボタン411が提供され、製品テーブルに関連するユーザインターフェースボタンと同じビヘイビアを含む。したがって、ユーザが、自身のアドレス帳にエントリを追加したとき、DHTML「アドレス」タグに関連するビヘイビア、つまり2進コードにより、DHTMLビューに行われたあらゆる変更が、対応するXMLドキュメントに直接に返るようにマップされるのが確実になる。
【0048】
クリスタルは、有利には、データの形状に特有であり、XMLドキュメントが含む可能性があるスキーマまたは特定のデータに必ずしも依存しないビヘイビアを含む事前パッケージ化されたソフトウェアコンテナであることが可能である。この手法は、XSL-Tが提供する堅牢性から自然に生じる複雑なXSLT変換を扱うのに非常によく適している。DHTMLツリーの中にビヘイビアを組み込み、関連付けることにより、複雑なXSLT変換を扱うことに関連する問題が、XML作成に関する限り、解決される。この手法は、極めて高い柔軟性を有し、過去の解決策のように1つのスキーマまたは特定のデータに全く結び付いていない。また、この手法は、ユーザがDHTMLドキュメントを操作することに応答してどのように基礎のXMLが操作されるかに関して気を配ることなく、複雑なXSL-Tを開発する能力をアプリケーション開発者に提供する。さらに、この手法は、データ形状に特有であり、スキーマまたはデータには特有でないビヘイビアを有するクリスタルを利用するため、様々なクリスタルの設計が合わせられている形状に対応する形状を有するあらゆるXMLドキュメントにわたってクリスタルを再使用することができる。」

上記摘記事項aの第9段落7頁36?40行の記載、上記摘記事項bの第12段落8頁19?23行の記載、及び、上記摘記事項cの第29段落12頁5?8行の記載を参酌すると、ここには、自身が対応しているマークアップ言語であるDHTMLにより記述されたDHTMLドキュメントを表示し、編集を受け付けることが可能なDHTMLビューが記載されている。

上記摘記事項aの第10段落8頁4?5行の記載、上記摘記事項bの第13段落8頁35?36行、同第17段落9頁17?19行の記載、及び、上記摘記事項dの第44段落15頁2?5行の記載を参酌すると、ここには、ドキュメントが、DHTMLビューに対応していないXMLにより記述されていたときに、XMLにより記述されたXMLドキュメントを、DHTMLにより記述されたDHTMLドキュメントに変換することが可能であることが記載されている。
また、ここでは、上記のようにドキュメントを変換することができるのであるから、当該変換をするための手段も自明的に記載されているということができる。

上記摘記事項bの第15段落9頁1?第16段落9頁15行、同第18段落9頁28?46行の記載を参酌すると、ここには、ドキュメントから、ドキュメントをデータとして扱うときのアクセス方法を提供するために定められたDOM(ドキュメントオブジェクトモデル)に準拠した形式のデータが生成されることが記載されている。
また、ここでは、上記のように当該形式のデータが生成されることから、当該形式のデータを生成するための手段も記載されているということができる。
なお、XMLツリーやHTMLツリーの生成に、当該DOMが使われるものであることは、当該文書オブジェクトモデルにおける技術常識から明らかなことである。

上記摘記事項aの第10段落7頁49行?第11段落8頁15行の記載、上記摘記事項bの第13段落8頁第34?45行、同第17段落9頁17?20行、同第18段落9頁第28?37行の記載、上記摘記事項dの第43段落14頁41?50行、第44段落第15頁2行?第46段落15頁43行、同48段落16頁10?15行の記載、及び、図4を参酌すると、XMLドキュメントをDHTMLドキュメントに変換するための定義を記述したXSL-Tファイルを参照して、前記定義に含まれるDHTMLツリーに含まれる構造とXMLツリーに含まれる構造との対応関係を保持するビヘイビアを組み込むことができること、DHTMLドキュメントの変更がされると、ビヘイビアは、対応関係に基づいて、XMLツリーの変更部分を特定して変更を反映させるものであることが記載されている。
そして、図4や上記摘記事項dの第44段落第15頁7?11行に示されるように、XMLツリーやDHTMLツリーに含まれる構造には、ノードが含まれ得るものであることから、ビヘイビアは、DHTMLツリーのノードとXMLツリーのノードとの間の対応関係を保持することができるものであるということができる。

上記摘記事項dの第44段落15頁21?26行の記載を参酌すると、ビヘイビアは、XMLドキュメントへの変更と、その変更をDHTMLビューにマッピングすることを含むことが記載されている。
また、上記摘記事項bの第12段落8頁第23?25行の記載、及び、上記摘記事項dの第45段落15頁33?35行の記載を参酌すると、XMLツリーに構造が追加された後に、対応するDHTMLビューが更新されることが記載されている。
そして、XMLドキュメントからXMLツリーが生成されることや、DHTMLツリーの構造が更新された結果として、DHTMLビューが更新されるものであることを考慮すると、ここにおいて、ビヘイビアは、当該ビヘイビア自身に対応するDHTMLツリーのノードにマッピングされるべきXMLツリーのノードから、当該ビヘイビア自身に対応するDHTMLツリーのノードを生成又は再生成するものであるということができる。

したがって、上記引用例1の摘記事項a?dおよび図面(図4)に記載されたDHTMLおよびXSLTを使用した任意のXMLドキュメントの作成に係る構成および動作によれば、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

(引用発明1)
「自身が対応しているDHTMLにより記述されたドキュメントを表示し、編集を受け付けることが可能なDHTMLビューと、
ドキュメントが、前記DHTMLビューが対応していないXMLにより記述されていたときに、前記XMLにより記述されたXMLドキュメントを、前記DHTMLにより記述されたDHTMLドキュメントに変換することが可能な手段と、
前記ドキュメントから、ドキュメントをデータとして扱うときのアクセス方法を提供するために定められたDOM(ドキュメントオブジェクトモデル)に準拠した形式のデータを生成する手段と、を備え、
前記生成する手段は、前記XMLドキュメントに対応するXMLツリーを生成し、
前記変換することが可能な手段は、前記XMLドキュメントを前記DHTMLドキュメントに変換するための定義を記述したXSL-Tファイルを参照して、前記定義に含まれる、前記DHTMLドキュメントに対応する前記DHTMLツリーの各ノードと、前記XMLツリーに含まれる構造との対応関係を保持するビヘイビアを組み込み、
前記ビヘイビアは、前記DHTMLツリーのノードと前記XMLツリーのノードとの対応関係を保持するビヘイビアを含み、
前記ビヘイビアは、前記対応関係に基づいて、自身に対応する前記DHTMLツリーのノードにマッピングされるべき前記XMLツリーのノードから、自身に対応する前記DHTMLツリーのノードを生成し、
前記DHTMLビューは、前記DHTMLツリーを参照して、前記変換されたDHTMLドキュメントを表示し、
前記DHTMLドキュメントを表示するDHTMLビューが、ユーザから前記DHTMLドキュメントの変更がされたとき、前記ビヘイビアは、前記変更と、前記対応関係に基づいて、変更すべき前記XMLツリーのノードを特定し、そのノードに対して、前記変更に対応した更新を実行し、
前記ビヘイビアは、自身に対応する前記DHTMLツリーのノードにマッピングされるべき前記XMLツリーのノードが変更されたとき、変更された前記XMLツリーのノードから、自身に対応する前記DHTMLツリーのノードを再生成することにより、前記XMLツリーのノードに対する変更を前記DHTMLツリーのノードに反映させる、
DHTMLビューを使用してXMLを作成するシステム。」

(イ)引用例2記載の方法
原審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2004-30582号公報(以下、「引用例2」という。)には、「構造化文書編集装置、構造化文書編集方法及びプログラム」に関して、図面とともに下記の事項が記載されている。

「【0115】
(入力データを受付けXML文書を更新する手順について)
次に、図5のXML文書編集装置の更新データ入力部908およびXML文書更新部909において、Webブラウザ21上で、更新データの入力を受付け、元のXML文書905を更新する手順について説明する。
【0116】
ここでは、図2のデータをXML文書905に、図3のデータをXSLT文書901にそれぞれ用いた場合を例にとって説明する。
【0117】
まず、表示装置907は、XSLTプロセッサ904の出力である変換後文書記憶部906から、例えば、図7のデータを受け取り、図4のような画面を表示する。
【0118】
また、更新データ入力部908は、例えば、あらかじめ、Webブラウザ21のイベント機能などを用いて、マウスで表示をクリックされたら通知を受け取れるように設定しておく。
【0119】
ここで、操作者が画面の文字列、例えば、図4の「紫式部」の文字列をマウスでクリックすると、Webブラウザ21はこのクリックを更新データ入力部908へ通知する。
【0120】
更新データ入力部908は、通知を受け取るとWebブラウザ21の機能を用いるなどして、マウスポインタの下にあるHTML文書(図7)中のノードで、かつ、変換元のXML文書905中のノードへの参照を持つノードを検索する。
【0121】
もし、当該のノードがない場合には、そのまま何もせず、次のイベントを待つ。
【0122】
当該のノードが見つかった場合には、更新データ入力部908は、Webブラウザ21のテキストボックスあるいはテキストエリアなどをHTML文書中のノード上に表示し、テキストとしてHTML文書中のノードの現在の値を入れ、操作者からの更新データ入力を受け付ける。図16に、図7のHTML文書が表示された場合において、「紫式部」のテキスト入力を受け付けている画面の例を示す。
【0123】
そして、XML文書更新部909は、更新データ入力部908が表示したテキストボックスなどに入力されたテキストで、対応する元のXML文書905中の対応するノードを更新する。」(15頁19行?16頁2行)

上記摘記事項の第119段落15頁34行?第123段落16頁2行には、HTML文書中のノードの変更をするときに、対応するXML文書中のノードが検索され、HTML文書中のノードに対応するXML文書中のノードが更新されるが、ノードがない場合には、そのまま何もせず、次のイベントを待つことが記載されている。

したがって、上記引用例2の摘記事項の記載によれば、上記引用例2には、以下の方法(以下、「引用例2記載の方法」という。)が開示されている。

「HTML文書中のノードに対応するXML文書が、その文書中に対応するノードを有しない場合には、そのまま何もせず、次のイベントを待つ。」

ウ 対比
(ア)補正後の発明と引用発明1とを対比する。

a 引用発明1の「ドキュメント」とは、「文書」のことであって、引用発明1の「DHTMLにより記述されたドキュメント」及び「DHTMLドキュメント」は、表示、編集が可能なマークアップ言語により記述された文書のことであるから、補正後の発明の「第1のマークアップ言語により記述された文書」及び「第1文書」と実質的に同じものである。

b 引用発明1の「DHTMLビュー」は、マークアップ言語で記述された文書を表示、編集するユーザーインターフェースのことであるから、補正後の発明の「処理系」と実質的に同じものである。

c 引用発明1の「XML」、「XMLドキュメント」は、そのままでは表示、編集ができないマークアップ言語、またはその文書のことであるから、補正後の発明の「第2のマークアップ言語」、「第2文書」と実質的に同じものである。

d 引用発明1の「変換」、「変換することが可能な手段」は、XMLにより記述された文書を、表示、編集が可能なマークアップ言語により記述された文書へ変換すること、または変換する手段のことであるから、補正後の発明の「マッピング」、「マッピングすることが可能な変換部」と実質的に同じものである。

e 引用発明1の「DOM(ドキュメントオブジェクトモデル)に準拠した形式のデータを生成する手段」は、補正後の発明の「文書オブジェクトモデルに準拠した形式のデータを生成する生成部」と同じものである。

f 引用発明1の「XSL-Tファイル」は、XMLにより記述された文書を、HTMLのような、表示、編集が可能なマークアップ言語により記述された文書へ変換するための定義ファイルのことであるから、補正後の発明の「定義ファイル」と実質的に同じものである。

g 引用発明1の「XMLツリー」は、変換元の文書を文書オブジェクトモデルに準拠した形式のデータとしたものであるから、補正後の発明の「変換元文書オブジェクトモデルデータ」と実質的に同じものである。

h 引用発明1の「DHTMLツリー」は、変換先の文書を文書オブジェクトモデルに準拠した形式のデータとしたものであるから、補正後の発明の「変換先文書オブジェクトモデルデータ」と実質的に同じものである。

i 引用発明1の「XMLツリーに含まれる構造」は、変換先の文書オブジェクトモデルデータの各ノードに対応する、変換元の文書オブジェクトモデルデータに含まれるデータのことであるから、補正後の発明の「変換元文書オブジェクトモデルデータに含まれるデータ」と実質的に同じものである。

j 引用発明1の「ビヘイビア」は、変換先の文書オブジェクトモデルデータの各ノードに対応する、変換元の文書オブジェクトモデルデータに含まれるデータとの対応関係を保持するものであり、各ビヘイビアは、変換先の文書オブジェクトモデルデータのノードに対応する、変換元の文書オブジェクトモデルデータのノードとの対応関係を保持するものでもあるから、補正後の発明の「コネクタ」及び「第1のコネクタ」と実質的に同様の機能を有している。

k 引用発明1において、ビヘイビアを「組み込」むことは、そのビヘイビアを「生成」することでもあるということができる。

l 引用発明1において、ユーザからドキュメントの「変更がされた」ことに対応して、XMLツリーのノードが「更新」されることは、ユーザから「編集指示を受け付けた」ことに対応して「変更操作」されるということと実質的に同じことである。

m 引用発明1の「DHTMLビューを使用してXMLを作成するシステム」は、文書処理装置の一種であるということができる。

(イ)よって、上記a?mから、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「自身が対応している第1のマークアップ言語により記述された文書を表示し、編集を受け付けることが可能な処理系と、
文書が、前記処理系が対応していない第2のマークアップ言語により記述されていたときに、前記第2のマークアップ言語により記述された第2文書を、前記第1のマークアップ言語により記述された第1文書にマッピングすることが可能な変換部と、
前記文書から、文書をデータとして扱うときのアクセス方法を提供するために定められた文書オブジェクトモデルに準拠した形式のデータを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、前記第2文書に対応する変換元文書オブジェクトモデルデータを生成し、
前記変換部は、前記第2文書を前記第1文書にマッピングするための定義を記述した定義ファイルを参照して、前記定義に含まれる、前記第1文書に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータの各ノードと、前記変換元文書オブジェクトモデルデータに含まれるデータとの対応関係を保持するコネクタを生成し、
前記コネクタは、前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードと前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードとの対応関係を保持する第1のコネクタを含み、
前記第1のコネクタは、前記対応関係に基づいて、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードにマッピングされるべき前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードから、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードを生成し、
前記処理系は、前記変換先文書オブジェクトモデルデータを参照して、前記マッピングされた第1文書を表示し、
前記第1文書を表示する処理系が、ユーザから前記第1文書の変更がされたとき、前記コネクタは、前記変更と、前記対応関係に基づいて、変更すべき前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードを特定し、そのノードに対して、前記変更に対応した更新を実行し、
前記第1コネクタは、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードにマッピングされるべき前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードが変更されたとき、変更された前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードから、自身に対応する前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードを再生成することにより、前記変換元文書オブジェクトモデルデータのノードに対する変更を前記変換先文書オブジェクトモデルデータのノードに反映させる、
文書処理装置。」

(相違点)
対応関係を保持するコネクタに関し、補正後の発明では、「対応する変換元文書オブジェクトモデルデータのノードを有しない第2コネクタ」を有するのに対し、引用発明1では、この第2コネクタに相当する構成を有していない点。

エ 当審の判断
上記相違点について検討する。

引用例2記載の方法は、変換先文書であるHTML文書中のノードが、対応する変換元文書であるXML文書中のノードを有しない場合には、そのまま何もせず、次のイベントを待つ方法であるから、補正後の発明の「第2コネクタ」が有している機能と同様な機能を奏する方法である。

ここで、引用発明1と引用例2記載の方法は、ともに、XMLから変換されたHTMLを扱い表示・編集手段によって編集することで、XML文書の編集を可能にするシステムに関する点で同一の技術分野に属するものであり、XML文書専用の特別な表示・編集手段を設けることなく、XML文書の編集を可能にするという同一の課題も有しているものであるから、引用発明1における、「ビヘイビア」の構成において、上記引用例2記載の方法に開示された機能を採用することで、補正後の発明のように、「第2コネクタ」に係る構成を設けることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、補正後の発明は引用発明1、引用例2記載の方法に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

また、補正後の発明が奏する効果についても、いずれも引用発明1、引用例2記載の方法から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。

3 むすび
以上のとおり、補正後の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成22年6月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年9月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書および図面の記載からみて、上記「第2 平成22年6月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「1 本願発明と補正後の発明」の項中で、「本願発明」として記載したとおりである。

2 引用発明
これに対して、原審の拒絶理由に引用された引用例および引用発明は、上記「第2 平成22年6月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(2)独立特許要件」の項中で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成22年6月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(1)新規事項の有無、補正の目的要件」の項中で検討したように、補正後の発明から、本件補正に係る構成の限定を省いたものであるところ、本願発明の発明特定事項をすべて含み、審判請求時の手続補正によってさらに構成を限定した補正後の発明が、上記「第2 平成22年6月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 補正の適否」の「(2)独立特許要件」の項中で検討したように、引用発明1、引用例2記載の方法に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項を省いた本願発明も実質的に同様の理由により、引用発明1、引用例2記載の方法に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用例2記載の方法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-14 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-03-28 
出願番号 特願2006-535891(P2006-535891)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之  
特許庁審判長 岩崎 伸二
特許庁審判官 飯田 清司
猪瀬 隆広
発明の名称 文書処理装置及び文書処理方法  
代理人 森下 賢樹  

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